建築や土木業界の経理担当者の中には、工事費の勘定科目について理解を深めたいと思う方も多いでしょう。工事費の内訳には、費用に関する詳細が記載されており、どう処理して良いか判断に迷うといったケースが少なくありません。この記事では工事費の概要とあわせて、各工事の勘定科目の仕訳方法と仕訳におけるポイント、注意点について解説します。
小谷野税理士法人では、工事費の勘定や仕訳などに悩む方のご相談にも対応しています。
ぜひお気軽にご相談ください。
目次
工事費とは?
工事費とは、工事に必要となる費用のことで、一般的には「直接工事費」や「間接工事費」のことを指します。
直接工事費は工事に必要な費用を、間接工事費は工事に直接関わらないものの、間接的に必要となる費用です。それぞれをどう分けるべきか迷ったときは、工事との関係性を深掘りすることでイメージしやすくなるでしょう。
各工事の仕訳で使う勘定科目
ここからは、各工事の仕訳で使う勘定科目について解説します。工事と言っても、業界によって勘定科目や目的が異なるので、この機会にどのような勘定科目が使われるのかを押さえておきましょう。
内装工事の場合
内装工事費を支払った場合は、一般的には以下の勘定科目を用いて資産計上します。
名称 | 概要 |
---|---|
建物 | 建物の内装工事を行った費用 |
建物付属設備 | 建物に固定された設備を取り付けた場合の費用 |
消耗品費 | 業務で使用する備品として、10万円未満のものを購入した場合 |
工具器具備品 | 業務で使用する備品として、10万円以上のものを購入した場合 |
たとえば、建物で処理する場合の工事例としては、左官工事や塗装工事、防水工事などが挙げられます。建物の工事にあたって固定して動かすことができないものについては、「建物」の勘定科目を使用しましょう。
関連記事:固定費と変動費の違いは?分類の仕分けや指標、計算方法について
設備工事の場合
設備工事の費用を仕訳する場合は、資産か経費かによって処理方法が異なるので注意が必要です。資産に該当する工事は、工事後の設備が価値の向上や寿命の延長につながる場合です。一方、経費に該当する工事は、設備の原状回復を目的とした工事となります。
仮に、ある工事を行い、資産計上する場合であれば、一般的には以下の勘定科目を用います。
名称 | 概要 |
---|---|
建物 | 建物本体の工事費用 |
構築物 | 外構工事や付属設備の取付費用 |
機械装置 | 生産設備等の導入や設置に関する費用 |
工具器具備品 | 小型設備や事務用機器を購入した費用 |
設備の価値を高める際や耐用年数を伸ばす目的の場合は、固定資産の勘定科目で計上し、減価償却してください。
関連記事:売掛金・未収入金の違いは?仕訳例や計上方法、注意点まとめ
改修工事の場合
改修工事を行った場合の勘定科目は以下の通りです。
名称 | 概要 |
---|---|
修繕費 | 建物の修繕に生じた費用 |
資本的支出 | 建物の資産価値、耐久年数向上を目的とした工事の費用 |
たとえば、マンションを経営する方が建物の修繕を目的に工事を行った場合は、修繕費を使用します。修繕費は確定申告にて一括で費用計上できるので、所得総額を抑えることが可能です。
仮に、マンションの修繕が資産価値や耐久年数の向上を目的とした場合は、資本的支出に仕訳します。見分けがつきにくい項目ですが、改修工事の場合も、「一般的な修繕」か「価値の向上」かで仕訳することが可能です。
工事内容の目的を確認することで、正しい仕訳につながるでしょう。
小谷野税理士法人では、工事費の形状や仕訳などについてアドバイス・サポートを行っています。
ぜひお気軽にご相談ください。
勘定科目を正しく仕訳するためのポイント
業種や工事の種類、目的によって、仕訳するべき勘定科目が異なります。では、実際に発生した工事を正しく仕訳するためには、どのようなポイントに留意すれば良いのでしょうか。
ここからは、勘定科目を正しく仕訳するためのポイントについて解説します。
取引内容に合わせた勘定科目を探す
まずは、仕訳したい取引に沿った勘定科目を探しましょう。たとえば、現金での売上があり、その金額が3万円だったときの勘定科目は、「現金」と「売上」の勘定科目を使用します。
該当する勘定科目をグループ分けする
次に、勘定科目をグループ分けします。
- 資産
- 負債
- 純資産
- 収益
- 費用
勘定科目は上記5つに分類されるので、適切な項目に分けてください。上述した例を使用するとすれば、「現金」は「資産」、「売上」は「収益」のグループです。
関連記事:メンテナンス費用の勘定科目は?会計処理時の注意点も解説
借方・貸方に勘定科目および金額を記載する
勘定科目ごとのグループ分けが終わったら、次は借方と貸方のどちらに該当し、何を記載するのかを調べます。上例であれば、現金を受け取っていることが明らかなので、企業資産が増えたことになります。そのため、左の借方に「現金」と記載しましょう。
また、現金を受け取った理由が企業の売上であり、収益も増えています。そのことから、右の貸方には「売上」の勘定科目と金額を記載してください。
工事費の経費計上でお悩みの方や、申告内容に不安がある方は、ぜひ一度小谷野税理士法人までご相談ください。
仕訳における注意点
工事費に限らず、さまざまな取引を正しく仕訳するためには、以下3つの注意点に留意することが大切です。
- 借方・貸方の合計額が一致しているかを確認する
- 勘定科目のグループ分けを正しく行う
- 取引先が多いときは補助元帳を作成し管理する
正しい仕訳には、取引がどのような目的で何が行われたのか、どの程度の金額が増減したのかを明確にすることが欠かせません。取引の詳細を把握していないと、借方・貸方のどちらに仕訳して良いのか判断できないためです。
仮に、借方・貸方の合計額が一致していなかった場合は、計上や計算に誤りがあることが分かります。不備が生じる可能性をきちんと把握できるため、より正確な仕訳につなげやすくなるでしょう。
また、建築・土木など、業界によって勘定科目の名称が異なります。正しくグループ分けするためには、勘定科目の意味について理解を深めることが大切です。「修繕費」「付属設備」「工具器具備品」など、さまざまな勘定科目があるため、どれに該当するのかをきちんと把握したうえで仕訳しましょう。
なお、大手企業の会計処理等であれば、取引先が多く仕訳が困難になることも少なくありません。そのようなときは、補助元帳を作成し管理をスムーズにさせる方法や、会計士などに相談することをおすすめします。
会計処理に迷ったときは会計の専門家に相談を
今回は工事費の概要と各工事の勘定科目、仕訳のポイントについて解説しました。工事費は、工事内容に応じて、建物や建物附属設備など、正しい科目への分類が欠かせません。また、仕訳方法や減価償却について理解を深めることも大切です。
日頃の会計処理に悩み、どのような方法で仕訳すれば良いのか相談したい方は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。