個人事業主をはじめとした経営者の中には、資金繰りに悩むときもあるでしょう。資金繰りが苦しいときは、その原因を追求し、改善を図りながら適切な方法を用いて対策することが大切です。この記事では資金繰りが苦しくなる原因とやってはいけない行動、改善策について解説します。現在、資金繰りに悩み、倒産や廃業を視野に入れている方は、本記事で適切な方法を見つけ、立て直しを図りましょう。
目次
緊急時の資金繰りに有効な方法

まずは資金繰りが苦しく、それでも緊急で資金を用意しなければならないときに有効な方法をご紹介します。緊急時の資金繰りの際に有効な方法は下記の通りです。
- クラウドファンディング
- 補助金・助成金
- ファクタリング
- 株式発行
- 事業譲渡
いずれも返済しなくても良い方法に該当しますが、利用にあたっては条件の達成や対応した業種であるかを確認しなければなりません。例えばファクタリングは、請求書をファクタリング業者に買い取ってもらい資金調達する方法ですが、業種によっては対応不可となることもあります。また、利用に際しては手数料が発生することが基本ですが、業者によっては法外な手数料を請求するケースもあるようです。
あくまで緊急時の資金繰りに有効な方法なので、今すぐになんとかしたいといった方は、以下の記事を参考にしてください。
資金繰りが苦しくなる9つの原因
資金繰りが苦しくなる原因は、事業規模や業種などによって大きく異なります。しかし一般的には、以下のような原因で苦しくなることが多いです。
- 赤字経営が続いている
- 売掛金の回収が遅れている
- 売上の増減
- 在庫管理の煩雑化
- 資金繰りの管理ができていない
- 取引先の倒産
- 経営計画の不備
- 無駄な経費・出費が多い
- 不適切な投資・資産運用の失敗
上項で解説した緊急時に有効な資金繰りの方法を試したとしても、一時的な解決にしかならないでしょう。ここでは上記9つの原因について詳しく解説するので、なぜ資金繰りが苦しいのかその理由を見つけ、改善につなげましょう。
1.赤字経営が続いている
赤字経営とは、企業の収入が経費を下回った状態で経営していることです。長期に及ぶ赤字経営であれば、手元にあった資金が底をついてしまい資金繰りに苦しむことがあります。銀行から融資を受けられるのであれば、倒産リスクを防ぐことができるでしょう。しかし、すでに融資を受けていて、資金繰りの悪化により返済が滞っているのであれば、追加融資は難しいため別の方法を考える必要があります。
2.売掛金の回収が遅れている
売掛金の回収が遅れている場合も、資金繰りに苦しむことがあります。例え売上はあっても、回収できる代金が手元にないのであれば、それは自社に現金がない状態です。このような状態が続くと黒字倒産に陥る可能性もあります。売掛金が支払われるかどうかについては、取引先の経営状態によって左右されやすいものです。支払いが遅れたり何度も続いたりする場合は、別の取引先を探す・増やすことも検討しましょう。
3.急激な売上の増減
売上は増減しますが、あまりにも急激だと資金繰りに影響します。自社都合に限らず、取引先の事情などもあることから、売上が減少傾向にあっても経営不振を防ぐため、資産などを確保しておくと安心です。
また、売上が急激に増えた場合も、仕入などが増えることになれば支出も増えることになるでしょう。急激な売上増が見込まれていても、仕入分を支払うタイミングによっては、資金繰りに苦しむことも少なくありません。
売上が急激に変動するような大口の取引の際は、支出が増えることを想定し、慎重に検討することをおすすめします。
4.在庫管理の煩雑化
在庫を過剰に抱えることは資金が滞る原因となり、場合によっては資金繰りが苦しくなる可能性があります。売上につながる商品を保有しておくことは大切ではありますが、行き過ぎた在庫管理は逆効果です。在庫が増えるほど注文した商品に対する支出となり、結果的に必要な運転資金が不足し、経営困難を招きます。
5.資金繰りの管理ができていない
資金繰りの管理ができていないことも、苦しくさせる原因のひとつです。例えば利益に見合わない株主配当や役員報酬があると、キャッシュフローの悪化を招くことがあります。気付けば資金がないということにならないよう、配当金や報酬は定期的に見直しを図り、資金の確保や温存に努めましょう。
