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与信管理とは?信用リスクを防ぐ仕組みと実践ポイントを徹底解説

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与信管理とは?信用リスクを防ぐ仕組みと実践ポイントを徹底解説

企業間取引において、売上だけを追求すると、思わぬ貸倒や資金繰りの悪化に直面する場合があります。そこで重要になるのが「与信管理」です。取引先の信用力を見極め、リスクを最小限に抑えることで、安定した経営と健全な成長を支える仕組みです。本記事では、与信管理の基礎から具体的な手法、注意点、よくある質問までをわかりやすく解説します。与信管理を基礎から見直したい方は、ぜひ最後までご覧ください。

与信管理とは?

与信管理とは、取引先に対して信用を与えて取引を行う際に、その信用リスクを見極めて適切に管理する仕組みです。

特に掛け取引においては、代金の未回収や取引先の倒産といったリスクが常に存在します。支払い能力を十分に確認しないまま取引を開始した結果、売掛金が回収できずに損失を被るケースも少なくありません。

このような事態を防ぐためには、事前の信用調査や与信限度額の設定が欠かせません。特に中小企業にとっては、資金繰りの安定にも直結するため、その必要性は一層高まっています。

与信管理が必要な理由

企業間取引では、取引先の信用力を見極めずに契約を進めると、思わぬリスクを抱えるケースがあります。与信管理がなぜ重要なのか、その理由について解説します。

倒産リスクを回避するため

取引先の倒産による未回収リスクは、企業の経営を直撃する重大な問題です。与信管理を行うことで、事前に信用力を見極め、リスクの高い取引先との契約を避ける判断が可能になります。

たとえ表面的に業績が良く見える企業でも、財務の内情を確認すれば危険な兆候が見つかる場合もあるため、こうした倒産リスクを早期に察知する手段として有効です。

関連記事:黒字倒産はなぜ起こる?7つの理由や起こりやすい業種、黒字倒産しないためのポイントをご紹介!

関連記事:売掛金・未収入金の違いは?仕訳例や計上方法、注意点まとめ

資金繰りの悪化を防ぐため

売掛金の回収が滞れば、会社の資金繰りに直接的な悪影響を及ぼします。定期的なモニタリングと、過剰な与信を避けた限度額の設定を通じて、安定したキャッシュフローを維持できます。

たとえ利益が出ていたとしても、現金が不足すれば仕入や給与の支払いが滞る可能性もあるでしょう。与信管理は、資金の流れを守るための「安全弁」として機能します。

無理な取引拡大を抑制するため

売上を優先して安易に取引先を増やすと、信用リスクが管理できず、未回収債権が増える原因になります。

与信管理を導入すれば、収益性と安全性のバランスを取りながら、新規取引の可否を判断できます

確実に回収できる取引先との関係を重視することで、短期的な売上よりも長期的な経営の安定を図れるでしょう。

経営判断に活かすため

与信管理で蓄積された信用情報は、単にリスクを避けるためだけでなく、戦略的な経営判断にも活用できます

例えば、新たな取引先の選定や、重点顧客の見直しといった意思決定において、信用情報は有効な判断材料となります。

定量・定性の両面から得られる情報を活かせば、取引の質を高め、より健全な経営基盤を築けます。

与信管理の基本的な流れ

与信管理は、一度取引を始めて終わりではなく、継続的な確認と見直しを前提としたプロセスです。一般的な3つの実施手順を紹介します。

取引前の信用調査

まずは、取引前に相手先の信用力を調査しましょう

企業情報や決算書、過去の取引実績、信用調査レポートなどを通じて、支払能力や経営状況を多角的に評価します。形式上の情報だけでなく、代表者の姿勢や事業の継続性といった定性面も重要です。

