「節税」は、企業経営者や個人事業主だけでなく、サラリーマンやフリーランスにとっても避けて通れない重要なテーマです。そこで、税金の負担を軽減できる「節税商品」の活用は、家計・経営にとって強力な武器です。今回は、節税できる主要な商品を一覧で紹介し、節税のポイントや注意点についても合わせて解説します。少しでも税負担を軽減したい方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
目次
節税できる商品とは?
個人や法人が、税負担を軽減するために購入する制度や商品を指します。基本的には、税務署の監査対象にならない合法的な手段であり、多くは保険・共済・年金制度などの形で提供されています。
法人であれば会社の経費扱いにして物品やサービスを購入し、経費として認められれば利益が圧縮され、税金が安くなるのです。中には合法性を巡って裁判中のケースもあるため、よく中身を確かめて購入しましょう。
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節税対策と節税商品の関係
節税対策は「計画的に、合法的に税金を減らす」ことを目的とし、その手段の一つとして節税商品が活用されています。節税対策には、大きく分けて以下の3つの方法があります。
所得控除を活用する方法
所得控除とは、納税者の生活状況に合わせて、所得から一定の金額を差し引く制度です。所得税や住民税は、個人の1年間の所得に決まった税率をかけて算出します。その際、所得控除を適用すると自身の所得から一定の金額が差し引かれるため、結果的に節税できます。
税額控除を活用する方法
計算した所得税額から一定の金額を控除できる制度です。所得税額は、課税対象となる所得金額に所得税率を掛けて求めますが、税額控除を利用できる場合、そこからさらに税額控除の額を差し引いた金額が最終的な納税額です。
損金算入を活用する方法(法人の場合)
税法上の損金として、課税所得の計算をするときに、益金からその金額を差し引くことを指します。また、会計上は費用にならないものの、税法上は損金として扱われるものを損金算入といいます。これにより課税所得が減少し、法人税の負担が軽減されるのです。
節税できる商品一覧
節税対策におすすめしたい、税負担の軽減が期待できる主な商品は以下です。
不動産(建物や設備)
建物や設備などの不動産投資をすると、物件の維持管理にかかる様々な費用を経費として計上できます。また、不動産所得を得るために借り入れたローンの支払利息も経費として認められ、結果として所得税や住民税の節税が可能です。
また、財産を不動産の形で所有していれば、贈与や相続を行う際の税金の負担を抑えられる可能性もあります。将来的に家賃収入や売買差益を得られる場合もあるため、投資的な節税としても有効でしょう。
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社用車
社用車を購入する場合、購入条件によっては減価償却を使用した節税対策が可能です。購入した費用や維持にかかる費用などを、経費として計上できます。新車はもちろん中古車やリース契約でも可能です。
社用車を導入する際には、その車両を法人名義で登録しましょう。個人名義で車両を保有してしまうと、税務調査時にその車が実際に社用車として使用されていると認められない可能性があるためご注意ください。
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IoT自動販売機
IoT自動販売機とは、インターネットに接続された自動販売機です。「IoT」とは、「Internet of Things」の略で、インターネット経由でサーバーやクラウドに接続され、相互に情報交換をする仕組みを指しています。
IoT自動販売機への投資が節税につながる理由は「中小企業経営強化税制」を活用すれば、即時償却が認められる可能性があるためです。
この制度は、中小企業の生産性向上や経営力強化を目的に設備投資を行う場合、設備を取得した価格の最大10%が税額控除、または即時償却できます。
関連記事:中小企業経営強化税制とは?税額控除・対象設備・延長期間を解説!
パソコン・機械設備
新しく購入したパソコンは、経費計上すれば確定申告で税金対策になり、節税につながります。10万円未満のPCは消耗品費として一括計上でき、10万円以上のPCは減価償却資産として複数年にわたって経費計上が可能です。
中小企業が新しい機械や設備を購入した場合、節税のために「中小企業投資促進税制」と「中小企業経営強化税制」の2つの制度が利用できる可能性があります。これらの制度では、特別償却または税額控除を選択して適用し、大幅な節税が可能です。
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オフィス家具
オフィス家具は原則「減価償却資産」として扱います。耐用年数は種類によって異なりますが、一般的なオフィス家具の場合耐用年数は8年となるでしょう。例えば耐用年数が8年の場合、購入費用を8年間にわたって経費化が可能です。
さらに即時償却制度を活用すれば、初年度から大幅な節税が可能です。ただし、1年間で即時償却できる合計額は300万円までと定められています。
関連記事:減価償却とは?会計や税務の基礎知識と節税のポイントを徹底解説!
