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会社設立の基礎知識

資本準備金のメリットとは?企業経営に役立つ仕組みと活用のポイントを解説

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資本準備金のメリットとは?企業経営に役立つ仕組みと活用のポイントを解説

企業の財務戦略において、資本準備金は重要な存在です。会社設立時や増資時に関わるこの制度には、経営の安定性や将来の成長を支えるためのさまざまな利点があります。ただし、その仕組みや活用法はやや複雑で、実際にどう役立つのかよく分からないと感じている方も多いでしょう。本記事では、資本準備金の基本的な仕組みから、活用時のポイントまでを分かりやすく解説していきます。

資本準備金とは

資本準備金とは、会社が出資を受けた際、払込金額の一部を資本金に計上せずに積み立てておく準備金を指します。これは、将来的な資本増強や損失補填に備えるために設けられ、企業の財務基盤を安定させる役割を果たします。

会社法上、新株発行時に受け取った金額のうち、2分の1以上を資本金に、それ以外を資本準備金として計上できます。中長期的な経営戦略の一環として活用されることも多い制度です。

関連記事:【税理士監修】会社設立時の資本金とは?その意義や設定方法と法的な注意点を解説

関連記事:会社設立の資本金はいくらがベスト?金額の目安や決め方のポイント

資本金・資本剰余金との違い

資本金は、会社設立時や増資時に出資者から払い込まれた金額のうち、企業の基本的な元手として計上されるものです。一方、資本取引によって発生する剰余金は「資本剰余金」として扱われます。

資本準備金は、この資本剰余金の一部で、会社法に基づいて積み立てることが求められる準備金です。つまり、資本準備金は資本金とは別の位置づけであり、目的や使い道も異なる点が特徴でしょう。

資本準備金のメリット

メリット

資本準備金には、企業の安定経営や成長を支える様々なメリットがあります。以下で具体的なメリットをご紹介します。

財務基盤の安定に繋がる

資本準備金は自己資本として計上されるため、企業の財務体質を強化する効果があります自己資本比率が高まれば、外部からの信用力も向上し、取引先や金融機関からの信頼を得やすくなるでしょう。

特に融資審査では、自己資本の多寡が重要視されるため、資本準備金の積立は資金調達面でも有利に働きます。内部留保の一環として財務の健全性を示す指標となり、安定経営の土台を築くことができるでしょう。

将来的に資本金へ振り替え可能

資本準備金は、将来的に資本金へ振り替えることが可能です。例えば、事業拡大に伴って資本増強を行いたい場合や、対外的な信用度を高めたいときに、資本準備金を活用して資本金を増やすことができます。

新たな資金調達をせずとも内部の資本構成を強化できる点がメリットでしょう。会社法に基づく手続きは必要ですが、柔軟に資本政策を設計できる選択肢として有効です。

利益との明確な分離ができる

資本準備金は、利益から積み立てられる利益剰余金とは別の項目として管理されるため、税務上も区別が明確です。この分離により、企業の利益を使った運用とは異なる「元本的な資金」としての性質が強調されます。

また、株主配当の対象外であるため、外部に流出するリスクが少なく、企業の長期的な財務戦略にも有効に活用できるでしょう。経営者や経理担当者にとって、資金管理をより計画的に行うための基盤となります。

欠損の補填に利用できる

企業が損失を出した場合、資本準備金を取り崩して欠損の補填に充てることが可能です。

これは、繰越損失の早期解消や債務超過の回避に役立ちます。例えば、赤字決算が続いた際、資本準備金を使って利益剰余金のマイナスを補えば、財務諸表上の健全性を回復させることができるでしょう。

ただし、取り崩しには株主総会の決議が必要な場合もあるため、慎重な対応が求められます。

配当原資に該当しないため外部流出しない

資本準備金は、原則として株主への配当原資に含まれません。そのため、利益剰余金のように毎期の業績に応じて分配されるリスクがなく、企業内に安定的に留保されます。

財務の長期安定性を確保したい企業にとって、外部に流出しない性質は大きな安心材料となるでしょう。急な経営環境の変化や将来の投資への備えとして、社内に資金を温存する役割を果たします。

法定準備金の積立による信頼性の向上

資本準備金は、会社法に基づき一定の場面で積み立てが義務付けられている「法定準備金」です法令に則った積立を行っていることで、企業としてのガバナンス意識やコンプライアンス姿勢を示すことができるでしょう。

特に外部のステークホルダーや金融機関からの評価にも繋がり、信用力の向上や取引先との関係強化に寄与する可能性があります。

資本準備金のデメリット

一方で、資本準備金には注意すべきデメリットも存在します。資金の自由度や活用制限など、経営判断に影響を与えるポイントについて把握しておきましょう。

資金の自由な活用ができない

資本準備金は、会社の内部に積み立てられる資金でありながら、運転資金などに自由に使うことはできません

企業活動において柔軟に使える資金ではなく、原則として取り崩しには一定の法的手続きが必要です。例えば、短期的な資金繰りに困った際でも、資本準備金をすぐに現金化することはできず、キャッシュフローの流動性という面では制限が大きい点に注意しましょう。

過剰に積み上がる可能性がある

資本準備金には返済義務がないため、経営判断によっては不要に積み上がってしまうケースもあるでしょう。

本来は将来の資本政策や損失補填に備えるための資金ですが、使い道が明確でないまま放置されると、有効活用されない「眠った資金」となってしまいます。

資金効率の観点から見ると、他の投資や運用に回せたはずの資金を固定化してしまうリスクがあるため、定期的な見直しを行いましょう。

資本政策の柔軟性を損なう場合がある

資本準備金を資本金に振り替えることで、見かけ上は資本増強となりますが、出資比率の変動や税務上の制限が発生することがあるでしょう。

例えば、新たな出資者の受け入れや株主構成の調整を行いたい場面では、事前に振り替えた資本金が足かせになる可能性があります。将来的な資本政策に影響を与えるため、資本準備金の取り扱いは慎重に検討し、長期的視点で判断しましょう。

