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インボイスの相殺処理を徹底解説!相殺の仕訳方法から書き方まで

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インボイスの相殺処理を徹底解説!相殺の仕訳方法から書き方まで

インボイス制度が始まり、経理業務に新たな課題が増えていませんか?特に相殺処理は「仕訳はどう書くの?」「インボイスの記載はどうなる?」と、多くの経理担当者の方を悩ませています。もし相殺処理の正しい方法が分かれば、経理業務の効率化とコスト削減効果にも繋がります。そこで本記事ではインボイスの相殺処理について仕訳方法から書き方まで徹底解説します。インボイスの相殺処理でお悩みの方は、ぜひ参考にしてください。

会計業務における「相殺」とは?

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まずは会計業務でよく出てくる「相殺処理」とは何か、その概要と仕組みについて解説します。

概要

相殺とは、自社と取引先の間で生じた債権と債務を、同額の範囲内で互いに消滅させる処理のことです。例えば売掛金と買掛金がある場合に相殺を行うと、差額のみを決済することで取引が完了し、双方の支払い手続きが簡略化されます。

仕組み

相殺は取引先に対する売掛金とその取引先からの買掛金など、差し引き後の差額のみを決済する仕組みです。これにより本来であれば双方で行うはずの支払いが不要となり、事務作業の効率化につながります。

仕訳

相殺処理の仕訳は、債権(売掛金など)と債務(買掛金など)を互いに減額することで行います。この処理によって実質的な支払いや入金の手続きを省略できます。仕入や売上は相殺後の差額ではなく、必ず相殺前の元の金額で記録する必要があるので注意しましょう。

インボイスは相殺処理ができる

インボイスの有無にかかわらず相殺処理は可能です。原則として双方の合意が必要ですが、民法の要件を満たせば一方的な意思表示でも相殺できます。相手からの合意なしでも相殺処理をするためには双方が同種の目的の債務を負い、かつ弁済期を迎えている必要があります。ただし円滑なビジネスのためにも、可能な限り相手の合意を得て進めるべきでしょう。

参考:e-Gov法令検索「民法|第五百五条」

相殺処理する場合のインボイスの書き方

相殺処理を行う請求書をインボイスとして扱う場合、以下の項目を記載する必要があります。

  1. 請求金額
  2. 相殺金額
  3. 差引請求金額
  4. インボイス登録番号
  5. 適用税率
  6. 税率ごとに区分した消費税額など

特に4~6に関してはインボイスとしての適格性を満たすための必須記載事項です。またインボイスを、相殺前の金額を示す書面と、相殺金額・相殺後の金額を示す書面の2枚に分けての発行も可能です。どちらの方法にすべきかは、双方の事務処理の都合を考慮して決定しましょう。

関連記事:【税理士監修】インボイスの領収書の書き方は?見本やテンプレート、登録番号なしの場合は?

インボイスで相殺処理をするメリット・デメリット

インボイスで相殺処理をするメリット・デメリットは以下の通りです。

メリット

  • 会計処理の簡略化による業務効率の向上
  • 振込手数料といったコストの削減
  • 入出金管理の効率化
  • 早期の代金回収によるキャッシュフローの安定化
  • 支払い・入金管理にかかる手間や時間の削減
  • 債権回収に関するリスクの軽減

デメリット

  • 相殺処理に伴う事務作業(領収書や請求書の発行など)の発生
  • 金銭の流れが直接的に把握しにくくなることによる、取引の透明性低下の可能性
  • 事前に関係者との調整や合意形成が必要となる点
  • 帳簿管理が煩雑になる可能性
  • 税務調査時に相殺の根拠や内容を説明するための資料準備の必要性

相殺処理の大きなメリットは、経理業務の効率化とコスト削減効果が高いことです。また個別の入金・支払い処理が不要になるため、振込手数料も減らせます。早期の債権回収につながり、支払い遅延や貸し倒れのリスク軽減も期待できます。

関連記事:【税理士監修】インボイス制度の経過措置をわかりやすく解説!要件や対象者についてポイントを押さえよう

「相殺領収書」が必要な場合もある

返金や返品時に発行される相殺領収書は、相殺処理の証拠となる書類です。通常の領収書とは異なり、受取額と支払額を差し引いた事実を記録します。

事前に取引先と相殺領収書の発行について取り決めておくのが望ましいですが、支払明細に相殺の旨を記載すれば代替できる場合もあります。経理業務の負担軽減のため、買手からの要望に応じて発行するケースもあり得ます。

ここで、相殺領収書の作成方法の一例をご紹介しましょう。

1枚の領収書にまとめる

総額を領収金額として記載し、内訳には相殺金額と現金受領額を明記

2枚の領収書で作成する

相殺分の領収書(〇〇円)と、現金受領分の領収書(〇〇円)をそれぞれ作成

いずれの場合も、領収書には必ず「相殺」という文言を明記してください。また印紙税については相殺のみの場合は不要ですが、現金受領がある場合はその金額に応じた印紙の貼付が必要なことがあります。

相殺領収書は原則として双方で保管します。もし片方しか発行していない場合はトラブルの原因となる可能性があるので要注意です。また相殺処理の日付は両社で統一し、現金受領がある場合は受領日を記載しましょう。

