中小企業の技術力を高め、成長を支援するために設けられたGo-Tech事業は、国が実施する補助金制度の1つとして注目を集めています。しかし、どのような企業が対象になるのか、どの程度の支援を受けられるのかといった点について、よく分からないと感じる方も多いでしょう。本記事では、Go-Tech事業の制度概要や補助金額・補助率の仕組み、申請スケジュールや方法、採択されるためのポイントについて解説します。
目次
Go-Tech事業とは?

Go-Tech(ゴーテック)事業は、中小企業の技術力向上と産学官連携を通じた革新的な開発を支援する国の補助金制度です。
旧制度である「サポイン事業(戦略的基盤技術高度化支援事業)」や「サビサポ事業(商業・サービス競争力強化連携支援事業)」を統合し、2023年度から本格的に実施されています。
項目 | 内容 |
制度名 | 成長型中小企業等研究開発支援事業(通称:Go-Tech事業) |
対象者 | 中小企業・小規模事業者 (単独は不可、大学・研究機関などとの連携必須) |
支援目的 | 技術力の強化、産業競争力の向上、新市場の創出など |
補助対象 | 基盤技術分野等における研究開発・事業化 |
補助金額 | 最大1億円程度(テーマにより異なる) |
補助率 | 中小企業:2/3以内 公設試等:定額または10/10 など |
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対象者
Go-Tech事業の主な対象は、中小企業基本法に基づく中小企業や小規模事業者です。ただし、企業単独では申請できず、大学・高専・公設試験研究機関などとの連携体制が必須条件となっています。
これにより、実現性の高い研究開発を推進しつつ、産学官の連携強化も促進されます。条件を満たすNPO法人なども、対象となる場合があります。
支援目的
本制度の目的は、中小企業の技術力の底上げと、それによる産業競争力の向上にあります。特に、将来性のある技術シーズを活かし、新製品や新サービスを生み出す取り組みを支援することで、社会課題の解決や新市場の創出に繋げることを目指しています。
補助対象
補助の対象となるのは、「ものづくり基盤技術」などに該当する研究開発および事業化の取り組みです。
対象分野は、機械加工、精密計測、AI、IoT、バイオ、ロボティクス、次世代素材など、先進性と波及効果が期待される技術が中心です。
研究だけでなく、製品化・実証・市場投入までのプロセス全体が支援の対象となるのが特長です。
補助金額
Go-Tech事業では、事業の規模や内容に応じて、数千万円〜最大1億円程度の補助金を受けることが可能です。
【補助金額の目安】
開発規模 | 補助金額上限 | 想定される事業例 |
小規模(技術検証中心) | 3,000万円程度 | 新素材の基礎研究、部品改良 |
中規模(試作・評価含む) | 5,000万円程度 | IoT技術を活用した製品開発 |
大規模(実証・事業化まで) | 1億円程度 | ロボット技術の製品化・市場展開 |
※実際の金額は公募要領や採択テーマにより異なります。
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補助率
補助率とは、申請事業費に対して国がどの程度補助金を支給するかを示す割合です。Go-Tech事業では、中小企業が最大3分の2まで補助を受けられるほか、連携機関である大学や公設試験研究機関には定額または100%の補助が適用されます。
【申請者別の補助率一覧】
申請者区分 | 補助率 | 自社負担率 |
中小企業・小規模事業者 | 最大3分の2 | 最低3分の1 |
公設試験研究機関・大学等 | 定額または100%補助 | なしまたは一部負担 |
例)中小企業が総額1,500万円の研究開発を実施する場合
- 補助金 :最大1,000万円(=1,500万円 × 3分の2)
- 自社負担:500万円
Go-Tech事業の応募スケジュール

以下は、Go-Tech事業における一般的な年度スケジュールの一例です。
時期 | 内容 |
2〜3月 | 公募開始(経済産業省より告知) |
4月 | 書類提出締切 |
5〜6月 | 審査(書面およびプレゼン) |
6〜7月 | 採択結果発表 |
7月以降 | 補助事業開始 |
Go-Tech事業の申請は、毎年2〜3月頃に開始される公募期間中に行われます。申請は、国の研究開発管理システムである「e-Rad(イーラド)」を通じてオンラインで提出します。
提出期限は例年4月上旬〜中旬頃に設定されているため、期日までに必要書類をすべて整え、システム上での申請を完了させましょう。
その後、書面審査や必要に応じたプレゼン審査を経て、6〜7月頃に採択結果が発表されます。採択後は交付決定を受け、7月以降に補助事業を正式に開始します。スケジュールは年度により若干異なるため、最新の公募要領を必ず確認しましょう。
Go-Tech事業の活用メリット

