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建設業の財務分析方法と指標を解説!経営状況改善のポイントとは

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建設業の財務分析方法と指標を解説!経営状況改善のポイントとは

建設業における財務分析は企業の経営状況を把握し、将来の事業戦略を立てる上で重要な指標です。しかし専門的な知識が必要となるため、難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。そこで今回は財務分析の方法や用いる指標、そして経営状況改善のポイントについて解説します。建設業の財務状況や資金繰りについてお悩みがある経営者の方は、ぜひ参考にしてください。

建設業の現状

工場・現場で夜勤をする従業員

建設投資額は平成29年度に60兆円を超えたものの、令和2年度は新型コロナの影響で減少見込みです。建設業許可業者数と就業者数は減少傾向にあり、特に就業者数はピーク時の4分の3以下という結果になりました。

建設産業は、災害時の復旧・復興に不可欠な役割を担っている業界です。国内市場縮小で厳しい状況ながら、近年は利益率が改善し財務体質は健全化に向かっています。

資本金階層別では、大規模階層ほど経営指標が優れています。小規模階層は回復傾向にあるものの、依然として不安定です。建設業は、防災・減災やインフラ老朽化対策など、今後も重要な役割を担うため、人材不足などの課題解決が求められます。

参考:建設業の経営分析|一般財団法人 建設業情報管理センター

建設業会計の特徴

建設業会計は、工事期間が長期にわたる建設業特有の事情を考慮した会計基準です。一般的な企業会計原則に加え、独自の勘定科目や売上計上基準が設けられています。

請負契約が中心で、工事期間が長期に及ぶことが特徴です。注文を受けてから着手するため、製造業とは異なります。また独自の会計処理があるのもポイントのひとつ。「工事契約に関する会計基準」に基づき、大規模な請負工事などに特殊な会計処理が必要です。

さらに2つの売上計上基準が存在し、工事の進捗に応じて収益と費用を計上する「工事進行基準」と完成・引渡し時に収益と費用を計上する「工事完成基準」があります。

建設業で用いる財務分析方法

打ち合わせをする社員・従業員

建設業において用いられる財務分析方法は以下の通りです。

概要

指標

収益性分析

損益計算書や売上高に対する利益率、投資に対する利益率などを分析する

売上高総利益率
総資本経常利益率

安全性分析

貸借対照表から短期的な支払能力を示す流動性や長期的な財務構造を示す健全性を分析する

当座分析
固定長期適合比率

活動性分析

資本や資産の回転効率を示す

自己資本回転率
回転期間

生産性分析

労働力や投資に対する成果を示す

資本生産性

成長性分析

企業の成長度合いをはかる

経常利益年平均成長率

これらの分析を通じて建設業者は経営の健全性を維持し、持続的な成長を目指すことができます。

建設業で用いる財務分析指標

建設業で用いる主な財務分析指標はこちらです。

区分

比率名

概要

収益性

総資本経常利益率

企業の総合的な収益力を把握するために、非常に重要な指標

売上高経常利益率

売上高に対する経常利益の割合を示し、企業の経常的な収益力を測る

売上高総利益率

売上高に対する売上総利益の割合を示し、商品の粗利益率を測る

売上高営業利益率

売上高に対する営業利益の割合を示し、本業の収益力を測る

売上高一般管理費率

売上高に対する一般管理費の割合を示す

活動性

総資本回転率

総資本がどれだけ効率的に売上高を生み出したかを示す

自己資本回転率

自己資本がどれだけ効率的に売上高を生み出したかを示す

固定資産回転率

固定資産がどれだけ効率的に売上高を生み出したかを示す

受取勘定回転率

売掛金や受取手形がどれだけ効率的に回収されたかを示す

支払勘定回転率

買掛金や支払手形がどれだけ効率的に支払われたかを示す

流動性

当座比率

短期的な支払い能力を厳密に測る

流動比率

短期的な支払い能力を測る

健全性

自己資本比率

総資本に対する自己資本の割合を示し、企業の財務的な安定性を測る

固定資産比率

自己資本に対する有形固定資産の割合を示す

固定比率

自己資本に対する固定資産の割合を示す

固定長期適合比率

固定資産と固定負債・自己資本のバランスを見る

借入金依存度

総資本に対する借入金の割合を示す

生産性

付加価値率

売上高に対する付加価値の割合を示し、企業の生産性を測る

1人当たり売上高

従業員1人当たりの売上高を示し、労働生産性を測る

1人当たり付加価値(労働生産性)

