確定申告の方法には白色申告と青色申告がありますが、青色申告を利用している場合、青色申告特別控除というものが受けられます。青色申告特別控除が適用されるのは一定の条件を満たした場合となっており、条件を満たせば最大65万円の控除が受けられるのです。
本記事では、青色申告特別控除が適用される条件やどこから控除するのかについて解説していきます。
目次
白色申告と青色申告の違い
確定申告には白色申告と青色申告という2つの方法があります。白色申告は比較的簡易に決算手続きが行え、収支内訳書に経費や収入を記入するだけで完結します。
一方の青色申告は事前に申請することで利用でき、白色申告に比べて必要な書類が多いのが特徴です。しかし、最大で65万円の特別控除が受けられたり、一定期間の赤字を繰り越せたりするなど、いくつかの優遇措置が設けられているという特徴があります。
青色申告のメリットとデメリット
青色申告をすることで、納税者は以下のようなメリットを得られます。
- 赤字を3年間繰り越せる
- 最大で65万円の特別控除が受けられる
- 家族への給与を経費として扱える
- 30万円未満の固定資産をがすべて経費として扱える(年間合計300万円まで)
- 電気代や家賃なども経費として扱える
一方デメリットとしては、利用するために事前に申請が必要な点や必要書類が白色申告と比べて多い点が挙げられます。
青色申告によって確定申告を行う場合、以下のような書類が必要になります。
- 確定申告書 第一表
- 確定申告書 第二表
- 青色申告決算書(損益計算書と貸借対照表を含む)
- 控除に関する証明書
白色申告は確定申告書と収支内訳書、控除に関する証明書のみで完結するため、青色申告の方が準備に手間がかかります。
青色申告特別控除とは
青色申告特別控除とは、青色申告をしている事業者が利用できる優遇措置で、一定の条件を満たすことで最大65万円の控除が受けられる制度です。
青色申告特別控除の控除額は10万円、55万円、65万円の三段階に分けられており、所得がある人に対して適用される基礎控除の48万円も適用されるため、合計で最大113万円の控除が受けられることになります。
青色申告特別控除の対象となる所得は、事業所得、不動産所得、山林所得の3つです。
事業所得は、事業で得た収入から必要経費を差し引いた金額のことを指します。事業所得には最大65万円の青色申告特別控除が適用されます。
不動産所得は土地や建物、船舶や航空機などの貸付によって得た所得のことです。利益から必要経費を差し引いた金額が所得となり、最大65万円の控除が可能です。
一方の山林所得は、山林を立木の状態で譲渡したり伐採して譲渡したりする際に発生する所得のことで、利益から必要経費を差し引いた金額が山林所得となります。ただし、山林の取得から5年以内に生じた所得に関しては事業所得または雑所得として扱うことになっています。山林所得の最大控除額は10万円です。
青色申告特別控除の要件
青色申告特別控除の利用は要件を満たす必要がありますが、その要件は控除額によって異なります。
以下では、控除額毎に青色申告特別控除の要件を解説していきます。
65万円の控除を受ける要件
65万円の控除を受ける場合は、下記の要件全てを満たす必要があります。
- 事業所得または事業的規模の不動産所得がある
- 複式簿記で記帳している
- 貸借対照表と損益計算書を作成している
- 現金主義ではない
- 電子申告または優良な電子帳簿の保存を行っている
- 期限内に申告する
65万円の控除が受けられるのは、事業所得または事業的規模の不動産所得がある場合に限定されています。事業的規模の不動産所得とは、具体的にアパートの場合はおよそ10室以上、一軒家の場合はおよそ5棟以上の場合を指します。
確定申告の期間は、原則として2月16日から3月15日までです。この期間を過ぎてしまうと65万円の控除が受けられなくなってしまうため、期限は必ず守りましょう。上記の要件を1つでも満たしていない場合は、控除できる額が55万円または10万円となってしまいます。
55万円の控除を受ける要件
55万円の控除を受ける場合の要件は以下の通りです。
- 事業所得または事業的規模の不動産所得がある
- 複式簿記で記帳している
- 貸借対照表と損益計算書を作成している
- 現金主義ではない
- 期限内に申告する
上記からも分かるように、電子申告または電子帳簿の保存ができていない場合は65万円から55万円へと減額される仕組みになっています。
10万円の控除を受ける要件
55万円の控除の要件を満たしていない場合は10万円の控除になりましす。10万円の控除では、複式簿記でなくとも控除が受けられるようになっており、決算書も損益計算書のみの提出で問題ありません。
関連記事:青色申告特別控除の「65万円控除」の条件とは?10万円、55万円の条件と比較
青色申告特別控除はどこから引く?
