確定申告や法人税申告を終えた後に「売上の申告漏れ」や「経費計上ミス」などの誤りに気づいた場合、納税者が自主的に正しい内容に直すために行うのが「修正申告」です。今回は、修正申告と再修正申告の違いから、具体的な手続きの流れやペナルティの有無、注意すべきポイントについて詳しく解説します。税務調査などのリスクを抑えるためにも、正しい知識を持って適切に対応しましょう。
目次
修正申告とは?

確定申告が間違っていたときに修正して改めて申告することを指します。基本的には、確定申告で所得税を少なく申告し、かつ修正後の申告が期限後になる場合に行います。他にも、以下のようなケースが挙げられます。
- 売上の計上漏れがあった
- 経費の計上誤りや二重計上があった
- 所得控除や税額控除を誤って申告していた
- 源泉徴収額を記載し忘れた
修正する場合は正しい金額で再度申告し、追加で税金を納めましょう。
再修正申告とは?
一度修正申告を行った後に、さらに申告内容に誤りが見つかった場合に行う再度の修正手続きです。基本的には修正申告と同じ仕組みですが、税務申告の期限前に既に提出した申告内容を訂正する場合は、修正申告ではなく訂正申告です。
具体的には、下記のようなケースが挙げられます。
- 初回の修正申告で売上漏れを訂正し、その後さらに経費計上の誤りが判明した
- 税務署の指摘を受けて修正申告を提出したが、その訂正額自体に誤りがあった
修正申告・再修正申告の期限
修正申告に関して期限は特にありません。修正申告・再修正申告の手続きをする時点で、既に確定申告の法定申告期限を過ぎているため、申告が遅れるほどペナルティが課されるためご注意ください。
再修正の追加ペナルティはある?
「修正申告を繰り返すとペナルティが増えるのでは?」と不安になる方もいますが、再修正自体には追加の罰則はありません。ただし、誤りが多いと税務署に”申告が不正確な納税者”と見なされ、調査対象になるリスクは高まります。
再修正が必要となる場合
再修正が必要となるケースについて解説します。
自主的に誤りに気づいた場合
自社の会計処理を見直した際に、新たな誤りを発見することは珍しくありません。例えば、申告後に未計上の経費や売上が出てきた場合には再修正が必要です。
税務署からの指摘を受けた場合
申告後の税務調査や書面照会の結果、税務署から修正申告の内容に誤りがあったと指摘されれば、再修正を求められるケースがあります。
法令改正や誤解による計算違い
控除や特例の計算を誤っていた場合も、再修正が必要です。特に、住宅ローン控除や医療費控除など複雑な制度はミスが発生しやすい分野です。
法人と個人の再修正の違い
修正申告や再修正申告の手続き自体は、法人であっても個人であっても基本的な流れは同じです。しかし、法人と個人では税金の種類や金額規模、誤りやすいポイントに違いがあります。
法人の場合:影響額が大きく、複数税目の修正が必要
法人税の修正申告は、金額規模が大きくなりやすい点が特徴です。売上計上漏れや経費の誤りが数百万円単位に及ぶケースもあり、その結果、法人税額に大きな影響を与えます。法人税だけでなく消費税や地方税も連動して修正が必要となるため、再修正申告の作業が複雑になりやすい点にも注意が必要です。
また、法人は税務調査の対象となることも多く、修正内容が税務署からの指摘を受けたものである場合、加算税や延滞税が発生するリスクも高まります。
個人の場合:控除や特例の誤りが多い
一方、個人事業主や給与所得者の確定申告では、法人のように大規模な売上・経費の修正は少なく、所得控除や税額控除に関する誤りが中心です。
また、副業収入の申告漏れや経費計上の誤りなど、比較的”身近なミス”が再修正の対象となる場合が多いのが特徴です。
修正申告の再修正に伴うペナルティ
修正申告の再修正を行うと、その状況や内容に応じて以下のペナルティが課されます。それぞれについて詳しく解説します。
延滞税
納付期限までに支払われるべき税金を納付していない場合に、納付すべき税額に対して課せられる税金です。納付期限の翌日から全額納付が完了するまで、日数に応じて1日単位で自動的に課税されます。
期限内に申告した内容に誤りがあり、納税額が不足していた場合や、期限内に申告書は提出したものの、法定納期限までに税金を納めなかった場合も延滞税の課税対象です。納税しない期間が長くなればなるほど、延滞税の額は高くなるため注意が必要です。
過少申告加算税
本来納めるべき税金よりも少ない金額で申告した際に課税される追加の税金を指します。意図的に売上を少なく計上するなど、売上や経費の操作をして納税額を減らした場合だけでなく、単純な計算ミスや記載漏れといったミスによって過少申告した場合も対象です。
加算税は、過少申告や無申告があった場合に課されるペナルティ(行政的制裁)の性質を持つ税金で、法人税や所得税などの本来納めるべき「本税」とは違う「附帯税」と呼ばれています。附帯税は損金への算入ができません。
無申告加算税
法人税・所得税・消費税などの申告を期間内に行わなかった場合に、ペナルティとして課される税金です。無申告加算税は税務調査などで指摘されるのが一般的ですが、税務調査前に修正申告を行うと税率が軽減されます。
無申告の内容が悪質だった場合には重いペナルティが課せられる場合があるため、リスク回避のためにも、確定申告は適切に済ませましょう。
重加算税
法人税などの申告義務に対して、税額を算出する際に必要な数字や情報を隠ぺい・仮装して不正を行った場合に課せられる附帯税です。課税期限内に確定申告をしていても、帳簿の改ざんなど虚偽の申告をしていた場合は、重加算税が加算される可能性があります。
重加算税は、法人はもちろん個人事業主にも関係している税金の1つです。重加算税の税率はケースによって異なりますが、その他の加算税より税率が高く、課税されると収益を大きく圧迫する恐れがあります。
再修正申告の手続き方法
再修正申告の具体的な手続き方法について解説します。これ以上のペナルティを受けないよう、一度の再修正で確実に誤りを正しましょう。
修正内容の把握と再計算
まずは、どの部分に誤りがあったのかを正確に洗い出しを行います。売上の未計上や経費の二重計上、控除の適用漏れなど、原因を明らかにすることが大切です。そのうえで、対象となる税額を再計算しましょう。
法人税や所得税だけでなく、住民税・事業税・消費税など関連するすべての税目に影響が及んでいないかも確認しましょう。部分的な修正だけを行うと、再び誤りが残り、再修正を繰り返すリスクにつながります。
修正申告書の作成
次に、再修正内容を反映した修正申告書を作成します。国税庁のe-Taxを利用する場合は、修正申告専用の画面から入力が可能です。紙で提出する場合は、国税庁のホームページで入手できる「修正申告書」を用いて修正を行います。
作成の際、誤りがあった項目だけを修正するのではなく、全体の整合性の確保が重要です。特に、損益計算書や貸借対照表の数値が修正される場合は、各表のつながりを意識して記載しましょう。
税務署に提出・納付
完成した修正申告書は、所轄の税務署に提出します。修正の結果、追加で納付すべき税額が発生した場合は延滞税や過少申告加算税が加わる可能性があります。
延滞税や過少申告加算税などは法定納期限からの遅延に応じて計算されるため、速やかに納付する必要があります。自主的に再修正申告を行った場合には、調査で指摘された場合よりも加算税が軽減されるケースもあるため、気づいた段階で早めに行動することが望ましいでしょう。
再修正申告を行う際の注意点