参考:No.7126 相殺した場合の領収書|国税庁

インボイスの相殺処理でやりがちNG事例

個人事業税がかからない業種のイメージ

実務で相殺処理を行う際には、ちょっとした認識のズレや確認不足からトラブルが発生することも少なくありません。以下に、よくある失敗例について紹介します。

取引先の合意を得ずに相殺処理をしてしまう

NG事例のひとつとして、取引先の合意を得ずに相殺処理をするケースが挙げられます。例えば営業の独断で請求金額から買掛金分を差し引いたところ、取引先から「全額入金してください」と連絡があったとします。

このようなケースでは、取引先が相殺に同意していなかったためにトラブルになりかねません。

相殺後の金額だけを記載した請求書を送付する

請求書に差引後の金額しか記載しないのもNG事例のひとつです。取引先から「この請求内容の根拠が分からない」と問い合わせが入る可能性があります。透明性の欠如により、相手に不信感を与える原因にもなるので要注意です。

売上・仕入の記帳に相殺後の金額を記録してしまう

相殺後の差額で売上計上してしまい、月次売上が実態よりも少なく計上されてしまうケースもあります。売上や仕入は「相殺前の金額」で記録するのが会計上のルールです。もし誤ると、帳簿の正確性に影響します。

債務の弁済期が到来していないのに相殺処理した

弁済期に到達していない債務では、相殺が無効となるケースがあります。買掛金の支払期日前に相殺処理を行うと税務署から指摘を受ける場合もあるので注意しましょう。

相殺処理の証憑書類を保管していない

相殺したことを証明する領収書などの書類をきちんと保管していないのもNGです。税務調査の際に「この相殺処理の根拠を提示してください」と求められるケースもあります。

取引先との合意書、相殺明細、メールのやりとりなど、証憑となる資料は必ず保存しておくようにしましょう。

インボイスの相殺処理を行う前に確認すべき6つのこと

チェックリスト

相殺処理は経理業務の効率化に役立ちますが、処理ミスやトラブルを防ぐためには事前の確認が欠かせません。以下の6つのポイントをチェックしてから処理を進めれば、より正確でスムーズな対応ができるでしょう。

債権と債務が同一の取引先との間で発生しているか

相殺は「同じ相手との債権債務」であることが前提です。グループ会社や関連会社であっても、法人格が異なる場合は原則として相殺できません。まずは名義が同一かどうか、確認しましょう。

債権と債務の金額・内容に誤りがないか

売掛金や買掛金の金額・期日・取引内容に食い違いがあると、相殺処理が無効になるリスクがあります

明細や請求書をもとに事前に整合性を確認しましょう。商品名やサービス内容は一致しているか、債権・債務がすでに確定している取引かなどは必ずチェックしてください。

両方の債権・債務が弁済期を迎えているか

民法第505条に基づき、相殺には双方が弁済期にあることが条件となります。未到来の債務や、未確定の売上には注意が必要です。事前に支払期日が到来しているか、回収予定日と支払予定日がずれていないかを確認しましょう。

取引先からの同意を得ているか

一方的に相殺処理を行うと、取引先とのトラブルの原因になります。相殺の可否や金額について、必ず事前に確認・合意を取りましょう。メールや書面での合意があるか、納品書・請求書に相殺明記があるかをしっかり確認してください。

相殺処理が帳簿・インボイスに正確に反映されているか

帳簿への記載ミスやインボイスの要件漏れがあると、税務調査時に否認される可能性があります。

そのため、仕訳の整合性と適格請求書の内容をチェックしましょう。事前に相殺前・相殺後の金額が明記されているか、またインボイスの登録番号・税率・消費税額が正しいかを見直してください。

相殺処理に関する証憑書類を適切に保管しているか

相殺領収書・同意書・請求書などの書類は、後から相殺処理を証明するために必要となります。一定期間の保管が義務付けられている場合もあるため注意しなくてはなりません。

相殺領収書を発行・受領しているか、書類の保存先や保管期限を明確にしているか改めて調査しましょう。

インボイスの相殺処理に関するよくある質問

最後にインボイスの相殺処理に関するよくある質問をまとめました。

返還インボイスとインボイスの金額は相殺できる?

返還インボイスは、適格請求書発行事業者が、返品、値引き、販売奨励金など売上に関する調整を行う際に発行する請求書です。返還インボイスの金額は、通常のインボイスの請求金額と相殺可能です。

例えば、前月の売上と当月の返品・値引きなどを相殺する場合です。インボイスと返還インボイスは別々に発行することも、1枚にまとめることもできます。

領収書の発行は義務?

相殺領収書の発行には法的な義務はありません。しかし取引の透明性を高め、二重請求や二重払いといったトラブルを未然に防ぐために発行することが推奨されます。相殺額や債権債務を明確にすることで、取引の安全性を高める効果が期待できます。

関連記事:【税理士監修】インボイス制度について「よくある質問」を図解でわかりやすく解説!

まとめ

相殺処理は処理方法や記載内容を誤ると、帳簿ミス・税務トラブルの原因となることもあります。インボイス制度下では特に正確さが求められるため、不安がある場合は無理に自己判断せず、税理士など専門家に相談するのがおすすめです。

小谷野税理士法人では創立費償却に関する分野に特化した税理士が在籍しております。もしインボイスの処理でお困りの方は、ぜひ一度「小谷野税理士法人」までお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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