従業員1人当たりの付加価値を示す

これらの指標を分析することで、企業の経営状況を多角的に把握できます。

参考:建設業の財務統計指標【令和2年度決算分析】|東日本建設業保証株式会社

関連記事:流動比率は高い方がいい?目安や高すぎる場合の注意点

建設業が抱える財務面の課題

続いて、建設業が抱えている財務面における3つの課題を解説します。

材料費を先払いしなくてはいけない

建設で使用する材料費は通常、工事開始前や工事中に現金で支払う必要があります。一方、工事代金の入金は完了後となるため、このタイムラグが資金繰りを悪化させる大きな要因となります。

大規模なプロジェクトや複数のプロジェクトを同時進行する場合、材料費の負担は増大して運転資金が枯渇するリスクが高まります。受注から入金までの期間は平均して3ヶ月程度かかるため、常に余裕を持った資金計画が求められるのです。

外注費・労務費の支払いがある

建設業は多くの人員を必要とするため、労務費や外注費も資金繰りを圧迫する大きな要因です。大規模または複数のプロジェクトを同時に受注した場合、費用はさらに膨らみ資金繰りに深刻な影響を与える可能性があります。

労務費や外注費の支払いが滞ると従業員との関係悪化や取引先からの信用を失うことにつながるため、厳密な資金管理が不可欠です。これらの課題に対処すべく、建設業者は常に資金繰りの状況を把握しながら適切な資金調達手段を検討しなくてはなりません。

請求のタイミングに時間差が生じる

建設業における資金繰りの最大の課題は、売上として計上される工事代金の回収に時間がかかることです。多くの場合、工事完了後に請求書を発行します。

着工から完成までの数ヵ月、場合によっては数年という期間、建設会社は自社の運転資金で支出を賄う必要があります。

また未だに手形取引が一般的であるため、現金化に時間がかかり資金繰りを圧迫する要因となっています。こういった事情もあり、建設業では複数の資金調達手段を確保しておくことが重要です。

建設業が経営状況を改善するためのポイント

税理士と相談をする中小企業’(法人)の社長

建設業が抱える財務面の課題や経営状況を改善するためのポイントを解説します。

資金繰り表を作る

資金繰り表とは一定期間における現金の出入りを詳細に記録し、将来の資金状況を予測する書類です。建設業のように支出の波が大きく入金までの期間が長い業種では、資金繰り表の作成はまさに生命線と言えるでしょう。

もし日々の資金の流れを可視化できれば、資金ショートのリスクを事前に察知し、余裕を持った資金計画が立てられます。例えば、支払いのタイミングを調整したり、必要な資金を適切なタイミングで調達したりといった対策を講じられるでしょう。

キャッシュフロー計算書を作る

資金の健康状態を詳細に把握するためにキャッシュフロー計算書を作成するのも有効な手段のひとつです。キャッシュフロー計算書とは一定期間における現金の動きを詳細に記録した財務諸表であり、建設業特有の不規則な資金の流れを可視化できます。

キャッシュフロー計算書は、主に以下の3つの要素で構成されています。

  • 営業キャッシュフロー(営業CF):売上、仕入、給与支払いなど、通常の事業活動における現金の動きを示す。プラスであれば、事業運営が健全であることを示唆します。
  • 投資キャッシュフロー(投資CF):設備投資、不動産購入・売却など、事業拡大や設備投資による現金の動きを示す
  • 財務キャッシュフロー(財務CF):資金調達、資本の返済など、財務活動による現金の動きを示す