青色申告特別控除では満たしている要件に応じて65万円、55万円、10万円の控除が受けられますが、この控除はどこから引かれるのか疑問に思う人も少なくありません。原則として、青色申告特別控除は所得から差し引くことになっており、具体的には以下のように計算します。
控除適用前の所得金額-青色申告特別控除額 |
例えば、事業で得た利益が750万円、経費が150万円で青色申告特別控除が65万円、基礎控除が48万円の場合の計算は以下の通りです。
750万円-150万円-65万円=600535万円 535600万円-(65万円+48万円)=487万円 |
上記の例では、最終的な所得額は487万円となります。
青色申告特別控除のメリット
青色申告特別控除をすると、以下のようなメリットが受けられます。
- 住民税の節税に繋がる
- 国民健康保険料が安くなる
青色申告特別控除では、利益から必要経費を差し引いた所得から最大65万円が控除されます。住民税の税率は通常は 一律10%ですが、所得額をベースに計算するため、控除額が大きくなればなるほど住民税も安くなるのです。
また、国民健康保険に加入している場合、保険料の所得割の部分については所得額をベースに計算するため控除される金額が大きくなればなるほど保険料が抑えられます。
関連記事:青色申告で国民健康保険料が安くなる?控除か経費か?科目も解説
青色申告特別控除を受ける際のポイント
では、実際に青色申告特別控除を受ける場合はどのような点に注意すればよいのでしょうか。以下では青色申告特別控除を受ける際のポイントを紹介していきます。
不動産所得は取り扱いに注意する
不動産所得に対して青色申告特別控除を適用する場合は、その所得が事業的規模か業務事業的規模でないかで最大控除額が異なります。事業的規模はアパートの場合はおよそ10室以上、一軒家の場合はおよそ5棟以上の場合を指し、業務的規模はそれよりも少ない場合を指します。控除額は、事業的規模の場合の控除額は最大65万円、事業業務的規模でないの場合は最大10万円です。
不動産所得に加えて事業所得がある場合は、不動産所得が事業業務的規模でなく あったとしても最大65万円の控除が適用可能です。
確定申告の提出期限を遵守する
確定申告の提出期限を過ぎてしまうと、最大でも控除額が10万円になってしまいます。また、帳簿書類を提示しない法人が2年連続で期限後に申告した場合、青色申告の承認が取り消されてしまいます。1度青色申告の承認が取り消されると1年間は再申請ができなくなり、その間は赤字の繰り越しや青色申告特別控除といった優遇措置も受けられなくなってしまうので注意が必要です。
特に青色申告は必要書類も多いため、余裕をもって準備しましょう。
関連記事:青色申告はどのような時に取り消される?条件やデメリットについて解説
青色申告特別控除は所得金額から引いて計算する
青色申告をしている事業者は、青色申告特別控除が利用できます。青色申告特別控除は65万円、55万円、10万円の3種類あり、それぞれ適用要件が異なります。青色申告特別控除の対象となる所得は、事業所得、不動産所得、山林所得の3つですが、山林所得については最大10万円の控除しか適用されません。
青色申告特別控除は、利益から必要経費を引いた所得額より差し引くことになっており、所得のある人すべてが受けられる基礎控除と併用可能です。青色申告特別控除を利用することで住民税の節税や国民健康保険料の節約にも繋がるため、ぜひ活用してください。
事業者にとって青色申告特別控除はメリットの多い制度ですが、一体いくらの控除が適用できるのか、どのタイミングで控除の計算をすればいいのか悩むケースも少なくありません。
このような方は、一度専門家である税理士に相談してみるとよいでしょう。税理士は条件を満たす控除額や、条件を満たすためのアドバイスをしてくれます。また、青色申告特別控除以外にも適用できる控除の提案や、経費にできる支出と計上方法もサポートしてくれます。
税理士へ依頼をするか迷った際は、まずはお気軽に無料相談をしてみてはいかがでしょうか。