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合併で繰越欠損金は引き継げる? 適格合併の要件と税務上の注意点を解説

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合併で繰越欠損金は引き継げる? 適格合併の要件と税務上の注意点を解説

合併により企業再編を行う際に「繰越欠損金の引継ぎ」が可能かどうかは、税負担を大きく左右するポイントです。もし一定の要件を満たす「適格合併」であれば、被合併法人の欠損金を合併法人が引き継げる税務上のメリットがあります。しかし、合併のタイミングや支配関係の有無などにより引継ぎに制限がかかるケースもあります。本記事では適格合併の基本から、繰越欠損金の引継ぎに関する最新の税制改正までを詳しく解説します。

適格合併の基礎を理解しよう

適格合併とは、一定の要件を満たすことで税務上の課税が生じない合併を指します。適格合併は今回紹介する繰越欠損金の引継ぎなどの法人税の優遇が受けられるのが特徴です。

合併には、合併法人(存続会社)と被合併法人(消滅会社)が関与し、合併法人がすべての資産・負債を引き継ぎます。

以下では、適格合併の要件を支配関係ごとにわかりやすく表形式でまとめました。

支配関係の有無

要件カテゴリ

主な要件内容

完全支配関係あり(100%親子会社)

基本要件

金銭等不交付要件:株式以外の資産(現金等)を交付しない

継続保有要件:交付された株式を継続保有する見込み

支配関係あり(過半数出資)

上記に追加要件

上記2要件に加えて以下の要件も必要

事業移転要件:従業員の約80%以上が合併後も従事予定

事業継続要件:主要事業が継続される見込み

支配関係なし(共同事業)

上記に追加要件

上記4要件に加えて以下の要件も必要

事業関連性要件:両事業が相互に関連している

選択要件(どちらか):① 同等規模要件:売上高等の差が5倍以内② 双方経営参画要件:両社の役員が合併後も経営参画予定

適格合併の要件は、合併当事者の間にある支配関係の有無によって異なります。特に支配関係がない場合は、より厳格な条件が課されることを覚えておきましょう。

関連記事:合併と買収の違いとは?種類やそれぞれのメリット・デメリットについて解説

繰越欠損金のメリット・デメリット

繰越欠損金のメリット・デメリットを以下の表にまとめました。

メリット

  • 税負担の軽減
  • キャッシュフローの改善
  • 経営の安定化

デメリット

  • 利用期間の制限
  • 計算の複雑化
  • 将来利益への依存

繰越欠損金の活用には、税負担の軽減やキャッシュフロー改善といったメリットがあり、企業の経営を安定させる効果が期待できます。

一方で、利用には期限があるほか、申告や管理が煩雑で、将来の利益が出なければ節税効果を得られないといった注意点もあります。制度の仕組みを理解し、適切に活用しましょう。

関連記事:繰越欠損金とは?適用条件や繰越期限・税効果会計や繰戻し還付制度も解説

適格合併により繰越欠損金の引継ぎが可能

適格合併が行われた場合、原則として被合併法人の未処理欠損金は合併法人に引き継がれます。本制度は企業再編時の税務上の特例であり、被合併法人の赤字を無駄にせず活用できる仕組みです。

具体的には被合併法人の各事業年度に生じた欠損金は、それぞれの事業年度の開始日が属する合併法人の事業年度に対応づけられます。そして合併法人の事業年度において発生した欠損金とみなされ、引継ぎの対象となります。

また、合併法人の合併事業年度の開始日以降に始まった被合併法人の事業年度で生じた欠損金についての取り扱いも注意が必要です。この場合、合併事業年度の「前」事業年度で発生したものとして扱われます。

法改正後は繰越欠損金の引継ぎに制限がかかる

法改正で繰越欠損金の引き継ぎルールが厳しくなりました。平成29年度の税制改正により、適格合併の際に引き継げる繰越欠損金に新たな制限が加わりました。

今まで引き継げなかったのは、親会社との支配関係が発生する前の欠損金や、支配関係発生後に特定資産を売却して出た損失でした。

改正後は支配関係が生じた「事業年度の開始日から実際に支配が始まる日までの期間」に生じた損失についても対象外となりました。つまり、資産の売却などで発生した損失も、欠損金として引き継ぐことができなくなったのです。

また、特定の株主に支配されている会社が持つ欠損金や、同様の会社が出した売却損の損金算入も制限されるようになっています。合併や事業再編を行う場合には、欠損金の引き継ぎ可否を事前に確認しておきましょう。

