現在の税理士との関係に不満があるなら、事業の成長を前進させるために税理士変更は有効な判断と言えます。しかし、最適なタイミングや円満な断り方、スムーズな引継ぎの方法など、不安な点も多いでしょう。この記事では、税理士の見直しを考えている経営者や個人事業主の方へ向けて、失敗しない税理士変更について分かりやすく解説します。
目次
税理士の変更を考えるのはどんな時?よくある5つの理由

顧問税理士の変更を検討するきっかけはさまざまですが、多くの場合は以下のような不満や不安が積み重なることで変更を検討するケースが多く見られます。ぜひ、自身の状況に当てはまっているかどうかの参考にしてください。
コミュニケーションが取りにくい
税理士との意思疎通がうまくいかないと、経営判断の遅れや誤りにつながります。質問に対する回答が遅い、専門用語ばかりで説明が分かりにくい、高圧的な態度で相談しにくいといった状況は、信頼関係を損なう要因となるものです。気軽に相談でき、わかりやすく対応している税理士ならパートナーとして信頼できるでしょう。
期待していた節税提案がない
税理士の役割は、単に正確な申告書を作成するだけではありません。経営者のパートナーとして、最大限の節税を実現するための具体的な提案を行うことにもあります。
しかし、毎月同じような試算表の説明ばかりで、節税策や税制改正に対応した提案がなければ、顧問料を支払う価値に疑問を感じるのは当然と言えるでしょう。自社の状況を深く理解し、将来を見据えた積極的な節税アドバイスをしてくれる税理士こそ、経営の心強いパートナーとなります。
顧問料がサービス内容に見合っていないと感じる
顧問料に対し、サービス内容が乏しいと感じることも、税理士変更を検討する理由の1つです。
顧問契約を結んでいるにもかかわらず、訪問や面談の機会がほとんどない、相談しても一般的な回答しか得られない、記帳代行以外の付加価値を感じられない、といったケースが挙げられます。支払う顧問料に対し、適切な価値が提供されているかを見極めることが大切です。
会社の成長に対応できない
会社が成長すれば、必要とする税務サービスの専門性も複雑になります。創業期は基本的な記帳代行や申告業務で十分でも、拡大期には資金調達支援、M&A、組織再編などのより専門的な知識が必要になる場合があります。
現在の税理士がこれらの分野に対応できないと、会社の成長を妨げる要因となってしまうのです。
税理士の高齢化や担当変更への不安がある
税理士の高齢化による事業承継への不安や、最新のITツールやクラウド会計ソフトへの対応力不足を心配する声もあります。また、担当者が頻繁に変わると、そのたびに事業内容や過去の経緯を一から説明し直さなければならず大きな負担となります。
特に、経験の浅い担当者に任されてしまうケースでは、サービスの質そのものに不安を抱くこともあるでしょう。
税理士変更で失敗しないための最適なタイミングは?

税理士の変更をスムーズに進めるには、タイミングの見極めが重要です。税理士事務所の業務には繁忙期と閑散期があります。
業務の区切りが良い時期を選べば、現在の税理士とも円満に関係を終えられ、新しい税理士への引継ぎもスムーズに進みます。以下に紹介するタイミングを参考にしてください。
ベストなタイミング:決算と申告が終わった直後
事業年度が終了し、決算と法人税の申告手続きがすべて完了した直後は、税理士にとって大きな仕事がひと段落する時期です。このタイミングなら業務の区切りも良く、契約解除もしやすいでしょう。
また、新しい税理士も新事業年度の期首から関与を開始できるため、年間の会計処理や税務計画をサポートしやすくなります。引継ぎに必要な資料も整理された状態で受け取れるため、双方にとって最も負担が少なく、スムーズな移行が可能なタイミングと言えます。
避けるべきタイミング:①税務調査中
税務調査の対象となっている場合は、調査が終わった後に税理士変更を進めるのが適切です。調査への対応には、過去の申告内容や経理処理を細かく把握している現在の税理士に任せるのが安全だからです。
途中で税理士を変更してしまうと、新しい税理士は短期間で膨大な資料を把握する必要があり、対応が不十分になるリスクがあります。その結果、調査官からの印象が悪くなる恐れもあるでしょう。
調査が完全に終了し、申告修正や納税までひと通り済んだタイミングなら、税務上の不安要素を解消したうえで安心して新しい税理士に引き継げます。
避けるべきタイミング:②決算直前から申告までの繁忙期
税理士を変更するうえで最も避けるべきタイミングは、決算の直前から申告期限までの期間です。通常、決算日から申告期限までの2ヵ月間は、税理士事務所にとって年間で最も多忙な繁忙期にあたります。
このタイミングで契約解除を申し出ると、進行中の決算業務に影響を与えてしまい、円満な関係で終了するのが難しくなる可能性があるでしょう。
さらに、新しい税理士を探そうとしても決算直前で余裕がなく、新規契約を受け付けてもらえないケースも少なからずあります。仮に契約できても、引継ぎに十分な時間を取れず、申告内容に不備が出るリスクが高まります。
スムーズに移行するには繁忙期を避けて、余裕のある時期に変更するのが賢明です。
税理士変更を円滑に進めるための5ステップ

