ライバル企業が多い中、自社が生き残るためには、企業努力が欠かせません。その際、必要となる方法が経営分析と財務分析です。経営分析は自社の経営状況を分析し、将来的な経営計画の発案に活かす方法を指します。一方、財務分析は財務状況を定量的に分析する方法です。簡単に述べると、経営分析の中に財務分析を含むイメージです。この記事では、経営分析と財務分析の概要と役割、違いについて解説します。安定的な経営を維持し競合他社との差を付けるため、どのような項目を使って分析すれば良いのかを押さえておきましょう。
目次
経営分析と財務分析の概要

経営分析と財務分析は非常に似た言葉ですが、特徴や役割が異なります。ここでは経営分析と財務分析の特徴について解説するので、まずはそれぞれの概要を押さえておきましょう。
経営分析の特徴
経営分析は、企業の経営にまつわるさまざまなデータを可視化させ、誰でも理解・分析できるよう客観的に表す方法です。経営比較分析表をはじめ、キャッシュフロー計算書や損益計算書、競合他社の動向や市場シェア率などを使用します。あらゆるデータを使用することから、経営のノウハウやスキルを持っていない人でも生存計画の発案がしやすくなります。
財務分析の特徴
財務分析は、企業の経済状況を評価するための方法です。例えば財務諸表のデータ分析によって企業の収益性や流動性、安全性などの指標を評価できます。資本構成や流動比率、自己資本比率などを分析することで、財務リスクや資金繰りの健全性についても調べることが可能です。例えば自己資本比率を20%から30%に引き上げる企業努力を実施した際、その過程を財務分析することで投資家に自社の信頼性をアピールできます。
経営分析と財務分析の違い
経営分析と財務分析の違いは、経営分析は広範囲の項目から企業全体を把握する役割を持ち、財務分析は自社の財務状況を分析するという点です。例えば経営分析の場合、市場環境や内部資源の分析のほか、競合他社との差別化ポイントを発見するなどがあります。一口にどの項目を分析するという概念はなく、広い視野で企業の立ち位置を把握し、経営につなげる点が特徴です。
一方、財務分析は企業の財務に関する分析を指すことから、対象が限定的です。資金繰りやコスト管理の把握などを通じて、企業の財務状況がどのような状態であるかを判断する際に役立ちます。自社の経営状態や競合との差などを総合的に把握したいのであれば、経営分析と財務分析の双方を活用することが大切と言えるでしょう。
経営分析と財務分析|活用のメリット
経営分析と財務分析を活用するにあたっては、どのようなメリットがあるのでしょうか。具体的には下記の通りです。
- 自社の強み・弱みを客観的に把握できる
- 経営の見直しに役立つ
- 外部からの投資判断の後押しになる
- 資金調達に活用できる
経営分析や財務分析では、自社の売上高や利益などをはじめ、競合他社の動きや市場での立ち位置などを使い、総合的に判断します。そのため、どの分野で収益を上げていて、今後はどのような経営が必要であるかを客観的に分析することが可能です。また、財務分析を行うことで、正確な分析結果により、投資家などからの資金調達にも活用できます。
経営分析と財務分析のそれぞれを活用することで、数字では判断できない自社の強みや弱みを見つけられるのはメリットと言えるでしょう。
経営分析・財務分析に用いられる手法

