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共同経営における経費処理のルールと注意点について解説

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共同経営における経費処理のルールと注意点について解説

夫婦や友人、ビジネスパートナーなど、複数人で事業を行う共同経営では、経費処理の取り決めが非常に重要です。出資比率や経費の管理が曖昧だと、税務リスクだけでなく関係悪化にも繋がりかねません。本記事では、共同経営における経費の基本ルールから実務で使える按分方法、よくあるトラブルとその対策について解説します経費処理に不安を感じている共同経営者の方は、ぜひ最後までご覧ください。

そもそも「共同経営」とは

共同経営とは、複数の個人が資金や労力を出し合い、協力して1つの事業を運営する形態を指します夫婦や親族、友人、ビジネスパートナーなど、身近な関係者同士で始めるケースも多く、信頼関係を前提とした事業スタイルとして広く見られます。

特に法人化せず、個人事業として共同経営を行う場合は、法的なパートナー契約を結ばず、口約束や慣習に基づいて運営されることも珍しくありません。

しかし、その場合、責任の所在や利益・経費の配分方法が曖昧になり、トラブルの原因となるリスクもあります。

だからこそ、共同経営ではあらかじめルールを明文化し、誰が何を負担し、どう分配するかを明確にしておくことが極めて重要と言えます。

関連記事:個人事業主の共同経営は可能?主な形態や親子・友人・夫婦との経営について

共同経営における経費の基本ルール

資産運用

共同経営では、経費の扱いを明確にしておかないと後々トラブルの原因になります。共同事業を円滑に進めるために知っておくべき経費処理の基本ルールを解説します。

関連記事:開業前にかかった費用を経費にするには?会計処理と節税のポイントを解説!

経費は事業に直接関係するものだけが対象になる

事業と関係のある支出のみが経費として認められます。

例えば、共同で使用する道具の購入費や会議の交通費など、業務遂行に必要な支出であれば経費計上が可能ですが、プライベートな食事代や家族旅行など、個人の生活に関わる費用を経費に含めることはできません。

名義人による支払いでも按分可能

代表者名義で支払った経費も、全体で使ったものであれば按分可能です。

共同経営では、実務上代表者名義のクレジットカードや口座で支払いを行う場面が多くありますが、支出の性質が事業全体に関わるものであれば、他の経営者と費用を按分して処理することが可能です。

ただし、領収書や契約書の名義が一致していないと経費として認められにくくなるため、原則として代表者名義に統一し、支出の根拠となる書類を適切に保管することが重要です。

関連記事:領収書なしでも経費計上は可能?代替書類と具体的な対処法を解説!

関連記事:家事按分とは?経費にできる割合や目安、計算方法を解説

持ち出し経費と共通経費を区別する

立て替えた経費と、事業全体で支払われた共通経費は処理方法を分けて管理する必要があります。

例えば、個別のメンバーが事務用品を立て替えて購入した場合は「持ち出し経費」として扱い、後から適切に精算を行う必要がありますが、事業用口座から直接支払われた家賃や水道光熱費などは「共通経費」として、全員の経費としてそのまま計上されます。

この区別を明確にしておかないと、精算漏れや二重計上のリスクが高まり、トラブルの原因になります。経費帳や精算書を活用して、支出内容を日々整理しておきましょう。

個人の確定申告で各自が経費処理を行う

法人化していない共同経営では、確定申告は各自で行う必要があります。

個人事業主が複数人で共同経営をしている場合でも、税務上はそれぞれが独立した納税義務者として扱われるため、収入・経費・利益は各人が按分割合に従って計算し、個別に確定申告を行わなければなりません。

また、同じ支出を双方が重複して計上すると否認される可能性があるため、記帳内容や領収書の管理はお互いに共有し、整合性を保つことが求められます。

共同経営における経費の按分方法

共同経営では、経費をどのように分担するかが非常に重要です。曖昧な按分は不公平感やトラブルのもとになるでしょう。

実務で使える按分方法について解説します。

出資割合に応じた按分

出資比率に応じて経費を分けるのが最も基本的で公平な方法です。経費の按分方法として最もシンプルで明確なのが、出資割合に応じて分担する方法です。

出資額が経営に対する責任や利益配分のベースとなるため、按分にも適用しやすいのが特徴です。

例)出資金100万円のうち、Aが60万円、Bが40万円出資した場合(出資比率6:4)

  開業時の広告費10万円を按分する場合

  • A:10万円 × 60% = 60,000円
  • B:10万円 × 40% = 40,000円

    → Aが60,000円、Bが40,000円を負担

労働時間・貢献度による按分

実際の労働量や業務への関与度に応じて経費を按分する方法です

経営に対する関与度が大きく異なる場合、出資だけでなく「誰がどれだけ働いているか」に応じて経費を分けることも有効でしょう。

この方法は実態に即した柔軟な按分が可能ですが、合意形成と記録の明確化が必要です。

例)Aが週30時間、Bが週10時間働いている場合(労働比率3:1)

