もし、法人企業が税金滞納をし続けると全額免除になる特例があるのか、気になる方もいるのではないでしょうか。実際は税金滞納し続けても全額免除にならず、逆に延滞税が発生してしまいます。それではもし税金の納付が困難になった場合はどのように対応すればいいのでしょうか?本記事では納金滞納した場合の影響や対処法、そして滞納を回避するための対策について解説します。
目次
税金滞納し続けても全額免除にはならないので要注意!
税金を滞納し続けると最終的には全額免除になる、ということはありません。もし期限までに税金を納付しなければ、納付が遅れた日数に応じて延滞税が課されます。
督促状が送付されても納付しないと、財産の差押えなどの滞納処分を受けるので注意しましょう。ただし納付が難しい事情がある場合には、税務署に申請すれば財産の売却や差押えなどの猶予が認められる場合があります。
参考:No.9206 国税を期限内に納付できないとき|国税庁
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税金滞納すると延滞税が発生
税金を滞納し続けると全額免除になるどころか、延滞税という税金が発生することをお伝えしました。国税の納付が遅れた場合、納期限の翌日から完納日までの日数に応じて、以下の割合で延滞税が課されます。
納期限の翌日から2ヶ月を経過する日まで | 年7.3%または延滞税特例基準割合+1パーセントのいずれか低い割合 |
納期限の翌日から2か月を経過した日以後 | 年14.6%または延滞税特例基準割合+7.3パーセントのいずれか低い割合 |
延滞税は納付が遅れる日数に応じて雪だるま式に増えていくため、納付が難しい場合には、すぐに税務署に相談しましょう。
税金滞納によって法人企業が受ける影響
税金滞納によって法人企業は延滞税が発生するだけでなく、以下のような影響を受ける可能性があります。
税務調査の対象になりやすい
税金滞納が続くと、税務署の調査対象になりやすくなるので要注意です。税務調査では、調査官からの質問への回答や、資料の提出など、企業側が対応に追われることになります。
さらに税務調査で財務状況に問題があると判断された場合、金融機関からの融資が受けにくくなってしまうでしょう。
社会的信用力が低下する
税金滞納で企業の社会的信用が大きく損なわれると取引先や金融機関からの信頼も失い新規取引や融資が難しくなることがあります。さらに顧客からのイメージが悪化し、売上減少につながることも少なくありません。
銀行融資を受けられなくなる
融資においては、企業の納税状況を重視している銀行がほとんどです。税金滞納がある場合には融資を受けられなくなるだけでなく、既存の融資契約を見直されることもあります。資金調達が困難になり、事業運営に支障をきたす可能性も考えられます。
資産が差し押さえられて事業停止する
税金滞納が続くと税務署は滞納金を回収すべく、企業の資産を差し押さえることがあります。預金口座や不動産、売掛金などが差し押さえられ、最悪のケースだと事業停止に追い込まれることもあります。
消費税と源泉徴収税滞納していると差押えが起こりやすい
消費税と源泉徴収税は、税務署が特に厳しく管理している税金です。これらの税金を滞納すると、差押えなどの滞納処分が起こりやすくなります。
会社が解散しても納税義務はある
会社が解散した場合でも未納の税金がある場合には、清算人が納税義務を引き継ぐのが一般的です。解散後も納税義務は消滅せず、滞納が続けば、清算人個人の財産が差し押さえられる可能性もあります。
会社が破産したら支払い義務がなくなる
会社が破産した場合、滞納していた税金は破産債権として扱われて原則として支払う必要はなくなります。ただし、一部の税金(源泉徴収税など)は、破産後も納税義務が残る場合があります。
税滞納を回収されるまでの流れ
滞納分の税を回収するまでの流れを簡単に解説します。
催促状の送付 | 滞納している税金の種類、金額、納期限、延滞税、納付方法などが記載された催促状が送付される |
訪問や電話、書面などによる忠告 | 忠告によって納税者に早期納付を促し、滞納解消を目指す |
税務調査 | 納税者の帳簿や書類などを確認し、正確な所得や税額を調査する |
財産差し押さえ | 預金口座、不動産、給与、売掛金などが対象 |
財産の換価 | 差し押さえた財産は、換価(売却)され、その代金が滞納している税金に充当される |
税務署の回収方法は法令に基づいて行われるため、納税者は税務署の指示に従って誠実に対応しなくてはいけません。もし税金に関する疑問や不安がある場合には、税理士や税務署に相談することをおすすめします。
関連記事:節税の相談は税理士がベスト?プロのアドバイスで賢い節税を!
