中小企業が3期連続赤字になると、融資を受けにくくなったり取引先の信用が低下したりするため、倒産のリスクが上がります。節税面のメリットはあるものの、赤字経営を続けるのは望ましくありません。今回は、3期連続赤字で「どうなる?」と不安に感じている経営者の方に向けて、今後起こりうる可能性のあることや、必要なアクションなどを解説します
目次
3期連続赤字になると倒産のリスクが上がる
3期連続赤字になると、債務超過になり倒産する可能性が上がります。金融機関の信用低下により融資を受けられなくなったり、従業員のモチベーションが低下したりするケースがあるためです。
金融機関にとって、3期連続赤字の企業への融資は返済してもらえないリスクが高く、納得してもらえる説明が求められます。取引がある金融機関の場合、今後黒字化する根拠について明確に説明すると、融資を受けられる可能性があります。
達成可能だと見なされる経営改善計画書を通して、コスト削減方法や売上向上の戦略、数値目標などを示すのがポイントです。計画的に返済できる可能性について理解してもらえると、追加融資を受けやすくなるでしょう。
一方で、原則として新規融資を受けるのは困難だと知っておく必要があります。融資の審査においては、過去数年間の平均利益などがチェックされるケースもあります。
3期連続赤字で100%倒産するわけではないものの、悪循環に陥る可能性があり、なるべく避けるのが賢明です。
赤字を避けるには、客観的な経営状態の把握と、早期の対策が求められます。数字に対して苦手意識のある事業者の場合、会社の置かれている状況を正確に把握することに対して、抵抗があるかもしれません。
税理士などの専門家を頼りにすると、苦手な部分を補え、適切なアドバイスをもらえます。
関連記事:赤字の場合にかかる法人の税金は?確定申告や融資などについても解説
3期連続赤字の中小企業が存続するからくり
3期連続赤字でも中小企業が存続できる理由は、会社に現金が残っているためです。
例えば、パン屋さんを開業時に、1,000万円の資金があると仮定します。200万円の赤字が3期連続続いたとしても、400万円の資金が残ります。同じ状況が続くといずれ倒産するものの、すぐには倒産しません。
創業時の融資や社長のポケットマネーなどの活用によって、赤字でも中小企業が存続するケースはあります。
国税庁の調査でも、令和元年度において中小企業の約6割は赤字で、過半数に達すると判明しています。中小企業が一時的に赤字になる理由は、具体的に以下の通りです。
- 為替変動
- 大口の取引先の倒産
- 自然災害
- 設備故障・代替設備の導入
- 退職金などリストラの費用
- 新規事業や研究開発などへの投資
- 出店や移転
- 創業期など
法人税や相続税を節約するため、社長や親族に多額の給与を支給し、あえて赤字にするケースもあるのが特徴です。資本金の額によって異なるものの、例えば売上1億円で、利益1,000万円の中小企業の場合、約320万円の法人税の納税が求められます。
一方、仮に赤字の場合、約320万円の法人税の支払いをする必要がなくなると分かります。
青色申告の中小企業の場合、赤字分を通常10年間繰り越し、黒字化したときに相殺できるのもメリットの1つです。3期連続赤字になったとしても、経営者は冷静に対処できると理想的です。
関連記事:赤字決算の資金調達方法は?融資のデメリットとメリットを解説!