  月の通信費80,000円を按分する場合

  • A:80,000円 × 75% = 60,000円
  • B:80,000円 × 25% = 20,000円

    → Aが60,000円、Bが20,000円を負担

固定額+変動額で分ける

固定費は折半、変動費は実績に応じて按分する複合的な方法です

事務所家賃などの固定費は等分しつつ、仕入や外注費などの変動費は売上実績や業務量に応じて按分する方法です。経費の性質に応じて合理的に分けられるため、実務上多く採用されています。

例)事務所家賃80,000円は折半、仕入12万円は売上比率A:70%、B:30%で按分する場合

  • A:家賃40,000円 + 仕入れ84,000円 = 12万4,000円
  • B:家賃40,000円 + 仕入れ36,000円 = 76,000円

    → Aが12万4,000円、Bが76,000円を負担

契約書で按分ルールを明記する

トラブル防止のために按分ルールは文書で明確にしておくのが有効でしょう

出資比率や労働時間に基づく按分方法を合意していても、記録が残っていないと後々認識のズレや言い分の違いが生じやすくなります。

共同経営では、口約束ではなく、契約書や覚書として按分ルールを事前に文書化しておくことで、トラブルを未然に防ぎ、税務上の根拠としても有効に機能します。特に開業時や経費負担が増えるタイミングでの文書化が推奨されます。

共同経営における経費処理のトラブル事例

共同経営では、経費の扱いを誤ると税務リスクだけでなく、信頼関係の崩壊にも繋がります。実際に起こりやすいトラブル事例をご紹介します。

経費を二重計上してしまった場合

同じ領収書を複数の経営者がそれぞれ経費として申告することは認められません重複計上は、税務調査で否認される可能性が高く、場合によっては過少申告加算税などのペナルティが課されるおそれもあるので注意しましょう。

共同経営では、領収書や請求書を共有管理し、どちらが処理するかを明確にルール化しておくことが重要です。会計ソフトやスプレッドシートなどで経費情報を共有しておくと、重複申告のリスクを減らすことができます。

私的支出を経費に含めてしまった場合

プライベートな支出を経費として処理することは、税務上認められません。

例えば、家族との食事代や個人の買い物など、事業と無関係な支出を経費に計上してしまうと、税務署から否認されるだけでなく、経営パートナーからの信頼も損なわれかねません。

共同経営では、曖昧な支出を避けるために、用途を明記する記録や領収書をきちんと保管することが必要です。経費帳に目的を明確に記載しておくことで、私的支出との線引きがしやすくなるでしょう。

支払名義と実際の使用者が異なる場合

支払名義と実際に経費を使った人が一致していないと、経費として認められないことがあります

例えば、Bの業務用備品をA名義のクレジットカードで支払った場合、その支出が誰の業務に関連しているのかが明確でないと、税務上疑問視される可能性があります。

このようなトラブルを防ぐには、誰がどの支出をしたのかを帳簿で明確に記録するか、共同名義の事業用口座を利用することが効果的でしょう。

精算が行われず不公平が生じた場合

立て替えた経費の精算が行われないと、不満が積もり関係悪化を招くおそれがあります

共同経営では、一時的に片方が経費を負担することはよくあるものの、その精算が曖昧になると「いつも自分だけが負担している」といった不公平感に繋がります。

経営が長く続くほど小さな差が積み重なりやすいため、月末や四半期末など、定期的な精算ルールを設けておくことが重要です。

経費の按分方法が曖昧な場合

経費をどう分担するかの基準が曖昧だと、必ずトラブルの火種になります。

出資比率や労働時間、業務分担などに応じて、どの経費をどの割合で負担するのかを事前に決めておかないと、「これは誰の支出なのか」、「どこまでが共通経費なのか」といった混乱が生じるでしょう。

こうした摩擦を避けるには、按分ルールを契約書や覚書で明文化しておくことが不可欠です。合意内容が文書で残っていれば、後の解釈の違いも防ぐことができます。

共同経営の経費処理で押さえておきたい会計のポイント5つ

共同経営では、信頼関係と正確な記帳が両立してはじめて経営が安定します。ここでは、共同経営における会計処理で特に重要な以下5つのポイントを解説します。

  1. 名義を統一し、証拠書類との整合性を確保する
  2. 経費の用途を具体的に記録する
  3. 経費精算のルールと頻度をあらかじめ決めておく
  4. 記録は7年間保存し、税務調査に備える
  5. 会計ソフトを導入して共同管理を効率化する

