日本の財政支出にはさまざまな形がありますが、その中でもよく間違えやすい用語として「補助金」と「交付金」があります。似たような目的で使われるケースもありますが、それぞれ目的や特徴に違いがあるのです。今回は、補助金と交付金の違いを中心に、注意点やよくある質問についても分かりやすく解説します。両者の特性を理解し、適切に利用しましょう。
目次
補助金とは?
補助金とは、国や地方公共団体が特定の目的や政策目標を達成するために、事業者や個人の取り組みに対して資金の一部を給付する資金です。補助金は単なる資金援助ではなく、社会発展のために事業活動を後押しする政策の1つといえるでしょう。
補助金の特徴
最大の特徴は、原則的に返済義務がない点です。ただし補助を受けるには、事業者が行おうとする事業がその補助金の使い道の趣旨に添った事業である必要があります。さらに、給付を受けるためには審査があり、審査を通った事業者しか給付されないのも特徴です。
補助金の代表例
代表的な補助金は以下です。
事業再構築補助金
事業を再構築する際にかかった経費の一部を補助してくれる制度です。中小企業の新たな取り組みを支援するのが目的で、元々は新型コロナウィルスの影響が大きい企業が業績を回復させるための補助金でした。
関連記事:事業再構築補助金とは何か?初心者にもわかりやすく申請のポイントなどの基礎知識を解説!
ものづくり補助金
中小企業や小規模事業者を対象とした補助金で、生産性向上に取り組む革新的サービス開発・試作品開発・生産プロセスの改善を行うための設備投資を支援する制度です。製造業だけでなく、サービス業でも利用できます。
関連記事:ものづくり補助金とは?公募要項や採択事例などをわかりやすく解説
IT導入補助金
中小企業や小規模事業者向けに、自社の課題やニーズにあったITツールの導入にかかる経費の一部を補助し、業務効率化やDXをサポートする制度です。2025年度には導入関連費が拡充され、導入後の活用支援、導入後の保守サポートも補助金の対象となりました。
関連記事:【2025年度】個人事業主が利用できるIT導入補助金について
交付金とは?
交付金とは、国及び地方自治体が特定の目的に対して、法令に基づいて個人や企業、団体などに交付する資金です。使途に関して比較的自由度が高く、受け手である自治体や団体の裁量で決定できる場合もあります。
交付金の特徴
交付金は補助金に比べて規模が大きく、多額の資金提供をされるのが特徴です。基本的には、地域経済への貢献度が高い事業やプロジェクトへの交付が大部分を占めており、自社事業に活用できる交付金はほとんどありません。
交付金の代表例
代表的な交付金は以下です。
地方交付税交付金
国が地方公共団体に支給するお金で、財政力の格差を埋めるために使われます。都会の自治体では税金だけで十分な歳入を期待できますが、過疎が進んでいる自治体だと税収だけでは運営が困難なため、国から支給される地方交付税交付金が必要になるのです。
地方創生推進交付金
地方創生の推進(人口減少対策、雇用創出、地域産業振興など)のために、地方での暮らしを展開している、あるいはしていく予定のある自治体に対して、国や地方自治体などが交付する資金を指します。2014年に新設され、地方の盛り上がりを後押しするような制度です。
社会資本整備総合交付金
道路や下水道、海岸、都市公園、市街地の整備や住宅及び住環境整備等といった政策目的を実現するために、社会資本整備事業やソフト事業を総合的に支援する制度です。国土交通省が所管しています。
補助金と交付金の違い
次に、補助金と交付金の違いについて解説します。
関連記事:助成金と補助金の違いとは?知っておきたいポイントを解説
支給対象の違い
補助金の支給対象は企業や団体、個人など幅広い民間のものが対象です。さまざまな分野で募集されており、それぞれの補助金の「目的・趣旨」を確認して募集要件とマッチしなければ受給できません。
一方、交付金は、主に地方自治体や公益団体、NPOなどが対象です。目的に沿った事業やプロジェクトを立ち上げ、民間企業とチームを組んで受託者として参加し、交付金を受けるといったケースがあります。
用途の違い
補助金によって目的は異なりますが、主に新規事業のサポートや事業の拡大・成長、課題解決の支援に支払われます。
交付金は、主に地域活性化や地方創生、公共インフラの整備、防災・復興、教育などの地域経済や社会の活性への貢献度が高いものが主となっています。
審査・申請手続きの違い
補助金は申請しても、厳密な審査を通過しなければ受給が認められません。種類によって必要な書類が異なるため、何を準備すればいいのか混乱するケースもあります。また、申請締切が設けられており、募集期間も1ヵ月前後と短い傾向です。
交付金は申請不要なケースもありますが、特別な交付金には特定の条件があるため、基本的には申請が必要な場合が多いです。審査が行われない場合でも、申し込みは必須です。補助金以上に必要書類や適格事業者かどうかを審査される場合もあります。
支給対象額の違い
補助金は、事業内容・規模などにより異なりますが、数10万円以上〜数100万円というケースが多いです。補助金には予算上限があり、申請者が多い場合は採択額の調整が入る場合があります。
交付金は、支給額は数10万円以上〜数億円のものまで幅があります。補助金と比べ規模が大きくなりやすいのが特徴で、事業が複数年にまたがるような場合は、交付金も複数年に分けて交付されます。
補助金と交付金、どっちを活用すべき?
