インボイス制度に関係ない法人は、ごくわずかですがあります。例えば、仕入れのないBtoC事業のみ行う法人、非課税の取引のみ行う法人、寄付などで運営する法人などです。一方、BtoB事業も行う法人や、仕入れが多い法人、大手の取引先がある法人などはインボイス制度と関係があります。今回は、制度に関係ない法人と関係ある法人の違いや、インボイス登録すべきかの判断基準を解説します。
目次
インボイス制度に関係のない法人はごくわずか
ほとんどの法人は、インボイスの制度に関係します。関係しない法人はごく一部です。そもそもインボイス登録をする主な理由は、「取引先にインボイス登録を求められているから」です。
仕入税額控除について詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:仕入税額控除ってなに?インボイスとの関係についても解説
上記を踏まえると、インボイス制度に関係ない法人は下記が考えられます。
- BtoC事業のみ行っているなど、取引先が適格請求書を求めていない法人
- 仕入税額控除を使う必要がない法人
- 消費税が非課税の取引のみ行っている法人
- 収益事業をしておらず、補助金・助成金・寄付のみで運営している法人
上記を満たす法人は少ないため、結果としてほとんどの法人がインボイスの制度に関係すると言えます。
参考:課税の対象|国税庁
また、すでに課税事業者であったとしても、自動的にインボイス登録されることはありません。適格請求書を発行したい場合や仕入税額控除を受けたい場合は、税務署に申請して登録する必要があります。
インボイス制度に関係ない法人の特徴3つ
先ほど解説したように、ごく一部ですが、インボイスの制度に関係ない法人もあります。ここでは、制度に関係がない法人の特徴について詳しく解説します。
BtoC事業しかしていない法人
一般消費者向け(BtoC)の事業のみ行う法人は、制度の影響をほぼ受けません。
一般の消費者は登録の有無を気にしないため、登録しなくても売上に影響が出ないからです。
BtoCかつ仕入れが少ない事業の例は、以下の通りです。
- オンラインスクール
- カウンセリング
- コンサルティング
- ライフコーチ
- オンラインコンテンツ制作(ブログなど)
- イベントやセミナーの運営
一方、BtoCでも食材や材料の仕入れが多い事業は、仕入税額控除を活用した方がメリットが大きい場合があります。例えば高額な設備投資をする場合などです。その場合はたとえ免税事業者でも、登録を検討してみましょう。
消費税が非課税の事業を行っている法人
消費税が課税されない取引を中心に行っている法人は、制度の影響がほぼありません。非課税の取引は、インボイス制度の適用対象外だからです。
非課税取引の代表的な例は以下の通りです。
- 私立学校(学校法人)の授業料収入
- 病院の診療報酬(健康保険適用)
- 介護施設の介護報酬
- 不動産業の住宅の貸し付け
課税されない取引は上記に例示したもの以外にも多くあります。他も把握したい場合は、下記の国税庁ホームページをご確認ください。
参考:非課税となる取引|国税庁
なお、以下のような課税取引も多く行う場合は、制度の影響がある可能性があります。
- 施設内の売店運営
- 不動産業のオフィス賃貸(BtoB)やマンション売買
非課税取引の詳細は下記の記事をご確認ください。
関連記事:消費税の非課税取引とは|免税取引との違いや不課税、対象について
収益事業をせず補助金・助成金・寄付のみで運営している法人
収益事業をせず、なおかつ補助金・助成金・寄付のみで運営している法人は、制度の影響がほぼありません。
収益事業を行っていなければ課税売上(商品の売上など)が発生しないため、一般的には消費税の申告が不要です。また、補助金・助成金・寄付といった収入は対価性がないため、消費税の対象外です。
「収益事業をせず補助金・助成金・寄付のみで運営している法人」の例は以下の通りです。
- 子ども食堂運営や災害支援などを無償で行うNPO法人
- 自治体などの補助金で活動する福祉団体や環境保護団体
- 寄付金のみで運営する公益法人
ただし、これらの法人が物販や有料サービスを行う際は、課税売上が発生するため、制度の影響を受ける可能性があります。NPO法人の基礎知識や詳細は、下記の記事をご確認ください。
関連記事:NPO法人を設立するには?条件や手続きの流れ、注意点について解説!
インボイス制度に関係がある法人の特徴2つ
ここでは、制度に関係する法人の特徴を解説します。以下に挙げる特徴のいずれかに該当するかチェックしましょう。
BtoBを行っている法人
BtoB(企業向け取引)を行っている法人は、取引先に適格請求書を求められる可能性があります。
こちら側の適格請求書がないと、取引先が仕入税額控除を受けられないからです。よって、登録しないと取引を断られたり、消費税分を値引きされたりするリスクがあります。影響を受けやすいBtoB法人の例は、以下の通りです。
業種の例 | 解説 |
IT関係 (制作会社→クライアント企業) | 発注者が仕入税額控除を受けるため、適格請求書が発行できないと不利になる可能性がある |
建設業 (下請け工事業者→元請け企業) | |
製造業 (部品メーカー→大手メーカー) |
発注を受けている取引先が適格請求書を求めているか否か、確認が必要です。
法人がインボイス登録するべきか悩んだら判断基準をチェック
インボイス制度が始まってから、「自社は登録すべきか?」と迷うことも多いと思います。ここでは、先ほど解説した「制度に関係ある法人の特徴」を踏まえ、自社が登録すべきかチェックしてみましょう。
主要な取引先がインボイス登録を求めているか?
主要な取引先が登録を求めている場合は、登録を検討してみましょう。なぜなら、取引先が仕入税額控除を受けようとしている可能性が高いからです。それにもかかわらず自社が登録しないと、今後不利になるリスクがあります。
一方、取引先が仕入税額控除を使わないなら、登録する必要はあまりないでしょう。
また、自社が免税事業者である場合、取引先の減少よりも免税メリットの方が大きいなら、登録しないのも選択肢です。不安な方は、税理士などの専門家と相談し、取引先減少のデメリットと免税のメリットを比較してみましょう。
インボイス制度にお悩みの方はご相談ください
今回は、インボイス制度に関係ない法人・関係ある法人の違いを解説しました。関係ない法人は、BtoCかつ仕入れがほぼない法人など、ごくわずかです。ほとんどの法人が制度に関係があると言えるでしょう。
とはいえ、登録の判断は、税務・会計・取引など複数の要素が絡むため、自己判断が困難です。そのうえ、登録の判断を誤ると、思わぬコスト増や取引への影響が発生します。
登録するべきか、今のままでいるべきかお悩みの方は、税理士にご相談ください。税務のプロなら、税負担を最小限に抑える方法を提案できます。また、登録による影響のシミュレーションなどを行い、個々の事業に合わせた最適な判断をサポートいたします。