スクイーズアウトは、少数株主を排除して大株主が企業の意思決定を迅速に行いやすくする手法です。複数の株主がいる場合、意思決定のスピードが遅くなりやすいことから、企業の経営方針に柔軟性が求められた際などに有効です。今回はスクイーズアウトのメリット・デメリットに加えて、方法や注意点について解説します。
目次
スクイーズアウトとは?
スクイーズアウトは、少数株主の株式を大株主が強制的に買い取ることを指します。経営の効率化や意思決定の迅速化を図るために用いられることが多く、長期的なビジョンを持つ経営者にとっては有効な方法の一つです。
スクイーズアウトによって少数株主の意見に影響を受けずに経営を進めることができます。最近では、M&Aや事業承継の一環としても広く認識されるようになりました。
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スクイーズアウトの主な方法4つ
スクイーズアウトには主に4つの方法があります。ここでは方法の詳細について解説するので、スクイーズアウトを実施する際の参考にしてください。
特別支配株主の株式等売渡請求
特別支配株主の株式等売渡請求とは、9割以上の総議決権を有する特別支配株主が対象企業の承認を得た上で他の株主から株式を得ることです。
この方法によって、特別支配株主が少数株主の株式を強制的に取得する手続きがスムーズになります。
メリットは、企業の完全子会社化が進めやすくなる点や、意思決定が迅速かつ効率的に行われる環境が整う点です。
一方、デメリットとしては、少数株主の意向が十分に尊重されない可能性や、手続きには適切な評価額の設定および法律に基づく必要性が挙げられます。
特別支配株主の株式等売渡請求を検討する際は、税理士などの専門家のアドバイスを受け、慎重に計画を進めることが大切です。
株式併合
株式併合は、複数の株式を一つの株にまとめることです。株価の適正化や整理に役立ち、株式市場において投資家の信頼を得やすくなります。
メリットには、少数株主の整理が挙げられます。株価の低迷時に株数を減少させ、再評価を促す手段として効果的です。
デメリットには、小口株主が保有株数減少による影響を受ける点や、経営側への不信感が生じるリスクがあります。
スクイーズアウトと結びつくことで、少数株主が強制的に株を売却させられるリスクもあるため、法律や規制に従った適正な手続きが必要です。
経営者が株式併合を検討する際は、プロセスと結果に対する影響を十分に理解することが大切と言えるでしょう。
全部取得条項付種類株式
全部取得条項付種類株式は、株主総会の特別会議で特定種の株式全てを可決により取得できると定められた種類株式の一つです。
企業が特定種の株式を全て取得する権利を持つため、スクイーズアウトを実行できます。
スクイーズアウトによって少数株主の整理や企業全体の改善を図ることができるので、経営の柔軟性が向上するのはメリットです。
しかし、少数株主からの反発を招く可能性から、慎重な対応が求められるといったデメリットも存在します。
全部取得条項付種類株式の際には、株主総会の決議や公告が必要となるため、十分な準備と情報提供が大切です。
株式交換
株式交換は、完全子会社となる会社の株主が有する株式を完全親会社の株式と交換する方法です。
メリットは、大規模な再構築や戦略的意思決定を迅速に進められる点が挙げられます。経営の一貫性が保たれるので、市場競争力にも貢献するでしょう。
しかし、少数株主から反発を招くリスクも存在します。
株式交換では、適正価格の算定や少数株主への説明義務ある点に注意してください。経営者にとっては戦略的選択肢となり得るものの、実施においては専門家による適切なアドバイスやサポートが不可欠と考えられるでしょう。
スクイーズアウトのメリット
スクイーズアウトにはさまざまなメリットがあります。ここではスクイーズアウトのメリットについて解説するので、今後の参考にしてください。
事務処理や手続きの手間を削減
スクイーズアウトは経営者にとって、株主総会を行う際の株主への通知、会場の設営・準備を簡略化できるといったメリットがあります。
少数株主の株式を強制的に取得するので、株主総会の管理や株主への報告義務が大幅に簡略化され、経営の効率化が実現しやすいでしょう。
ただし、スクイーズアウトを検討する際は、株主からの反発リスクがあるため、法的手続きを正確に理解し注意深く進めることが大切です。
株式分散リスクの対策
スクイーズアウトによって経営者は、株式分散のリスクを抑え、意思決定を迅速かつ効率的に行うことができます。
リスクの一例としては、株主が死亡した場合に、株式が複数の相続人に分散されるなどです。例えば連絡の取れない株主が多いと、手続きが難航し、業務の妨げにつながる恐れがあります。
スクイーズアウトを実行する上では、税理士や弁護士といった専門家への相談や注意点への理解が大切と言えるでしょう。
株主代表訴訟のリスクを抑えられる
株主代表訴訟のリスクを大幅に抑えられる点もメリットです。株主代表訴訟とは、会社に代わって役員の経営責任を追及し、損害賠償請求を行うことです。
少数株主と経営方針を巡って対立した場合、株主代表訴訟を起こされるリスクがあります。しかし、スクイーズアウトによって少数株主が排除されるので、経営判断に対する訴訟や意見の対立が減少し、経営の自由度の向上に期待できるでしょう。
グループ通算制度における節税ができる
グループ通算制度における税制上のメリットもあります。グループ通算制度とは、親会社と完全支配関係にある全ての子会社を一つのグループとみなし、申告・納税を行う制度のことです。
一般的に、グループ内の法人ごとに申告や納税を行うことから、赤字企業と黒字企業の損益通算を行うことはできません。
グループ通算制度の要件を満たすと、企業グループ内での損益通算が可能になります。黒字企業の利益に赤字企業の損失を相殺して税額を軽減できるのは、スクイーズアウトならではの特徴と言えるでしょう。
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スクイーズアウトのデメリット3つ
スクイーズアウトにはデメリットもあります。ここではデメリットを3つ紹介するので、スクイーズアウトを実施する際の参考にしましょう。
時間が必要
スクイーズアウトを進めるには、一定の時間が必要になることを理解しましょう。経営効率の向上や意思決定の迅速化といったメリットがある一方、これらには複雑な手続きと少数株主への公正な補償が不可欠です。
経営者や株式市場に関心のある投資家においては、この手続きをスムーズに進めるための計画と準備が必要と言えます。また、透明性を保ち公正な対応をとることがスクイーズアウトを成功させる鍵となることも念頭に置きましょう。
裁判に発展するリスクがある
スクイーズアウトは少数株主を強制的に株式売却させる手続きであり、その過程で少数株主からの訴訟につながる恐れもあります。
経営者はスクイーズアウトに伴う法的リスクを最小限に抑えるため、適正な株価評価や説明責任を果たすことが大切です。
対価を支払うための資金が必要
スクイーズアウトにより少数株主を排除することで、経営の一本化や意思決定の迅速化が図れます。しかしその際は、対価を支払うための資金を用意しなければなりません。
少数株主に対して公正な価格で対価を支払えるよう、事前に資金調達の計画を練ることが求められます。
スクイーズアウトにはメリットもデメリットもある
スクイーズアウトは少数株主を排除し、経営効率を向上させる手段で、意思決定の迅速化や長期的な戦略策定に柔軟性をもたらします。
しかし、法的手続きや少数株主への適切な説明が欠かせず、資金面での準備も必要です。
スクイーズアウトの実施においては、弁護士や税理士といった専門家のアドバイスを参考にすることをおすすめします。スクイーズアウトについて知りたい方、適切なアドバイスを受けたい方は、この機会にぜひ小谷野税理士法人へご相談ください。