税理士の変更を決めたら、感情的に行動するのではなく計画的に進めましょう。正しいステップを踏めば、現在の税理士との関係を悪化させず、新しい税理士への引継ぎもスムーズに行えます。ここでは、税理士変更を円滑に進めるための5ステップを紹介します。
顧問契約内容を再確認する
税理士変更の手続きを進める場合、まずは現在の顧問契約書の内容を確認しましょう。見落としがあると、思わぬトラブルに発展する可能性があります。
特に注意したいポイントは以下のとおりです。
- 契約期間:契約が「1年更新」なのか「自動更新」なのかを確認しましょう。
- 契約解除の申し出期限:「解約は契約終了の2ヵ月前まで」など、解約可能な時期が定められている場合があります。
- 解約方法:「書面で通知が必要」など、具体的な手続き方法が契約書に記載されていることも多いです。
- 違約金やペナルティの有無:途中解約の場合に費用が発生するかどうかを必ず確認しておきましょう。
これらを事前に把握しておくことで、自動更新や違約金トラブルを避け、円満に契約を解消できるようになります。
新しい税理士候補を探し、面談を行う
現在の税理士に契約解除の意向を伝える前に新しい税理士を見つけておくことが大切です。税理士が不在の期間を作らないよう、以下を参考にしてみてください。
税理士の探し方
- 税理士紹介サービスを利用する
- インターネットの検索や専門サイトで探す
- 取引先や知人からの紹介を受ける
まずは1人に絞らず、複数の候補者を探すのがおすすめです。
面談で確認すべきポイント
候補者が見つかったら、必ず直接面談を行いましょう。その際、以下を確認します。
- 自社の事業内容を理解してもらえるか
- 抱えている課題や不安点にどう対応できるか
- 将来の事業展望を共有できるか
- 専門分野や強みは自社にマッチしているか
- 提供されるサービス内容は十分か
- 顧問料など料金体系は納得できるか
- 人柄や相性が合うか
そのうえで比較検討を行い、信頼して長期的に任せられるパートナーを見極めましょう。
現在の税理士に契約解除の意向を伝える
新しい税理士の候補が決まり、契約のめどが立った段階で、現在の税理士に契約解除の意向を伝えます。伝える際には、できれば電話や対面で直接話すのが望ましいですが、難しい場合はメールなどの書面で伝えることも可能です。
伝える際は、以下のポイントを意識しましょう。
- これまでのサポートへの感謝を必ず伝える
- 契約解除の理由は簡潔に、かつ客観的に伝える
例:会社のステージが変わったため、親族が事業を継ぐことになったため
税理士を非難するような言い方は避け、客観的で角が立たない断り方を心がけることが、円満な契約解除とスムーズな引継ぎにつながります。口頭で伝えた後は、契約書に基づき書面で正式に通知します。
預けている書類やデータをすべて返却してもらう
契約解除の合意が得られたら、税理士事務所に預けている書類やデータを返却してもらいましょう。引き継ぎに必要な資料が不足すると、新しい税理士とのスタートに支障が出る恐れがあります。
主に返却を依頼すべきものは以下のとおりです。
- 過去の決算書や申告書の控え
- 総勘定元帳
- 請求書や領収書などの証憑書類一式
- 会社の定款や登記簿謄本
- 会計ソフトを利用していた場合の会計データのバックアップ
あらかじめ返却してもらいたい書類のリストを作成し、税理士に渡しておくと安心です。
新しい税理士へ業務の引継ぎを依頼する
旧税理士から返却された書類やデータを新しい税理士に渡し、事業の引き継ぎを進めます。引き継ぎ資料が揃っていることで、新しい税理士はスムーズに会社の状況を把握でき、サポートを開始しやすくなります。
引き継ぎに必要な主な書類は以下のとおりです。
- 過去数期分の決算書や申告書
- 総勘定元帳
- 請求書や領収書などを整理したもの
- 会計ソフトのデータやログイン情報
新旧税理士の直接コミュニケーションがあると、資料の抜け漏れや誤解を防ぎ、最短で新体制を整えることができるため理想的です。
まとめ
税理士とのコミュニケーション不足やサービスへの不満を感じたときは、変更を検討すべきタイミングの一つです。税理士変更は、事業の成長に合わせて行う重要な経営判断と言えます。適切な時期に見直すことで、より自社に合ったサポートを得られるようになります。
変更を進める際は、決算申告後などの業務の区切りが良い時期を選び、現在の契約内容を確認したうえで新しい税理士を探すことが大切です。スムーズに引き継ぎを進められれば、新しい税理士との良好な関係も築きやすくなり、結果として事業の発展につながるサポートを得られるでしょう。