Go-Tech事業を活用することで、中小企業にとって多くのメリットがあります。制度の特性を理解し、適切に活用すれば、技術開発や事業展開に大きな前進が期待できるでしょう。
高額な補助で挑戦的な開発にも取り組める
Go-Tech事業では、自己資金では難しい大規模な研究開発にも挑戦できます。最大1億円まで補助を受けられるため、高リスク・高難度なプロジェクトにも着手しやすくなります。
資金面での不安が軽減されることで、将来の競争力を高める新技術の開発に注力する余地が生まれます。特に中小企業にとっては、こうした支援が成長への大きな後押しとなるでしょう。
連携により技術力と開発スピードが向上する
大学や研究機関との連携により、自社単独では得られない技術力を活用できます。先端設備や専門知識を持つ外部機関と共同で開発を進めることで、技術の高度化だけでなく、研究の精度やスピードも向上します。
また、連携先とのネットワーク構築により、将来的な共同研究や採用にも繋がる可能性もあるでしょう。
研究成果を事業化・収益化しやすい
開発後の実用化や販路拡大まで視野に入れて取り組めます。Go-Tech事業では、研究開発に加えて成果の事業化も支援対象であるため、社会実装までの一貫した体制を構築できます。
市場投入や製品化を目指す企業にとって、開発成果が事業に直結する点は大きなメリットです。
採択実績が企業の信頼性向上に繋がる
国の補助金に採択された実績は、対外的な評価の向上に役立ちます。厳正な審査を経て採択されたという事実は、取引先や金融機関などの第三者に対して「技術力が認められた企業」という信頼感を与えます。
これにより、資金調達や営業活動にも好影響が及び、企業ブランディングにも繋がるでしょう。
Go-Tech事業に採択されるための5つのポイント
Go-Tech事業の審査では、単なる技術力だけでなく、課題設定や実現可能性、事業化への視点など、多角的な評価が行われます。ここでは、採択されるために押さえておきたいポイントを解説します。
- 課題の明確化と社会的意義の強調
- 技術的優位性と実現可能性の両立
- 事業化・市場展開の見通しがあること
- 連携先との協力体制を明確に設計する
- 計画の整合性と費用の妥当性を示す
課題の明確化と社会的意義の強調
取り組む課題を明確にし、その社会的意義を具体的に示すことが重要です。「なぜその技術が今必要なのか」、「どのような社会・産業課題を解決するのか」といった点が審査で重視されます。
単なる技術的チャレンジではなく、明確な課題認識とその解決への貢献性が伝わる提案が、採択の可能性を高めるでしょう。
技術的優位性と実現可能性の両立
独自性のある技術であると同時に、実現可能な計画であることが評価されます。他社との差別化ができているだけでなく、理論だけで終わらず「どうやって開発するか」、「どの段階で検証するか」といった実行可能性の根拠も必要です。
審査側が「これは実現できそうだ」と納得できる設計になっているかが問われます。
事業化・市場展開の見通しがあること
研究成果が収益や社会実装に結びつく計画があるかが大きな評価軸になります。補助金は単なる技術開発のためではなく、最終的には事業化・市場導入によって社会的・経済的価値を生むことが期待されています。
製品化や販路の見通し、売上予測など、事業としての成長可能性を丁寧に示すことが重要です。
連携先との協力体制を明確に設計する
誰がどの役割を担うのかを具体的に示し、実効性ある体制を整える必要があります。o-Tech事業では大学や公設試験研究機関との連携が必須条件です。
連携先との間で研究範囲や責任分担が曖昧なままだと、実施体制に疑問を持たれるでしょう。計画段階で協力体制を明確に設計し、共同での実行力を示すことが採択のポイントとなります。
計画の整合性と費用の妥当性を示す
計画全体の流れや予算配分が合理的であるかも審査の対象となります。研究開発のスケジュール、マイルストーン、成果目標と支出計画が一貫しているか、無理や無駄がないかといった点が問われます。
補助金を適切に活用できる体制と計画であることを示すことが、信頼性の向上に繋がります。
Go-Tech事業を活用する前に知っておきたい3つの注意点
Go-Tech事業は支援内容が手厚い一方で、申請や実施にあたって注意すべき点も存在します。以下3つのポイントを事前に理解し、適切に対応することで、事業を円滑に進めることができます。
- 申請書類の完成度が採択を左右する
- 実施後の報告業務は負担が大きい
- 連携先との調整が継続的に必要になる
申請書類の完成度が採択を左右する
審査の可否は、計画書や申請書類の質に大きく左右されます。Go-Tech事業は全国から多数の応募があるため、事業内容が優れていても、説明が不十分であれば不採択になる可能性があります。
論理的な構成、数値の根拠、課題と解決策の明確化など、審査側に正確に意図が伝わるような書類作成が不可欠です。
実施後の報告業務は負担が大きい
採択後は、定期的な報告義務を含めた事務対応が求められます。補助金の支給には、研究経費の使途管理や中間報告、事業終了後の実績・成果報告など、多くの書類提出と審査が伴います。
要件を満たさない場合には補助金の返還リスクもあるため、事務体制を整えておきましょう。
連携先との調整が継続的に必要になる
計画段階から事業完了まで、連携先との円滑な連携が求められます。Go-Tech事業は単独申請ができず、大学や研究機関との共同実施が前提です。そのため、開発スケジュールや成果の共有、費用管理などで調整が頻繁に発生します。
信頼関係や情報共有の体制を構築しておかないと、計画の遅延や実施上のトラブルに繋がるおそれがあるでしょう。
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Go-Tech事業の申請を検討している方は専門家に相談
Go-Tech事業は補助金額が大きく魅力的な一方で、申請要件や審査基準が厳しく、技術面・経営面ともに高水準の事業計画が求められる難易度の高い制度です。
要件の誤解や書類の不備によって、せっかくのチャンスを逃してしまうケースも少なくありません。
こうしたリスクを避けるためには、制度に詳しい専門家の支援を受けることが有効でしょう。
補助金申請支援の実績を多数持つ小谷野税理士法人では、計画書の作成から申請手続き、採択後の報告業務までをトータルでサポートしています。Go-Tech事業の活用を本格的に検討されている方は、ぜひ一度、小谷野税理士法人にご相談ください。





