社用車を経費に計上する場合は、事業に使用していることが明確であり、またそれを証明することが不可欠です。さらに、経費に該当する項目を押さえ、正しく計上することも欠かせません。この記事では、社用車の経費計上の方法について解説します。どのように経費計上して良いか分からない方はぜひ参考にしてください。
目次
購入方法別|確定申告に向けて社用車の経費を計上するには
社用車の購入方法によって経費計上の方法が異なります。
- 現金で購入した場合
- ローンで購入した場合
- リース契約の場合
- 中古車を購入した場合
社用車の購入金額が10万円未満の場合は、消耗品費として処理できます。ここでは購入金額が10万円以上の社用車を購入した場合について、4つの方法別に計上方法を見ていきましょう。
現金で購入した場合
現金で車を購入した場合は、その費用を一括で経費計上することができません。購入費用は「車両運搬具」の勘定科目で固定資産に計上後、耐用年数に基づいて毎年減価償却を行います。
たとえば、300万円の新車を購入した場合です。その車の耐用年数が6年と設定された場合、毎年減価償却費を計上します。このように現金での購入では、減価償却を通じて取得費を分散して計上するのが基本です。
ローンで購入した場合
ローンで車を購入した場合は現金で購入した場合と同様、「車両運搬具」の勘定科目で固定資産に計上、毎年減価償却します。ローンについては「長期未払金」となり、利息分は「支払利息」に計上可能です。
リース契約の場合
リース契約の場合、車両本体価格や自動車税等の費用が含まれているため全額経費として計上できます。
なお、リース契約には以下2種類あり、それぞれで処理方法が異なる点に注意が必要です。
種類 | 概要 |
ファイナンス・リース取引 |
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オペレーティング・リース取引 |
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リース契約はその種類によって経費に計上できる項目が大きく変わります。社用車をリースで仕入れる際は、どの方法が自社に合っているか比較してから決めると良いでしょう。
中古車を購入した場合
中古車を購入した場合も、新車やローン購入したときと同じで固定資産に計上後、毎年減価償却してください。なお、普通自動車の耐用年数については新車だと以下のように定められています。
- 一般用の場合:6年
- 運送事業用の場合:4年
中古車は新車と違い耐用年数が短くなるため、車の状態を見て以下の計算式を使って算出してください。
- 法定耐用年数のすべてを経過しているとき:法定耐用年数の20%に相当する年数
- 法定耐用年数の一部を経過しているとき:法定耐用年数から経過した年数を差し引いた年数に経過年数の20%に相当する年数を加えた年数
計算結果が2年に満たない場合は一律2年となります。
例えば、8年経過した中古車を20万円で購入した場合です。法定耐用年数の全てを経過していることから、耐用年数は以下のようになります。
6年(一般用の場合)×20%(法定耐用年数のすべてを経過しているとき)=1.2年 |
この場合、2年に満たないことから償却期間は2年で計算します
確定申告で社用車の経費として認められる費用
社用車の使用には、ガソリン代や洗車代、車検費用等さまざまな経費がかかります。しかし、社用車に掛かった費用すべてが経費計上できるのではなく、一般的には以下の費目に限定される点に注意が必要です。
- 保険料
- 税金
- ガソリン代
- 車検費用
- 修理費用
- 洗車代
- 駐車場代
- 備品代
ここでは、社用車の使用において経費計上できる費目の詳細について解説します。
保険料
保険料は、自動車保険や任意保険の費用を指します。社用車に関する保険は「車両費」「保険料」の勘定科目を使って計上可能です。
ただし1年以上の契約で支払った場合は、自賠責保険と任意保険では処理方法が異なります。自賠責保険は支払った会計年度に全額経費計上し、任意保険は「前払費用」として資産計上後、経過期間毎に按分して計上しましょう。
保険料の支払い証明書や契約書は経費計上時の証拠書類になります。いつでも確認・提出できるよう大切に保管しましょう。
税金
社用車にかかる税金も経費として計上することができます。具体的には、自動車税や自動車重量税等です。また、場合によっては自動車税環境性能割を納税しなければならないケースもあるでしょう。
いずれにせよ、社用車に関わる税金は、基本的に「租税公課」で処理できます。
ガソリン代
日常の業務で使用するガソリン代も経費として計上可能です。社用車の使用で発生するガソリン代の計上で、選択すべき勘定科目に明確なルールはありません。ただ、一般的には「車両費」「燃料費」「旅費交通費」等の勘定科目で処理することが多いです。走行距離に応じて変動する特徴から、正確に管理することが大切です。