6.取引先の倒産
自社都合ではありませんが、取引先が倒産したことで資金繰りが苦しくなることもあります。売掛金の支払いが遅れたり、数回に分けて支払われたりするようなことがあるときは注意が必要です。貸し倒れの状態が続けば、自社の倒産リスクも上がります。取引に不安があるときは、断る勇気や別の取引先を探す行動が必要と言えるでしょう。
7.不明確な経営計画
経営計画が不明確である場合、事業方針が定まらず資金繰りに苦しむ可能性があります。計画に基づく予測が曖昧だと、変動する売上に対して柔軟な対応ができず、資金ショートを引き起こしかねません。また、社内で経費の管理が徹底されていない場合も不必要な支出を招きやすく、資金繰りが厳しくなることもあります。
経営計画は事業運営の土台となるため、経営者は明確に策定し、継続的に運用・改善を行う姿勢を心がけましょう。
8.無駄な経費・出費が多い
過剰な人件費や不要な広告費、維持費がかかる契約など、無駄な経費・出費が多いと資金繰りに苦しみやすいです。無駄な出費を放置しておくと、利益を確保していても実際のキャッシュフローが悪化し、経営の健全性を損なうリスクがあります。
無駄な経費を減らし資金繰りを改善するためには、過去の帳簿や領収書の管理・精査が欠かせません。そうすることで必要な支出と不要な支出を明確に分けることができます。
9.不適切な投資・資産運用の失敗
不適切な投資や資産運用によって資金繰りが苦しくなることもあります。例えばリターンを期待して行った投資が期待外れな結果となり、元本すら回収できないなどです。このような事態が頻繁に起これば、事業資金が圧迫されかねません。
資産運用や投資を始める際は十分なリサーチを行い、リスクを最小限に抑える工夫が大切です。特に、景気が悪化している時期の投資は、焦りや過剰な期待から難しい判断を下す可能性もあります。結果的に事業資金や個人資産が大きく失われる危険性があるので、世界情勢や市場の動きを入念に調べ、その上で投資を行うよう注意しましょう。
苦しい資金繰りを改善させる8つの方法

資金繰りが苦しい場合、さまざまな理由が複雑に絡んでいるケースが多いです。自社都合に限らず取引先の問題もありますが、資金繰りを改善させたいのであれば下記の方法を参考にすることをおすすめします。
- 現金の流れを把握する
- 売掛債権は早期に回収する
- 在庫管理を徹底する
- 仕入・買掛金支払いの見直しを図る
- 経費や運用コストを見直す
- 遊休資産や余剰在庫を売却する
- 補助金や助成金を活用する
- 金融機関からの融資やリスケジュールを試みる
具体的にどのようなことなのか、さっそく見ていきましょう。
現金の流れを把握する
まずは手元に残っている資金の把握をしましょう。現在どのくらいの資金があり、今月のどこで支出入があり、どの程度残るかまで計算することで、資金繰りに悩むタイミングを予想できます。資金調達を検討中であれば、資金繰り表の作成も効果的です。
資金繰り表は事業資金の収支について表にしたもので、過去の実績と将来の資金繰りの2種類の方法で作成します。資金繰りに悩みたくないのであれば2種類作成し、最低でも3か月ほど続けることで資金ショートの防止につなげられるでしょう。
売掛債権は早期に回収する
売掛債権があるのであれば、早期回収を目指すことも改善の近道です。取引先の都合によっては、スムーズにいかないこともあるでしょう。特に、懇意にしていた取引先や古くからの付き合いがある場合、なかなか言い出せないこともあるかもしれません。
しかし、自社の経営状況は資金繰りに苦しむほど悪化しているかもしれません。取引先の情報を集め状況を把握したり、売掛限度額の設定を見直したりするなど、なんらかの対策を講じることを検討しましょう。
在庫管理を徹底する
取り扱う商品によっては、廃棄や保管場所の確保に対してコストが発生している可能性があります。在庫を過剰に保管していることが考えられるのであれば、棚卸し作業を行い不要なものを手放しましょう。
商品数が多いときは、バーコードで一括管理できるシステムなどを使い、販売期限や在庫数をチェックして廃棄・保管を選ぶとスムーズです。理想の在庫数との差異が明らかになるので、原因追及にもつなげられます。不要な商品はオークションを活用することで、まとまった資金確保に期待できるでしょう。