税金の支払いができない場合の対処法
どうしても税金の支払いができない場合の2つの対処法について解説します。
税金の支払い猶予申請をする
特別な事情で税金の納付ができない場合、税務署へ支払いの猶予申請をするのがおすすめです。支払い猶予には納税の猶予と換価の猶予があるため、どちらを申請できるのか検討する必要があります。
猶予が認められる要件 | 猶予期間 | 猶予される税金 | |
納税の猶予 |
| 原則として1年以内 | 原則としてすべての税金 |
換価の猶予 |
| 原則として1年以内 | 原則としてすべての税金 |
税金の支払いができない場合はまず税務署に相談し、猶予制度の利用を検討しましょう。このように猶予制度を利用することで、一時的な資金繰りの課題を乗り越えられる可能性があります。
延滞税の免除を受ける
納税が免除されると、税金の支払い猶予期間中に発生する延滞税の一部ないしは全額もすべて免除されます。延滞税が免除される要件は以下の通りです。
- 延滞税の免除を受けようとする税金が、納税の猶予または換価の猶予を受けていること
- 納税の猶予または換価の猶予を受けた税金について、延滞税を納付することが困難であると認められること
- 納税者が、以下のいずれかに該当すること
- 財産の状況が著しく不良である
- 事業の状況により、延滞税の納付を困難とするやむを得ない理由がある
納税か換価の猶予を受けた際、猶予の対象となった税にかかる延滞税の納付が困難だと認められた場合は延滞税が免除されます。
税金滞納しないための対策
税金滞納しても全額免除になるわけではないので、あらかじめ対策を打っておく必要があります。以下では、税金滞納しないための6つの対策について解説するのでぜひ参考にしてください。
納税の準備・管理を徹底する
「備えあれば憂いなし」という言葉があるように、納税の場合も納期限をしっかり把握し、納税資金を計画的に準備しましょう。
国税庁や地方自治体のホームページで納期限を確認できるほか、納税通知書も忘れずにチェックしておくと安心です。毎月コツコツ積み立てるなど、無理のない方法で資金を確保しておきましょう。
早めに申告・納付手続きをしておく
納期限直前に申告・納付手続きをすると手続きに手間取り、期限までに間に合わない恐れがあります。
そのため、できるだけ早く申告・納付を済ませておくことが大切です。最近ではクレジットカード納付やQRコード決済など、便利な納付方法も増えています。自治体の情報をチェックして、自分に合った方法を選びましょう。
先に源泉所得税と消費税を納付する
差押えといった処分を受ける前に、源泉所得税と消費税は先に納付しておくのがおすすめです。
これらは従業員や取引先から預かっているお金であり、滞納すると信用を失うだけでなく、事業継続にも支障をきたします。そのため、他の税金を滞納してよいわけではないものの、優先させて支払っておきたい税金といえます。
資金調達を検討する
手元の資金を増やすために、資金調達を検討するのもひとつの手段です。もし納税資金が不足している場合は、リースバックやファクタリングなどの方法を検討しましょう。
リースバック | 不動産を売却し、売却代金を納税資金に充てる方法。売却後もリース契約を結ぶことで、引き続き不動産を利用可能。 |
ファクタリング | 売掛金をファクタリング会社に売却し、早期に資金を調達する方法。 |
これらの方法はバランスシートをスリム化し、企業の信用力を高める効果もあります。
顧問税理士や商工会議所に相談する
税理士や商工会議所に税金に関する悩みを相談すれば、あなたの状況に合わせた具体的なアドバイスを提供してくれます。
また、債務整理が必要な場合には、弁護士に相談することも検討しましょう。もし債務超過など負債が増えて悩んでいるケースにおいては、弁護士への相談を検討してください。
税務署に相談する
税金滞納によるさまざまなリスクを回避するためにも、なるべく早めに税務署に相談しましょう。税務署は納税者の強い味方です。税金滞納が避けられない状況になったら、換価の猶予や納税の猶予などの制度を利用できる場合があります。
関連記事:【税理士監修】法人ならではの最強の節税対策とは?裏ワザも紹介!
税金滞納に関するよくある質問
最後に税金滞納に関するよくある質問をまとめました。以下の内容を踏まえて、税金滞納をしないように上手に対策をしましょう。
未納分は分割払いできる?
基本的に分割払いは認められず、一括納付が原則となります。ただし税務署への申請によって先ほどご紹介した納税の猶予を受けられる場合があります。この猶予が認められれば、分割払いが可能です。
法人企業が支払うべき税金って何がある?
法人企業が支払うべき税金は以下の通りです。
法人税 | 法人(会社など)の事業活動によって得た所得に対して課される税金 |
地方法人税 | 法人税の一部を都道府県に納める税金 |
法人事業税 | 法人の事業活動に対して課される税金 |
法人住民税 | 法人の所在地である都道府県や市区町村に納める税金 |
消費税 | 商品やサービスの消費に対して課される税金 |
社員から源泉徴収した住民税 | 会社が社員の給与から差し引き、市区町村に納める税金 |
社員から源泉徴収した所得税 | 会社が社員の給与から差し引き、国に納める税金 |
事業所税 | 大都市の事業所に対して課される税金 |
印紙税 | 契約書や領収書などの文書に課される税金 |
固定資産税 | 土地や建物などの固定資産に対して課される税金 |
全額免除になる特例はある?
税金滞納が全額免除になる特例は、非常に限られたケースのみ存在します。かつては新型コロナウイルス感染症の影響で収入が減少した方を対象とした納税猶予の特例制度がありました。
滞納処分の停止が3年間継続された場合に、対象税金(延滞税を含む)の納税義務が全額免除される措置です。
しかし、現在はこのような特例措置は実施されていません。災害などにより納税が困難な状況に陥った場合には、滞納処分が停止されることがあります。しかしこれはあくまで一時的な措置であり、税金の免除とは異なります。
税金滞納したらどれぐらいで時効になる?
税金の時効は基本5年で、不正や脱税があった場合は7年です。しかし督促状の送付や差押えなどによって時効が中断されるため、実質的に時効はありません。
まとめ
法人が税金を納めない場合、個人と同様に全額免除になることはなく延滞税が発生します。支払わない場合は財産が差し押さえられ、事業継続が困難になる恐れがあるのでご注意ください。
税金の支払いができない場合は税金の支払い猶予申請や延滞税の免除を受けることを検討しましょう。
税金の支払いが困難だと分かった時点で、早めに税務署や地方自治体、そして税理士などの専門家に相談することをおすすめします。税金滞納に関するお困りごとやご相談は、ぜひ「小谷野税理士法人」までお気軽にお問い合わせください。