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会社設立の基礎知識

個人事業主から法人成り後も小規模企業共済の継続は可能!

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個人事業主から法人成り後も小規模企業共済の継続は可能!

国の機関である中小機構が運営する小規模企業共済制度は、個人事業主や小規模企業の経営者向けの積み立て型退職金制度です。法人成りを検討している個人事業主にとって、この共済の加入がどうなるのか気になるところでしょう。実は、法人成り後も共済を継続できる場合がありますが、そのための条件を理解し、事前準備を整えることが必要です。本記事では、その詳細と具体的なポイントについて解説します。

小規模企業共済の概要と加入資格

さまざまな職種の事業者

小規模企業共済は積み立てによる共済制度です。加入資格としては、個人事業主とその共同経営者、または小規模企業を経営している会社等の役員のいずれかの条件に当てはまる方になります。ここでは本制度の概要に加え、具体的な加入資格や要件について解説します。

小規模企業共済とは?

小規模企業共済は、国の機関である中小機構によって運営されている制度です。この共済は、加入者が定期的に掛金を納付することで、積み立てた資金を後に受け取ることができるのが特徴で、個人事業主や小規模企業における経営者等の生活基盤を守る一助になっています。

加ac入資格について

小規模企業共済に加入するためには、一定の加入資格や要件を満たすことが必要です。具体的には、以下の条件のいずれかに当てはまる方です。

  • 個人事業主とその共同経営者
  • 小規模企業を経営している会社等の役員

個人事業主の加入条件

個人事業主とは、会社や組織に所属せず自ら事業を行っている個人のことです。開業届を出すことで誰でも事業を行え、従業員を雇用する義務も負いません。

個人事業主が従業員を雇用する人数に制限はありませんが、小規模企業共済の加入条件には従業員数に制限があります。

以下は事業種別ごとの雇用人数の制限になります。

事業の種別

従業員数の制限

建設業  製造業  運輸業  不動産業  農業 サービス業(宿泊業、娯楽業に限る)等

常時使用する従業員の数が20人以下

商業(卸売業・小売業)サービス業(宿泊業、娯楽業を除く)

常時使用する従業員の数が5人以下

個人事業の共同経営者の加入条件

共同経営者とは、個人事業主と一緒に事業を経営する個人のことを言います。一般的には親族や配偶者であることが多いです。

共同経営者として小規模企業共済に加入するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 申込者が経営に携わっている事業を営む個人が、小規模事業者であること。
  • 事業の重要な意思決定をしていること、または、事業の経営に必要な資金を負担していること。
  • 業務の執行に対する報酬を受けていること。

小規模企業を経営している会社等の役員の加入条件とは

小規模企業の役員が加入する場合の条件は以下のとおりです。

  • 株式会社、有限会社、特例有限会社の取締役または監査役の方。
  • 合名会社、合資会社の業務執行社員の方(業務執行社員を定款で定めた場合、その定められた社員)。
  • 「業務執行社員」として登記されている合同会社の社員。
  • 企業組合、協業組合の理事または監事の方。
  • 農業の経営(営利目的)を主として行う農事組合法人の理事または監事の方(非営利を主とするものを除く)。
  • 士業法人の業務執行社員の方。

また、小規模企業の場合も個人事業主と同じく、従業員数が所定の基準以下であることも共済加入条件の1つです。会社役員の場合は個人事業主と同じ条件になりますが、組合等・士業法人の役員の場合は下記の通りとなります。

法人の種別

従業員数の制限

企業組合

事業に従事する組合員の数が20人以下

協業組合

常時使用する従業員の数が20人以下

農業の経営を主として
行っている農事組合法人

常時使用する従業員の数が20人以下

弁護士法人、税理士法人等の士業法人

常時使用する従業員の数が5人以下

参考:加入資格 | 小規模企業共済

法人成り後の小規模企業共済の取り扱い

法人成りをした場合、小規模企業共済への加入は「継続できる場合」と「解約が必要な場合」に分かれます。資本金や役員の身分が影響するため、法人成りをする前に要件を満たしているか確認が必要です。ここでは、継続のための条件と具体的な対応方法について解説します。

継続できるケース

法人成り後に小規模企業共済をそのまま継続するためには、いくつかの条件があります。加入を継続するには、法人成り後も以下の条件を満たしている必要があります。

  • 法人成りをした会社に役員として登記されていること
  • 法人成りをした会社に経営者として関与している
  • 従業員数が所定の制限以下であること

これらの条件をクリアすることで、継続して加入し続けることができます。なお、法人化後は速やかに「共済契約者の資格変更届」を提出する必要があります。

解約が必要なケース

法人成りをした後、小規模企業共済の加入条件を満たせなくなった場合は解約が必要となるケースがあります。

たとえば法人の役員にならず、従業員として雇われた場合や経営から退いた場合、法人の従業員数が上限を超えた場合等です。

その場合、資格喪失となり、解約手続きを行うことで解約手当金が支払われます。

共済金と準共済金と解約手当金の違い

小規模企業共済には「共済金」「準共済金」「解約手当金」の3種類の給付があります。

共済金は、廃業または経営から退いた場合、65歳以上で掛金を15年以上納めた法人役員が退任した場合など、事業から退いたときに受け取れる退職金のようなものです。

準共済金は、病気や怪我、法人の解散により役員を辞めた場合など、やむを得ない事情で事業継続が困難になった場合に給付されるもので、これまでの掛金に応じて給付されます。

