新型コロナ対応をはじめ、事業や生活を支えるために支給された補助金や給付金。個人事業主の中には補助金を受け取ったものの、税金がかかってしまうのか悩む方も多いのではないでしょうか。本記事は補助金の税務上の取扱いや仕訳方法、圧縮記帳のポイントなど個人事業主が知っておくべき内容をわかりやすく解説します。個人事業主で補助金を受給する予定のある方は、ぜひチェックしてみてください。
目次
補助金は課税対象?
結論から言うと、補助金は課税対象です。補助金に税金がかかる理由は、その性質が「支出したコストの補填」にあるためです。通常、事業で発生したコストは経費として計上され、利益が減ることで税金も軽減されます。
しかし補助金によってそのコストが補填される場合、結果的に経費だけが計上されると利益が二重に圧縮されてしまいます。そこで、補填された金額分は利益として加算され、課税対象となるのです。
また補助金には資金繰りの改善を目的とするものもあり、売上の減少を補うために支給されるケースもあります。このような場合、事業に関連する補助金は「売上の一部」とみなされ、売上と同様に課税されることになります。
ただし、補助金を受け取っても事業全体で赤字であれば、課税対象となる所得がないため税金は発生しません。過去の繰越欠損金がある場合も同様に、補助金による収入があっても税負担が生じない可能性があります。
関連記事:返済不要!起業時に活用したい、知っておきたい補助金・助成金をご紹介
課税対象となる補助金など
続いて、課税対象となる補助金などについて3つのケースをご紹介します。
事業所得扱い
事業に関係する補助金・助成金は、原則として「事業所得」として課税対象です。売上減少や経費負担に対する補てんとして支給されるため、通常の収入と同様に扱われます。
事業所得扱いとなる補助金などの具体例は以下の通りです。
- 持続化給付金(個人事業主向け)
- 家賃支援給付金
- 雇用調整助成金
- 小学校休業等対応助成金・支援金
- 感染拡大防止協力金(東京都)
上記の給付金はすべて確定申告において収入計上が必要です。なお、赤字であれば納税額が発生しないこともあります。事業に関連する補助金を受け取った場合は、必ず所得に含めて適切に申告しましょう。
一時所得扱い
生活支援など事業に関係ない給付金は「一時所得」となり、条件によっては課税対象です。事業と無関係な一時的収入とみなされ、一時所得には年間50万円の特別控除がある点が特徴です。
一時所得扱いとなる補助金や給付金などの例をご紹介します。
- 持続化給付金(給与所得者向け)
- Go Toキャンペーン給付金
- すまい給付金
- 地域振興券 など
なお個人の生活支援を目的とした給付金は、50万円を超えると課税対象になる場合があるので注意しましょう。
雑所得扱い
事業所得にも一時所得にも該当しない給付金は「雑所得」として扱われます。明確な区分がないものは、広く「雑所得」に分類されるためです。
雑所得扱いの給付金や補助金などの例は以下の通りです。
- 雑所得者向け持続化給付金
- ベビーシッター利用者支援事業の助成
- 東京都のベビーシッター利用支援事業
給与所得者の場合、雑所得は年間20万円以下であれば確定申告不要の場合もあります。しかし受給内容によっては申告義務が生じるため確認が必要です。
関連記事:補助金・助成金に税金はかかる?税務上の取扱いと処理について
非課税対象となる補助金など
非課税となる補助金・助成金の根拠と具体例を以下の表にまとめました。
非課税の根拠法令 | 内容の概要 | 主な非課税の補助金・助成金の例 |
雇用保険法、生活保護法など | 法律で非課税と定められている支援制度 | 新型コロナ休業支援金 雇用保険の失業等給付 生活保護・児童(扶養)手当 被災者生活再建支援金 |
新型コロナ税特法 | 新型コロナの影響による特例措置で非課税 | 特別定額給付金 子育て世帯への臨時特別給付金 |
所得税法 | 所得税法上で非課税とされる支援 | 学生支援緊急給付金 ひとり親世帯への給付金 医療従事者等への慰労金 ベビーシッター利用支援(特例) 保育料助成金(東京都) |
補助金・助成金の中には、法律に基づいて非課税となるものがあります。同じ名称でも特例措置か通常時かで課税区分が異なる場合があるため、事前にしっかり確認しておきましょう。
個人事業主が補助金を受給した場合の仕訳例
個人事業主が支援金や補助金を受け取った際の仕訳は、入金先の口座や支援金の性質によって異なります。基本的には法人と同様の処理を行いますが、個人口座や事業に関連しない支援金の場合は注意が必要です。
事業用口座に補助金(30万円)が振り込まれた場合
IT導入補助金など、事業に関連する補助金が事業用口座に入金されたケースです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
預金 | 30万円 | 雑収入 | 30万円 |
個人口座に補助金(30万円)が振り込まれた場合
事業に関する補助金が個人口座に入金された場合でも、実質的に事業収入として計上する必要があります。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
事業主貸 | 30万円 | 雑収入 | 30万円 |
事業に関係ない給付金(50,000円)が事業用口座に入金された場合
生活支援金などプライベート用途の給付金が事業用口座に誤って振り込まれたケースです。
借方 | 金額 | 貸方 | 金額 |
預金 | 50,000円 | 事業主借 | 50,000円 |
それぞれのケースに応じて、正確な仕訳処理を行う必要があります。誤った処理は税務上のトラブルにつながる可能性があるため、不明点がある場合は税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。
個人事業主が補助金を受給した場合の仕訳における注意点
最後に、個人事業主が補助金を受給した場合の仕訳における注意点を3つ解説します。
記載ミスや漏れに注意する
補助金や助成金も、通常の会計処理と同様に、申告内容に誤りや漏れがあるとペナルティが発生するので要注意です。例えば正しい納税額より少ない額で申告してしまった場合には、原則として「過少申告加算税(通常10%)」が課されます。
さらに修正が遅れて申告期限を過ぎている場合には「延滞税」も発生するため、余計な金銭的負担がかかります。補助金の処理においても、正確な会計処理と期日管理を徹底しましょう。
決算期をまたぐ場合は「未収入金」で処理する
補助金や助成金は、申請から実際の入金までに時間がかかるのが一般的です。採択や支給が決定しても、すぐに入金されるとは限らず、会計年度をまたいでしまうケースもあります。
その場合は、補助金等が支給される前の年度では「未収入金(借方)」と「雑収入(貸方)」で処理します。そして入金があった際には「普通預金(借方)」と「未収入金(貸方)」として仕訳を行いましょう。
個人事業主は圧縮記帳を使えない
法人が補助金を受け取った場合、圧縮記帳により固定資産を取得した際の税負担を一時的に軽減できます。
しかし、圧縮記帳を利用できるのは法人のみであり、個人事業主は利用できないのでご注意ください。
まとめ
補助金や助成金は一見するとありがたい支援ですが、税務上は慎重な取扱いが求められます。内容によっては課税方法が異なるため、誤った処理をすると思わぬ税負担やペナルティが発生することもあります。
補助金の会計処理に不安がある場合は、早めに税理士などの専門家に相談し、正確な申告と税務管理を心がけましょう。補助金の一時所得に関する扱いに関してお悩みがあれば、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。