0120-469-383平日 9:00~18:00 税理士に相談(相談無料)
会社設立の基礎知識

卸売業の事業区分は?判定が難しい区分や簡易課税制度の基礎を解説

公開日:

卸売業の事業区分は?判定が難しい区分や簡易課税制度の基礎を解説

簡易課税制度を利用するにあたって「卸売業」の事業区分を正しく判断するのは難しいと言われています。というのも、卸売業といってもその業態や取引内容によっては、異なる事業区分に該当することがあるためです。そこで本記事では、卸売業の定義や簡易課税制度の基礎、さらに実務で迷いやすい事業区分の判断ポイントを解説します。

おさえておきたい「卸売業」の定義

以下では、総務省統計局が管理するe-Statというサイトによる「卸売業」の定義をご紹介します。

小売業者や他の卸売業者への販売

小売店や別の卸売業者に商品を販売する事業所

事業者向けに商品を大量または高額で販売する業者

建設業、製造業、飲食業、病院、学校、官公庁などに対して商品を提供するケースが該当

業務用製品を取り扱う販売業者

事務機器、業務用家具、病院・美容院・ホテル・レストランなどの設備、産業機械(農業機械を除く)などを主に業務用途として販売している事業所

製造業者が運営する卸売事業所

製造業の企業が、自社製品を別の場所で販売するために設けた拠点で、販売が主な業務であるものが該当

商品の売買を仲介する事業者

代理店や仲立人として、他の事業者のために商品売買の手続きを行う業者も含む

卸売業(代理商や仲立業などは除く)は、取り扱う主要な商品の種類によってさらに細かく業種別に分類されます。

「製造小売」という言葉があるように「製造卸」という用語も使われますが、これは製造業者が自社製品を直接卸売する場合を指します。一方で、商品を仕入れて卸売する事業(仕入卸)とは明確に区別しなくてはいけません。

参考:日本標準産業分類(平成25年[2013年]10月改定)   >  卸売業,小売業|e-Stat

卸売業の一般的な事業区分と判定が難しいケース

在庫

卸売業の一般的な事業区分は「第1種事業」に該当します。卸売業は商品を仕入れて他の事業者に販売するのが中心の業態です。そのため仕入にかかる消費税の割合が高く、みなし仕入率も高めの90%に設定されています。

ただし第1種事業に該当しそうに見える取引であっても、商品に加工が加わるとその他の事業区分に該当する場合があります。

事業内容例

事業区分

みなし仕入率

  • 商品に名入れをして販売
  • 食肉・鮮魚小売店で、仕入商品を切る・刻む・混ぜるといった簡易的な加工をしてから同一店舗で販売

第1種または第2種

90%または80%

  • 白地のTシャツを染色して販売
  • 魚を加熱加工して販売
  • 荒茶を加工して製品茶にして販売
  • 菓子・パン・惣菜・弁当の製造小売

第3種事業(製造業等)

70%

販売した商品の修理、ズボンの裾上げ

第5種事業(サービス業)

50%

ただし、加工などの状況によっては上記の事業区分とは異なる可能性があるため注意しましょう。

簡易課税制度の基礎をおさらい

簡易課税制度は、消費税の計算を簡略化できる中小企業向けの申告方法です。以下では、簡易課税制度の基礎についてご紹介します。

申請要件

簡易課税制度を利用するには、以下の2つの要件を満たす必要があります。

  1. 基準期間における課税売上高が5,000万円以下であること
  2. 「消費税簡易課税制度選択届出書」を事前に提出していること

簡易課税を適用したい期間の2年前(法人なら前々事業年度、個人事業主なら前々年)を「基準期間」と呼びます。

この基準期間における「課税売上高」(消費税が課税される取引の売上高)が5,000万円以下である必要があります。基準期間の課税売上高を算出する際は、売上全体から非課税取引と不課税取引を除外して計算するのが一般的です。

メリット・デメリット

簡易課税制度は、仕入税額の計算が不要なため事務負担を軽減でき、特に課税売上割合が95%未満の事業者にとって効率的です。仕入控除が少ない業種では納税額の軽減にもつながります。

ただし、事業が複数ある場合は売上区分が必要となり手間が増えることもあり、一度選択すると2年間は変更できない点に注意が必要です。

関連記事:簡易課税とは?事業区分や計算方法・メリットとデメリットを解説!