十分な情報収集を行い、リスクを見極めたうえで、取引の可否を判断しましょう。

与信限度額の設定

信用調査をもとに、どの程度まで売掛取引を認めるかを数値で明確にするのが「与信限度額」です

過去の支払実績、売上規模、取引頻度などを加味し、自社のリスク許容度に見合った金額を設定します。

限度額の設定が曖昧なままだと、想定外の売掛金が膨らみ、貸倒リスクが増加します。上限を明確にすれば、組織的な取引リスクの抑制が図れるでしょう。

継続的なモニタリングと見直し

取引開始後も、与信リスクは常に変動します。業績の悪化や支払遅延などの兆候を早期に察知するには、定期的な信用状況のチェックと、限度額の見直しが欠かせません

特に決算期や経済環境の変化がある場合は、重点的なモニタリングが必要です。継続的にリスクを見張る体制を整えておけば、被害を最小限に抑えられます。

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与信管理のチェックポイント

償却資産申告書とはのイメージ

効果的な与信管理を行うには、単なる情報収集だけでなく、見るべきポイントを明確にしたうえで判断基準を定める必要があります。特に重要な確認項目を紹介します。

企業情報の確認

まず確認すべきは、取引先の基本情報が信頼に足るものかどうかです。登記情報や所在地、代表者、事業内容などから実在性と事業の継続性を判断します。

社名変更や所在地の頻繁な移転がある場合は慎重な対応が求められます。これらの情報は、信用調査会社のレポートや与信管理システムを通じて効率的に取得・管理できます。

事実確認を怠らず、表面だけで判断しないようにしましょう。

財務諸表や支払い実績の確認

貸借対照表や損益計算書を通じて、取引先の財務健全性を定量的に把握してください。加えて、過去の支払履歴から、支払いに対する誠実さや実務能力も見極めましょう。

支払い遅延が常態化している企業は、たとえ資産があっても実質的なリスクが高いと判断されます。数値と実績の両面からバランスよく評価する必要があります。

関連記事:損金不算入・損金算入とは?法人税計算で知っておくべきポイントや項目について解説

担保・保証の有無の確認

信用力に不安がある取引先との契約では、担保や第三者保証の有無を確認しましょう。回収不能のリスクを軽減するための手段として、必要に応じて保証契約や担保設定を要求する判断が必要です。

特に高額な取引や長期契約では、こうした付帯条件の有無が安全性を左右します。回収手段の「保険」としての役割を意識しましょう。

社内ルールや基準の整備

与信管理が個人の経験や判断に頼りすぎていると、対応のばらつきや見落としの原因になります。

社内で統一した与信判断基準や審査フローを整備し、営業・経理・経営層が共通認識を持つ必要があります

ガイドラインを定め、定期的に見直しを行えば、組織的な判断と対応が可能になります。属人化を排除し、リスクを見落とさない体制を整えましょう。

与信管理の実施による3つのメリット

与信管理は「リスクを避ける手段」と思われがちですが、それだけではありません。攻めの経営に繋がる以下3つのメリットについて解説します。

  1. 貸倒損失を未然に防げる
  2. キャッシュフローを安定させる
  3. 安心して取引拡大ができる

貸倒損失を未然に防げる

与信管理の最大の目的は、貸倒リスクの高い取引先との契約を事前に回避する点です。信用調査を通じて相手の経営状況や支払い能力を確認すれば、売掛金が回収不能となる事態を防げます。

特に中小企業にとって、1件の貸倒が資金繰りに与える影響は大きく、早期のリスク把握が経営の安定を支えるポイントです。予防的な損失対策として、与信管理は非常に有効でしょう。

キャッシュフローを安定させる

未回収の売掛金が増えると、仕入れや給与の支払いに支障が出るなど、資金繰りの悪化を招きます。

与信管理を適切に行えば、確実に回収できる範囲で取引を進められるため、キャッシュフローの安定化が可能です

資金の見通しが立てやすくなるため、余裕を持った経営判断や投資計画が実現できるでしょう。

関連記事:経営セーフティ共済とは?メリットや節税効果などについて解説

安心して取引拡大ができる

与信管理が徹底されていれば、取引先ごとのリスクを把握しながら事業拡大を図れます。信用力の高い企業との取引に集中できるため、売上の安定化や長期的な関係構築にも繋がります。

過度なリスクを抱えることなく成長を目指せるという点で、攻めと守りの両方を支える施策と言えるでしょう。新規取引の拡大も、安心感をもって進められます。

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与信管理における5つの注意点

個人事業税がかからない業種のイメージ

与信管理は仕組みを整えるだけでなく、日々の運用で注意すべきポイントを押さえる必要があります。見落とされがちな以下5つの注意点について解説します。

  1. 定期的な見直しを怠らない
  2. 営業部門との連携を図る
  3. 評点や数値に頼りすぎない
  4. 社内ルールを形骸化させない
  5. 与信超過時の対応を明確にする

