0120-469-383平日 9:00~18:00 税理士に相談(相談無料)
会社設立の基礎知識

経費は来年に持ち越しできる?年度をまたぐ経費処理のルールと注意点を解説

公開日:

経費は来年に持ち越しできる?年度をまたぐ経費処理のルールと注意点を解説

年度をまたいで発生する経費について、いつの年度に計上すべきか迷うことは少なくありません。特に年末や決算期には、経費を翌年に持ち越してよいのか、税務上の処理ルールを正しく理解しておく必要があります。本記事では、経費の持ち越しに関する基本ルールや具体例、注意点までわかりやすく解説します。年度をまたぐ経費処理に不安がある方はぜひ最後までご覧ください。

目次

経費を来年に持ち越すことはできる?

経費を来年に持ち越すことは、原則としてできません。法人や個人事業主は「発生主義」に基づき、サービスの提供や商品の納品が完了したタイミングで、その年度の経費として計上する必要があります。

支払日ではなく、取引が実際に発生した時点で処理することが、税務上の基本ルールです。

関連記事:経費は使ったほうが得?メリットや節税につながる仕組み、経費率の目安について解説!

経費は発生した年度で計上するのが原則

経費は、サービスの提供や商品の納品が行われた年度に計上する必要がありますこれは、法人や個人事業主には「発生主義」という会計処理の原則が適用されるためです。

たとえ支払が翌年であっても、取引が完了していればその年度の費用として処理しなければなりません。

年度をまたぐ取引は「提供日」で判断する

経費の計上年度は、契約日や支払日ではなく、実際の提供日や納品日などで判断します。なぜなら、経費処理は取引の実態に基づくべきとされており、サービスを受けた時点が費用発生のタイミングとされるからです。

翌期に経費をずらすと税務否認のリスクがある

本来その年に計上すべき経費を翌年に持ち越すと、税務調査で否認されるリスクがあります。恣意的な費用操作と判断されるおそれがあり、悪質とみなされれば追徴課税などのペナルティを受ける可能性もあるでしょう。

経費を来年に持ち越しする具体例

雑損控除における確定申告のイメージ

前述の通り、経費は原則としてその年に発生した取引に基づいて処理する必要があり、来年に持ち越すことは基本的に認められていません。

しかし、実務上は年度をまたぐ契約や支払い、提供タイミングのずれなどにより、経費が翌期に計上されるケースも存在します。こうした場合も、発生主義に基づく正確な判断が求められます。

実際によくあるケースをもとに、処理の考え方を具体的に解説します。

関連記事:個人事業主が経費計上できる項目と事例、経費の落とし方を徹底解説!

商品が年内に納品され、支払いが翌年になる場合

経費は、商品の納品やサービスの提供が完了した年度に計上します。支払時期が翌年であっても、納品などが年内であれば、その年の経費として処理するのが原則です。

発生主義では、支払いの有無ではなく、実際に取引が完了した日をもとに会計処理を行いましょう。

請求書の到着が遅れても、納品書や受領書などの記録が整っていれば、当年度の経費として認められます。

契約が年内でもサービス提供が翌年に始まる場合

サービスの提供が翌年に開始される場合、その費用は翌年の経費として計上しますたとえ契約日や支払日が年内であっても、サービスの実施日が翌年であれば、経費は翌年のものとするのが会計上の原則です。

契約書に明記された提供開始日や利用期間をもとに、適切な年度で処理することが重要です。早期契約による前倒し計上は、税務リスクを伴うため注意しましょう。

定期購読やライセンス料が年度をまたぐ場合

定期購読やライセンス使用料など、複数月にわたるサービス費用は、提供期間に応じて分割して計上する必要があります

1年分をまとめて支払った場合でも、実際の提供が年度をまたぐ場合は、当年度分と翌年度分を按分し、それぞれの期間に対応する費用として処理します。

契約書や請求書に記載されたサービス提供期間を確認し、前払費用の計上と振替を行うことで、正確な処理が可能になります。

出張旅費の精算が年明けになった場合

出張が年内に実施されていれば、その旅費は当年度の経費として計上することが可能です。精算や領収書提出が翌年になった場合でも、実際の出張日が基準になります。

活動内容や旅程表、交通費や宿泊費の領収書の発行日などの証憑が整っていれば、経費を年を越えて申告することは税務上問題ないでしょう。経理処理上は未精算でも、発生日を基準に適切に処理しましょう。