広範囲を対象とした経営分析のうちに財務分析が含まれることから、双方を活用する場合は共通した項目を見る必要があります。具体的には下記の通りです。
- 収益性分析
- 安全性分析
- 生産性分析
- 成長性分析
ここでは、それぞれに共通する手法の概要について解説します。
安全性分析:支払い能力の確認
安全性分析は、企業がどれだけの負債を抱え、支払い能力があるかを評価する手法です。具体的には、流動比率や自己資本比率といった財務諸表分析の指標が用いられます。流動比率は流動資産を流動負債で割ったもので、この比率が1以上であれば、企業が短期的な支払い能力を有していると判断します。
一方、自己資本比率は自己資本が総資産に占める割合を表し、数値が高ければ高いほど企業の財務の安定性や健全性が高いと評価できます。
収益性分析:利益率の測定
収益性分析は、企業がどれだけ効率よく利益を上げているかを判断するための手法です。収益性分析では売上総利益率や営業利益率、純利益率といった指標を使用します。売上総利益率は、売上高から売上原価を差し引いた額を売上高で割ることで求めることが可能です。数値が高いほど効率的に利益が確保できていると判断できます。
営業利益率は営業活動から得られる利益を示し、業務運営の効率性を評価する際に有効です。売上総利益率や営業利益率などの指標を用いることで自社の改善点を特定し、競争力強化に効果的な対策を講じることができます。
成長性分析:企業成長の予測
成長性分析は、企業の将来の成長を予測するために用いられる手法です。売上高の成長率や利益の成長率が指標に該当し、財務会計や財務諸表分析によって企業の収益性や資金繰りの健全性を把握できます。過去数年間の成長データを基に、企業が持続的な成長を維持できるかを評価することで、将来の投資や資源配分の判断材料として役立ちます。
生産性分析:経営資源の効率性
生産性分析は、企業がどれだけ効率的に経営資源を活用できているかを評価するための指標です。人時生産性や資本生産性などが指標にあたり、従業員一人あたりの売上高や資本投資に対する利益を測定します。
損益計算書や貸借対照表などの使用により経済的な効率性や資本の運用状況を検証でき、生産性に紐付く経営判断をより詳細に行うことが可能です。
活動性分析:資本活用の程度
活動性分析は、企業が資本や売上債権、棚卸し資産などの運転資本の回転率を示す手法です。主に総資産回転率や売上債権回転率が指標にあたり、財務諸表分析の一環として企業の効率性を評価するために用いられます。
総資産回転率は総売上高を総資産で割った数字で、企業が保有する資産を使ってどれだけの売上を出しているかを測定します。一方、売上債権回転率は売上高を売上債権で割った数字で、取引先からの収益をどれだけ迅速に回収できているかを確認できます。複数の指標を用いることで、企業が資本をどのように運用し、経営資源を最大限に活用しているかを把握可能です。
経営分析や財務分析では使用する指標が複数あり、困惑することも少なくありません。スムーズかつ適切な経営分析を行いたいのであれば、税理士や会計士に依頼することをおすすめします。
経営分析と財務分析を最大限に活用するためのポイント

経営分析や財務分析を最大限に活用するには、信頼性の高いデータの収集と整理が欠かせません。ここでは、経営分析と財務分析を活用するポイントを3つ解説します。
正確なデータ収集と管理
財務諸表や内部データを正確に集めることは、分析結果の信頼性を高めることにつながります。財務諸表をはじめとした各表に入力・計算のミスがないよう、日頃から管理を徹底させることがポイントです。企業規模が大きいほど取り扱うデータ量も増え、管理が複雑化する場合があります。経営分析を行うことを前提に、データは活用しやすいようシステムを使って管理するのもおすすめです。
自社に適した分析手法を選定
経営分析には財務分析をはじめ、さまざまな手法や指標があります。最大限に活用するためには、自社に適した方法を選ぶこともポイントのひとつです。自社データを闇雲に分析するだけでは適切な分析はできません。分析する目的を明確にしてから手法を選ぶと、スムーズかつ適切な分析を可能にします。
ツールの活用
手動での経営分析は、時間や労力がかかることに加え、人為的ミスによって正確さを損なう可能性もあります。そのため、さまざまなツールを活用し、情報の収集・分析・判断を自動化させるのもおすすめです。ツールの導入にはIT補助金の活用も視野に入れることで、費用を抑えながら業務の効率化につなげることができるでしょう。
経営分析と財務分析のまとめ
経営分析と財務分析は、企業の現状把握と将来の成長をサポートする手法です。経営分析の中に財務分析が含まれるイメージで、双方の併用によって経営課題の解決策を見出し、持続可能な成長を実現できます。とはいえ、さまざまなデータを使用することから、経営分析に慣れている人でも時間や労力が掛かります。経営分析によって自社の強み・弱みを把握し、経営戦略の策定につなげたい方は、この機会に「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。









