不動産の売買・賃貸・相続は取引額が大きく、関わる税金や特例も多岐にわたります。誤った判断をすると、余計な税負担や税務調査のリスクが高まるため、不動産税務に精通した税理士のサポートを受けることがおすすめです。本記事では、不動産に強い税理士の特徴や依頼するメリット、税理士を選ぶ際のポイントを分かりやすく解説します。
目次
不動産業における税務会計の特徴

不動産業界の税務会計は、一般の事業に比べて複雑だと言われています。不動産の取得・保有・売却・賃貸経営など、各フェーズで異なる税金が発生し、それぞれの計算方法や特例を正しく理解する必要があるためです。
こうした幅広い税務を適切に管理し、最適な節税対策を実践するには、不動産税務に精通した専門家の有無で結果に大きな差が生まれます。ここでは、不動産の種類と税金の関連性やかかる税金の種類についてまとめました。
関連記事:不動産業の事業区分は?判定が難しい区分や簡易課税制度の基礎を解説
不動産の種類と税金の関連性
不動産の種類や取得方法によって、発生する税金は異なることを把握しておきましょう。土地や建物の取得時には、不動産取得税・登録免許税・印紙税・消費税が発生します。相続や贈与で取得した場合は、相続税や贈与税の対象となるケースもあります。
また、不動産を保有し続ける限り、固定資産税や都市計画税が毎年課され、賃貸経営を行っている場合は、家賃収入に対して所得税・住民税・個人事業税がかかるでしょう。さらに、不動産を売却して利益が出た場合には、所得税や住民税が課され、売却時の印紙税などが必要です。
このように、不動産は取得・保有・売却といった各段階で異なる税金が関わるため、全体像を把握したうえで適切に対応することが求められるのです。
不動産業にかかる税金の種類
不動産取引では、取得・保有・売却といった各フェーズごとに税金が発生します。代表的なものは次の通りです。
取得時にかかる税金
不動産の取得時にかかる税金は、以下の通りです。
- 印紙税:売買契約書や建築請負契約書などの課税文書に課される税金です。契約金額に応じて税額が決まります。
- 登録免許税:所有権移転登記などを行う際に課される税金です。登記内容や不動産の種類ごとに税率が異なります。
- 不動産取得税・消費税・不動産を取得した際に、都道府県へ納付する地方税です。原則は固定資産税評価額の4%ですが、住宅用不動産には軽減措置がある場合もあります。
- 消費税:不動産会社を介して不動産を購入する場合や仲介手数料を支払う際に発生します。
保有中にかかる税金
不動産を保有しているときにかかる税金は、以下の通りです。
- 固定資産税:毎年1月1日時点で不動産を所有している人に課される税金です。
- 都市計画税:市街化区域内の土地や建物に課される税金です。都市計画事業や区画整理事業の財源に充てられます。
いずれも市町村が課税する地方税で、不動産の固定資産税評価額を基に計算されます。
売却時にかかる税金
不動産を売却したときには、譲渡所得税がかかります。
譲渡所得税は、売却益に対して課される税金であり、保有期間に応じて税率が変動し、長期保有には優遇措置があります。
関連記事:投資マンションの売却でかかる税金と確定申告の方法を解説
不動産に特化した税理士へ依頼するメリット

不動産取引や経営は金額も大きく、税務処理も複雑であるため、自分だけで対応しようとすると、思わぬミスや余計な税負担につながることもあります。不動産に強い税理士に依頼すれば、税金の正しい計算や節税方法を提案してもらえるため、安心して取引や経営を進められるでしょう。ここでは、期待できる主なメリットをご紹介します。
税務上のリスク軽減と節税効果
不動産に強い税理士に依頼する大きなメリットに、税務上のリスクを大幅に軽減できる点、節税効果を期待できる点が挙げられます。
不動産税務は複雑で、申告ミスや節税漏れが発生しやすいのが特徴です。知識不足のまま手続きを進めると、不要な税金を支払うことになったり、税務調査で指摘を受け、追徴課税につながったりするリスクが発生する可能性もあるでしょう。
専門の税理士なら、不動産取得税や登録免許税の軽減措置、減価償却費や修繕費の正しい扱いなど、不動産特有のルールを踏まえた最適な処理が可能です。例えば、居住用財産の譲渡所得「3,000万円特別控除」や、相続税評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」など、一般的には見落としやすい特例も確実に適用できるため、無駄な税負担を避け、安心して取引や経営を進められます。
専門的な視点からのアドバイス
不動産税務は法改正や税制の変更が頻繁にあるため、最新の情報をふまえて個別のケースに対応できる知識が必要です。不動産に強い税理士に依頼すると、経営全般に役立つさまざまなアドバイスを受けられます。
具体例としては、不動産の有効活用、法人化による節税、売却の最適なタイミング、利回りや修繕時期の判断など、多角的な視点からのサポートが挙げられます。例えば、不動産を個人で保有するか法人化するかで税負担が異なるため、税理士が状況を分析し、最も有利な選択肢を提示することで投資利益を最大化できるのです。
また、不動産投資経験を持つ税理士であれば、実体験に基づいた実践的なアドバイスや、税務調査への対応策も提供可能です。机上の理論ではなく、現実的な視点からの助言が受けられるのは大きなメリットと言えるでしょう。
関連記事:法人が不動産購入で節税する方法とは?メリット・デメリットをわかりやすく解説
相続問題への対応
不動産を所有している場合、相続が発生すると高額な相続税が課される可能性があり、計算や申告手続きは非常に複雑です。不動産相続に詳しい税理士は、相続税の申告はもちろん、相続が発生する前から将来を見据えた相続対策についてもトータルでサポートします。
例えば、相続税評価額の調整や生前贈与の活用、遺言書の作成支援、二次相続まで見据えた資産承継プランなど、幅広いアドバイスを行います。特に不動産の評価は専門的で、方法を誤ると税額に大きな差が生じるため、専門家による正確な判断が重要です。
また、相続手続きは関わる人も多く煩雑になりがちですが、税理士に依頼することで相続人の負担を減らし、税務調査リスクを抑えながら正しく申告できます。経験豊富な税理士の支援により、税負担の軽減と円滑な相続を実現できるでしょう。
他分野の専門家との連携
不動産に特化した税理士は、不動産取引や経営にまつわる幅広い課題に対応できるよう、他分野の専門家と連携していることも多くあります。各専門家が連携しながら対応することで、スムーズかつ精度の高いサポートが受けられる点はメリットの1つです。
例えば、不動産の登記が必要な場合は司法書士、契約やトラブル対応では弁護士、不動産の価値評価は不動産鑑定士、人事や労務関連では社会保険労務士といったように、それぞれの専門家と協力してサポートを行います。特に、税理士法人のように複数の士業とネットワークを持つ事務所であれば、依頼者が自ら専門家を探す手間が省け、ワンストップで問題を解決できます。
不動産に強い税理士を選ぶ際のポイント3選

