資金調達が必要な場合、まず頭に思い浮かぶのが金融機関からの融資ではないでしょうか。実は、この金融機関からの融資には大きく分けて2種類あり、審査が厳しい代わりに大きなメリットもあるのがプロパー融資です。そこで、今回はプロパー融資に関する基礎知識について、金利やメリット・デメリットなども踏まえながら詳しく解説していきます。
目次
プロパー融資とは?
一般的に、銀行から融資を受ける際には「信用保証協会による保証付き融資」を利用する場合がほとんどです。信用保証協会の保証が付いていれば、もし返済が滞った場合に銀行が負う貸し倒れのリスクを抑えることができます。
一方、プロパー融資の場合は信用保証協会による保証がないため、銀行側が貸し倒れのリスクを100%負う形になります。そのため、特に信用度の高い企業でなければプロパー融資を利用することは困難といえるでしょう。しかし、審査が厳しい反面、プロパー融資を利用することができればさまざまなメリットを享受することができます。まずは信用保証協会による保証融資にて実績を作り、その後プロパー融資を受けられるようになることが一般的です。
プロパー融資のメリット
融資限度額がない
プロパー融資のメリットとしては、まず融資額に上限がないことが挙げられます。審査を通過する必要はありますが、事業計画の内容に合理性があり、企業の財務状況が優良であれば上限なく融資を受けることが可能です。企業の事業拡大や新規事業立ち上げ、大規模なプロジェクトなどを実施するためには、多額の資金調達が必要となります。そのような場合にプロパー融資を受けることができれば、必要経費の全額を融資してもらえるかもしれません。事業を拡大していきたい企業にとって、融資限度額がないプロパー融資は非常に魅力的だといえるでしょう。
金利が低く設定されている
プロパー融資は、信用保証協会による保証付き融資と比較して、金利が低く設定されていることもメリットのひとつです。上述のとおり、プロパー融資は銀行が負う貸し倒れのリスクが大きいため、信用度の高い企業しか受けることができません。一般的に、金利は申込人の信用度に応じて設定されるため、プロパー融資の審査を通過できるほど信用度の高い企業であれば、低金利で融資を受けられるというわけです。
保証料が必要ない
信用保証協会による保証付き融資を受ける場合、プロパー融資よりも審査を通過しやすい代わりに保証料を支払う必要があります。信用保証協会への保証料は融資額の0.45~2.20%程度となっており、融資額に応じて保証料の負担も大きくなるという仕組みです。一方、プロパー融資は銀行との直接取引となっているため、保証料を支払う必要はありません。低金利で融資を受けられることに加え、保証料も不要で借り入れコストを抑えられるという点は、大きなメリットであるといえるでしょう。
企業の信用度が上がる
通常よりも審査の厳しいプロパー融資を受けられるということは、それだけ信用度の高い企業であるという証明にもなります。企業の信用度が上昇すれば、取引先との契約にも良い影響を及ぼし、他の金融機関からの融資を希望する場合にも有利に働くでしょう。プロパー融資は好条件で融資を受けられることに加え、企業のブランディングにもつながるというメリットがあります。
審査日数が短く設定されている
プロパー融資は、銀行の融資のなかでは審査日数が短いというメリットがあります。信用保証協会による保証付き融資では、銀行での審査に加えて信用保証協会の審査にも通過しなければなりません。そのため、どうしても審査完了に日数を要してしまいます。しかし、銀行と直接取引を行うプロパー融資であれば、短期間で審査を終えることが可能というわけです。
一般的に、無担保の場合は2~3週間、担保ありの場合は1か月程度で審査が完了します。また、取引実績のある企業であれば、1~2週間程度で審査結果が出る場合もあるようです。資金調達を急いでいる場合にも、プロパー融資は魅力的だといえるでしょう。
プロパー融資のデメリット
返済期間が短く設定される傾向がある
プロパー融資は銀行の貸し倒れのリスクが大きいため、返済期間が短く設定される傾向にあります。プロパー融資は経営状況の優良な企業しか受けられませんが、長期の返済期間を設定してしまうと、返済期間中に経営状況が悪化してしまう可能性があるからです。ただし、プロパー融資を受ける銀行との信頼関係によっては、長期の返済期間が認められるケースもあります。より良い条件でプロパー融資を受けられるよう、日頃から銀行と良好な関係を深めておくことが重要といえるでしょう。
審査が厳しいので経営が不安定だと難しい
プロパー融資を受けるために超えなければならない最も大きな壁が、厳しい審査です。何度もいうようにプロパー融資は銀行側のリスクが高いため、企業の事業計画や財務状況、返済計画の妥当性などを厳しくチェックされます。そのため、創業間もない企業や経営状況が不安定な企業は、プロパー融資を受けることが困難です。プロパー融資を受けたい場合、まずは信用保証協会による保証付き融資などを利用し、銀行との信頼関係を深めていきましょう。
プロパー融資の金利はどれくらい?
