事故や病気によって社長が死亡したときは、後任の決定などをできるだけ迅速に行うことが求められます。この記事では、会社の社長が死亡した場合に必要な対応と、会社運営における手続きなどについて解説します。不安や悲しみが心を襲う中、すぐに行動することが難しいかもしれません。心が落ち着き冷静に対応できるようになったときは、本記事を参考にしながら必要な手続きを少しずつ進めていきましょう。
目次
社長が死亡したときにまずやるべきこと

社長が亡くなったときは、まず社内や取引先などへ連絡をしましょう。連絡手段は以下の通りです。
- メール
- 電話
- Webカメラなどを使った通話
どの方法が適しているかは、時間帯や社内・取引先の状況によって異なります。適切な方法を選び、今後の社内状況や考えられる影響などを簡潔にまとめてから伝えましょう。
人の死は常に急を要するものです。しかし、時間帯や曜日、繁忙期などによっては多忙を極めることもあるでしょう。特に取引先については迷惑にならないよう、時間帯などを配慮した上で連絡することをおすすめします。
取引先や顧客に対しても社長の逝去について伝え、企業としての体制や今後の方向性を早急に示すようにしましょう。そうすることで、取引先による業務の継続性に対する不安を減らすことができます。
社葬を執り行う予定であれば、詳細な日時が決まってから伝えることで、関係者が故人を偲び、会社としての一体感を深める機会を提供できるでしょう。
社長が死去したときに考えられる会社への影響
社長が死去したときは、企業に対してさまざまな影響を与えます。具体的には下記の通りです。
- 全社が混乱状態に陥る
- 業績の低下・低迷
- 社内外からの信頼性
企業のトップがいなくなった場合、経営方針などに関する意思決定が遅れる可能性があります。その結果、経営戦略の策定や実施などがスムーズに行えず、業績の低下や低迷を招く可能性が出てくるでしょう。
また、生前の社長の存在は、従業員に限らず取引先や投資家などからも厚い信頼を寄せられていたはずです。社長がいなくなったことで、社外からの信頼にも影響し、取引先の減少などにつながる可能性もあります。
社長がいなくなったことにより、企業にはさまざまな影響が起こりうると考えられます。そのため、できるだけ早い段階で新たなリーダーを見つけ、交代を図ることが大切といえるでしょう。
社長死亡によって相続財産の対象となるもの・ならないもの

