「税務調査は何月に入るのだろう?」と不安に思う方は少なくありません。実際には明確に決まった時期はないものの、国税庁の事務年度や決算期、さらには確定申告のスケジュールなどが影響し、調査が入りやすいタイミングは存在します。本記事では、法人や個人事業主が調査を受けやすい時期、通知の流れ、調査対象となりやすい事業者の特徴などをわかりやすく解説します。税務調査の時期に不安がある方は最後までご覧ください。
目次
税務調査が入りやすい時期は何月?

税務調査には「必ずこの月に行われる」という明確な決まりはなく、年間を通じて実施されますが、7月〜11月にかけて調査が活発化する傾向にあります。
その背景には税務署の事務年度の違いがあります。
一般的な官公庁は4月から翌年3月を年度としますが、税務署は7月から翌年6月であり、7月10日に人事異動があるため、新任担当者が着任して調査を本格化させることで、この時期に調査が集中しやすくなるのです。
法人の税務調査が入りやすい時期は何月?
法人に対する税務調査は年間を通して実施されますが、決算月によって調査が集中しやすい時期があります。特に、国税の事務年度や人事異動の影響を受けるため、決算直後の法人が重点的に対象となる傾向があります。
決算月ごとに、税務調査が入りやすい時期を解説します。
決算月が2〜5月の法人は7〜12月に多い
決算が2〜5月にある法人は、7〜12月に税務調査を受けやすい傾向があります。
国税の事務年度は7月から始まり、上期(7〜12月)の調査対象として、直近で決算を終えた法人が優先的に選ばれるためです。
さらに、7月10日には税務署の人事異動が行われ、新任担当者が着任して調査を本格化させるため、夏から秋にかけては調査件数が一気に増加します。
上期の調査は翌年6月までに完了させる必要があるため、期間が限られる分、調査が集中しやすく、調査内容も厳しくなる傾向にあります。
決算月が6月〜翌年1月の法人は1〜6月に多い
決算が6月〜翌年1月にある法人は、翌年1〜6月に税務調査を受けやすい傾向にあります。国税の事務年度の下期(1〜6月)は、直近で決算を終えた法人を対象に調査が行われるためです。
1〜3月は個人の確定申告や年度末業務が重なるため、税務署職員が多忙で調査件数は減少する一方、4〜6月は法人調査に人員を割きやすくなるため、調査が重点的に実施される傾向があります。
特に6月決算の会社は、決算内容を確認する調査が翌年1〜6月に集中するケースが多く見られます。
個人事業主の税務調査が入りやすい時期は何月?
個人事業主に対する税務調査も、法人と同じく年間を通じて行われますが、申告手続きの流れや税務署の業務状況によって、特に調査が集中しやすい時期があります。
確定申告後の4〜5月に多い
個人事業主の場合、確定申告を終えた直後の4〜5月に税務調査が多く行われます。これは、提出された申告書を税務署が精査するタイミングにあたり、数値の不整合や不自然な経費計上が見つかると優先的に対象とされるためです。
税務調査はどのくらいの頻度で来るのか?

国税庁の「令和5年度税務行政の現状と課題」によると、税務署が実際に訪問して行う実地調査(実調率)は法人で1.7%、個人で0.7%でした。これを単純に平均化すると、法人は約60年に1回、個人は約140年に1回程度の割合に相当します。
数値だけを見れば頻度は低いように感じられますが、調査は無作為ではなく、必要性が高いと判断された事業者を重点的に対象とするため、「自分は当たらない」と考えるのは危険であり、常に正確な申告と帳簿管理を徹底しましょう。
税務調査の通知が届くタイミング
税務調査は突然行われるわけではなく、通常は事前に通知があります。調査実施のおおよそ1〜3週間前に電話や書面で通知され、日程は事業者との調整を経て確定します。そのため、帳簿や領収書、契約書など必要な資料を事前に準備する時間が確保できます。
ただし、無申告や悪質な不正が強く疑われる場合には、例外的に事前通知なしの臨場調査(いわゆる「ガサ入れ」)が実施されるケースもあるので注意しましょう。
税務調査に入られやすい事業者のポイント10選