卸売業における簡易課税制度の計算方法

在庫管理をする男性

簡易課税制度を適用した場合の計算方法について、具体的な数値を使ってわかりやすくご説明します。

計算の流れは以下の通りです。

①差引税額の計算

売上にかかる消費税 - 仕入にかかるみなし仕入控除

 = 売上高 × 7.8%(国税部分) ×みなし仕入率

②地方消費税の計算

差引税額 × 22 ÷ 78

③納付税額の計算

差引税額 + 地方消費税

ここで、売上高3,000万円の卸売業の場合の納付税額を計算してみましょう。

①差引税額の計算

3,000万円 × 7.8% −(3,000万円 × 7.8% × 90%)

 = 23万4,000円

②地方消費税の計算

23万4,000円 × 22 ÷ 78 = 66,000円

③納付税額の計算

23万4,000円 + 66,000円 = 30万円

関連記事:消費税の簡易課税方式はどうやって節税する?基礎知識や節税のポイントを解説

簡易課税制度に関する注意点

簡易課税制度を適用するかどうかは、慎重に判断する必要があります。原則課税を選択していれば、預かった消費税よりも仕入れた消費税の方が多い場合、その差額は還付されます。

しかし簡易課税の場合、常に預かった消費税をもとに納税額が決まるため、必ず消費税を納める義務が発生します。そのため例えば簡易課税を適用する年に大きな設備投資などで多額の経費がかかると、消費税を「払い損」になることがあります。

また原則課税の期間中に高額特定資産を取得すると、その資産を取得した年度の初日から3年間は原則として簡易課税制度へ切り替えられません。すでに簡易課税を選んでいる場合はそのまま適用されますが、それでも3年間は強制的に課税事業者となります。

簡易課税事業者になるかどうかは短期的な視点だけでなく、中長期的な事業計画も踏まえて検討することをおすすめします。

関連記事:【税理士監修】簡易課税とは?メリット・注意点や計算方法を解説

卸売業の事業区分に関するよくある質問

倉庫

最後に、卸売業の事業区分に関するよくある質問をまとめたので、ぜひ参考にしてください。

卸売と小売の違いは?

卸売と小売の違いは「販売相手」にあります。卸売業者は主に小売業者に商品を販売し、小売業者は一般消費者に販売します。ただし近年では、卸売業者が直接消費者に販売したり、小売業者が卸も兼ねるケースが増え、両者の区別が曖昧になっています。

一般課税に切り替えたいときはどうすればいい?

簡易課税制度から一般課税(本則課税)へ変更する場合は消費税簡易課税制度選択不適用届出書を提出する必要があります。変更したい課税期間の初日の前日までに、所轄税務署へ提出しましょう。

ただし一度簡易課税を選択すると、原則として2事業年度は変更できません。切り替え可能な時期については、あらかじめ具体的な日付を含めて確認しておきましょう。

関連記事:「2割特例」と「簡易課税」どっちを選ぶべき?ポイントは事業区分と課税売上高

まとめ

簡易課税制度における事業区分は適用するみなし仕入率に直結し、納税額を大きく左右します。特に卸売業は一見シンプルに思えますが、加工や販売方法によっては別の区分に該当するケースもあるため、慎重な判断が求められます。

誤った区分で申告を行えば、修正申告や追徴課税のリスクも伴います。不明点がある場合は、税理士など専門家へ相談するのがおすすめです。簡易課税制度や事業区分の判断でお困りごとがあれば、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
  • 会社設立の基礎知識 特集「法人のための確定申告」
税理士「今野 靖丈」

会社設立専門の税理士による
オンライン面談を実施中!

お電話でのお問い合わせ

0120-469-383 受付時間 平日 09:00~18:00

Webからのお問い合わせ

相談無料会社設立の相談をする 24時間受付中

税理士変更のご検討は
オンライン面談でもお受けします

お電話でのお問い合わせ

0120-469-383 受付時間 平日 09:00~18:00

Webからのお問い合わせ

税理士変更の相談をする 24時間受付中
オンライン面談