業務で発生する打ち合わせ費用が、どこまで経費にできるのか迷った経験はないでしょうか。飲食費や交通費、会議室の利用料など、打ち合わせに関連する支出には、勘定科目の選び方や仕訳処理、税務上の注意点など多くの判断ポイントがあります。本記事では、経費として認められる条件や勘定科目、仕訳例、税務調査で否認されないための対策を解説します。経費処理に不安がある方は、ぜひ最後までご覧ください。
目次
打ち合わせ費用が経費と認められる3つの条件
打ち合わせ費用は、一定の要件を満たしていれば経費として計上できます。ただし、どのような支出でも認められるわけではなく、実態や記録の整備に加え、その費用が本当に業務に必要だったかどうかが問われます。
経費と認められるために押さえておきたい以下3つの条件について解説します。
- 業務との明確な関連性
- 金額の妥当性
- 正式な領収書の存在
業務との明確な関連性
打ち合わせ費用を経費として認めてもらうには、業務との明確な関連性が必要です。社内外を問わず、取引先との商談やプロジェクトの打ち合わせなど、業務上必要な活動であることが前提です。
目的や内容が曖昧だと私的支出と判断されかねません。議事録や参加者リストを保存し、領収書に「打ち合わせ目的」などを記載することで信頼性を高めましょう。
金額の妥当性
打ち合わせ費用は、金額が常識の範囲内であることも重要な条件です。目安としては「1人あたり10,000円以内」が交際費から除外され、それを超えると交際費扱いとなるリスクがあります。
高級店の利用やアルコールを含む飲食は業務性が疑われやすく、税務調査で否認される可能性があるため、内容と金額のバランスには十分注意しましょう。
正式な領収書の存在
打ち合わせ費用を経費処理するには、必要事項が記載された正式な領収書が必須です。日付・金額・店名・但し書き(例:「打ち合わせ代として」)などが明記されていることが条件で、不備があると経費として認められません。
特に2024年以降は電子帳簿保存法の対応が求められるため、電子領収書は要件を満たした方法で適切に保存する必要があります。
関連記事:電子帳簿保存法とは?
経費計上できない打ち合わせ費用の具体例
一見すると経費になりそうな打ち合わせ費用でも、思わぬ落とし穴で否認されるケースがあります。よくある失敗例を把握しておくことで、無用なリスクを避けることができるでしょう。
友人との私的な食事
明確な業務関係がない友人との食事は、たとえ仕事の話題が出ていても経費にはできません。
参加者の属性が会社と無関係であれば、私的な交際と見なされる可能性が高く、税務上は否認対象となります。領収書があっても、業務性が証明できなければ経費にはなりません。
議題や記録が伴わない会食
議題が不明確で議事録も残されていない会食は、業務関連性が判断できず経費として認められません。
「打ち合わせ」と口頭で説明しても、記録がなければ私的な食事と見なされるリスクがあります。目的や参加者を明記した資料を残すことが重要です。
アルコールを中心とした高額な飲食
アルコールを含む高級飲食は、接待の要素が強く「交際費」に分類されやすくなります。特に夜間や高級店での会食は、業務上の必要性を証明する難易度が高く、記録が不十分であれば経費として否認される可能性が高まります。
関連記事:経費にできる飲食代はいくらまで?接待交際費のルールやポイントを解説
領収書を紛失した支出
どれほど業務に必要な支出であっても、領収書がなければ原則として経費にはできません。現金での支払い時に領収書を受け取り忘れたり、紛失した場合は、再発行が難しいこともあり、証憑不備として税務上否認されることもあります。
娯楽性の強い飲食や場所での会食
テーマパークやレジャー施設、格式の高い高級寿司店などでの飲食は、娯楽目的と見なされることが多いため注意しましょう。
たとえ業務上の会話があったとしても、場の選定や内容によっては私的支出と判断され、経費計上が否認される可能性があります。
打ち合わせに関連する費用の勘定科目