税務調査は無作為に行われるのではなく、過去の申告内容や経理処理の状況を踏まえ、リスクが高いと判断された事業者を重点的に対象とします。特に調査を受けやすいとされるポイント10選をご紹介します。
確定申告をしなかった
必要があるにもかかわらず確定申告を行わなかった場合、税務署は調査対象とします。
未申告は脱税の疑いが濃く、ペナルティや追徴課税のリスクが高い行為です。特にフリーランスや個人事業主で複数年申告を怠った場合は典型例とされ、銀行口座や取引記録まで徹底的に調べられる傾向があるので注意しましょう。
売上を除外・期ズレ処理を行う
売上を意図的に除外したり翌期に回す「期ズレ処理」は、税務調査で最も厳しく確認されるポイントです。
納品日や入金日と帳簿の計上時期が一致していない場合、不正な所得隠しと判断されやすく、優先的に調査対象になります。現金取引の多い業種や売上が急増している事業者は特に注意しましょう。
参考:法人税の重加算税の取扱いについて(事務運営指針)|国税庁
売上高1,000万円をわずかに下回っている
売上が消費税課税の基準である1,000万円をわずかに下回る場合、税務署は「課税回避のための操作ではないか」と疑います。
毎年950万円前後で推移していると、売上除外の可能性があると判断され、調査対象となる傾向にあります。
売上が急増している
短期間で売上が急激に増加している法人や個人事業主は、調査対象に選ばれやすい傾向にあります。
売上が増えているのに利益が伸びていない場合には、架空経費や売上除外の可能性を疑われ、重点的に確認を受けやすいです。
利益率を不自然に低くする
売上が増えているのに利益が伸びない、あるいは同業他社と比べて利益率が極端に低い場合、税務署は「不自然」と判断します。
調査官は業種別統計や利益率の標準値と比較するため、数値に矛盾があるとすぐに目をつけられるため、意図的でなくても調査対象となりやすいです。
架空の経費を計上する
存在しない仕入や外注費を計上して所得を圧縮する行為は、税務調査で否認されやすい典型例です。
領収書や契約書などの証拠がない場合はもちろん、事実と異なる請求書や白紙領収書を用いている場合も「架空経費」と判断されます。
こうした不正は多額の追徴課税や重加算税の対象となるリスクが高く、国税庁も不正情報例として明示しています。
私的費用を経費に含める
交際費や車両費、旅費交通費など、本来はプライベートな支出を経費に含めると、税務調査で否認されます。
領収書に利用目的が記載されていない場合や、業務使用と私用の区分が不明確な場合は特に問題視されるため注意しましょう。
資産を経費に計上している
本来は資産計上すべきパソコンや機械設備、修繕費に当たる支出を、消耗品や経費として処理している場合も調査官に注目されやすいです。
耐用年数や資産性を無視した処理は、意図的な経費水増しと判断されやすく、税務調査のリスクを高める要因となります。
過去に税務調査で追徴課税を支払った
過去の調査で税金を納めた経験がある事業者は、その後の改善状況を確認するため再調査の対象となりやすいです。
同じ問題が繰り返されると判断されれば、重点的にチェックされ、再度追徴課税を受けるリスクも高まります。
長期間調査を受けていない
公平性の観点から、長期間税務調査を受けていない事業者も調査対象に選ばれやすいです。
例えば10年以上未調査の場合、「不備や見落としが隠れている可能性がある」と見られ、申告内容や帳簿の正確性を確認されるケースが少なくありません。
税務調査の時期に不安がある方は専門家に相談
税務調査は必ず決まった時期に行われるものではなく、申告漏れや売上の急増、利益率の不自然さなどによって、思いがけないタイミングで対象となる場合があります。
特に、過去に調査で追徴課税を受けた事業者や、長期間調査を受けていない事業者は重点的に確認されやすく、突然の調査で慌てれば高額な追徴課税に直結しかねません。こうしたリスクを回避するには、専門家に相談して事前にチェックを受けておくことをおすすめします。
小谷野税理士法人では、豊富な調査対応実績を持つ税理士が、事前準備から当日の立ち会い、調査後のフォローまで一貫してサポートします。税務調査の時期や対応に不安を感じている方は、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。











