起業では、資金調達の必要性について考えることが大切です。まとまった資金がないときは、助成金や補助金、融資といったさまざまな支援策を利用するのがおすすめです。そこで、この記事では、女性が起業する上で利用できる助成金と、おすすめの機関・サイトについて解説します。
目次
助成金・補助金・融資の違いと概要
起業をする上では、まとまった資金を確保した上での準備が必要です。一般的な資金調達の方法としては、国や自治体が導入した助成金・補助金・融資の活用が挙げられます。
助成金や補助金、融資には、下表のような特徴・違いがあります。
種類 | 概要 |
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助成金 |
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補助金 |
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融資 |
|
なお、利用にあたっては要件や公募期間が決められているため、入念なリサーチによる手続きが欠かせないと言えるでしょう。また、助成金及び補助金は原則、返済不要であるものの、経費の報告や事後検査が必要です。条件を満たしていない場合、返還を求められる可能性があります。助成金や補助金を利用する際は、条件に必ず目を通すよう注意しましょう。
関連記事:2025年|個人事業主が貰える給付金・補助金は?メリットや注意点を解説
女性起業家が受けられる助成金一覧
女性起業家にとって助成金は、資金調達の面で大きな一助になり得ます。ここでは、助成金の種類と特徴について解説します。
- 両立支援等助成金
- キャリアアップ助成金
- 雇用関係助成金
- 地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
- 東京都が提供する若手・女性リーダー応援プログラム
補助金や融資については以下の記事で解説しているので、さまざまな手段を把握しておきたい人はこちらも併せてご覧ください。
関連記事:女性起業家が受けられる融資は?創業時に使える助成金や補助金まとめ
両立支援等助成金
「両立支援等助成金」は、仕事と育児、介護といった家庭の両立を支えるために設けられた助成金です。6コースに分かれており、それぞれ助成に関する要件と助成額が決められています。
コース | 要件 | 助成額 |
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出生時両立支援コース | 男性労働者における育児休業の取得支援 | 【第1種】 ・1人目:20万円 ・2人目・3人目:10万円(雇用環境整備措置を4つ以上実施の場合:30万円) 【第2種】 ・20~60万円(要件によって変動あり) |
介護離職防止支援コース | 介護休業の取得や、介護・仕事との両立に関する支援 | 15万~30万円 |
育児休業等支援コース | 育児休業の取得や職場復帰等に関する支援 | 30万円 |
育休中等業務代替支援コース | 育児休業の取得における業務代替などの取り組み、他労働者への支援 | 【手当支給等】 ・育児休業:最大140万円 ・短時間勤務:最大120万円 ・新規雇用(育児休業):最大67万5,000円 (いずれも期間によって変動あり) ・有期雇用労働者加算:10万円加算 |
柔軟な働き方選択制度等支援コース | 育児期による柔軟な働き方に関する制度の複数導入、対象者の利用 | 最大20万~25万円 |
不妊治療両立支援コース | 不妊治療と仕事の両立を図るための取り組みなどの支援 | 30万円 |
参考:2024(令和6)年度 両立支援等助成金のご案内|厚生労働省
詳細については厚生労働省ホームページよりご覧いただけます。なお、上表は令和6年度までのものです。令和7年度分については更新されていないため、参考程度にお考えください。新しい情報については適宜、以下リンクより更新内容の確認をおすすめします。
キャリアアップ助成金
「キャリアアップ助成金」は、非正規雇用の労働者を対象とした制度で、正社員化や処遇の改善を目指す企業に対して支給されます。非正規雇用従業員の正社員化、さらには処遇の改善を検討する女性起業家におすすめです。コースの種類と概要は下表のようになっています。
コース | 要件 | 助成額(中小企業) |
---|---|---|
正社員化コース | 有期雇用労働者などの正社員化 | 40~80万円/人 |
賃金規定等改定コース | 有期雇用労働者などにおける賃金の引き上げ | 5万円~6万5000円 |
賃金規程等共通化コース | 有期雇用労働者などに対する正規雇用労働者と共通の賃金規程などの作成・適用 | 60万円/1事務所 (1回のみ) |
賞与・退職金制度導入コース | 有期雇用労働者などに対する賞与・退職金制度の新設、支給または積立の実施 | 40万円/1事務所 (1回のみ) |
社会保険適用時処遇改善コース | 短期労働者に向けた指定の取り組みの実施 | 【手当等支給メニュー】 1~2年目の取り組み:40万円 3年目の取り組み:10万円 【労働時間延長メニュー】 1~4時間以上:一律30万円 【併用メニュー】 2年目の取り組みまで:50万円 |
参考:キャリアアップ助成金のご案内(令和6年度版)|厚生労働省
こちらについても、令和6年度版の案内のため、参考程度に留めておきましょう。最新の情報について知りたい人は、以下リンクより適宜、ご確認ください。
関連記事:女性が東京都で起業時に活用できる融資・助成金・経営サポート解説!
