人材確保に悩む事業主にとって、コストを抑えて採用できる制度があれば積極的に活用したいものです。実は、ハローワーク経由で人材を雇用すると、条件を満たせば助成金を受け取れる場合があります。本記事では、活用できる助成金制度の種類や概要、申請時の注意点について解説します。助成金を活かして採用負担を軽減したい方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
ハローワーク経由で雇用すると助成金がもらえる?

ハローワークを通じて人材を雇用した場合、一定の条件を満たせば国の助成金を受け取れる可能性があります。
就職が困難な方の雇用や、過疎地域での新規雇用などに対して支給され、支給額は数十万〜数百万円にのぼるケースもあります。
制度ごとに要件や手続きが異なりますが、採用コストを抑えたい事業主にとって有効な支援策のひとつと言えるでしょう。
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ハローワークを経由して雇用することで活用できる助成金制度
ハローワークを通じて採用活動を行うと、以下のような助成金を活用できる可能性があります。
助成金名 | 説明 |
トライアル雇用助成金 | 職業経験が乏しい求職者を試行的に短期間雇用する企業に対して支給される助成金。ハローワークの紹介で雇用した場合に限り、1人あたり最大15万円(3か月間)支給される。 |
特定求職者雇用開発助成金 | 高齢者や障害者、母子家庭の母など就職困難な人をハローワーク経由で常用雇用した場合に支給される助成金。支給額は最大で1人あたり240万円にのぼる。 |
地域雇用開発助成金 | 雇用機会の創出が必要な地域で新たに事業所を設置し、ハローワークを通じて労働者を雇用する企業に支給される助成金。最大で800万円(創業の場合は1,600万円)まで受給可能。 |
各助成金の詳細を解説します。
トライアル雇用助成金
項目 | 内容 |
対象事業主 | ハローワークを通じて就職困難者を雇用する中小企業等 |
対象労働者 | 職業経験が少ない、長期離職中、障害のある方など |
支給金額 | 月額40,000円(最大3ヵ月で12万円)※条件により加算あり |
申請の流れ | 求人票提出 → トライアル雇用契約 → 支給申請 → 支給決定 |
トライアル雇用助成金は、職業経験が少ない、長期間離職している、または障害のある求職者などを対象に、企業が試行的に雇用する場合に支給される制度です。
ハローワークを通じて紹介された求職者を原則3ヵ月間雇用することで、月額40,000円(最大12万円)が支給されます。また障害者など特定の条件を満たす場合は月額50,000円への加算も可能です。
採用前に対象者の確認や契約形態の調整が必要なため、しっかりと事前準備を行いましょう。
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特定求職者雇用開発助成金
項目 | 内容 |
対象事業主 | 常用雇用として対象者を雇用するすべての企業 |
対象労働者 | 高齢者、障害者、母子家庭の母など |
支給金額 | 60万円~最大240万円(助成区分による) |
申請の流れ | 雇用前に対象者か確認 → 雇用契約 → 所定書類提出 → 支給申請 |
特定求職者雇用開発助成金は、高齢者(60歳以上)、障害者、母子家庭の母など就職が困難とされる人材を、ハローワークの紹介を通じて常用雇用した企業に対して支給される助成金です。
支給額は対象者や事業規模により異なり、最大で1人あたり240万円にのぼります。採用前に対象者であることの確認が必要であり、雇用契約の内容や提出書類に不備があると不支給となるため、正確な対応が求められます。
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地域雇用開発助成金
項目 | 内容 |
対象事業主 | 対象地域に事業所を設置し、常用労働者を新たに雇い入れる企業 |
対象労働者 | 原則として制限なし(雇用保険適用対象) |
支給金額 | 50万円~800万円(創業の場合は1,600万円)(雇用人数に応じて) |
申請の流れ | 地域認定 → 計画申請 → 雇用開始 → 支給申請 → 支給決定 |
地域雇用開発助成金は、雇用機会の確保が求められる地域(過疎地・離島・被災地など)に事業所を新たに設置し、ハローワークを通じて労働者を雇用した企業に対して支給される制度です。
雇用した人数に応じて60万円〜最大800万円が支給されます。地域ごとの対象要件や事前の計画届提出が必要で、雇用保険適用労働者であることが基本条件になるので注意しましょう。
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ハローワークの助成金制度を活用すべき企業とは?

