確定申告の時期になると「申告が必要なのか?」「非課税の場合申告はいらないの?」と迷う方も多いのではないでしょうか。所得の内容や金額によっては、税金がかからないため、申告が不要となるケースもあります。本記事では、個人事業税・所得税・住民税・消費税などにおける非課税の条件や、非課税所得の具体例、確定申告が必要かどうかの判断ポイントについて解説します。
目次
非課税所得とは?
非課税所得とは、所得税法などの法律により、課税対象から除外されている=税金がかからないと定められている所得です。すなわち、すべての所得に税金がかかるわけではなく、特定の所得については税金はかかりません。
例えば、遺族年金や宝くじの当選金などがこれにあたります。税負担を避ける社会的配慮から、法律で非課税と定められています。
非課税所得は確定申告が不要?必要?
非課税所得は、所得税の計算に含める必要がないため、原則として確定申告は不要です。ただし注意が必要なのは、非課税所得以外に課税対象となる所得がある場合です。
例えば、遺族年金のような非課税所得に加えて、フリーランスとして得た報酬やアルバイト代などの課税対象となる収入がある場合は、遺族年金を除いた所得で確定申告が必要になるケースがあります。また、非課税所得に関連して支出した費用は、所得税の計算においては経費として認められない点にも注意しましょう。
非課税となる所得の種類
非課税となる所得にはいくつかの種類があり、内容は大きく「利子・配当所得関係」「給与所得・公的年金関係」「譲渡所得関係」「その他の所得関係」に分けられます。
これらは、所得の性質や社会的な必要性、あるいは政策的な理由に基づいて、法律により所得税の課税対象から除外されているものです。ここでは、その4つのカテゴリについてそれぞれ詳しく解説します。
利子・配当に関する一部の所得
利子や配当に関する所得のうち、次のような収入は非課税扱いとされています。
- NISA(少額投資非課税制度)口座で得た利益や配当金
- 納税準備預金の利子
- 子ども銀行の預貯金の利子 など
一方で、通常の銀行預金の利子や、証券口座で保有する株式の配当金は、基本的に課税対象です。NISAなどの非課税制度の活用は、運用益への課税を避けられるため、資産形成の手段として有効と言えるでしょう。
給与・公的年金に関する所得
次のような給与や公的年金の一部は、非課税とされています。
- 出張旅費や通勤手当(一定限度額まで)
- 仕事上必要な現物給与(制服や作業服など)
- 遺族年金・障害年金
遺族年金・障害年金に関しては、受給者本人やその遺族の生活保障を目的としているため非課税です。ただし、老齢年金(いわゆる通常の年金)については課税対象です。ただし、年齢や年金額、その他の所得との兼ね合いで、確定申告が不要となるケースもあります。
譲渡に関する所得
資産の譲渡によって生じる所得(譲渡所得)も、家具や衣類などの日常生活に使っていた動産の売却による利益については非課税になります。ただし、株式や不動産など投資・資産運用目的の譲渡による利益は原則として課税対象です。
取引の内容によって課税の有無が変わるため、制度の詳細を確認しましょう。また、メルカリなどのフリマアプリで得た所得については、生活用資産の売却による所得であれば非課税ですが、営利目的とみなされる場合は課税対象となる可能性があるため注意が必要です。
その他の所得
以下のような、日常生活で得られる収入にも、非課税のものがあります。
- 損害保険金・損害賠償金・慰謝料
- 雇用保険の失業等給付や健康保険の療養給付
- 国や地方自治体の助成金・給付金の一部
上記のような収入は、いずれも生活の安定や損害の補填を目的として支給されるものであり、受け取る人の経済的負担を軽減する観点から、課税の対象外とされています。
課税対象か非課税か判断に迷いやすい所得
所得の中には、課税対象となるかどうかの判断が難しいケースがあります。特に、公的給付金や保険金などは、支給目的や契約内容によって課税関係が変わるため注意が必要です。
自身の得た所得が課税対象かどうか不明な場合は、税務署や税理士などの専門家へ確認しましょう。
遺族年金の場合(原則として非課税)
遺族年金は非課税所得に分類されるため、原則として確定申告は不要です。遺族年金が残された家族の生活を支えるためのものであるという社会的配慮によるものです。
ただし、遺族年金以外に課税対象となる所得がある場合は、遺族年金を除いた所得について確定申告が必要となることがあります。なお、確定給付企業年金など、遺族に支給される年金の中には、相続税の課税対象となるものもあるため確認が必要です。
失業保険の場合(非課税)
雇用保険から支給される失業等給付(いわゆる失業保険)は非課税所得に該当します。そのため、失業保険のみを受け取っている場合は確定申告は不要です。