決議手続きが必要な場合がある

資本準備金を取り崩したり、資本金へ振り替えたりする場合、会社法に基づき株主総会や取締役会での決議が必要になることがあります

これにより、即時の対応が難しく、タイミングを逃すと経営戦略に影響を及ぼす可能性もあるでしょう。

また、準備金の使途によっては、債権者保護手続など煩雑な法的対応が求められるケースもあり、実務面での負担が大きくなる点に注意が必要です。

節税効果が直接的でない

資本準備金は、企業の財務を安定させる上では役立ちますが、税額控除や損金算入の対象にはならず、直接的な節税効果はありません

税務戦略とは切り離して考える必要があります。

資本準備金の会計処理

資本準備金は、会社設立時の出資受入や増資、新株発行時などで発生するほか、将来の資本政策や損失補填にも活用されます。こういった場面では適切な会計処理が必要です。

以下で、具体的な仕訳例を紹介します。

出資を受けたとき

会社法では、払込金額の2分の1以上を資本金として計上し、残額を資本準備金とします

例)新株発行により1,000万円を払込み、500万円を資本金、500万円を資本準備金に設定する場合

借方

貸方

現預金

1,000万円

資本金

500万円

資本準備金

500万円

資本準備金を資本金に振り替える

資本増強などを目的として、資本準備金を資本金に振り替えることが可能です。これには株主総会の特別決議が必要となります。

例)資本準備金500万円を資本金へ振り替える場合

借方

貸方

資本準備金

500万円

資本金

500万円

欠損補填に資本準備金を使用する

赤字が発生して繰越損失がある場合、資本準備金を取り崩して欠損の補填に充てることができます。この場合は株主総会の普通決議が必要です。

例)繰越損失300万円を補填する場合

借方

貸方

繰越利益剰余金

300万円

資本準備金

300万円

資本準備金を活用する際の注意点5つ

ポイント、指差し

資本準備金は有用な制度ですが、活用には慎重な対応が求められます。制度の性質や法的要件を理解せずに進めると、思わぬトラブルを招く可能性もあるでしょう。活用する際は以下5つの注意点に気をつけましょう。

  1. 株主総会の決議が必要な場合を確認する
  2. 資本政策と整合性を持たせる
  3. 税務上の影響を事前に把握する
  4. 配当制限との関連に注意する
  5. 計上や取り崩しのタイミングに気をつける

株主総会の決議が必要な場合を確認する

資本準備金を資本金へ振り替えたり、欠損補填のために取り崩したりする際には、会社法に基づき株主総会の特別決議が必要な場合があります

必要な手続きを怠ると、法令違反や取引先からの信用低下に繋がるリスクもあるため注意しましょう。

事前に自社の定款内容や会社法上の規定を確認し、必要に応じて専門家に相談することが望ましいです。

資本政策と整合性を持たせる

資本準備金の振替によって資本金を増加させると、結果として出資比率が変動することや、将来的な資本政策に影響を及ぼす可能性があります

特に複数の株主がいる場合は、持株比率の変化が株主間の関係性に影響することもあるため、事前の整理と調整が必要でしょう。

また、新たな出資者の受け入れやストックオプション設計などにも関わるため、資本政策全体との整合性を意識した慎重な判断が求められます。

税務上の影響を事前に把握する

資本準備金の処理は、税務上の取扱いにも影響を及ぼすため注意しましょう。例えば、資本金への振替による外形標準課税の課税ベース変動など、税務上の負担が発生することがあります。

さらに、適切な届出や申告がなされていないと、税務調査で指摘されるリスクもあります。処理を行う前に、税理士など専門家と相談し、事前にリスクや対応策を確認しておくことが大切です。

関連記事:税務調査とは?いつ・どこまで調べられるのか?大まかな流れや査察調査(国税調査)との違いなども解説

配当制限との関連に注意する

資本準備金の積立状況や取り崩し方によっては、配当可能利益に制限がかかる場合があります。例えば資本準備金を減額しても、その一部を利益準備金に振り替えなければならないなど、会社法上のルールが適用される場面があるでしょう。

また、十分な利益剰余金がないまま配当を行うと、違法配当とみなされるリスクもあるため注意してください。資本準備金を活用する際には、配当への影響についても事前にシミュレーションを行いましょう。

計上や取り崩しのタイミングに気をつける

資本準備金の計上や取り崩しは、いつ実行するかによって財務諸表や税務上の評価に影響を与えます。例えば、期末直前の処理は税額計算や開示内容に影響し、監査対応が必要になることもあるでしょう。

また、損益状況を踏まえずに安易に取り崩すと、将来的な資本政策に支障をきたす恐れもあります。適切なタイミングを見極めるためにも、顧問税理士や会計士との連携を密にしておくことが重要です。

資本準備金の活用に迷ったら専門家に相談を

資本準備金の取り扱いは、会社法や税務のルールと密接に関わるため、専門家のサポートが重要です。特に資本政策や資金調達と連動させる場合は、税理士や会計士に相談することで、より効果的な活用が可能になるでしょう。

小谷野税理士法人は、資本政策や会計処理に関する豊富な実績と知見を持つ税理士法人です。資本準備金の取り扱いや活用にお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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