定期的な見直しを怠らない

与信限度額は一度設定して終わりではなく、定期的な見直しが欠かせません。取引先の業績や支払い状況は時間とともに変化するため、古い与信枠のままではリスクを見誤る恐れがあります。

特に決算期や取引量の急増があった場合は要注意です。定期的なチェック体制を整えれば、リスクの早期発見と対応が可能になるでしょう。

営業部門との連携を図る

与信管理は経理部門だけの仕事ではなく、現場で得られる情報も重要な判断材料となります。営業担当が得た支払い遅延の兆候や取引先の雰囲気などは、定性情報として非常に有効です

こうした情報を共有できない体制では、管理の精度が下がりリスクを見逃す原因になります。社内連携の仕組みを整えておきましょう。

評点や数値に頼りすぎない

信用調査会社のスコアや財務数値は、判断材料の一部にすぎません。経営者の姿勢や社内体制、業界内での評判といった定性情報も与信判断には不可欠です

数字だけで判断すると、外見は健全でも中身に問題を抱える企業を見逃すリスクがあるため、情報の裏側にも目を向け、総合的な評価を心がけましょう。

社内ルールを形骸化させない

与信管理のルールや基準を作成しても、実際に現場で運用されていなければ意味がありません。形だけのガイドラインでは、担当者ごとの判断にばらつきが生まれ、統制が効かなくなります。

社内研修や定期的な運用状況の見直しを行い、ルールが実践されているかを確認する必要があります。制度と運用の乖離を防ぎましょう。

与信超過時の対応を明確にする

限度額を超えて取引が発生した場合の対応ルールが明確でないと、トラブルや損失に直結します。

事前に「誰が判断するか」「どう対応するか」といったフローを定めておけば、緊急時にも冷静な判断が可能になるでしょう。想定外の状況にも備えたルール設計が、与信管理の信頼性を高めます。

与信管理に関してよくある質問

FAQ

与信管理の導入を検討するなかで、多くの企業が同じような疑問や不安を抱えています。よくある質問を取り上げますので、検討時の参考にしてください。

与信管理はどの部署が担当すべきですか?

与信管理の主な担当部門は経理または財務部門ですが、営業や法務との連携も不可欠です。営業は現場での支払い状況や取引先の変化を最も早く察知できる立場にあり、法務は契約面のリスクをチェックできます。

特に中小企業では専任部署がないケースも多いため、経営者が主体的に判断し、必要に応じて専門家のサポートを受ける体制が現実的でしょう。

中小企業でも与信管理は必要ですか?

むしろ中小企業にこそ与信管理は必要と言えるでしょう。大企業と比べて資金的な余力が少ないため、たった1件の貸倒が資金繰りを直撃し、事業継続に影響する恐れがあります。

限られた取引先と安定的に取引するためには、リスクの見極めが不可欠です。簡易的な信用調査や与信枠の設定だけでも大きな効果があるため、規模に応じた対応が求められます。

支払いが遅れた場合、すぐに取引を停止すべきですか?

すぐに停止する前に、まずは支払い遅延の理由を確認する必要があります。一時的な資金繰りの問題や事務的ミスである場合もあり、慎重な対応が求められます。

ただし、遅延が頻発するようであれば、与信限度額の見直しや支払条件の変更を検討すべきでしょう。感情的にならず、事実と傾向に基づいた判断が重要です。

与信管理でお悩みの方は専門家に相談

与信管理の不備は、貸倒や資金ショートといった深刻なリスクに繋がります。特に中小企業では、専門的な判断基準や情報収集が難しく、属人的な対応に陥りがちです。そうした課題に対応するには、専門家の支援を受けるのが最も確実でしょう

小谷野税理士法人では、与信管理体制の構築や社内ルール整備、債権管理の実務支援まで幅広く対応可能です。経営の安全性を高めたい方は、ぜひ小谷野税理士法人にお気軽にご相談ください。

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この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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