名義を統一し、証拠書類との整合性を確保する

経費の支払いに使う口座や領収書の名義は、できるだけ統一して管理しましょう

名義がバラバラだと、帳簿上の記録と実際の支出の整合性がとれず、税務署から経費として認められない可能性があります。特に支出の責任の所在が不明確な場合、トラブルや否認のリスクが高まるでしょう。

代表者名義などに集約することで、一貫性が生まれ、確認や精算もスムーズに行えるようになります。事業専用の口座やカードを用意するのが理想的です。

経費の用途を具体的に記録する

経費の内容は、項目名だけでなく具体的な用途まで記録しましょう

単に「交通費」や「備品代」とだけ入力するのではなく、「〇月〇日 商談のための移動費」や「〇〇購入分」と明記することで、後から見直す際にも内容をすぐに把握できます。

税務調査の際にも、経費の妥当性や必要性を説明しやすくなるでしょう。

経費精算のルールと頻度をあらかじめ決めておく

精算ルールを明確にし、定期的なタイミングで実行しましょう

経費を立て替えたまま精算が行われないと、不公平感が生じて関係悪化の原因になります。とくに継続的な経営では、こうした小さな不満が蓄積されがちです。

月末や四半期ごとに精算日を設けるなど、あらかじめ頻度と方法をルール化しておくことで、トラブル防止に繋がるでしょう。記録や証憑とあわせて、簡単な精算書を作成しておくとさらに安心です。

記録は7年間保存し、税務調査に備える

経費に関する証拠書類は、原則7年間保存する必要があります

領収書・請求書・契約書などの書類は、税務調査で提示を求められることがあるため、日付・金額・支払先などの情報が明確に確認できる状態で保管しておくことが重要です。

紙の書類は紙媒体でも電子保存でも可能ですが、スキャンした場合は内容が鮮明に読み取れることなどが条件です。定期的なバックアップと保管体制の見直しも忘れずに行いましょう。

会計ソフトを導入して共同管理を効率化する

クラウド型の会計ソフトを導入することで、経費処理の透明性と業務効率が向上します。

複数人でのリアルタイムな帳簿管理やデータ共有が可能になるため、共同経営においても按分処理や仕訳の自動化がスムーズに行えるでしょう。経理作業の属人化を防ぎ、記帳ミスや漏れのリスクも軽減できます。

さらに、スマートフォンからの入力やクラウド上での保存にも対応しているため、出先からの操作やデータの一元管理も容易です。

共同経営における経費処理に関するよくある質問

Q&A

共同経営を行う中で多くの方からよく寄せられる疑問点をご紹介します。

経費の名義が相手でも自分の経費にできますか?

名義がパートナーであっても、自分の事業に必要な支出であれば経費として計上することは可能です

ただし、その支出が事業に直接関連していることを証明できるよう、用途を明記した記録や業務の関連性が分かる資料、振込明細などを保管しておくことが重要です。

税務上は名義よりも実質的な使用実態が重視されるため、事業目的での支出であることが第三者にも説明できるように準備しておく必要があります。

税務署に共同経営の届け出は必要ですか?

個人事業主同士で共同経営をしている場合、税務署への特別な届け出は原則として不要です

それぞれが独立した納税者として扱われるため、各自が確定申告を行い、収支や経費を正しく申告していれば問題ありません。

ただし、出資比率や経費の按分方法などを契約書にまとめておくことが望ましく、税務署からの確認にも対応しやすくなります。青色申告を希望する場合は、各人が別々に開業届と承認申請書を提出する必要があります。

確定申告は共同でできますか?

共同経営であっても、確定申告はそれぞれが個別に行う必要があります

個人事業主は独立した納税義務者とされるため、共通経費や売上がある場合も、取り決めた按分割合に従って各自が帳簿に記録し、それぞれの確定申告書に反映させます。

共通経費を双方で重複計上してしまうと否認されるおそれがあるため、経費管理は明確にルール化し、帳簿や領収書を共有する体制を整えておきましょう。

共同経営の経費処理に不安がある方は専門家に相談

共同経営は信頼関係に基づいて成り立ちますが、経費処理の取り決めが曖昧なままだと、後にトラブルへ発展するリスクがあります。

経費の按分方法や帳簿記録、確定申告の対応について明確なルールを定めずにいると、税務調査で否認される可能性や、パートナー間の信頼関係に悪影響を及ぼすことも考えられます。

こうしたリスクを避けるには、税務の専門家に相談することが最も確実な方法でしょう

小谷野税理士法人では、共同経営における経費処理や契約書の整備、申告対応に至るまで、豊富な経験に基づく総合的なサポートを提供しています。安心して経営に集中するためにも、ぜひ一度、小谷野税理士法人にご相談ください。

 

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
  • 会社設立の基礎知識 特集「法人のための確定申告」
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