プロパー融資を利用するメリットとして、低金利で融資を受けられることを述べました。では、具体的にどれくらいの金利が設定されているのでしょうか。
一般的に、信用保証協会による保証付き融資の場合、1.5~3%程度の金利が設定されます。対して、プロパー融資の金利は1~3%程度といわれており、企業の信用度によっては1%以下の超低金利で融資を受けられる場合もあるようです。
プロパー融資では、申し込みをした企業の事業計画や財務状況などを審査したうえで、貸し倒れのリスクが低いと判断されれば、低金利で融資を受けることが可能です。なるべく低金利で融資を受けられるよう、日頃から信用度を高める努力を行っていきましょう。
プロパー融資の審査基準
融資希望額の金額
プロパー融資の審査基準は銀行によって異なりますが、ここでは一般的に重要とされる基準についてご紹介します。
まず、プロパー融資では融資希望額と、その資金用途が重要です。企業の経営状態や事業計画に対し、融資希望額は適切であるかといったポイントを審査します。ここで必要以上の融資を希望していると判断されると、審査で不利となってしまうため注意が必要です。赤字の補填や債務の弁済に利用されると判断されないよう、融資希望額は慎重に検討するようにしましょう。
損益計算書の内容
プロパー融資は、財務状況が優良な企業でなければ利用することが困難です。損益計算書の内容を確認し、「赤字は出ていないか」「直近の決算は黒字であるか」などの点をチェックされます。
貸借対照表の資本増加傾向
プロパー融資の審査では、損益計算書のほかに貸借対照表も提出しなければなりません。貸借対照表では、企業の純資産や負債がどれくらいあるのかを確認します。損益計算書は直近1年分の損益を確認することができますが、貸借対照表では創業してからの資金の流れを確認することが可能です。このとき「創業時よりも資産が増加しているか」という点をチェックされます。順調に増加していれば問題ありませんが、創業時よりも資産が減少している場合にはマイナス要素となってしまうことに注意が必要です。
無理のない返済計画
プロパー融資では銀行が大きなリスクを負担するため、返済計画に実効性があるのかという点が審査において重視されます。収支のバランスはきちんと取れているのか、無理なく返済を行える計画内容になっているのかという点は厳しく審査されるでしょう。これらのポイントを把握しておけば、策定すべき返済計画の内容も見えてくるはずです。
プロパー融資を受けたいのであれば、少なくともこれらのポイントは抑える必要があります。少しでも審査を通過できる確率を上げられるよう、万全の状態で審査に臨みましょう。
プロパー融資を受ける際のポイント
先ず保証付融資を受けて実績を積み上げる
プロパー融資は企業の信用度が重視されることから、創業間もない企業が取引実績のない銀行で審査を通過することは困難です。では、プロパー融資を受けるためにはどのようなポイントに気を付ければいいのでしょうか。
何度か述べているように、信用保証協会による保証付き融資を利用し、銀行との信頼関係を構築していくことが重要です。返済実績をつくることで銀行からの信用度が高まれば、プロパー融資を受けられる可能性も高くなるでしょう。
売上及び利益を増加させる
返済実績をつくることと同時に、売上と利益を増加させることも重要です。返済実績ができたとしても、企業として成長していなければ銀行からの信用度を高めることはできません。信用保証協会による保証付き融資を活用することで、うまく事業を軌道に乗せることができれば、融資を有効活用して成長できる企業だと評価されやすくなるでしょう。
キャッシュフローをひとつの口座に集約する
プロパー融資を受けたいのであれば、利用したい銀行の口座にキャッシュフローを集約することも重要です。その銀行を事業に関するメインバンクとして利用することで、取引実績を積み上げることができます。また、銀行にとっても資金の流れを把握できるため、信頼関係を構築していくうえで重要なことだといえるでしょう。
決算書などの財務内容の改善対応を実施する
プロパー融資の審査では、損益計算書・貸借対照表などの決算書や、事業計画書の内容が大きな影響を及ぼします。そのため、これらの書類内容を確認し、財務状況の改善を図ることが重要です。売上・利益の増加はもちろんですが、不良在庫の処分や経費の見直しなど、負債の部分も改善していきましょう。
融資に強い税理士などの専門家に相談を行う
事業計画書や決算書の内容が重要であることを述べましたが、これらの見直しに不安がある方の多いのではないでしょうか。そのような場合は、融資に強い税理士などの専門家に相談することも有効な手段です。プロパー融資の利用を検討している企業であれば、既に顧問税理士などがついている場合も多いかもしれませんが、税理士にも得意分野があります。融資に強い税理士などに相談することができれば、どのような書類を作成すればいいのか、どのように経営状況を改善していけばいいのかについて、的確なアドバイスをくれるはずです。
プロパー融資の必要書類
プロパー融資の申し込みに必要な書類は銀行によって異なりますが、一般的に必要とされている書類は以下のとおりです。
- 事業計画書
会社概要や事業内容などを記載した書類です。プロパー融資の審査において、事業計画書の妥当性・合理性は厳しく審査されます。 - 資金繰り表
今後の事業で想定される、収支の一覧表を作成する必要があります。 - 決算報告書
直近1年間の収支状況がわかる書類を提出します。具体的には、損益計算書・貸借対照表・株主資本等変動計算書・キャッシュフロー計算書などが該当します。 - 商業登記簿謄本
法務局にて、会社の登記簿謄本(履歴事項全部証明書)を取得する必要があります。 - 月次試算表
決算書の内容を、月別に試算した書類のことを指します。 - 納税証明書
本店所在地を管轄する税務署にて取得し、未払いの税金がないことを証明します。 - 借入申込書
プロパー融資を利用する銀行所定の借入申込書に記入します。 - 銀行取引一覧表
取引をしている銀行ごとに、預金や借り入れ状況などまとめた一覧表を作成します。
これらの書類の提出を求められることが多くなっていますが、銀行によっては追加の書類が必要になる場合もあります。必要書類の内容が審査結果を大きく左右するため、事前準備はしっかり行っておきましょう。
プロパー融資を有効活用するなら専門家に相談を検討
今回は、プロパー融資に関する基礎知識や、メリット・デメリットなどについてご紹介してきました。通常の融資よりも審査は厳しくなってしまいますが、プロパー融資には大きなメリットがいくつもあります。これからプロパー融資を活用していきたいと考えている方は、融資に強い専門家への相談も検討してはいかがでしょうか。