【ケース別】繰越欠損金の引継ぎの条件

計算をするイメージ

合併によって繰越欠損金を引き継ぐには、「適格合併」であることが前提です。しかし場合によっては引継ぎの条件がさらに複雑化することもあるので注意が必要です。

以下ではグループ企業外とグループ間における引継ぎについて解説します。

区分

繰越欠損金の引継ぎ条件

グループ外企業との合併

支配関係のない企業同士の適格合併であれば、原則として引継ぎ可能

ただし、2段階スキーム(事前に株式取得後の合併)は制限の可能性あり

グループ内企業との合併

以下のいずれか1つの条件を満たす必要あり

  1. 資本関係が5年以上継続
  2. みなし共同事業要件の充足

繰越欠損金の引継ぎには「適格合併」であることが前提ですが、合併相手がグループ外かグループ内かで要件が異なります。

グループ外の企業同士であれば原則として引継ぎ可能です。しかし事前に株式を取得してから合併する「2段階スキーム」の場合は制限が生じる可能性があります。

一方でグループ内企業との合併では、資本関係の継続や事業の関連性など、いずれかの要件を満たす必要があります。

引継げない繰越欠損金を上手に活用するためには?

繰越欠損金が引継げない場合でも、資産調整勘定として間接的に活用する方法があります。この方法は、買収前に非適格分社型分割を挟むことで、欠損金を実質的に損金算入が可能になる仕組みです。

繰越欠損金は原則、M&Aにおいて引継ぎが制限されます。しかし分社型分割を活用すれば欠損金を譲渡益と相殺し、損金性を維持することが可能です。

例えば「分社型分割→新設法人を買収→合併」の流れを採用すると、分割時の譲渡益に欠損金をぶつけ、譲渡益を圧縮できます。

さらに、新設法人には資産調整勘定(税務上のれん)が計上され、それを5年間で損金化できます。その新設法人を買収・合併すれば、資産調整勘定は課税関係が発生しない形で引き継がれます

このように繰越欠損金が直接使えない場合でも、分割と資産調整勘定を活用すれば実質的に節税効果を得られる可能性があります。

関連記事:中小企業向け賃上げ促進税制の繰越控除は5年間

適格合併における欠損金の制限対象金額の計算に活用できる特例

被合併法人に含み益がある場合、その額に応じて欠損金の引継ぎ制限が緩和される特例があります。この特例は、含み益を実現すれば課税されるため、欠損金の利用が租税回避に当たらないと考えられるためです。

資産・負債を時価で評価し、時価純資産超過額が未処理欠損金を上回る場合は全額引継ぎ可能、下回る場合は差額分が制限対象です。こういった評価や判定は複雑なため、税理士など専門家へ相談するのが望ましいでしょう。

関連記事:実践している?法人の節税対策[10選]知ってトクする裏ワザも紹介

合併時の繰越欠損金の引継ぎは税理士への相談がおすすめ

原則として、適格合併であれば被合併法人の繰越欠損金の引継ぎが可能です。しかし支配関係の有無や合併の時期、過去の取引内容によっては引継ぎに制限がかかるケースもあります。

また支配関係が発生した事業年度の特定資産の譲渡損失が原因の欠損金は、引継ぎが認められない場合があります。さらに制度改正によって判断基準が複雑化し、過去に認められたケースでも現在では否認されるリスクが考えられます。

合併後の税務リスクを回避し、欠損金を最大限に活用するためには、事前に正確な税務判断をしなくてはいけません。

こうした複雑な税務判断には専門的な知識と経験が求められるため、合併前後の段階で税理士に相談することを強くおすすめします。税理士のアドバイスを受けることで、適切な手続きを踏み、安心して合併手続きを進められるでしょう。

まとめ

合併における繰越欠損金の引継ぎは適格合併であったとしても制限されるケースがあるため、細心の注意が必要です。支配関係の発生タイミング、時価評価の特例など、制度は複雑化しています。

もし判断ミスをすると欠損金が活用できず、税負担が想定以上に膨らむおそれもあります。特に買収後5年以内の合併では、合併法人・被合併法人の両社に制限が及ぶ可能性があるため、事前の検討と専門的な知識が必要です。

適切に繰越欠損金を引継いで税務リスクを回避するためには、税理士への早めの相談が最善の対応策です。合併を成功させるためにも、制度の理解と専門家のサポートを活用しましょう。

適格合併における税務・会計処理でお悩みのことがあれば、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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