修繕や工事が年度をまたぐ場合

修繕や設備工事などが年度をまたいで実施される場合、費用の計上タイミングは工事の完了日や設備の使用開始日を基準に判断します

前払金や着手金があった場合でも、工事が未了であればその支出は「前払金」として資産計上し、完了後に処理する必要があります。

契約書、進捗報告書、検収書などをもとに、実際の成果提供時点に対応する年度で正しく処理しましょう。

経費を来年に持ち越す際の注意点5つ

税金のイメージ

年度をまたぐ経費処理では、税務上のルールや会計上の原則を正しく理解しておくことが不可欠です。処理ミスや税務否認を防ぐために、以下5点を必ず押さえておきましょう。

  1. 無理な前倒し計上は税務否認のリスクがある
  2. 記録と証拠書類をしっかり保管する
  3. 継続的な契約は「期間対応」の考え方が必要
  4. 経費の計上ミスは後で修正申告が必要になる
  5. 決算前に経理担当者と相談・確認を行うことが重要

無理な前倒し計上は税務否認のリスクがある

提供を受けていないサービスや商品を事前に経費として計上すると、税務調査で否認される可能性があります

発生主義の原則に反する不自然な処理とみなされ、追徴課税や修正申告の対象になるリスクがあります。

経費はあくまで取引が発生した時点で処理すべきものであり、支払タイミングや期末対策の都合で先に計上することは避けるべきです。

記録と証拠書類をしっかり保管する

年度をまたぐ経費処理では、契約書、納品書、請求書、受領書などの書類を確実に保管しておくことが重要です。

経費の発生時期を証明できる書類があれば、後々の税務調査でも正当性を示すことができます。特に提供日や納品日が重要な判断材料となるため、日付の記載された証憑類は整理して保存しておきましょう。

継続的な契約は「期間対応」の考え方が必要

複数月や複数年にわたる契約は、一括で費用処理せず、提供期間ごとに費用を分けて計上する必要があります。

クラウド利用料やソフトウェアの年間ライセンス料などは、「前払費用」として処理し、該当月ごとに振替仕訳を行います。

税務上も「期間対応」の処理が求められるため、契約内容に応じた会計処理を徹底しましょう。

経費の計上ミスは後で修正申告が必要になる

誤って誤年度に経費を計上した場合には、正しい年度に修正するために「修正申告」や「更正の請求」が必要になる場合があります

これは税務署への正式な手続きとなり、手間と時間がかかるだけでなく、場合によっては延滞税や過少申告加算税の対象にもなるでしょう。初回から正確な処理を行うことで、後々のトラブルを未然に防ぐことができます。

決算前に経理担当者と相談・確認を行うことが重要

年度末は支出や請求が集中し、経費処理が複雑になる時期です。迷った場合は、経理担当者や顧問税理士に早めに相談しておくことで、誤った会計処理を防ぐことができるでしょう

特に提供日や支払日の判断が難しい取引では、専門家の判断を仰ぎながら処理を進める体制を整えることが、組織全体の経理精度向上にも繋がります。

来期にずれた経費の処理方法

仕訳のブロックと電卓

年度をまたぐ取引が発生した場合でも、適切な処理を行えば経費として正しく認められます。以下に、会計実務でよくあるケースと、それぞれの処理方法を具体例付きで解説します。

納品・請求が翌期にずれた場合

サービスの提供や商品の納品が翌期であれば、その翌期に経費を計上します。発注日や契約日ではなく、実際の提供日が会計処理の基準となります。

例)12月に発注、1月に納品・請求(手数料 50,000円)

  → 経費計上は2026年1月

借方

貸方

支払手数料

50,000円

未払金

50,000円

支払い済みで提供が翌期にずれた場合

決算前に支払いが完了していても、提供が翌期なら「前払費用」として資産計上し、翌期に振替仕訳を行います

例:3月に支払、4月に提供(50,000円)

  → 前払費用は2026年3月に計上し、費用振替は4月に実施

【2026年3月:支払時】

借方

貸方

前払費用

50,000円

現金

50,000円

【2026年4月:提供時に費用へ振替】

借方

貸方

支払手数料

50,000円

前払費用

50,000円

提供済みで支払いが翌期にずれた場合

サービスの提供が完了していれば、支払が翌期であっても当期の経費として「未払」などを用いて計上します

支払いの有無に関係なく、実態に即して処理することが求められます。翌期の支払時点で負債を解消する仕訳を行います。

例)3月にサービス提供、支払いは4月(50,000円)