人材確保や育成に課題を抱える中小企業や地方企業にとって、ハローワーク経由の助成金制度は大きな支援となります。制度の特性を活かせる企業の特徴を以下に紹介します。
人材確保に悩んでいる中小企業・地方企業
人口減少や地域的な人材流出により、採用が難しい地方企業や中小企業では、助成金制度の活用が特に有効でしょう。
ハローワークを通じて採用した人材に対して一定の助成を受けられるため、採用コストを抑えつつ人材確保を進めることができます。常用雇用に対する支援制度も多く、経営基盤の安定にも繋がるでしょう。
未経験人材でもしっかり育成できる体制がある企業
トライアル雇用のように、職業経験が乏しい求職者を一時的に雇用する制度では、育成体制のある企業ほど恩恵を受けやすくなります。
未経験者を受け入れ、業務スキルを段階的に身につけさせる仕組みがある企業にとっては、助成金を活用しながら人材の戦力化を進める良い機会になるでしょう。
雇用の多様性に取り組む姿勢がある企業
高齢者、障害者、ひとり親家庭の母など、就職が難しい方々の雇用を積極的に進めている企業は、助成金の対象となりやすくなります。
多様な人材を受け入れる姿勢がある企業にとって、ハローワーク経由の雇用は経済的支援と社会的意義の両立が可能です。制度を活かすことで、企業の社会的評価向上にも繋がるでしょう。
長期雇用・定着率向上を目指している企業
助成金制度の多くは、単なる雇用ではなく「継続的な雇用」を前提にしています。そのため、長期雇用を重視し、定着率を高めたいと考える企業にとって、制度は強力な支援となります。
職場改善や人事制度導入といった取り組みと併せることで、安定した雇用基盤づくりにも活用できます。
ハローワークを経由した助成金申請の流れ
助成金は、雇用の前後で正確な手続きが必要です。タイミングを誤ると申請できなくなる場合もあるため、以下の流れを押さえておきましょう。
採用前の準備
ハローワークに求人票を提出した後、面接や採用活動を行いますが、助成金の対象者を雇用するには事前確認が不可欠です。
トライアル雇用や特定求職者雇用開発助成金などは、採用前に計画書の提出や対象者認定が求められます。制度ごとの要件を確認し、採用前から助成金申請を見据えた準備を行いましょう。
採用後に必要な手続き
採用後は、雇用契約書の作成や雇用保険の加入手続きなど、基本的な労務処理を行います。その上で、助成金の計画届や申請書類を整えて提出します。
提出タイミングを過ぎると申請が無効になる場合もあるため、採用直後からのスケジュール管理と書類整備が重要です。
助成金の申請~受給まで
助成金は即時に支給されるわけではなく、一定期間の就労実績を経た後に支給される仕組みです。
申請から受給までには数ヵ月かかることが多く、資金繰りを考慮したスケジュール調整が求められます。受給後の報告義務や就労状況の確認もあるため、継続的な管理体制が必要です。
ハローワークを経由した助成金を活用する際の5つの注意点

ハローワーク経由で助成金を活用するには、制度ごとの細かな要件や申請ルールを正しく理解し、適切な対応を行うことが不可欠です。以下5つの注意点を押さえておくことで、不支給やトラブルのリスクを避けることができるでしょう。
- 採用前に必ず事前手続きを行うこと
- 支給要件を満たす労働条件を整備する
- 求人票の記載内容と実際の雇用条件を一致させる
- 期日管理を徹底する
- 不正受給とみなされる行為に注意する
採用前に必ず事前手続きを行うこと
助成金の申請は、採用前の段階で必要な手続きを済ませておくことが絶対条件です。多くの制度では、採用後の手続きでは申請そのものが認められません。対象者の確認や計画書の提出など、あらかじめハローワークや所管機関と連携して申請準備を進めましょう。
支給要件を満たす労働条件を整備する
助成金を確実に受給するには、制度ごとに定められた労働条件を満たしている必要があります。
勤務時間や賃金、契約期間、社会保険加入などが基準に達していなければ、不支給となるケースもあります。労働条件通知書や雇用契約書を事前に確認し、制度に合った内容で雇用を行いましょう。
求人票の記載内容と実際の雇用条件を一致させる
求人票と実際の雇用条件に食い違いがあると、助成金が不支給になる可能性があります。制度では求人内容の整合性も審査対象となるため、勤務日数・時間・賃金など、記載事項と契約内容が一致しているかを必ず確認してください。
期日管理を徹底する
助成金の申請や書類提出には厳格な期限が設定されており、これを守らなければ申請自体が無効になるので注意しましょう。
提出日や就業開始日からの起算期間が明確に決まっているため、早めの準備とスケジュール管理が欠かせません。カレンダーで管理するなど、社内での体制づくりが重要です。
不正受給とみなされる行為に注意する
形式的な雇用や虚偽の申請は不正受給と判断され、返還や処分の対象になります。助成金は本来、実体のある雇用を支援する制度です。不適切な申請は企業の信用にも関わるため、実態に即した契約・勤務実績を伴う正当な申請を心がけましょう。
ハローワークを活用した助成金申請に不安がある事業者様は専門家に相談を
ハローワークを活用した助成金申請は、制度ごとに要件や申請書類、手続きの流れが異なるため、少しの不備でも不支給となるリスクがあります。
特に、採用前の手続き忘れや要件の誤認はよくあるミスです。申請に不安がある場合は、早めに専門家に相談するのが賢明でしょう。
小谷野税理士法人は、助成金制度や雇用関連の実務に精通しており、制度選定から申請支援まで丁寧に対応しています。制度を最大限に活用しながら、採用活動の負担を軽減したいとお考えの事業者様は、ぜひ一度ご相談ください。





