資本金の増資による節税効果は期待できません。1,000万円や1億円など、資本金が一定額を超えると各種税金の額が増えるためです。資本金を増資するときは、メリットとデメリットを把握したうえで適切な判断をすることが求められます。今回は、資本金の増資の概要や節税効果、手続きを自分でする方法などを解説します。最後まで読めば、資本金を増資すべきかについて、参考にできるでしょう。
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目次
資本金の増資とは
資本金の増資とは、会社設立後に資本金を増やすことです。増資の方法として、以下の2つがあげられます。
有償増資 | 新たに株式を発行し直接払込金を受け取る方法で、以下の3種類ある
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無償増資 |
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中小企業が有償増資する場合、株主割当増資か第三者割当増資のいずれかから選択するのがポイントです。無償増資はお金を払込むものではなく、純資産の金額が変わらないため、対外的な信用力の向上にはつながらないと知っておくとよいでしょう。
中小企業が増資する目的として、以下の点があげられます。
- 信用度の向上
- 財務状況の改善
増資により会社の預貯金が増えるため、債務超過を改善できたり対外的な信用度をあげられたりします。
一方で、増資によって資本金が一定額を超えると、税負担が増えるケースもあります。増資をするときは、増資した結果どのような影響を受けることになるのか、正しく理解しておくのがポイントです。
自社のみで判断せず、税務の専門家である税理士へ相談しておくと安心できます。
関連記事:会社設立の資本金はいくら必要?払込方法や最低金額などを詳しくご紹介
資本金の増資では節税できない
資本金を増資する場合、基本的に節税効果は期待できません。以下の通り、資本金が一定額を超えると各種税金が増える可能性があるためです。
資本金の額 | 税制上の変更点 |
1,000万円以上 | 以下の通り、消費税が課される
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1,000万円超 |
※自治体によって納税する金額が決められている 〈例〉
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(資本準備金と合わせ)1,000万円超 | 1,000万円超の場合と同様に、法人住民税均等割の金額があがる ※均等割とは、期末の従業員数と資本金などの額によって法人住民税を計算する方法である |
1億円超 | 以下の外形標準課税が適用される
以下の税制優遇を受けられなくなる
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節税効果は期待できない一方で、納税額が増える基準は決められているのが特徴です。後述する通り、増資によるメリットがあるため、よく理解したうえで決めるとよいでしょう。
関連記事:【節税の基礎知識】所得税や消費税の節税方法やポイントを紹介!
資本金を増資するメリット
資本金を増資するメリットについて、以下の表にまとめました。
財務状況を改善できる |
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対外的な信用度をあげられる |
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会社の信用度をあげられたり財務状況を改善できたりする可能性があるため、増資によって経営基盤の強化が期待されます。事業拡大するときなど、増資を検討すると効果的です。
関連記事:会社設立における資本金はいくら必要?最低金額や平均も解説
資本金を増資するデメリット
資本金の増資にはメリットがある一方で、以下のデメリットがあります。
キャッシュが必要 |
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時間や各種費用がかかる |
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税制優遇を受けられなくなる |
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資本金を増資するには登記などの手続きが必要なケースもあります。書類を用意したり登録免許税を納付したりなど、時間やお金がかかるのがデメリットとしてあげられます。
増資したあと、2週間以内に登記をしないとペナルティを課される可能性があり、注意が必要です。増資の前には、あらかじめやるべきことを押さえておき、適切に対処していくことが求められます。
資本金の増資の手続きを自分でする方法
増資の手続きを自分でするには、書類を用意したうえで管轄の法務局にて手続きをする必要があります。登記事項である資本金の額と、発行済み株式の数が変わるためです。
大まかな流れは以下の通りです。
- 株主総会を招集:開催の2週間前までにするのが基本
- 株主総会の特別決議:増資に関しては株主の半数以上の出席かつ、出席株主の3分の2以上の賛成が必要
- 増資の募集:申込希望者へ通知し、法務局の公式サイトで入手できる「募集株式申込証」をもらう
- 株式の割当先を決定:株主総会の特別決議を通し、割当先や株数などを決定したあと通知する
- 出資金の払込:申込者から期限までに指定口座へ払込んでもらう
- 法務局での手続き:払込日から2週間以内に法務局で手続きをする
- 名簿へ記載:新しい株主の名前や株数を株主名簿に記載する
提出書類に不備があると、期日までに手続きを終えられない可能性があります。自分で手続きをする場合、特に正確な書類作成がポイントだと言えます。
資本金の増資に関するよくある質問
資本金の増資に関してよくある質問をまとめました。ここから詳しく解説します。
資本金を増やさない方が納める税金は少なくなる?
いいえ。
増資によって以下の条件に該当すると、税金の金額が増えます。
- 期首の資本金1,000万円以上の場合:消費税が課される(基準期間から2年後or特定期間から1年後)
- 資本金と資本準備金の額が1,000万円超の場合:法人住民税均等割の額が増える
- 資本金が1億円超の場合:法人税率の軽減措置など税制優遇を受けられなくなったり、外形標準課税されたりすることで税金の金額が増える可能性がある
節税の観点において、増資は避けるのが賢明です。
資本金の増資は社長のみの判断で決められる?
決められないケースがあります。
第三者割当増資などの場合、既存株主の利益に影響を及ぼす可能性があります。株主総会での決議など会社法で決められているため、社長のみの判断では増資の判断をできないのが特徴です。
社長本人が株主の1人会社の場合、株主総会の「みなし決議・報告」制度を通し、社長本人の同意のみで増資の判断をできます。
参考:「会社法」e‐GOV
会社経営や節税の相談は税理士へ
資本金の増資の概要や期待される節税効果、メリットとデメリットなどを解説しました。増資によって資本金が一定金額を超えると、各種税金を課されるようになるケースがあるため、節税効果は期待できないと言えます。
増資には時間や費用がかかるなどデメリットがある一方、財務状況の改善など事業者にとって恩恵を受けられる可能性があります。会社が置かれている状況によって、増資の判断は分かれるのが特徴です。
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