2015年の法改正により外国人だけでの日本国内における法人設立の手続きが簡易的なものとなりました。その結果、近年では日本で起業しようとする外国人の数は増加傾向にあります。しかし必要な在留資格や手続きが多く、なかなか一筋縄ではいかないのが現状です。そこで今回は外国人が日本で法人設立するための在留資格や手続きの方法について解説します。日本で起業を考えている外国籍の実業家の方は、ぜひ参考にしてください。
目次
外国人が法人を設立する際に必要な在留資格
外国人の方が日本国内で法人を設立する場合、在留資格が必要です。外国人の法人経営を認める在留資格には、以下の2種類があります。
- 居住資格
- 活動資格(経営・管理)
ここからはそれぞれの資格を取るために必要な条件について解説します。それぞれの内容をチェックして、資格取得の準備を進めましょう。
居住資格を取る条件
居住資格とは、中長期にわたって日本に合法的に滞在するために必要な資格です。出入国管理及び難民認定法に基づいて定められており、就労・留学・家族滞在といった様々な目的があります。
居住資格を取るためには、日本国内での身分が以下のどれかに該当する必要があります。
- 日本人の配偶者
- 永住者
- 永住者の配偶者
- 定住者
活動資格を取る条件
活動資格とは日本国内で事業の経営を行ったり業務に従事したりする際に取得する必要がある在留資格です。
活動資格を得るためには、以下の条件を満たすことが求められます。
- 安定した事業継続と経営能力がある
- 事業に必要な事務所や店舗がある
- 資本金または出資総額が500万円以上である、もしくは常勤職員を2名以上雇用している
- 営業許可および税務関係の届出を完了させている
経営・管理ビザの取得には、新規事業の継続性と安定性、そして申請者自身の経営能力が審査されます。これらの点を評価するためには、徹底して事業計画書を作り込まなくてはいけません。
事業計画書では事業の目的や事業展開の方法を明確に記述し、さらに営業戦略、組織体制、収支予測などを示す必要があります。
もし事業計画書の作成でお困りのことがあれば、税理士への相談も検討しましょう。税理士は財務や会計の専門家で、収支計画や資金調達計画といった事業計画書について専門的なアドバイスを提供してくれます。
関連記事:外国人が日本で会社設立をする方法手続きや必要書類について解説
外国人が法人を設立をするための手続きの流れ
外国人が法人を設立をするための手続きの流れの概要を紹介します。
- 設立の基本事項を決定し、会社の根本規則となる定款を作成
- 日本での法人登記に使用する代表者印(実印)を作成
- 作成した定款を公証役場で認証してもらう
- 会社の運営資金となる資本金を銀行口座に払い込む
- 法務局に会社設立の登記申請を行う
- 税務署や都道府県税事務所、市区町村役場、年金事務所、労働基準監督署、ハローワークなどの関係各所へ設立の届け出を行う
- 事業内容に応じて必要となる許認可を取得する
- 日本で経営・管理を行うための在留資格(経営・管理ビザ)を保有していない場合は、別途申請手続きを行う
経営・管理ビザの申請は、法人設立の手続きと並行して進められます。また個々の状況によって手続きの順番や必要書類が異なる場合があるため、税理士などの専門家と相談しながら進めるのがおすすめです。
外国人が法人を設立をするために必要な費用
外国人が法人を設立をするためには、一般的に以下のような費用がかかります。
費用 | 金額 | 備考 |
定款認証の収入印紙代 | 40,000円 | 電子定款の場合は不要 |
定款認証手数料 | 30,000~50,000円 | 合同会社の場合は不要 |
定款謄本交付手数料 | 2,000円程度 | 謄本1ページあたり250円 |
登記申請時の登録免許税 | 株式会社:15万円~ 合同会社:6万円~ | – |
登記事項証明書代 | 1通600円 | – |
印鑑証明書代 | 1通450円 | – |
以上のことを踏まえると、株式会社の設立費用は約25万円、合同会社は約10万円です。これらはあくまで設立にかかる費用のため、さらに資本金などもかかることになります。
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外国人が法人を設立をするために必要な書類
外国人が法人を設立をするために必要な書類は以下の通りです。
登記申請書 | 法人設立の意思や基本情報を法務局に申請するための書類 |
登録免許納付用台紙 | 登録免許税を納付したことを証明する書類を添付するための台紙 |
定款 | 法人の目的、組織、運営など基本的な規則を定めた重要な書類 |
資本金払込証明書 | 資本金の払い込みがあったことを証明する書類 |
就任承諾書 | 取締役などの役員に就任することを承諾する意思を示す書類 |
発起人・取締役の印鑑証明書 | 発起人や取締役の本人確認のために必要な公的な証明書 |
印鑑届出書 | 法人として使用する印鑑(代表者印)を法務局に届け出るための書類 |
登記事項を記録したデータ | 登記事項が少い場合は登記申請書に直接記載 |
これらは状況によって追加の書類が必要な場合もあります。特に印鑑証明書がない外国人は代理のサイン証明書を用意しなくてはいけません。
外国人起業家におすすめの「資金調達支援事業」とは?