社長が死亡すると、その身内である家族が相続するもの・しないものにはどのようなものがあるのでしょうか。ここでは、相続するもの・しないものについてそれぞれ解説します。
【相続する】連帯保証人の地位
金融機関から借入金がある場合、会社の社長が連帯保証人になっていることが多いです。このような場合は連帯債務が生じることから、相続の対象となります。ただし、マイナスの財産になるため、相続する際は借金ができる、あるいは増える点に注意しましょう。
【相続する】会社への貸付金
スモールビジネスなどの場合、社長が会社に資金を貸すケースが少なくありません。会社に対する貸付金は社長個人の資産から貸し付けを行っているため、相続財産の対象です。社長が死去した場合、身内である相続人は会社に対して返済を求めることができます。ただし、返済を求められても、すぐに返金する義務は会社側にありません。返済されるまでには、ある程度期間が掛かる可能性があることを念頭に置きましょう。
【相続しない】会社保有の財産
会社が保有する財産は会社の財産です。社長が死去したとしても、会社保有の不動産や資金などは相続できないので注意しましょう。また、社長が死去した場合であっても財産に影響はなく、会社はそのまま保有できます。
社長が死亡したときの社内での手続き|登記・株式の相続など
社長が死亡した場合は、社内でさまざまな手続きを進める必要があります。具体的には以下の通りです。
- 後任の選任
- 代表取締役の変更手続き
- 株式の相続
- 会社解散の手続き
これらの手続きが遅れてしまうと、会社の存続や業務に対して大きな影響を与えかねません。それぞれの概要を押さえ、順を追って進めていきましょう。
後任の選任
社長が亡くなった場合「死亡による退任」という扱いになります。そのため、社長が死亡した後は次の代表者を探さなければなりません。
会社と同様に代表権は相続ではなく、企業の定款に則って選出する必要があります。株主総会または取締役会の決議のほか、取締役同士の話し合いなどで次の代表者を選出しましょう。
後任がいない場合
後任の代表取締役が選出できない場合は、裁判所に申し立てを行い、暫定的な代表者を選出してもらいます。どうしても経営が難しいときは、解散を検討することも選択肢の一つです。
代表取締役の変更手続き
代表取締役の選出が終わった後は、法務局で登記手続きを行います。登記は法律で定められており、代表取締役に変更があったときは、変更日から2週間以内に申請しなければなりません。ただし、期間を過ぎてから申請すると、代表者個人に対し100万円以下の過料を求められる可能性があるので注意しましょう。
また、変更手続きでは以下の書類を用意する必要があるので、漏れのないよう準備しておくことをおすすめします。
- 登記申請書
- 株主総会議事録
- 代表取締役就任承諾書(新規作成)
- 社長の死亡届
- 新代表取締役として選出された人の印鑑証明書
- 定款の写し
なお、定款の写しについては、代表取締役の選出方法が定款で定められている場合に限ります。定款を認証した公証役場にて写しを取得しましょう。
株式の相続
社長が死亡し、会社の株式を所有していた場合は、社長が保有する会社株式の相続手続きも行います。遺言書が存在し、会社株式について記載がある場合は、内容に則った手続きをしましょう。遺言書がないときは、相続人全員で遺産分割協議を行い、株式の相続について話し合いをしてください。
なお、相続によって株主を分散させると、経営者の意思が事業に反映しにくくなり、意思決定が難しくなったり、遅れたりする可能性があります。
安定的な経営を維持したいのであれば、後継者である相続人が株式の全て、あるいは過半数を相続すると良いでしょう。
解散(廃業)の手続き
次の代表取締役にふさわしい人材がいないときや、事業の継続が難しいときは、会社を解散することも方法のひとつです。会社を解散する場合は、株主総会で特別決議を行い、過半数の賛成を得た清算人によって会社を解散する手続きを行います。
清算人に資格などは必要ないので、相続放棄をした人でも問題ありません。なお、相続と会社の解散手続きはまったく異なる手続きです。解散には専門知識が必要になるため、税理士や弁護士といった専門家と相談して決めることをおすすめします。
個人事業主が死亡した場合の事業承継や相続について

個人事業主が死亡した場合であっても、企業の社長と同様に相続の手続きや事業継承が必要です。過去に個人事業主として事業を営んでいなかった人が継承する場合は、以下の書類を提出します。
- 開業届出書
- 所得税の青色申告承認申請書
なお、事業を継承する前からすでに個人事業主として事業を営んでおり、すでに青色申告である人は、青色申告承認申請書の提出は不要です。また、継承する事業の屋号や商号を変えたいときは、開業届出書に新たな屋号・商号を記載することで変更できます。
相続の流れや資産の確認などは、企業の社長が死亡したケースと大きな違いはありません。ただし、個人事業主の場合、企業の社長と異なり財産調査が難しいケースも多いです。資産状況について詳しく調べたいときは、行政書士などに頼むとスムーズに進められるでしょう。
必要な手続きややるべきことを押さえておこう
社長の死亡によっては社内外に大きな影響を与え、経営が危ぶまれる可能性があります。そのようなときはできるだけ早いうちに新たな代表取締役を選出し、適切な手続きを進めることが大切です。
社内外への連絡はもちろん、後任の選出や登記手続きを円滑に進めることで、会社の運営を安定させることができるでしょう。
また、社長の万が一に備え、事業承継の計画は確実に進め、後継者を早期に選出しておくことをおすすめします。会社の相続や事業承継についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。