しかし、年度の途中で退職し年末調整を受けていない場合や、失業保険以外に一定額以上の所得がある場合は、確定申告を行うことで所得税の還付を受けられる可能性があります。必ずしも「確定申告が不要」とは限らず、申告することでメリットがあるかどうかを確認しましょう。
所得補償保険金の場合(原則として非課税)
病気やケガにより働けなくなった際に受け取る所得補償保険金は、損害保険の範囲内での実費補填分については、原則として非課税とされています。これは、失われた所得を補填する損害保険金としての性質を持つためです。
ただし、保険の種類や契約内容によっては課税対象となる場合もあります。受け取った保険金が非課税に該当するかどうか不安な場合は、保険会社や税務署に確認するようにしましょう。
個人事業税が非課税になる条件
個人事業主が納める「個人事業税」は、事業の種類や所得金額によって非課税となる場合があります。
個人事業税は、法律で定められた「法定業種」に該当する事業を営む個人に課税される地方税です。そのため、営んでいる事業が法定業種に含まれていない場合は個人事業税は課税されません。
また、たとえ法定業種であっても、事業所得から事業主控除(年間290万円)を差し引いた結果、課税標準額がゼロ以下になる場合も、税金は発生しません。
つまり、法定業種に該当する事業であっても、所得が290万円以下であれば、実質的に個人事業税はかからないということになります。
関連記事:年収500万の個人事業主にかかる税金はいくら?効果的な節税方法も紹介
非課税となる特定の業種
個人事業税がかからない代表的な業種には、ライター、作家、画家、漫画家、音楽家、スポーツ選手、芸能人、プログラマー、通訳・翻訳家などがあり、これらは「法定業種」に含まれていません。動画クリエイターやアフィリエイターも同様です。
これらの仕事は、創作や専門的なスキル・表現力に基づくものであり、税法上は“人格的な独立性を重視する業務”と見なされるため、課税の対象から除外されています。
ただし、上記の職業であっても、契約内容や事業形態によっては法定業種と判断されることもあります。例えば、企業と継続的な業務委託契約を結び、制作やデザインなどを請け負っている場合は、「請負業」や「デザイン業」として課税される可能性があるのです。
自身が行っている事業が非課税の対象となるか不明な場合は、都道府県税事務所などに確認することをおすすめします。
関連記事:個人事業税のかからない業種とは?ケースや職業別に解説
所得税・住民税が非課税となる条件
所得税は、1年間の所得に対して課される税金ですが、所得が一定額以下である場合や、各種の控除を受けることで、所得税がかからない場合があります。
税金は、「収入」から「必要経費」を差し引いた「所得」に対し、さらに「基礎控除」や「各種所得控除」を適用して算出される「課税所得」に基づいて計算されます。この課税所得金額が0円以下になれば、所得税はかかりません。
ここでは、そうした非課税の仕組みを活用し、実際に所得税や住民税をゼロにできる代表的な2つのケースとして「青色申告特別控除を活用する場合」と「勤労学生控除を活用する場合」を紹介します。
青色申告特別控除の活用
個人事業主が「青色申告」を行っている場合、「青色申告特別控除」として最大65万円(または55万円、10万円)を所得から差し引けます。
さらに、令和7年以降は「基礎控除」も95万円まで適用されるため、例えば、青色申告特別控除前の事業所得が160万円以下であれば所得税はかかりません。
青色申告特別控除を活用することで、所得税だけでなく、住民税や国民健康保険料も軽減できる可能性があるのです。事業規模が小さい方や、まだ利益が安定していない方には、特に有効な制度です。
関連記事:青色申告のやり方とは?フリーランスや個人事業主が知るべきポイント解説!
勤労学生控除の活用
学生でありながらアルバイトや事業などで収入がある方は、「勤労学生控除」を利用できる可能性があります。控除額は27万円であり、給与などの所得から差し引けます。
給与を受け取っている学生の場合、「給与所得控除(65万円)」と「基礎控除(95万円)」に加えて「勤労学生控除(27万円)」が控除できるということです。つまり、年収187万円までであれば所得税はかかりません。
なお、この控除を受けるためには「定められた学校に在学していること」や「アルバイト以外の所得が一定額以下であること」などの条件を満たしている必要があります。
まとめ
確定申告では、すべての所得が課税対象になるわけではなく、非課税所得や控除によって申告が不要になる場合もあります。
遺族年金や失業給付などの非課税所得、青色申告特別控除や勤労学生控除といった所得控除を正しく把握することで、課税対象かどうかの判断や申告要否の見極めがしやすくなります。
確定申告が必要か迷った際は、自身の所得の内容を確認し、不明点があれば早めに税務署や専門家に相談しましょう。適切な対応が、不要な納税を防ぐ第一歩です。