補助金と交付金のどちらを活用するかは、目的や立場によって異なります。おすすめのケースを紹介します。
民間企業や個人事業主の場合
補助金の活用がおすすめです。中小企業や個人事業主・フリーランスを対象にした補助金や助成金、給付金、支援金がたくさんあります。
地方自治体やNPO、地域団体などの場合
交付金の活用がおすすめです。地域活性化などの地方に関する政策、公共性の高い取り組みには交付金が向いています。
コロナや災害からの事業再建中の場合
補助金の活用がおすすめです。事業再構築補助金や小規模事業者持続化補助金など、中小企業が活用できる補助金や助成金があります。
地域の課題を解決したい自治体・団体の場合
交付金の活用がおすすめです。生活環境の向上、人口減少対策には地方創生推進交付金、過疎地域の地域課題解決やインフラ整備には過疎地域持続的発展支援交付金などの交付金があります。
補助金に関する注意点
補助金に関する注意点について解説します。
申請手続きと期限に注意する
補助金の手続きでは、プロセスごとに複数の書類を提出しなければならないため、記載ミスや不備には十分注意しましょう。一つでも不備があると申請が受理されない可能性があるため、提出前に入念なチェックが大切です。
助成金や他の補助金との併用は慎重に行う
補助金は、他のものと併用できるケースとできないケースがあります。補助対象となる事業内容が重複しない場合は併用が可能です。併用ができない場合は募集要項に記載されているため、申請の手続きを行う前に必ず確認しましょう。
交付金に関する注意点
交付金に関する注意点について解説します。
民間企業は受け取れない可能性が高い
交付金は主に地方公共団体に支給されるため、民間企業は受け取れない可能性があります。ただし、地方公共団体が事業を実施する際に民間企業へ委託するケースもあるため、事業を受託できれば売上拡大になる場合もあります。
受給後の報告に注意する
補助金と同様に、交付金を受け取った場合は実績報告と必要書類の提出義務が生じます。必要書類の内容が適切でない場合や、目的以外の経費を計上していると交付金の返還を求められる場合もあるためご注意ください。
よくある質問
補助金や交付金について、よくある質問を回答と共に紹介します。
補助金や交付金を不正利用した場合どうなる?
不正な手段によって受給した場合、5年以下の懲役や100万円以下の罰金、あるいはその両方が科される可能性があります。今後補助金・交付金申請を制限される場合もあるため、不正は絶対におすすめしません。
補助金や交付金の申請にはどれくらいの時間がかかる?
申請にかかる時間はそれぞれの制度によって異なりますが、基本的に準備から受給まで1〜3ヵ月以上かかるケースが一般的です。申請手続きは提出期限に間に合わなければ審査対象外になるため、余裕を持って準備しましょう。
補助金や交付金の申請に関するサポートはある?
自治体の窓口など、無料で申請のサポートを行うサービスがあります。また、専門家である税理士や行政書士に依頼すれば、申請書の作成や計画立案を代行してくれます。申請の成功率を上げるためにも、サポートの活用をおすすめします。
関連記事:補助金申請は税理士に相談したほうがいい?依頼のメリットやコストについて
補助金や交付金を活用するなら専門家に相談を
今回は、補助金や交付金の違いを中心に解説しました。補助金や交付金は基本的に返済義務がないため、事業や目的とマッチすれば積極的に活用したい制度です。
制度の種類によって明確な違いがあるため、それぞれの目的や特性を理解し、自身の状況や事業内容に合った支援を選びましょう。不正受給には十分注意し、正しく活用することが重要です。
補助金や交付金を上手に活用したい場合は、専門家の手を借りるのがおすすめです。税理士は補助金や交付金の活用方法だけでなく、事業の特性を理解した上で最適な節税対策のアドバイスもできます。
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