フリーランスとして働くことを考えている方や、既にフリーランスとして活動している方にとって、どれくらいの年収が平均なのか気になりますよね。正社員や法人と比べ、安定した事業を続けることが難しいイメージのあるフリーランスですが、実際の平均年収は働き方や職種によって大きく異なります。この記事では、フリーランスの平均年収について詳しく解説します。実際の調査データを元に深掘りしていくので、ぜひ参考にしてください。
目次
フリーランスの平均年収
厚生労働省の調査データ「令和4年度フリーランス実態調査結果」によると、フリーランスの平均年収は200〜300万円が最も多いことが分かりました。しかし、この数字はフリーランス全体の収入を反映しており、職種や働き方によって変動します。
例えば、ITやエンジニア分野で働くフリーランスは、平均年収が高めで、500万円以上を稼ぐ人も少なくありません。一方、クリエイティブ系やライティング系のフリーランスは、平均年収が200〜300万円程度とされています。
また、フリーランスの収入は、働き方や契約形態によっても影響を受けます。フルタイムで働くフリーランスは、年間400万円以上の収入を得ることが一般的です。パートタイムや副業としてフリーランスをしている人よりも稼働時間が長く、高い収入を得ている傾向があります。
さらに、経験やスキルのレベルによっても異なります。経験豊富で高いスキルを持つフリーランスは、高単価の案件を受注しやすく、結果として高い年収を得ていると推測できます。逆に、経験が浅いフリーランスは、低単価の案件が多く、収入が低くなる傾向です。
フリーランスの平均年収は一概に言えない部分もありますが、厚生労働省のデータを参考にすると、全体的な傾向や具体的な数値が見えてきます。フリーランスとして働くことを考えている方は、自分のスキルや経験、働き方に応じた収入の見込みを立てることが重要です。
働き方別のフリーランスの年収
「フリーランス」と言っても、その年収は働き方によってさまざまです。ランサーズ株式会社の「新・フリーランス統計調査 2021-2022年版」による、フリーランスの仕事を行う場合の年収について詳しく見ていきます。
働き方 | 人数/割合 | 平均年間報酬 | 週に働く時間 |
副業系すきまワーカー | 424万人/26.9% | 62.3万円 | 5.7時間 |
複業系パラレルワーカー | 356万人/22.6% | 102.8万円 | 9.9時間 |
自由業系フリーワーカー | 297万人/18.8% | 89.0万円 | 10.3時間 |
自営業系独立ワーカー | 500万人/31.7% | 297.5万円 | 27.4時間 |
副業としてフリーランスの仕事をこなす場合
副業としてフリーランスの仕事を行う「副業系すきまワーカー」は、サラリーマンとして雇用されながら、副業でフリーランスの仕事をこなす働き方です。2021年から2022年にかけての調査によると、このような働き方をしている人は約424万人で、全体の26.9%を占めています。
副業でフリーランスの仕事を行う場合、週の平均稼働時間は5.7時間、年間の平均報酬は約62.3万円です。フルタイムのフリーランスと比較すると低めですが、主な収入源が別にあるため、追加の収入としては十分な額と言えるでしょう。
副業でフリーランスの仕事を行うことで、スキルの向上や新たな経験を積めます。将来的にフルタイムのフリーランスとして独立するための準備にもなるでしょう。また、副業でのフリーランス活動は、リスクを分散しながら収入を増やす手段としても有効です。
2社以上の企業と仕事をこなす場合
雇用形態に関係なく、2社以上の企業と契約ベースで仕事をこなす「複業系パラレルワーカー」は約356万人と、全体の22.6%を占めています。2020年度の288万人から大幅に増加しました。
2社以上の仕事をこなすフリーランスは、週に平均9.9時間働いており、年間の平均報酬は約102.8万円です。副業でフリーランスの仕事を行う場合と比較すると年収は高めです。複数の企業と契約することで、安定した収入を得られる点が特徴といえます。
「複業系パラレルワーカー」としての働き方は、リスク分散や収入の安定化を図るためにも有効です。また、異なる企業での経験を積むことで、スキルの幅を広げられるため、キャリアの成長にもつながるでしょう。
特定の勤務先がなく独立している場合
特定の勤務先を持たずに独立して活動する「自由業系フリーワーカー」は約297万人に昇り、全体の18.8%を占めています。コロナ禍の影響もあり、前年度の58万人から大幅に増加しました。
特定の勤務先がなく独立しているフリーランスは、週に平均10.3時間稼働しており、年間の平均報酬は約89.0万円です。他の働き方と比較すると年収はやや低めですが、特定の勤務先に縛られない自由な働き方を選ぶことで、ライフスタイルに合わせた柔軟な働き方が可能です。
