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欠損金の繰越限度額はいくら?繰越控除の概要や税効果会計について解説

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欠損金の繰越限度額はいくら?繰越控除の概要や税効果会計について解説

青色申告を行っている場合に利用できる制度の1つに欠損金の繰越控除というものがあります。欠損金の繰越控除を行えば、過去に生じた赤字を将来の黒字から控除できるため、税負担を抑えることが可能です。しかし、欠損金の繰越控除には限度額や繰越期間が設けられています。

本記事では、欠損金の繰越控除が利用できる条件をはじめ、繰越限度額や繰越期限について解説していきます。

欠損金の繰越控除とは

赤字のイメージ

法人所得の計算において、益金よりも損失が大きかった場合、その差額を欠損金と呼びます。過去に生じた欠損金を将来の所得から控除できる制度を欠損金の繰越控除と呼び、過去から繰り越している欠損金を繰越欠損金と呼びます

欠損金の繰越控除は誰でも利用できるわけではなく、利用の条件や繰越期間など様々なルールのもと利用できます。以下では、欠損金の繰越控除を利用するための条件や繰越限度額などについて解説していきます。

関連記事:青色申告者対象の繰越控除とは?確定申告の手続きをわかりやすく解説!

繰越控除を利用するための条件

まず、欠損金の繰越控除を利用するには、欠損金が発生した事業年度に青色申告を行っている必要があります。現時点で青色申告を行っていたとしても、繰り越したい欠損金がある事業年度に青色申告を行っていなければ、繰越控除は適用できない点が大きなポイントです。これに加え、下記の条件も満たす必要があります。

  • 欠損金が生じて以降の事業年度も確定申告を行っている
  • 帳簿書類の保存を行っている

欠損金の繰越控除を行うには、繰り越したい欠損金が生じた事業年度に青色申告で確定申告を行っていなければなりませんが、それ以降の事業年度は白色申告でも繰越控除が行えます。確定申告をしていない年があると繰越控除は適用されません。

さらに、繰り越したい欠損金が生じた年の確定申告から10年間の帳簿書類の保存が必要です。税法上定められている帳簿書類の保存期間は原則7年であるため、きちんと帳簿書類が保存されているか確認しておきましょう。

関連記事:青色申告のメリット5つ|デメリットや適用をおすすめできる人とは?

繰越期間

欠損金の繰越期限は10年間で、10年間で控除できなかった場合は切り捨てとなります。ただし、2018年4月1日よりも前に開始した事業年度で生じた欠損金の繰越期限は9年間です。これは平成28年度の税制改正により繰越期間が1年延長されたのですが、それ以前の繰越欠損金は税制改正前のものであるためです。

控除限度額

繰越欠損金の控除には限度額があります。具体的な控除限度額は以下の通りです。

法人の規模

控除限度額

中小法人

なし

資本金1億円超の法人

所得金額の50%

資本金5億円以上の法人の子会社

所得金額の50%

中小法人とは、資本金が1億円以下の企業のことを指します。ただし、資本金が1億円以下であったとしても、資本金が5億円以上の法人の子会社やグループ通算制度の大通算法人は中小法人には該当しません。

基本的に中小法人は欠損金の全額を控除できます。例えば繰越欠損金が300万円で所得金額が400万円の場合、繰越欠損金の全額を所得金額から差し引けます。しかし中小法人以外の法人は所得金額の50%が上限です。

例えば繰越欠損金が800万円、所得金額が1,000万円の場合、所得金額の50%である500万円は控除可能ですが、残りの300万円は来年度以降に繰り越さなければなりません。この所得金額の50%という繰越限度額は、平成30年4月1日以降に開始した事業年度に適用されます。それ以前の事業年度の限度額については下記を参考にしてください。

繰越控除を適用する事業年度

控除限度額

平成24年4月1日~平成27年3月31日開始の事業年度

所得金額の80%

平成27年4月1日~平成28年3月31日開始の事業年度

所得金額の65%

平成28年4月1日~平成29年3月31日開始の事業年度

所得金額の60%

平成29年4月1日~平成30年3月31日開始の事業年度

所得金額の55%

上記の期間は繰越控除を行う事業年度ではなく、繰越欠損金が生じた事業年度である点を理解しておきましょう。

参考:No.5762 青色申告書を提出した事業年度の欠損金の繰越控除|国税庁

参考:No.5900 グループ通算制度の概要|国税庁

合併や買収時の取り扱い

繰越欠損金を有している企業と合併したり買収したりする場合、原則として繰越欠損金を引き継ぐことはできません。これは繰越欠損金を有する会社を節税目的で合併・買収することを防ぐためです。

しかし、一部例外として繰越欠損金を引き継げるケースもあります。どのようなケースで繰越欠損金を引き継げるのかは法人税法で細かく定められているため、詳しく知りたい場合は税理士などの専門家に相談してみましょう。