仕入・買掛金支払いの見直しを図る
仕入代金や買掛金支払いによる支出を見直すことも方法のひとつです。支払期限について取引先と交渉することで、支払の先延ばしが実現し、資金繰りが好転する可能性があります。しかし、取引先によっては交渉内容に納得しないこともあるかもしれません。可能であればこの機会に利益率の高い販売に絞ることで、状況の改善が見込まれるでしょう。
経費や運用コストを見直す
不要な支出を洗い出し、削減できるものを特定することも大切です。例えば、契約しているものの、ほとんど使用していない機器のレンタルサービスは解約するなどです。細かな支出を見直し解約するだけでも、件数が多いほどまとまった資金確保につなげられます。
この機会に節税対策について考えてみるのも有効です。税法上認められる範囲で控除や減税措置を利用することで、キャッシュフローの改善につながる場合もあります。
遊休資産や余剰在庫を売却する
事業には使われていない土地や機械などの遊休資産があれば、売却を検討するのも方法のひとつです。売却によって即座に現金を得られるので、会社の流動性を高めるきっかけにつながります。なお、土地や機械の売却を検討する際は、市場価値を調査し、適正価格を把握することで不要な損失を予防できます。
補助金や助成金の活用する
資金繰りが苦しいときは、国や地方自治体による補助金・助成金について調べてみましょう。経済状況の悪化によっては、各企業の経営基盤を維持するため、補助金や助成金が用意されることが多いです。
補助金や助成金についての情報収集を積極的に行うことで、資金調達の選択肢を広げられます。なお、利用には一定の条件を設けている場合が多いので、自社が該当しているかについては入念に調べることをおすすめします。
金融機関からの融資やリスケジュール
金融機関からの融資を検討したり、リスケジュールを利用したりする方法も効果的です。資金が不足している現状は倒産の可能性が潜むことから、早期になんらかの策を講じる必要があります。
資金繰りの改善は、状況も踏まえて考えると難しい課題と感じるかもしれません。しかし、多くの金融機関は、事業の継続支援に前向きです。会計士や税理士などの専門家からアドバイスを受けることで、金融機関から理解や協力が得やすくなるでしょう。
資金繰りが苦しいときにやってはいけない3つの行動

資金繰りが苦しい状況では、焦りによって普段では考えられない選択をする場合もあります。具体的には、下記の通りです。
消費者金融や高利ローンの利用
資金繰りが苦しいときに、消費者金融や高金利ローンに手を出すことは危険です。短期間で現金を調達できる点はメリットですが、利息が非常に高く設定されているため、返済負担が急増します。
一見すると迅速な解決策のように見えますが、返済が滞ればさらに高い金利が課され、自転車操業に陥る可能性も否めません。資金繰りが苦しいときこそ、現状を冷静に分析し、計画的かつ健全な資金管理を心掛けましょう。
融通手形の使用
資金繰りに苦しいときほど、融通手形は避けるべき方法のひとつです。融通手形は現金を簡単に確保できる方法に見えますが、銀行取引停止処分が下され、事実上の倒産状態を迎える可能性など、高いリスクがあります。
また、手形の裏書きや契約には煩雑な手続きが伴うほか、不渡りが発生すると会社全体に悪影響を及ぼす場合もあるでしょう。複数回の不渡りが起これば会社の信用が失墜するため、資金繰りに苦しいときほど避けるべき方法と言えます。
税金や社会保険料の滞納
税金や社会保険料の支払いを後回しにすると、遅延損害金が発生するほか、強制執行などの厳しい法的措置に発展する可能性があります。税務署や社会保険事務所との信頼関係を失い、将来的な資金調達や融資、補助金の申請が厳しくなるリスクも少なくありません。
資金繰りにお悩みの方はプロにご相談を
資金繰りを改善するには、長期的な視点で経営計画や資金繰り表を見直し、徹底した在庫管理や経費削減を行う姿勢が必要です。資金繰りにお悩みの方や資金調達の相談をしたい方は、この機会に「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。