「自由業系フリーワーカー」の働き方は、自己管理や専門スキルが求められる一方で、自由度が高く、自分のペースで仕事を進められるのがメリットです。介護や育児、趣味などに充てる時間を確保したいと考える方にとっては、魅力的な仕事スタイルなのではないでしょうか。ただ、自身で勤務時間や業務量をコントロールできる分、稼働しない時間が増えると収入が下がります。生活スタイルや本人のやる気によっては、収入が安定しないこともあるでしょう。
個人事業主など1人で経営する場合
個人事業主や法人経営者として1人で事業を運営する「自営業系独立ワーカー」は、最も多い約500万人に昇り、全体の31.7%を占めています。前年度の296万人から大幅に増加していることがわかり、コロナ禍で正社員から独立した人の影響が出ていると考えられます。
1人で経営するフリーランスは、週の平均稼働時間は27.4時間と長めで、年間の平均報酬は約297.5万円です。他の働き方と比較すると年収が高く、独立し本業として事業を運営することで安定した収入を得られる点が特徴です。
「自営業系独立ワーカー」の働き方は、タスク管理能力や経営スキルが求められる一方で、自由度が高く、フリーランスとしてバリバリ働きたい方にも向いています。また、独立しているため、複数のクライアントと取引することで収入源を多様化し、リスクを分散することも可能です。
参考:新・フリーランス統計調査 2021-2022年版|ランサーズ株式会社
関連記事:個人事業主とフリーランスの違いとは?どっちがいいか収入・税金・働き方の観点で解説
職種別のフリーランスの年収
フリーランスの年収は、職種ごとに差があります。特に資格や特定のスキルが必要な職種は、平均年間報酬が高くなる傾向があります。ここでは、ランサーズ株式会社の「新・フリーランス統計調査 2021-2022年版」の結果をもとに、職種ごとの平均年収を見ていきましょう。
ITエンジニア
ITエンジニアの平均年間報酬は約255.7万円です。技術的な知識やスキルが求められるため、報酬の水準は比較的高めです。
ITエンジニアは、システム開発やネットワーク構築など、専門的な業務を担当します。安定した需要があり、高い報酬が期待できる職種です。
WEBデザイナー・グラフィックデザイナー
エンジニアと同様の理由で、WEBデザイナーやグラフィックデザイナーも、平均年間報酬が約209.0万円と比較的高い水準にあります。技術的なスキルやクリエイティブな能力が求められる職種です。
デザインのトレンドに敏感であることが重要で、クライアントのニーズに応えるための柔軟性も必要です。専門性が高く、報酬は比較的高めに設定されています。
士業(弁護士、税理士など)
一方、弁護士や税理士などの士業は、約316.4万円と最も高い報酬を得ています。専門的な資格が必要なうえに、責任の重い業務をこなすためです。
法律や税務に関する深い知識が求められ、クライアントの信頼を得ることが重要です。
経営・企画職
経営・企画職の平均年間報酬は、約292.7万円です。戦略的なスキルが求められる職種であり、企業の成長や発展に直接関与します。
市場分析やビジネスプランの策定など、多岐にわたる業務を担当します。専門的な知識や経験も必要で、高めの年収を得ることが期待できます。
軽作業・カスタマーサポートの年収
軽作業の平均年間報酬は約57.1万円、カスタマーサポートは約148.2万円です。年収が低目である理由は、業務の稼働時間の短さも挙げられますが、特定の資格や高度なスキルが不要であることも該当します。
比較的簡単な業務を担当することが多く、属人的な業務が少ないため、報酬は他の職種と比べて低めに設定されています。
参考:新・フリーランス統計調査 2021-2022年版|ランサーズ株式会社
関連記事:フリーランスの税金はいくら?年収別に簡単シミュレーション
年収1,000万円を超えるフリーランスが少ない理由
フリーランスとして年収1,000万円を超える人は、ごくわずかです。厚生労働省の調査データによると、年収1,000万円以上のフリーランスは全体の3.4%に過ぎません。
収入が不安定である
フリーランスとして年収1,000万円を超える人が少ない理由の一つは、収入の不安定さです。プロジェクトの受注状況やクライアントの支払い状況に依存するため、安定した高収入を維持するのは難しいです。
特に、初期段階では顧客基盤が確立されていないため、収入が低くなる傾向があります。
業務範囲に限界がある
企業であれば、従業員が役割を分担し、案件が増えれば従業員を増やすことで対応できます。しかし、フリーランスで従業員を雇っているケースは少なく、使える時間に限りがあることが多いです。