打ち合わせにかかった費用は、その内容や性質によって使う勘定科目が異なります。以下で代表的な勘定科目とその使い分けを確認しておきましょう。
勘定科目 | 説明 |
会議費 | 社内外の業務上の打ち合わせにかかる軽飲食や会場費を処理する勘定科目 |
交際費 | 取引先との会食や接待など、業務上の接遇費用を処理する際に用いる勘定科目 |
旅費交通費 | 打ち合わせ先への移動にかかる電車・バス・タクシー代などを処理するための勘定科目 |
地代家賃 | 会議室やレンタルスペースの利用料を処理する際に使用される勘定科目 |
消耗品費 | 打ち合わせで使い切る文房具や飲料、資料印刷代など、消耗性の小物購入費用を処理する勘定科目 |
会議費
打ち合わせ費用は、金額が常識的な範囲で業務に関係していれば「会議費」として処理できます。社内外を問わず、業務目的の明確な打ち合わせにかかる飲食費や会場費などが対象です。
交際費
取引先との打ち合わせで、飲食や贈答など接待的な要素を含む場合は「交際費」として処理します。
金額が高額だったりアルコールを伴う場合は特に交際費と判断されやすく、税務上の損金算入額にも上限があります。中小企業は年間800万円まで全額損金算入できますが、区分管理が重要です。
関連記事:交際費の税務調査で否認されるケースとは?注意点と対策を徹底解説
旅費交通費
打ち合わせ先へ移動するための電車賃やバス代は「旅費交通費」として処理します。
業務関連の移動であることを証明するため、訪問先や日付などの記録と領収書の保存が不可欠です。ICカード利用の場合も、履歴を印刷して保存しておくと税務対応に役立つでしょう。
地代家賃
会議室やレンタルスペースを利用した際の料金は「地代家賃」で処理するのが適切です。月額契約でなくても、一時的に借りた会場費用も含まれます。
領収書のほか、契約書や請求書などもあわせて保管しておくことで、支出の妥当性を示しやすくなるでしょう。
消耗品費
打ち合わせ用に使用したお茶・水、資料の印刷代などは「消耗品費」で処理します。一度きりの使用で使い切るもの、かつ金額が少額であればこの勘定科目が適しています。
業務目的であっても高額になる場合や、耐久性があるものは他の勘定科目になる可能性があるため注意しましょう。
打ち合わせに関連する費用の仕訳方法
打ち合わせ費用を正しく経費処理するには、勘定科目だけでなく仕訳方法の理解も欠かせません。ケースごとの具体的な仕訳例を確認しましょう。
会議費として処理する場合
社内外を問わず、業務上の打ち合わせで発生する飲食費や会場費などは「会議費」で処理します。
例)社内での打ち合わせ時に軽食を現金4,000円で購入した
借方 | 貸方 | ||
会議費 | 4,000円 | 現金 | 4,000円 |
交際費として処理する場合
取引先との会食で、アルコールを伴う飲食や高額な費用が発生する場合は「交際費」で処理します。
例)取引先との会食で飲食代10,000円を会社のクレジットカードで支払った
借方 | 貸方 | ||
交際費 | 10,000円 | 未払金 | 10,000円 |
旅費交通費として処理する場合
打ち合わせのために移動した交通費は「旅費交通費」として処理します。
例)打ち合わせで訪問先に向かうため、電車賃1,200円を現金で支払った
借方 | 貸方 | ||
旅費交通費 | 1,200円 | 現金 | 1,200円 |
地代家賃として処理する場合
一時的に貸会議室などを利用した際の利用料は「地代家賃」として処理します。
例)外部会場での会議用に会議室を借り、利用料8,000円を請求書払いとした
借方 | 貸方 | ||
地代家賃 | 8,000円 | 未払金 | 8,000円 |
消耗品費として処理する場合
打ち合わせで使用する飲料や資料の印刷代など、使い切りの物品購入費は「消耗品費」で処理します。
例)打ち合わせ用にお茶と資料印刷代の合計1,500円を現金で支払った
借方 | 貸方 | ||
消耗品費 | 1,500円 | 現金 | 1,500円 |
