事業経営者が意外と見落としがちなのが償却資産税です。土地や建物にかかる固定資産税とは異なり、事業用の機械や備品などに課税される税金です。税率は1.4%と一見低めですが、設備の規模によっては思わぬ負担となるケースもあるので注意しなくてはいけません。本記事では、償却資産税の計算方法や対象資産、申告手続きの流れをわかりやすく解説します。未申告や申告ミスによるリスクを回避したい方はぜひ参考にしてください。
目次
償却資産税とは何か
償却資産とは、土地や建物以外で事業に使うことができ、減価償却によって経費として計上できる資産のことです。機械や器具、備品などが該当します。この事業用の設備や器具などに対して課される市区町村の税金が「償却資産税」です。
償却資産を持っている人は毎年1月1日時点で所有している資産の情報を地域の都税事務所や市区町村に申告しなくてはいけません。未申告や申告漏れがあると、過少申告加算税や延滞金などのペナルティが発生することもあります。事業の継続的な安定を図るためにも、償却資産税の仕組みは早めに把握しておきましょう。
参考:償却資産の概要|主税局
関連記事:償却資産申告書とは?書き方や対象資産などをわかりやすく徹底解説!
償却資産税の申告対象となる資産一覧表
以下に、償却資産税における申告対象資産と対象外資産をわかりやすく表にまとめました。
区分 | 具体例 |
構築物 |
|
機械および装置 |
|
船舶 |
|
航空機 |
|
車両および運搬具 | 大型特殊自動車など |
工具・器具・備品 |
|
償却資産税の申告は、法人・個人を問わず、事業用の減価償却資産を所有しているすべての方に義務づけられています。機械や備品など目に見える資産だけでなく、現在使っていないものであっても条件を満たせば課税対象です。
一方で、自動車や無形資産、一定の金額・条件に該当する少額資産は対象外です。申告漏れや対象外資産の誤申告はトラブルにつながる可能性もあるため、判断に迷う場合は税理士などの専門家に相談しましょう。
参考:償却資産の具体例|主税局
関連記事:【法人向け】償却資産税の対象となるもの・ならないもの 申告書の書き方は?
償却資産税の税率と計算方法
償却資産税の税率は1.4%のため、一見低い税率に見えます。しかし事業用資産を所有している限り毎年課税され、想定以上の負担になることがあるので要注意です。
税額は、毎年1月1日時点で所有する償却資産の「評価額」に対して1.4%を乗じて計算されます。評価額は、購入価格に「減価残存率(耐用年数に基づく割合)」を掛けて算出され、年々減少していく仕組みです。
1,000万円の照明器具を購入して耐用年数15年のケースを考えてみましょう。
1年目の評価額は1,000万円 × 0.929 = 929万円となります。この評価額に税率(たとえば償却資産税1.4%)を掛けると、929万円 × 0.014 ≒ 約13万円 が1年目の税額です。
2年目以降は評価額がさらに減少するため、税額も下がります。2年目は929万円 × 0.858 = 約797万円となり、797万円 × 0.014 ≒ 約11万円です。
このように毎年税額が発生して15年間続くと合計税額はおよそ82万円となり、購入金額1,000万円の約8%に相当します。
減価残存率は耐用年数ごとに総務省が定めた「固定資産評価基準」に基づき、最低限度額(取得価額の5%)まで下がるとそれ以上減少しません。
以上の例から見てもわかるように償却資産税は長期的に見ると無視できない負担となります。特に高額な設備投資を行う業種では、購入時だけでなく維持・運用中の税コストも見据えて資金計画を立てましょう。
償却資産税の申告方法・流れ
償却資産税の申告から課税までの流れを8つのステップに分けて解説します。
ステップ | 内容 | 補足・時期 |
①申告書の提出 | 償却資産を所有する区・市町村の所轄へ申告書を提出する | 毎年1月31日まで(休日の場合は翌日) |
②価格等の決定・課税台帳登録 | 所得された申告・調査をもとに評価額を決定し、「償却資産課税台帳」へ登録 | 都税事務所または市区町村が担当 |
③課税台帳の公示 | 登録内容が公示される | 市区町村での掲示等 |
④課税台帳の閲覧 | 所有者等が課税台帳の内容を確認できる | 固定資産税に関係する人が対象 |
⑤審査の申出 | 評価額に不服がある場合に申し出可能 | 台帳の閲覧後に実施可能 |
⑥税額の算出・納税通知書交付 | 市区町村が税額を算出し通知書を交付 | 毎年6月上旬ごろ、課税標準額150万円未満は非課税 |
⑦審査請求 | 課税内容に不服があれば審査請求を行う | 税額通知後に実施可能 |
⑧納税 | 通常は年4回に分けて納税 | ※東京都23区の場合は6月、9月、12月、翌年2月 |
償却資産税の申告から納付までは、申告書の提出から税額の算出・納税まで多段階にわたるプロセスがあり、特に提出先や納期の違いに注意が必要です。毎年の申告を忘れず、課税内容に疑問がある場合は早めに対応することで、適切な資産管理と税務対策が可能になります。
関連記事:【税理士監修】任意償却と減価償却とは?法人・個人事業主での違いやメリット・デメリット
償却資産税に関するよくある質問
償却資産税に関するよくある質問をまとめたので、こちらも合わせて参考にしてください。
償却資産税の申告漏れはバレる?
万が一、申告漏れがあった場合には、市区町村から追徴課税の通知が届くことがあります。なお、追徴が行われる可能性のある期間(時効)は5年間です。
耐用年数を過ぎた資産でも申告対象になる?
耐用年数を過ぎていたとしても、申告対象となります。減価償却が完了している資産でも、事業に使用できる状態であれば忘れずに申告をしましょう。
相続をした償却資産はどうやって申告すべき?
相続が発生した場合は、相続人が被相続人の取得年月日や取得価額、耐用年数などの情報を引き継いで申告を行ってください。また相続によって償却資産が共有となった場合は、共有者全員の氏名・住所を記載したうえで、連名による申告が必要です。
「所有者氏名」欄には「代表者〇〇 他〇名」と記載し、「備考」欄に代表者以外の共有者の氏名と住所を記載してください。
ただし、自治体により記載形式が若干異なるため、管轄自治体の申告書記載要領を事前に確認しましょう。
まとめ
償却資産税は、事業で使用する機械や器具、備品などに課される固定資産税の一種です。法人・個人を問わず、対象となる資産を所有している事業者には申告義務があります。税率は1.4%で、評価額に応じて毎年課税されます。
申告の流れは、1月末までの提出から始まり、評価・公示・納税まで複数のステップがあります。申告漏れや誤りがあると追徴課税や延滞金が発生する可能性もあるため要注意です。耐用年数を過ぎた資産や使用していない資産も課税対象になることがあるので、資産管理と税務の知識が必要です。
判断に迷う場合や高額な設備を保有している場合は、専門の税理士に相談し、適切な対応を心がけましょう。「償却資産税の計算に不安がある」という方は「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。