再修正申告を行う際の注意点について解説します。
すべての資料をそろえる
再修正申告は、正確性が求められる重要な手続きです。必要な書類がすべて揃っているか、署名や日付が抜けていないかなど必ず確認を行いましょう。後日、税務署から照会があった場合にもスムーズに対応できます。
再修正は信頼低下につながる
再修正を繰り返すと「帳簿管理が甘い」「税務意識が低い」と判断され、税務署からの信頼を失う恐れがあります。必要以上に修正を重ねないよう、初回の修正時に徹底的な精査を行いましょう。
税理士などの専門家に相談もおすすめ
再修正申告は、提出前に一度税理士などの専門家に相談するのもおすすめです。修正は単純な記載ミスにとどまらず、税務全体の整合性を問われる複雑なケースも少なくありません。自己判断で進めると、更に修正を繰り返すリスクがあります。
申告書の作成を税理士に任せれば、スムーズな作成が可能です。仮に税務調査の対象となった場合も、作成に関わった税理士が調査に立会えるため、税務署と対峙する心理的な負担の軽減にも繋がります。
税務や経営でお悩みの方は、初回無料相談をご利用ください。秘密厳守で専門の税理士が対応いたします。ぜひ、お気軽にご相談ください。
よくある質問

修正申告の再修正について、よくある質問を回答とともに紹介します。
修正申告は何度でもできる?
確定申告の期限内は「訂正申告」として何度でもやり直しが可能です。ただし、修正申告の場合は期限が過ぎているため、修正する度に延滞税などのペナルティが発生します。そのため、正確な再修正を1回で完了させるのが望ましいでしょう。
税務署に指摘される前に修正申告をすれば加算税はかからない?
税務署から指摘される前に自主的に修正申告をした場合、基本的に過少申告加算税はかかりません。 納税額が多すぎ・少なすぎた場合、正しい額に訂正するよう税務署が求めることを「更生」といい、 この更生を予知する前に修正申告をした場合は、過少申告加算税の対象外です。
還付の場合も修正申告できる?
還付とは、税金を本来よりも多く納めすぎていた場合に、その超過分を返してもらえることを指します。還付の場合は修正申告ではなく、更正の請求という別の手続きを行う必要があります。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。
修正申告と更正の請求の違いは?
納税額が少なすぎた場合は修正申告を行いますが、逆に多く納めすぎていた場合は更正の請求を行います。再修正申告と混同されやすいため、注意が必要です。
再修正が不安な場合は専門家へ相談も
再修正申告は、税務上の誤りを正すための重要な制度です。しかし、再修正は初回修正の不十分さを示すことになり、税務署の信頼を損ね、調査リスクを高めます。
税務申告のミスは誰にでも起こり得ます。大切なのは、早期に正しく訂正し、税務署に誠実に対応することです。修正は自分自身で再度作成して提出も可能ですが、再修正の場合はより作成の難易度が高まります。
そのため、再修正は専門家への相談・依頼がおすすめです。税務の専門家である税理士と連携すれば、ペナルティを最小限に抑えられる可能性があります。
小谷野税理士法人では、税務・財務面での相談やアドバイスも承っております。申告書の修正に悩んでいる方はぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。