雇用関係助成金
「雇用関係助成金」は、厚生労働省が管理する、雇用に関する支援金の総称を指します。助成金にはいくつかの種類があり、雇用関係助成金検索ツールから目的に沿った助成金を探すことが可能です。女性起業家におすすめの雇用関係における助成金は下表のようになっています。
種類 | 概要 |
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特定求職者雇用開発助成金 | 障害のある人や就職氷河期世代者などの雇用に際して支給される助成金 |
トライアル雇用助成金 | 就職が困難な求職者などのトライアル雇用に際して支給される助成金 |
地域雇用開発助成金 | 雇用情勢が厳しい地域が従業員を雇用する際に投資した費用に対する助成金 |
人材開発支援助成金 | 人材育成、スキルアップなどに必要な費用に対する助成金 |
助成金に際しての注意事項などについては、厚生労働省ホームページよりご確認ください。
地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)
「地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型)」は、中小機構などの共同出資で運営される支援制度です。地域貢献性の高い中小企業者が対象で、地域ごとに多種多様なファンドが設けられています。
条件や金額がファンドによって異なるため、利用にあたっては概要に目を通しておくことをおすすめします。
参考:地域中小企業応援ファンド(スタート・アップ応援型) | 独立行政法人 中小企業基盤整備機構
若手・女性リーダー応援プログラム
「若手・女性リーダー応援プログラム」は、東京都が主催する商店街の活性化を目的とした助成金制度です。商店街での事業開始や既存事業の多角化を目指す女性起業家にとっては大きな資金源となるでしょう。
助成金の用途には、店舗の新装や改装費、設備購入費、さらには効果的な宣伝活動を行うための経費も含まれています。東京都内での事業展開を考える若手や女性起業家にとって、挑戦を応援する頼もしい制度と言えるでしょう。
なお、起業家が利用できる補助金についてはこちらの記事でまとめていますので、併せてご覧ください。
参考:若手・女性リーダー応援プログラム助成事業|融資・助成制度
女性起業家の相談・情報収集でおすすめの機関とWebサイト

女性起業家が成功を目指す上では、起業について相談できる機関やサイトの活用が鍵となります。ここでは、おすすめの機関とサイトについて解説するので、起業する際はぜひご活用ください。
男女共同参画局
内閣府が管轄する「男女共同参画局」では、民間機関による女性向け起業支援についての情報発信を行っています。たとえば、教育研修活動を展開する講師の自立を支援する「マナー講師養成講座」や、女性経営者の事業・発展・継続をサポートする起業との提携などです。
全国商工会連合会でも、女性の創業投資援助成金事業を実施するなど、さまざまな取り組みが行われています。男女共同参画をはじめ、主な政策などについては、内閣府男女共同参画局ホームページより確認できるので、この機会に目を通してみると良いでしょう。
参考:民間団体等の女性向け起業支援 | 内閣府男女共同参画局
補助金紹介サイト
日本には、補助金についての情報発信を行う紹介サイトもあります。たとえば「ミラサポplus」では、人気の補助金をはじめ、補助金の活用事例などが閲覧できます。「J-Net21」では、支援情報ヘッドラインを設け、全国をはじめ、海外の補助金・助成金などもチェック可能です。
どちらのサイトも、起業において必要なデータやリソースを効率的に収集できるので、事業の成長や課題解決に役立てることができます。新しいアイデアやビジネスモデルを模索している人は、これまでの事例や最新トレンドを知るための参考資料としても活用できるでしょう。
参考:ミラサポPlus
ポータルサイト・セミナー
ポータルサイトやセミナーの活用もおすすめです。たとえば「女性の企業ポータルサイト」は、得意分野を活かした起業を検討する女性に向けたポータルサイトです。起業家同士の交流の場や、経営に関する相談窓口などが設置されているので、起業前後で活用することができます。
ほかにも「女性のための起業セミナー」では、好きなことを仕事にし、経済的自立を目指す女性に向けたセミナーが行われています。起業後の悩みとして多い、集客についても情報交換ができるので、こちらも起業前後で役立つサイトと言えるでしょう。
参考:女性の起業ポータルサイト
関連記事:女性が自己資金なしで起業することはできる?受けられる融資制度などについて詳しく解説!