打ち合わせ費用が税務調査で指摘されないための5つの対策
打ち合わせ費用は、税務調査でもよくチェックされる項目です。業務上必要な支出であっても、記録や処理方法が不十分だと否認されるおそれがあるため、以下5つの対策を実践してリスクを最小限に抑えましょう。
- 議事録・出席者リストを残す
- 領収書の但し書きに目的を記載
- 社内ルールで経費分類を統一
- 1人あたり金額の目安を守る
- 電子帳簿保存法に準拠した保管
議事録・出席者リストを残す
打ち合わせ費用を正当な経費として認めてもらうには、議事録や出席者リストを残すことが有効です。
これらは、打ち合わせの実態や業務関連性を客観的に証明する資料となります。単に「会った」、「話した」だけでは説明が不十分とされる可能性があるため、書面で証拠を残しておきましょう。
領収書の但し書きに目的を記載
領収書の但し書きには、「打ち合わせ代」など具体的な目的を記載しましょう。「飲食代」などの曖昧な表現では業務関連性が不明とされ、否認リスクが高まります。経費の性質を一目で判断できるようにしておくことで、調査時の説明負担を軽減できます。
社内ルールで経費分類を統一
会議費や交際費の使い分けについて、社内で明確なルールを定めておくことが大切です。
分類が曖昧なままでは、担当者ごとに処理が分かれ、税務調査での整合性に欠けると判断されかねません。定義や金額基準を文書化し、経理処理を統一することでリスクを抑えられるでしょう。
1人あたり金額の目安を守る
打ち合わせにかかる費用は、1人あたり10,000円以内を目安に設定しましょう。これを超えると、会議費ではなく交際費とみなされやすくなります。
会議費として経費処理するには、社会通念上妥当な範囲に収めることが前提となるため、金額の管理も重要なポイントです。
電子帳簿保存法に準拠した保管
電子領収書は、電子帳簿保存法の要件に沿って正しく保管する必要があります。2024年以降は要件が厳格化されており、保存期間・改ざん防止・検索機能の確保などが求められます。
クラウド型の会計システムや電子保存サービスの活用が、実務上の負担を減らす手段として有効でしょう。
打ち合わせ費用の経費計上に関してよくある質問
打ち合わせ費用に関する経費処理は、実務の中でも判断に迷いやすいポイントの1つです。実際によく寄せられる質問を取り上げ、適切な対応方法をわかりやすく解説していきます。
打ち合わせに参加していない人の飲食費も経費にできますか?
できません。経費として認められるのは、実際に打ち合わせに参加した業務関係者の飲食費のみです。
参加していない人の分を含めて計上すると、業務関連性のない支出と判断され、税務調査で否認されるリスクがあるので注意しましょう。
自宅でのオンライン打ち合わせ時の飲食代も経費にできますか?
原則としてできません。自宅での打ち合わせ中に自分のために購入した飲食物は、業務とは関係のない私的支出と見なされやすいため、経費としては認められません。
オンライン会議では、飲食を伴わずに進行することが前提となっており、経費計上の対象にはなりにくい支出です。
従業員が打ち合わせ費用を立て替えた場合はどう処理しますか?
「立替金」として処理します。従業員が業務上の必要により会社の代わりに費用を支払った場合は、まず「立替金」で処理し、後日精算時に本来の勘定科目(会議費など)へ振り替えます。
領収書の名義は会社名で取得し、使用目的が明確に分かるよう記録しておくことが重要です。
打ち合わせ費用の経費計上に迷っている方は専門家に相談
打ち合わせ費用は税務調査で頻繁にチェックされる項目のひとつです。金額が妥当でも、記録や領収書の不備により経費として否認されるケースも少なくありません。
こうしたリスクを避けるためにも、専門家によるチェックやアドバイスが有効でしょう。
小谷野税理士法人は、経費処理や仕訳、税務調査対応まで豊富な実績があり、法人・個人問わずサポート可能です。打ち合わせ費用の経費処理に不安がある方は、ぜひ一度小谷野税理士法人にご相談ください。