高額な報酬を得るためには膨大な数をこなすか、非常に高いスキルと実績が求められます。このため、業務範囲の限界が収入の上昇を妨げる要因となっています。
高年収のフリーランスは法人化する傾向にある
年収が一定額を超えると、法人化を検討することが一般的です。法人化することで、税制上のメリットを得られるため、フリーランスとしての活動を続けるよりも有利になることが多いのです。
法人化すると、経費の計上や税率の面で有利になるため、年収が高くなると自然と法人化を選択する傾向があります。法人化するとフリーランスではなくなるため、年収1,000万円を超えるフリーランスが少数派となっています。
フリーランスと正社員の違い
フリーランスと正社員の年収には、税金や社会保険などの要素が大きく影響します。ここでは、両者の主な違いについて詳しく見ていきます。
各種税金の違い
フリーランスは所得税・住民税・消費税・個人事業税を自分で確定申告し、納税します。毎年2月16日から3月15日までの間に確定申告を行い、納税額を確定させる必要があるのです。確定した税金額は、自分で支払手続きを行うため、税務知識が求められます。
一方、正社員は所得税と住民税が給与から天引きされ、会社が年末調整を行ってくれるため、税務手続きを自分で行う必要がなく手間が省けます。フリーランスは収入が増えるほど納税額も増え、手取りが減る傾向がありますが、正社員は給料の変動幅がそこまで大きくないため、安定した手取り収入を得やすいです。
社会保険の違い
正社員は社会保険・厚生年金・雇用保険・労災保険に加入し、会社が費用の一部を負担します。社会保険と厚生年金は、会社が半分の費用を負担するため、正社員は費用負担を軽減しつつ手厚い保障を受けられます。
雇用保険は失業時の生活保障や再就職支援制度を利用でき、労災保険は仕事中にケガや病気を患った場合に医療費や休業手当を受け取ることが可能です。
これに対して、フリーランスは国民健康保険と国民年金保険に加入しますが、保険料は全額自己負担しなければなりません。フリーランスは正社員のような保険に加入できないため、保障が手薄になりがちです。
有給休暇と福利厚生
正社員は法的に有給休暇が付与され、福利厚生も充実しています。健康診断や住宅手当、産休・育休などが提供されるため、安心して働けます。有給休暇を利用した際も給与が発生するので、体調を崩した際や急用で出勤できないときも収入の不安を抱える必要はありません。
一方、フリーランスには法的な有給休暇がなく、福利厚生も基本的にはありません。しかし、福利厚生サービスを利用することで、一部の保障を受けられます。例えば、コワーキングスペースの利用料優待サービスや健康診断費用の一部負担、税務・法務相談サービスなどがあります。
退職金制度
正社員は退職金制度がある企業が多く、退職時に一定の金額を受け取ることが可能です。退職後の生活の足しにできるため、老後の資金確保の面でも安心できます。
一方、フリーランスには退職金制度がないため、自分で積み立てる必要があります。小規模企業共済制度やiDeCo(イデコ)を活用することで、将来への備えと節税対策が可能です。掛け金を経費として算入できるため、積み立てを利用するフリーランスの方も多いでしょう。
収入の安定性
正社員は毎月一定の収入を得られるため、安定した生活が送れます。給与は毎月決まった日に支給されるため、生活費の計画が立てやすく、安心感があります。
これに対し、フリーランスは案件ごとに契約を結ぶことが多く、収入が不安定になりがちで、金銭面での不安を抱えやすいです。特に、急に仕事がなくなるリスクがあるため、収入が途絶える可能性もあります。
フリーランスとして働く場合は、複数のクライアントと契約を結び、収入源を一つに絞らないことがポイントです。また、貯蓄や保険などでリスクに備えることも有効でしょう。
関連記事:個人事業主・フリーランスの手取りシミュレーション|年収や手取りの計算方法
フリーランスの手取りを増やすには節税対策が大切
フリーランスの平均年収は職種や働き方によって左右されますが、全体的には約300万円程度とされています。収入を最大限に活かすためには、手取りを増やすことが重要です。そのためには、節税対策が欠かせません。
適切な経費の計上や控除の活用により、納税額を抑えましょう。また、青色申告を利用することで、さらに節税効果を高めることが可能です。
しかし、税務の知識が不足していると、有効な対策を講じるのは難しいかもしれません。フリーランスに効果的な節税対策を知りたい方や、日々の帳簿づけや税務に不安がある方は、私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。