共同経営は、1人の起業に比べて資金やスキルを補い合えるメリットがある一方で、パートナーとの意見の食い違いや責任の不明確さからトラブルに発展することも少なくありません。この記事では、共同経営で実際に起こりやすいトラブルの例とその原因、そして失敗を防ぐための具体的な対策について分かりやすく解説します。
目次
共同経営とは
共同経営とは、複数の人が資金を出し合い、それぞれの役割や責任を分担しながら一つの会社や事業を運営する経営スタイルを指します。
1人の起業に比べて資金を集めやすく、各自の得意分野を活かした役割分担ができるのが特徴です。また、複数人で運営することで、多角的な視点を取り入れやすいといったメリットもあります。
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共同経営で起こりやすい6つのトラブル例
共同経営は、互いの強みを活かし合いながら事業を拡大できる可能性を持つ一方で、価値観の違いなどが原因でトラブルが生じることも少なくありません。ここでは、実際に起こりやすい6つのケースとその背景を紹介します。
意見の対立により意思決定が遅れる
経営方針や事業の方向性について共同経営者間で意見が分かれることは、共同経営でよくある問題と言えるでしょう。それぞれ異なる経験や価値観を持つ者同士の議論自体は、必ずしも悪いことではありません。むしろ、健全な意見交換は事業の発展にもつながります。
しかし、感情的な対立に発展してしまうと、関係性の悪化や意思決定の遅れといったリスクを招く恐れがあります。特に、迅速な意思決定が求められる場面で共同経営者間の合意に時間がかかると、ビジネスチャンスを逃すリスクも生じます。
責任範囲が不明確になる
共同経営において、それぞれの責任範囲が曖昧なままスタートすると、ミスが発生した際に「誰が責任を負うのか」が不明確になりがちです。結果として、責任の擦り付け合いに発展し、信頼関係にひびが入ってしまうことも考えられます。
担当範囲が不明確だと業務が滞ったり、対応の質が落ちたりする恐れもあるため、あらかじめ責任範囲を明文化しておくことが重要です。
業務負担や権限のバランスに偏りが生まれる
どちらかに業務が集中したり、重要な決定権を持ったりする場合には不公平感が生じ、不満が溜まりやすくなります。
このような状況が続くと、業務負担が大きい側は疲弊し、権限が少ない側はやる気を失うといった悪循環が起きかねません。負担の割合や権限をバランスよく配分することが、健全な関係を保つカギとなるでしょう。
金銭トラブルが発生する
共同経営における金銭トラブルは非常に多い事例です。出資比率や利益・損失の分配方法が曖昧だと、利益が出た際の配当や、損失が発生した場合の負担割合を巡ってトラブルになりやすいのです。
また、経費の私的利用や、資金の管理方法に対する認識のズレも金銭面での対立を招く要因となります。お金に関する問題は感情的な対立になりやすく、信頼関係を根底から揺るがすリスクがあるため、事前のルール設定が欠かせません。
人間関係の悪化が事業に影響する
共同経営では、日常的なコミュニケーションや信頼関係が事業に影響します。価値観の違いやすれ違いが積み重なり関係が悪化すると、協力体制が崩れ、スムーズに連携が取れなくなるでしょう。
一度こじれた人間関係の修復は容易ではありません。深刻な仲違いに発展すると、共同経営の継続自体が困難になることもあります。
共同経営の解消時にトラブルが起きる
共同経営のスタート時は明るい未来を思い描いていても、将来的に共同経営を解消する可能性も考えておく必要があります。共同経営の解消時には、出資金の返還や財産の分配、事業の引き継ぎなどを巡って対立が起きがちです。
特に、事業がうまくいっていない状態での解消や、一方的な離脱の申し出がある場合は互いに感情的になり、円満な解消が難しくなる傾向があります。
このようなリスクを避けるためには、事前の取り決めや合意形成を丁寧に行うことが重要です。必要であれば、トラブル回避のための契約書作成や専門家への相談も検討しましょう。
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友人との共同経営における注意点
友人と共同経営を始めるケースはよく聞くでしょう。しかし、良好な友人関係が必ずしも共同経営の成功につながるとは限りません。
友人同士という気心の知れた関係性は強みになる一方で、ビジネス上の意見を率直に伝えにくくなったり、遠慮して本音を言えず、不満が蓄積したりする可能性も。特に、金銭が絡む問題は、事業だけでなく友人関係にも深刻な影響を与えることもあるでしょう。
そのため、単なる友人ではなく「共同経営者」としての責任や役割分担を明確にし、責任や役割、金銭の取り決めなどをあらかじめ文書化しておくことが重要です。
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共同経営で失敗しないための3つの対策
共同経営には上記で挙げたようにさまざまなリスクが伴いますが、事前の備えと適切な対策によって、多くのトラブルを回避することが可能です。ここでは、共同経営を円滑に進めるために実践したい3つの対策をご紹介します。
役割と責任範囲を明確にする
共同経営を始めるなら、それぞれの役割と責任範囲を明確に定めておきましょう。「誰が、どのような業務を、どの範囲で担当するのか」「意思決定の権限はどう分けるのか」を具体的に文書化しておき、業務の重複や漏れを防ぎましょう。
責任の所在をはっきりさせると、不公平感や対立の芽を摘むことができ、トラブル発生時にも迅速な対応が可能となります。お互いが自身の役割と責任を理解し合うことは、共同経営者間の信頼関係を築く基盤ともなるでしょう。
契約書を作成する
口約束だけで経営を始めてしまうと、後々のトラブルの火種になります。共同経営の際は、契約書に以下のような内容を明記しておくことが望ましいです。
- 出資比率や報酬の取り決め
- 利益・損失の分配方法
- 役割と責任範囲
- 意思決定の方法
- 共同経営の解消時の対応(清算や引き継ぎなど)
契約書は単なる形式的なものではなく「万が一の時に揉めないための明文化された約束事」です。起こりうるさまざまなケースを想定し、共同経営者同士で十分に話し合いましょう。
専門家に相談する
共同経営をしようと考えた時や、万が一のトラブルが発生した場合には、弁護士や税理士などの専門家のサポートを受けるのがおすすめです。
契約書の作成や資金面の取り決め、法的トラブルへの対応など、自分たちの判断だけではカバーしきれないリスクに備えられるでしょう。
特に、金銭問題や共同経営の解消といった法的な側面が強い問題については、専門家の知識と経験が欠かせません。
感情的な対立にも発展しやすいため、第三者の冷静な視点とアドバイスは非常に有効です。早い段階で相談することで、トラブルの予防や早期解決につながります。
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まとめ
共同経営は、互いの強みを活かしつつ事業拡大できる可能性がある一方で、意見の対立や金銭トラブル、人間関係の悪化など、さまざまなリスクも伴います。失敗を防ぐには、役割や責任を明確にし、契約書でルールを定めることが大切です。
友人との共同経営の場合は、ビジネスとプライベートをしっかりと区別し、ビジネスとして冷静に対応する姿勢が求められます。
問題が起きた際は、専門家への相談を検討しましょう。共同経営者と良好な関係を築き、適切にリスク管理を行うことで、事業を成功に導けるはずです。