広告塔・看板
テレビCMや新聞広告、インターネット広告、パンフレットやカタログの作成・配布、看板の設置、イベント開催などの費用は「広告宣伝費」で計上されます。節税対策の代表とも言われ、広告を活用すれば、節税しながら将来のリターンも期待できます。
広告宣伝費は、資産ではなく一括計上が可能です。自社の都合で支払いの時期や金額を調整しやすく、期末でも大きな金額を支出して節税対策ができます。
関連記事:広告宣伝費はいくらまで?相場や経費計上のポイント、注意点などを解説
小規模企業共済
中小企業の経営者や個人事業主などの積立による退職金制度で、掛金に応じて将来給付を受け取れます。退職金のような制度のない経営者や個人事業主にとって、将来の備えを行うのに便利な制度です。全国で約166万人が加入しています。
小規模企業共済の掛金は全額所得控除の対象となり、確定申告の際に所得税や住民税を軽減する効果があります。また、加入者は資金繰りに困った場合貸付けを受けられるため、実務でもよく利用されています。
関連記事:小規模企業共済のメリットと加入ガイド
iDeCo(個人型確定拠出年金)
iDeCo(イデコ)とは、自分が拠出した掛金を、自分で運用し、資産を形成する年金制度です。iDeCoの掛け金は全額が所得控除の対象で、所得税と住民税は所得に応じて課税されるため、確定申告や年末調整を行うことで節税効果が生まれます。
ただし、iDeCoは一度加入すると原則として60歳まで引き出せなくなるため、積み立て続けられるライフプランをあらかじめ立てておきましょう。
関連記事:iDeCoを活用した節税とは?いくら節税できる?効果的な運用方法・シミュレーション・注意点などをご紹介
生命保険
生命保険料控除は、年間で支払った保険料に応じて一定の金額が所得から差し引かれる制度です。この制度を利用すれば課税対象となる所得が減り、所得税や住民税を軽減できます。
法人では、加入した生命保険の支払保険料の一部を損金として計上可能です。これによって課税所得を減らし、節税できます。保険の種類によって効果が大きく変わるため、事業の状況や目的に合った保険に加入するよう心がけましょう。
関連記事:法人保険で節税?損金算入のルールや経理処理をわかりやすく解説!
中小企業退職金共済(中退共)
中小企業の従業員の退職金を、事業主が毎月掛金を支払い、退職時に共済から直接支払われるようにする制度です。中退共の魅力は掛け金を経費で落とせる点で、法人の場合は損金、個人事業主の場合は必要経費となり、企業の税負担を軽減できます。
中退共に加入している場合、同共済と提携しているレジャー施設や宿泊施設の割引きなど、福利厚生サービスを利用できるようになるといったメリットもあります。ただし、従業員のみが加入対象のため、経営者や役員層の方は同制度に加入できません。
関連記事:従業員の退職金はいつ損金算入できる?適用時期と注意点を解説
中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)
取引先の倒産によって中小企業が連鎖倒産するのを防ぐための共済制度です。取引先が倒産した際に利用できる貸付制度が設けられており、無担保、無保証人で掛金の10倍までの借入れができます。
経営セーフティ共済の掛金は支払った掛金が経費になり、その分の税負担が減ります。掛金は将来の月分まで含めて前納も可能です。前納した場合でも支払時の経費にできるため、資金の余裕のある時には前納もおすすめです。
関連記事:中小企業倒産防止共済(経営セーフティ共済)とは?メリットや加入方法、注意点を解説!
節税商品を活用する上での注意点
節税商品を活用する上で、いくつかの注意点について解説します。
節税目的のみでの契約は危険
大きな節税を目指すために経費を増やし、余計な支出が増えて資金繰りを悪化させる可能性があります。
また、過度な節税対策は脱税になりかねないため、税金の負担を減らすことだけを目的に経費を使うのではなく、事業の発展に本当に必要な支出なのかを判断しながら行いましょう。
将来の解約リスク・税負担に注意
途中で売却する場合、減価償却が進んだ後で資産を売却すると、その分譲渡益が発生し課税対象になります。
個人の場合は、不動産の保有期間によって適用される税率が変わる点にも注意が必要です。保険を途中解約する場合も、解約返戻金が一時所得として扱われ、税金がかかる可能性があります。
最新の税制改正に対応する
税制は頻繁に改正が行われているため、常に最新情報をチェックする必要があります。近年では、電子帳簿保存法の改正やインボイス制度の導入など、企業の経理業務に大きな影響を与える改正が相次いでいます。関連する改正には注意を払いましょう。
よくある質問
節税商品に関するよくある質問を、回答とともに紹介します。
経費で節税できる仕組みは?
経費が節税につながる理由は、事業の支出を経費として計上すると課税所得が減り、納税額を抑えられるためです。
経費を増やすとその分損金が増え、結果として課税所得が減少します。 逆に経費の計上漏れがあれば、本来納めるべき金額よりも多く納税している可能性があります。
高級車は節税になる?
自動車は高額かつ1年以上使用可能な資産のため、法人名義で契約した場合は固定資産に計上します。
消耗品などのように一度に全額を経費計上できませんが、減価償却によって数年間に分けての計上が可能です。ただし、高級車を社用車として購入し経費計上するには、その車が事業のために必要である理由を合理的に説明できなければなりません。
節税商品の購入時は専門家に相談すべき?
税金は事業の利益に直接影響を与えるため、節税商品を適切に管理することが、資金の最適化と企業成長のカギとなります。
特に不動産や高額商品の購入などを検討する場合は、事前に税理士などの専門家と一緒にシミュレーションしておくのが安心でしょう。節税・税務に関する相談を受けられるのは税理士のみです。
関連記事:節税・税務に関する相談はどこがベスト?無料の相談先や注意点も徹底解説
節税商品に関する相談は税理士へ
節税対策の一環として、事業に必要な商品や資産の購入は非常に効果的な方法です。ただし、やりすぎて脱税にならないよう注意する必要があります。税制の仕組みやルールを理解し、計画的に活用しましょう。
正しい知識と計画に基づいて節税に取り組めば、結果として資金の有効活用や事業の安定成長につながります。もし「どの商品を買えばいいのか」「この購入は本当に節税になるのか」と迷った場合は、税理士などの専門家への相談がおすすめです。
税理士に相談すれば、バランスよく効果的な節税方法を提案してもらえるほか、必要な手続きについてのサポートを受けられます。税金に関するお困りごとやご相談はぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。