不動産に関する税務は専門性が高く、一般的な税理士では対応が難しいケースもあります。そのため、不動産に強い税理士を選ぶことが、正確な申告や最適な節税を実現するために大切なポイントです。ここでは、不動産に強い税理士を選ぶ際に確認したいポイント3選をまとめました。
専門性と経験
不動産に強い税理士を選ぶ際に重視すべきポイントは、「不動産税務に関する専門知識」と「豊富な実務経験」です。税理士資格を持っていても、すべての税理士が不動産税務に精通しているわけではありません。
不動産業界には、譲渡所得の特例や減価償却の扱い、相続税評価額の算定など、専門的で複雑な課題が数多く存在します。こうした問題に対応するには、一般的な税務知識だけでは不十分なのです。具体的には、以下の点を確認しましょう。
- 不動産関連の税務申告実績がどのくらいあるか
- アパート・マンション経営、売却、相続といった分野での対応実績があるか
- 不動産税務の最新制度や特例に精通しているか
これらを確認することで、安心して任せられる税理士かどうかを判断できます。
提供されるサポート内容
税理士を選ぶ際には「どこまでサポートしてもらえるのか」「自身のニーズに合致しているか」をしっかり確認しましょう。単なる確定申告の代行だけでなく、不動産取引や資産運用に直結する付加価値のあるサービスを提供できるかどうかが、税理士選びの満足度を左右します。
不動産に特化した税理士であれば、不動産の取得・保有・売却・相続といった各フェーズで発生する税金について、最新の税制改正をふまえた節税対策の提案や、複雑な特例・控除の活用方法を提案できます。以下のように、具体的な場面ごとに実践的なサポートが期待できるでしょう。
- 不動産売却時に利用できる「3,000万円特別控除」適用可否の判断
- 賃貸物件の減価償却費を正しく計算し、税負担を軽減する方法
- 修繕費を適切に経費計上するアドバイス
こうした提案力があるかを事前に確認することで、自分のニーズに合った税理士を見つけやすくなります。
相談体制と費用
不動産に強い税理士を選ぶ際には、「相談体制」と「費用」も、必ず確認しておきたいポイントです。相談体制については、以下の点をチェックしましょう。
- 初回無料相談を実施しているか
- 平日夜間や土日祝日の対応は可能か
- オンライン相談に対応しているか
特に、柔軟に対応してもらえるかどうかは、確認すべき重要なポイントです。不動産オーナーや個人事業主は日中に時間が取りにくいことも多いため、自分のスケジュールに合わせやすい相談環境があると安心です。
また、実際にやりとりする際には、相談のしやすさや相性も大切です。質問への回答が分かりやすく丁寧か、レスポンスが早いかなども、意識してチェックすると良いでしょう。
次に、費用面では、顧問契約の料金体系や確定申告代行費用、相続税申告費用などが明確に提示されているかを確認しましょう。不動産税務の報酬は、保有する不動産の規模(年間賃料、戸数など)、仕訳数、面談回数、追加分析の有無などによって変動するのが一般的です。
目安としては、顧問契約で月額10,000〜50,000円程度、確定申告代行で50,000〜20万円程度とされています。料金体系が明確かつ納得できるかを事前に確認しておくことで、後々のトラブルを防げます。
関連記事:不動産会社の一人起業で成功するコツとは?リスクやメリット・デメリットを徹底解説
まとめ
不動産に関する税務は、取得・保有・売却・相続などの各段階で複雑な仕組みが絡み、専門的な知識を必要とします。そのため、不動産に強い税理士の支援があるとスムーズです。専門性と経験を持つ税理士に依頼することで、適切な税務処理だけでなく、節税や将来の資産管理まで幅広いサポートを受けられます。信頼できる税理士を選ぶことが、不動産経営を成功へ導く大きな鍵となるでしょう。