車検費用
法定車検にかかる費用は大きく分けて「法定費用」「整備・点検費用」に分類します。
法定費用には「自賠責保険料」「自動車重量税」「印紙代」が該当しますが、これらを一つの勘定科目で計上することはできません。会計処理する際は以下の勘定科目に分けて計上しましょう。
勘定科目 | 概要 |
車両費 |
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租税公課 |
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保険料 |
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支払手数料 |
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車検は車の用途・タイプによって1年または2年ごとに実施することが義務付けられています。機能や安全性を維持するために必要なコストのため、忘れないように注意しましょう。また、車検後の請求書や領収書は計上の際に必要になるので、きちんと保管することをおすすめします。
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修理費用
社用車の故障やトラブルが発生した際の修理費用も経費として計上できます。業務で社用車をしていたときに、エンジントラブルやパンク等で修理を依頼した場合、かかった修理費用は「車両費」「修繕費」で処理が可能です。改良したり新しい機能を追加したりした場合は、資本的支出に該当する場合があります。このような場合、車両運搬具に計上し、減価償却が必要になる点に注意しましょう。
洗車代
社用車に関わる経費として「洗車代」が挙げられます。車の清潔感は、企業イメージに関わる部分でもあるため、定期的に洗車している企業も多いのではないでしょうか。
洗車代は、一般的に「車両費」「消耗品費」「雑費」等の勘定科目で仕訳されることが多いです。車両にかかる経費が多いときは「車両費」でまとめると確認や処理がスムーズです。
駐車場代
駐車場代は月極駐車場と不定期で使用した場合とで勘定科目が異なります。
月極駐車場で契約している場合は「地代家賃」で毎月計上します。一方、コインパーキング等での不定期の駐車場代は「旅費交通費」「車両費」「雑費」等で計上しましょう。
備品代
社用車の購入に際しては、タイヤのホイールやエアコン等の備品代が発生する場合もあるでしょう。このようなときは車両本体と一緒に購入した付属品として自動車の購入価格に含めてください。この場合の勘定科目は「車両運搬具」として固定資産に計上しましょう。
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社用車の経費計上に運転日報は必要?
運転日報とは、貨物自動車運送業を行っている企業や事業で使う車両数が一定台数を超える企業に作成が義務可された日報のことです。経営者は社用車の運転状況を把握する目的から、記録用の書類を用意して運転者に業務終了後に記録させなければなりません。
社用車を経費計上するには、法人・個人事業主どちらも、その車が事業で使用されていることが条件です。事業で使用されていることが判断・証明できるよう、法人・個人事業主を問わず運転日報の作成を推奨します。
運転日報には保存期間に関するガイドラインも存在し、公安委員会に提出するケースもあるようです。さらに労働基準法では、労働関係に関する重要書類の保存は5年間の保存が義務化されています。
社用車も労働に関する項目のため、社用車を所有する際は作成義務の有無にかかわらず運転日報を作成し、5年間保存するのが望ましいでしょう。
なお、近年では役員や従業員の個人利用分に関して福利厚生の一部でカバーすることも増加しています。しかし、個人利用での事故については保険対象から外れる等、利用上の懸念も少なくありません。
社用車を経費計上する場合は個人使用と事業利用を可能な限り細分化し、正確な経費を洗い出すことも心がけましょう。
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社用車の経費計上について押さえよう
社用車の使用にあたっては、保険料や税金、ガソリン代等、多岐にわたる費用を正確に管理し経費計上することが大切です。購入方法によって経費計上に違いもあるため、それぞれの特徴を踏まえて最適な選択を行いましょう。
また、個人事業主の場合、家事按分の計算が必要になります。社用車を検討しているものの、計上に不安があり踏み切れないといった方は、この機会に小谷野税理士法人へご相談ください。