この財務諸表で事業から得られた収入がどのように使われているのかを詳細に把握し、資金繰りの問題点を特定しやすくなるでしょう。

助成金や補助金を活用する

建設業の資金繰り改善には、国や地方公共団体からの返済不要な補助金・助成金の活用が有効です。主な補助金・助成金の一覧はこちらです。

  • 事業再構築補助金:新分野展開や業態転換を支援。
  • 働き方改革推進支援助成金:労働環境改善を目的とした補助。
  • IT導入補助金:生産性向上につながるITツール導入を支援。
  • ものづくり補助金:生産性向上を目的とした設備投資や商品開発支援

ただし支給には厳しい条件があるため、事前準備をしておきましょう。

ファクタリングを活用する

ファクタリングは企業が保有する売掛債権や受取手形を専門会社に買い取ってもらうことです。審査が比較的早く、借入ではないため財務健全性を維持できます。

建設業界では工事代金の入金までに時間がかかり、未回収の売掛金が多くなりがちです。ファクタリングを利用すれば、売掛金を早期に現金化し、資金不足の課題を解決できます。

ファクタリングは建設業と相性が良いサービスですが、利用には手数料が発生します。手数料率、審査期間、手続き方法は会社によって異なるため、事前に詳細を確認し、比較検討することが重要です。

銀行から融資を受ける

銀行融資においては運転資金、設備資金、工事資金など、さまざまな用途に対応可能です。低金利でまとまった資金を調達できる点が魅力ですが、融資を受けるには厳しい審査を通過する必要があります。

建設業において銀行融資は汎用性と安定性の高さから、有力な資金調達手段となるでしょう。しかし利益の有無に関わらず返済義務が生じるため、綿密な返済計画を立てて慎重に利用を検討してください。

社内コストを見直す

社内コストを削減することで資金繰りに余裕が生まれ、経営の安定化に繋がります。コスト削減の具体例を紹介します。

  • 労務費:人員配置の最適化、アウトソーシングの活用、デジタル化による事務作業の効率化、固定費の見直し
  • 材料費:一括購入によるコスト削減、資材の再利用、資材ロスの最小化、重機の効率的な運用
  • 外注費:コストパフォーマンスの高い業者の選定、長期的な信頼関係構築による価格交渉

社内コスト削減は収益増加よりも取り組みやすいため、全社一丸となって取り組めば短期間で大きな成果を上げられるでしょう。

関連記事:フリーキャッシュフローとは?マイナスの要因や影響、分析方法まとめ

建設業で用いる財務諸表を作成する際の注意点

最後に建設業で用いる財務諸表を作成する際に覚えておきたい注意点を解説します。

法で定められた勘定科目に振り分ける

建設業会計は、一般的な会計基準に加えて、建設業法や関連法令によって定められた勘定科目を使用する必要があります。これは、建設業特有の取引や会計処理を適切に反映させるためです。

建設業特有の勘定科目の例をご紹介します。

  • 未成工事支出金
  • 完成工事未収入金
  • 完成工事高
  • 完成工事原価

これらの勘定科目を適切に使用することで財務諸表の正確性が向上し、経営状況を正確に把握できます。

建設業でかかった金額とそうでない金額に正しく分ける

建設業では工事に関連する費用と、それ以外の費用を明確に区別することが重要です。これにより、工事の原価を正確に把握し、収益性を適切に評価できます。

建設業科目(建設業でかかった金額)

兼業科目(建設業以外の金額)

完成工事高

兼業事業売上高

完成工事原価

兼業事業売上原価

完成工事総利益

兼業事業総利益

完成工事未収入金

売掛金

工事未払金

買掛金

関連記事:出資金の勘定科目とは?仕訳の具体例を紹介

まとめ

財務分析を通じて企業の収益性、安全性、効率性などの経営状況を数値で把握できます。特に建設業は大規模なプロジェクトを扱うことが多く、資金繰りやリスク管理が特に重要です。

財務分析は、これらの課題を克服し、企業の持続的な成長を支えるための強力な武器となります。

しかし、財務分析には専門的な知識が必要となるため、難しいと感じる方も多いのではないでしょうか。

建設業では工事の特性上、会計処理が複雑になりがちです。そのため、財務分析を正確に行うことは、経営者にとって大きな負担となる場合があります。もし財務分析ができているか不安がある場合はプロの税理士に相談するのもおすすめです。

財務分析についてのご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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