   → 経費計上は2026年3月、支払処理は4月

【2026年3月:提供時】

借方

貸方

支払手数料

50,000円

未払費用

50,000円

【2026年4月:支払時】

借方

貸方

未払費用

50,000円

現金

50,000円

消耗品などで使用期間が翌期にまたがる場合

年度をまたぐ消耗品の支出は、使用期間に応じて「消耗品費」と「貯蔵品」に分けて処理します。

たとえ支払いが一括であっても、合理的な基準で費用を按分することで、会計の整合性を保つことができます。

例)3月に12,000円の用紙を1年分購入(3月使用分3,000円)

  → 3月に3,000円を消耗品費、9,000円を前払費用として処理

【2026年3月:購入時】

借方

貸方

消耗品費

3,000円

現金

12,000円

貯蔵品

9,000円

【2026年4月以降:使用分に応じて振替(例:4月に3,000円分使用)】

借方

貸方

消耗品費

3,000円

貯蔵品

3,000円

年度をまたぐ定期契約の場合

年度をまたぐ定期契約は、契約期間に応じて費用を月ごとに分けて計上します。一括支払いしても、全額を即時費用にせず「前払費用」として按分処理が必要です。

例)3月に1年分のクラウド利用料12万円を支払(3月分10,000円)

  → 3月に10,000円を費用、110,000円を前払費用として処理

【2026年3月:支払時】

借方

貸方

支払手数料

10,000円

現金

12万円

前払費用

11万円

【2026年4月:毎月の利用分(例:月額10,000円)を費用振替】

借方

貸方

支払手数料

10,000円

前払費用

10,000円

経費の来年持ち越しに関するよくある質問

年度をまたぐ経費処理に関しては、実務上判断に迷う場面も多くあります。ここでは、特によく寄せられる質問を取り上げ、判断基準と対応方法をわかりやすく解説します。

来年に持ち越してもいい経費といけない経費の違いは何ですか?

経費は、サービスの提供や商品の納品が完了した時点の年度で計上しなければなりません。

提供が年内に完了しているにもかかわらず、支払い時期だけを理由に翌年へ持ち越すのは誤りです。

一方で、支払いだけ先に済ませていても、実際の提供が翌年であれば、経費計上は翌年で問題ありません。判断基準は「提供日」にあり、契約日や支払日ではないことを理解しておきましょう

仮払金や立替金は持ち越しても問題ない?

仮払金や立替金は、経費ではなく資産として一時的に計上される項目のため、年度をまたいでも問題ありません

これらは従業員などが一時的に立て替えた支出を会社側が精算するまでのつなぎ処理に該当し、経費としての処理は精算時に行います。

ただし、精算が長期間にわたって遅れると、税務上は貸付金として取り扱われる恐れがあるため、できる限り早めに処理を行いましょう。

経費精算書が翌年提出された場合の処理方法は?

出張や接待などの活動が年内に行われている場合は、経費精算書の提出が翌年であっても、その活動が行われた年に経費計上します

提供日を基準とする「発生主義」に従えば、支出が確定しているので、記録と証憑さえ揃っていれば処理は可能です。

開業初期や精算体制が整っていない場合には、記録の漏れや誤計上が起きやすいため、領収書や旅程表などの保存と確認を徹底しましょう。

関連記事:開業前にかかった費用を経費にするには?会計処理と節税のポイントを解説!

経費の来年持ち越しに悩んだら専門家に相談を

経費の処理は単純に見えて、実際には判断が難しい場面が多く存在します。特に年度をまたぐ経費の持ち越し処理は、発生主義・現金主義の理解や証憑の整備など、専門的な知識が求められます。

処理を誤れば、経費が否認されたり、修正申告が必要になったりと、税務リスクにも直結しかねません。正しく安全に経費処理を進めるためには、税務や会計のプロに相談するのが確実でしょう

小谷野税理士法人では、経費の持ち越し処理に関するアドバイスから記帳・申告業務までトータルでサポートしています。経費処理に不安がある方は、ぜひ一度小谷野税理士法人にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
  • 会社設立の基礎知識 特集「法人のための確定申告」
税理士「今野 靖丈」

会社設立専門の税理士による
オンライン面談を実施中!

お電話でのお問い合わせ

0120-469-383 受付時間 平日 09:00~18:00

Webからのお問い合わせ

相談無料会社設立の相談をする 24時間受付中

税理士変更のご検討は
オンライン面談でもお受けします

お電話でのお問い合わせ

0120-469-383 受付時間 平日 09:00~18:00

Webからのお問い合わせ

税理士変更の相談をする 24時間受付中
オンライン面談