現在日本では、外国人の法人設立のためにさまざまな支援を行っています。以下では、東京都で実施されている資金調達支援事業についてご紹介します。
融資対象 | 以下の条件をすべて満たす外国人起業家の方が対象
|
融資限度額 | 1,500万円以内 |
返済期間 | 10年以内 |
融資利率 | 固定金利2.7%以内 |
保証人 | 代表者 |
担保 | 無担保 |
本事業の支援を希望する場合、まずビジネスコンシェルジュ東京に申請して東京都の事業計画認定を受ける必要があります。融資の可否については支援対象者の条件を金融機関が面談や現地確認などを通して厳格に確認した上で決定されます。
東京都の事業計画認定を受けていたとしても、融資を受けられない場合があるため注意しましょう。
外国人が法人を設立する際の相談先
外国人起業家でこれから法人を設立する場合、以下のような相談先が挙げられます。
- 法務局
- 商工会・商工会議所
- 日本政策金融公庫
- ビジネスコンシェルジュ東京
- 日本貿易振興機構(JETRO)
- 各都道府県・市区町村の産業振興課や中小企業支援センター
相談先を選ぶポイントとしては、以下の点に注意しましょう。
- 相談内容にマッチした相談先を選ぶ(手続きのやり方、資金調達方法など)
- 英語などの外国語対応が可能な相談先にする
- コスト重視の場合は無料相談を提供している公的機関・団体を活用する
また法人設立後の税務や会計、税務申告について相談したい場合は税理士に相談すると良いでしょう。税理士を探す際は外国人起業家の支援実績があるか、口コミや評判などを確認しておくと安心です。
関連記事:起業準備は何をする?アイデア出しから開業までステップごとに解説
外国人の法人設立に関するよくある質問
最後に外国人の法人設立に関するよくある質問をまとめたので、ぜひ参考にしてください。
発起人の住所は日本でないとだめ?
2015年3月16日の法務省通達によって、代表者全員が海外在住でも設立できるようになりました。
ただし、外国為替及び外国貿易法に基づき、日本の安全保障を脅かす懸念がないか審査を受けることになります。また日本銀行を通じて財務大臣および事業所管大臣への設立届出が義務付けられます。
在留資格や協力者がいなくても法人は設立できる?
在留資格や協力者がいなくても設立自体は可能です。ただし、オフィス契約や銀行口座開設のハードルが上がることに注意しなくてはいけません。これらの手続きをスムーズにするためにも、設立の準備をする前に日本在住でサポートしてくれる人を探すのが賢明でしょう。
外国人が日本で起業すると税金はどうなる?
外国人が日本で起業すると、日本での所得に対する税金は日本に納めなくてはいけません。つまり外国人で起業を考えている方は、日本での確定申告が必須ということになります。また日本では、開業してから1ヵ月以内に開業届を提出することも覚えておきましょう。
関連記事:外国人労働者にも税金はかかる?条件や免除されるケースを徹底解説!
まとめ
外国人が日本国内で法人を設立する場合、居住資格や活動資格を取得した上でさまざまな手続きを踏む必要があります。
さらに、所得が発生した場合は日本国内での確定申告もしなくてはいけません。起業時に必要なことをリストアップして、優先度の高いものから抜け漏れがないように進めていくと良いでしょう。
もし、日本国内での起業や納税にお困りのことがあれば、税理士への相談も検討してみてください。小谷野税理士法人では起業に関する豊富な経験と知識を持つ税理士が、状況に合わせた適切なアドバイスを提供しています。