女性起業家を支援する国・自治体の取り組み事例
日本では、女性起業家を支援する様々な国の取り組みを実施しています。ここからは、経済産業省や自治体の女性活躍支援の実績についてご紹介していきます。
経済産業省の取り組み
経済産業省では、女性起業家支援施策として起業応援団による支援プログラムの提供など、さまざまな取り組みが行われています。平成30年12月には、女性起業支援モデルの創出や他地域への横展開を目的としたコンテストも開催されたようです。
令和1年4月には、平成28年〜30年の3年間の実施で得られた優良事例をまとめたノウハウ集が作成・公開されました。
ノウハウ集では、女性起業家等支援ネットワーク構築事業の概要や、構成される機関の情報が確認できます。
令和1年2月時点では全国550の機関で構成され、全国各地で女性起業家を支援していたようです。
北は北海道、南は沖縄まで、経済産業省をはじめとした多くの機関では、女性起業家を支援しています。しかし、この情報は、まだまだ知られていない情報の一つと言えるでしょう。ノウハウ集をはじめ、豊富な情報を得た上で起業家を目指したい人は、この機会に支援ネットワークを活用してみると良いかもしれません。
北海道|女性活躍推進部
旭川市は、女性起業家を支援するために多岐にわたるサポートを提供しています。まず、起業に関する実務講座やセミナーを開催し、女性が必要な知識を習得できる機会を提供しています。これに加えて、先輩起業家との交流会を実施し、実際の経験やノウハウを学べる場を作っています。また、個別相談の機会もあり、具体的な問題や悩みを専門家と一緒に解決するサポートも行っています。
さらに、女性起業家のネットワーク構築を促進し、同じ立場の仲間と情報交換や支援をし合える環境を整備しています。加えて、テレワークスペースの無料開放や定期的な勉強会も提供し、女性が起業活動に集中できる環境をサポートしています。
デジタルスキルの向上を目的とした職業訓練や、ライフステージに応じた就労支援も実施。これにより、女性が家庭と仕事を両立しながら、自立して収入を得るための支援を行っています。
これらの支援により、女性が地域で活躍し、持続的な成長を実現できるよう、旭川市は多角的なサポートを続けています。
埼玉県|草加市女性創業スタートアップ事業
草加市では、女性創業スタートアップ事業「わたしたちの月3万円ビジネス in 草加」を展開しています。子育てやその他の家庭の事情と並行してビジネスを始めたい女性を支援するプログラムです。
この取り組みでは、女性が自分の得意なことや趣味を活かし、月3万円を稼ぐ小規模なビジネスを立ち上げることを目指しています。参加者は、ビジネスアイデアを具体化するためのワークショップや講座を受け、地域とのつながりを深めつつ、実際に自分のビジネスを展開します。
卒業生は地域イベントに出店したり、ワークショップの講師として活躍するなど、ビジネスを通じて地域社会に貢献しています。また、託児サービスも提供され、子育て中の女性も参加しやすい環境が整えられています。
参考:草加市女性創業スタートアップ事業「わたしたちの月3万円ビジネス in 草加」
関連記事:起業・創業する際の資金調達の方法とは?知っておきたい資金調達まとめ
女性の起業を後押しする支援策をフル活用しよう
国や地方自治体では、女性起業家向けに多種多様な支援策を導入しています。助成金や補助金、融資などの資金調達手段に加え、女性特化型プログラムや地域密着型の支援策は、起業成功への大きな助力となるでしょう。
なお、資金調達における手続きや最適な方法を検討する際は、専門家である税理士に相談するのも方法の一つです。資金調達をはじめ、起業に必要な手続きについて相談を希望する際は、ぜひ小谷野税理士法人をご利用ください。