3期連続赤字の中小企業経営者に必要な覚悟と選択とは
3期連続赤字の経営者にとって必要なのは、困難な現状を打開する強い覚悟と、事業を存続するのか適切に選択することだと言えます。状況を客観的に理解し、適切なアクションを起こすことが、中小企業経営者にとってポイントとなるでしょう。
ここから詳しく解説します。
覚悟
以下で、経営者が押さえておきたい覚悟に関する内容をまとめました。
- 長期的な視野を持つ:市場の変化に対応し、顧客のニーズを満たす製品・サービスを将来的に提供できるのか把握する
- 客観的に考える:ライバル企業の動向や自社の特徴など、さまざまなデータをもとに、黒字化の可能性について客観的に把握するように務める
- 決断から行動までを早くする:熟考すると状況が変化する可能性が高いため、状況に応じて即断即決する必要がある
経営をする中で赤字が続くと、平静を保つのは困難かもしれません。会社の将来性や強み、市場の変化予測などを踏まえ、黒字化に向かって経営改革を進めるのかについて、経営者は決定する必要があります。
さらに赤字が膨らむ前に、潔く撤退する選択肢があると知るのも、経営者に求められる覚悟の1つです。
選択
赤字企業の経営者にとって効果的な選択は以下の通りです。
- 事業継続する場合:戦略の見直しと継続、コスト削減、資金繰り改善
- 事業継続しない場合:廃業やM&A
以下の通り、赤字の要因を分析し、必要のない経費の徹底的な削除や、黒字化させるために必要な売上の明確化と行動がポイントです。
戦略の見直し |
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コスト削減 |
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資金繰りの改善 |
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資金繰り表を作っていない場合は、まず作成し、指標として活用すると有用です。事業継続しない場合、以下の通り廃業やM&Aの選択が必要です。
廃業 |
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M&A |
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厳しい状況でこそ、経営者の手腕が問われると言えます。事業を継続する場合、継続しない場合のいずれにおいても、早期決断と行動によって、次の展開へと繋げやすいでしょう。
3期連続赤字から黒字化した大企業の事例
3期連続赤字から黒字化した大企業の事例として、本記事では株式会社レオパレス21を紹介します。施工不良問題などでの入居率低下、支払利息の負担などを理由に、レオパレス21は令和元年3月期以降、3期連続赤字となりました。
一方で、第三者割当増資や融資などにより、令和2年11月には約572億円の資金調達や、人員削減、解体・改修対象物件の減少などによる収支状況の改善に成功します。
令和4年3月期決算において、前年比売上が106億円減少したものの、レオパレス21は415億円のコスト削減を実現しました。コスト削減で、重点的に取り組まれたのは以下の2つです。
- 業務セントラル化:契約事務処理を首都圏に集約、非正規雇用の割合の向上、人員配置・業務プロセスの見直しなど
- コールセンター外注化:24時間365日体制をキープしつつ、人員削減と一部の時間帯の外注化
コスト削減とともに、稼ぎ頭である法人契約(社宅)を増加させるため、レオパレス21は経営陣による営業や契約のDX化などを進めます。結果として、令和5年には4期ぶりの黒字化に成功しました。
関連記事:黒字倒産はなぜ起こる?7つの理由や起こりやすい業種、黒字倒産しないためのポイントをご紹介!
連続赤字に関するよくある質問
連続赤字に関してよくある質問をまとめました。ここから詳しく見ていきましょう。
4期連続赤字や5期連続赤字になるとどうなる?
3期連続赤字以上に倒産のリスクが高まったり、融資を受けられなくなったりする可能性が高いです。
コスト削減や生産性の向上など、徹底的な経営革新の推進が求められます。経営改善のサポート実績が豊富な税理士に変更するのも、効果的な施策の1つです。
3期連続赤字になると上場廃止基準に該当する?
状況によって異なります。
債務超過の場合、上場維持基準に抵触するため、原則として1年以内に改善できないと上場廃止となるのが特徴です。赤字になると、必ず上場廃止になるとは言い切れません。
上場廃止となる企業の多くは、子会社株式の100%取得を目指す公開株式買付や、経営陣などによる買収です。
関連記事:上場廃止とは?メリット・デメリットを解説
債務超過でも活用できる融資はある?
あります。
活用できる可能性がある融資は、具体的に以下に示します。
- 自治体の制度融資:金融機関や信用保証協会と連携
- 政策金融公庫の融資:国が100%出資の政策金融機関
- 商工組合中央金庫の融資:中小企業専門の金融機関
債務超過時に活用できる融資に関する相談は、税理士が頼りになります。
連続赤字の中小企業は税理士へ相談を
3期連続赤字の中小企業がどうなるのかや存続できるからくり、黒字化した大企業の事例などを解説しました。
赤字が続くと、取引先や金融機関の信用を失い、融資を受けにくくなったり、従業員のモチベーションが低下したりする可能性が高いです。節税面などのメリットがあるものの、長期的に赤字経営を続けるのは好ましくないと把握しておくのがポイントです。
安定した経営を築くには、PDCAサイクルを回し続けたり、コスト削減を徹底したりするなど、取り組むことは多岐にわたります。経営改善計画の策定や節税などの相談は、税理士へ依頼するとよいでしょう。
小谷野税理士法人は4,000社以上のサポート実績があるため、連続赤字のときもお役に立てます。まずはお気軽に無料相談をご利用ください。