関連記事:事業承継とM&Aの違いは?メリット・デメリットや流れを解説

税効果会計と仕訳の方法

赤字を繰越欠損金で処理

繰越欠損金の会計処理では、税効果会計という手法を用いることがあります。以下では、税効果会計の概要と具体的な仕訳の方法について解説していきます。

税効果会計とは

まず前提として、税務上の所得と会計上の利益は必ずしも一致するとは限りません。繰越欠損金は法人税を計算する時の基となる所得から差し引きますが、この所得というものは税務上の儲けのことで「益金-損金」で計算します。一方の利益は「収益-費用」で計算できます。

益金と利益、損金と費用は同じものではありません。税務上では益金として扱えるものでも会計上は利益として扱えないものや、税務上は損金として扱えるものでも、会計上では費用として扱えないものがあるため、両者に差が生じるケースがあるのです。

税効果会計はこのような差異を解消する会計処理のことを指します。税効果会計を行うと、税務上と会計上の間で生じた差を調整して適切な納税ができるようになるのです。

繰越欠損金で用いる勘定科目

税務上と会計上の差異は、法人税等調整額という勘定科目を用いて仕訳を行います。会計上と税務上の差には一時差異永久差異という2種類に分けられますが、法人税等調整額の対象となるのは一時差異のみです。

一時差異は会計上と税務上で生じる一時的な差異で、長期的な視点で考えたときに解消されるもののことを指します。繰越欠損金は将来の所得から控除するため、いずれは解消される差異であることから一時差異に該当します。

さらに一時差異は、将来減算一時差異将来加算一時差異の2つに分けられます。差が解消された時に課税所得を減らす効果があるものが将来減算一時差異、差が解消された時に課税所得が増えるものが将来加算一時差異です。

将来加算一時差異は将来の課税所得を減らすため繰延税金資産という勘定科目を用い、将来加算一時差異は将来の課税所得を増やすため繰延税金負債という勘定科目を用いて仕訳します。繰越欠損金は将来の課税所得を減らすため、繰延税金資産を用いて仕訳します。

繰越欠損金を計上する際の仕訳

税効果会計を用いた仕訳を行う際には、まず法定実効税率を求めなければなりません。法定実効税率とは、法人税法人住民税法人事業税特別法人事業税地方法人税の税率を合わせたものを指します。具体的な法定実効税率の計算は下記の通りです。

(法人税率×(1+住民税率)+事業税率 )/(1+事業税率)

法定実効税率が計算できたら、繰延税金資産を計算します。繰延税金資産は、以下の計算式で求められます。

繰越欠損金(将来減算一時差異)×法定実効税率

例えば繰越欠損金が500万円で全額が控除可能かつ法定実効税率が35%の場合、500万円×35%=175万円と計算します。このケースでの繰延税金資産は175万円です。この例を用いて仕訳を行うと、次のようになります。

借方

貸方

繰延税金資産

1,750,000円

法人税等調整額

1,750,000円

借方に繰延税金資産を仕訳するだけで終わってしまうと差が生じてしまうため、貸方にも同じ金額を法人税等調整額として仕訳を行いましょう。

繰越欠損金を控除した際の仕訳

繰越欠損金を所得から控除した場合でも、税効果会計を用いて仕訳を行います。例えば繰越欠損金のうち30万円を控除し、法定実効税率が35%の場合は次のように計算します。

30万円×35%=10.5万円

この例での繰延税金資産の取崩額は10.5万円です。仕訳は繰延税金資産を計上した時と逆になります。

借方

貸方

法人税等調整額

105,000円

繰延税金資産

105,000円

このように所得から繰越欠損金を控除するたびに繰延税金資産の取崩額を計算し、仕訳を行うことになります。

また、繰越期間内に繰越欠損金が控除しきれないと判明した場合も、取崩の仕訳を行います。仕訳の流れは上記と同じで、控除しきれない金額に法定実効税率を掛けて繰延税金資産の取崩額を算出し、借方に法人税等調整額、貸方に繰延税金資産の取崩額を記載します。

関連記事:青色申告のやり方とは?フリーランスや個人事業主が知るべきポイント解説!

欠損金の繰越控除限度額は法人の規模により異なる

過去に生じた欠損金を将来の所得から控除できる欠損金の繰越控除という制度には、控除限度額が設けられています。この限度額は法人の規模により異なり、全額もしくは所得の50%に設定されています。

この他にも、繰越期間や利用するための条件など様々なルールが設けられているため、欠損金の繰越控除を利用する場合は、予め制度内容を確認しておくと安心です。

また、繰越欠損金の会計処理には税効果会計という手法を用います。税効果会計では法定実効税率を用いて計算しなくてはならないため計算が煩雑です。繰越欠損金の処理に不安がある場合は、顧問税理士などの専門家に相談すると良いでしょう。

繰越控除についてのお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

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この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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