解約手当金は、加入資格があるにも関わらず、自己都合で共済を解約した場合に支給されるものです。

関連記事:法人成りの手続きに必要な5ステップについて詳しく解説

法人成り後も小規模企業共済を継続するメリット

法人成り後も小規模企業共済を継続することで、節税面では多くのメリットを得ることができます。経営者として立場が変わっても積み立てた資金を有効活用し、経済的安定を保つことができます。ここでは、小規模企業共済制度のメリットと継続する際の具体的な利点を解説します。

掛金を全額所得控除できる

小規模企業共済の大きなメリットとして、掛金が全額所得控除の対象となることが挙げられます。この制度を活用することで、税金の負担を軽減しつつ、手元に残る資金を増やすことができます。

また、掛金は1,000円から70,000円の範囲内で設定でき、事業の状況や収入に応じて柔軟に調整可能です。この柔軟性は経営者にとって大きなメリットと言えます。

さらに、掛金が所得控除として取り扱えることにより、より効率的な資金運用を実現しやすくなります。賢く税制を利用することで、事業運営や将来的な生活設計に大きく役立てることができるのです。

貸付制度や付加共済金などの特典

小規模企業共済は、掛金の積み立てだけでなく、多様な特典を提供しています。特に注目したいのは貸付制度で、経営が困難な時期には低金利での資金調達が可能となり、急な資金需要にも対応できます。

さらに、条件を満たすことで受け取れる付加共済金も大きな魅力です。

受け取りパターンを選ぶ自由度

小規模企業共済は受け取りパターンを自由に選べます。共済金の受け取り方法には、一括受け取り、分割受け取り、さらにその併用という3つの選択肢が用意されています

たとえば、一括受け取りを選択すれば、まとまった資金を手に入れることができ、自己投資や事業拡大といった大きな計画に充てることが可能です。一方で、年金式の分割受け取りを選ぶことで、老後に安定した収入源を確保しやすくなります。

また、これらの選択肢を組み合わせた方法もあり、ニーズやライフステージに合わせて最適な受け取り方法を選べる点は見逃せないメリットと言えます。

関連記事:小規模企業共済に個人事業主が加入するメリットとデメリットを解説

継続する際の注意点とデメリット

小規模企業共済のイメージ

小規模企業共済を法人成り後も継続する場合には、いくつかの注意点やデメリットがあります。特に税務や資金管理に関する影響を理解し、適切に対応することが重要です。ここでは、継続に伴う具体的な注意点とデメリットについて解説していきます。

事業上の損金や必要経費に算入できない

法人になった場合でも、掛金は個人の所得控除の対象にはなりますが、法人の経費には算入できませんこの点をしっかりと理解しておくことが重要です。

掛金は税務上の経費として扱えないため、支払いによる利益の圧縮ができず、結果として税務上のメリットは限られてしまいます。

そのため、事業資金をどのように運用・配分していくかについて、十分な計画が求められます。経費や投資のバランスを適切に考慮し、全体の資金計画を安定させることが事業経営において不可欠です。また、資金繰りが難しい状況においては、掛金の支払いが事業活動にとって負担となる場合もあるため、慎重な決定が必要となります。

掛け捨てや元本割れのリスク

小規模企業共済は、条件によっては掛け捨てとなる可能性があるため注意が必要です。また、加入期間が短かったり、自己都合で解約したりすると、元本割れすることがあります。具体的には次の通りです。

加入期間12ヵ月未満では掛け捨てになる

掛金を12ヵ月未満しか納めていない状態で自己都合によって解約すると、解約手当金は支給されず掛け捨てになります。小規模企業共済は月々1,000円から設定できるので、無理のない範囲で継続すれば掛け捨てを避けることができるでしょう。

20年未満は元本割れの可能性

事業を継続した状態で、加入期間20年未満で自己都合によって解約すると解約手当金は支給されますが元本割れします。

ただし、廃業や解散をした場合、または65歳以上での解約なら付加共済金が加算されて掛金総額が戻ってくる仕組みになっています。

こうした掛け捨てや元本割れのリスクを防ぐためには、できるだけ120ヵ月以上継続することです。事業を継続しつつこれらの期間をクリアするためには、どの程度の掛金が最適なのかをじっくりと考慮することが大切です。

受け取り時に課税される所得税

小規模企業共済から給付された共済金は、受け取る際に所得税が課税されます。この際、一括受取の場合と分割受取の場合では、所得税の処理と税率が違うので注意が必要です。

一括受取の場合は退職所得扱い

一括で受け取る場合は「退職所得」として扱われます。退職所得は他の所得と分けて計算する分離課税なので、税負担が軽いというメリットがあります。

また、退職所得には税制優遇があり、退職金から退職所得控除を差し引いた金額の50%相当額にのみ税金がかかります。つまり、課税所得は2分の1に半減する仕組みです。

◆退職所得課税の計算方法

(受取額-退職所得控除)×50%×所得税率

◆退職所得控除の計算方法

加入年数20年以下:40万円×加入年数
加入年数20年以上:800万円+70万円×(加入年数-20年)

※退職所得の税率に関しては下記をご参照ください。

参考:別紙 退職所得の源泉徴収税額の速算表|国税庁

分割受取の場合は公的年金等扱い

分割で受け取る場合は「公的年金等の雑所得」として扱われ、公的年金等控除を適用できます。

◆公的年金等控除の計算

65歳未満:受取り金額130万円までは60万円の控除
65歳以上:受取り金額330万円までは110万円の控除

所得税率は、他の所得と合算されるため、一括受取に比べて税負担が上がる可能性があります。しかし、老後の生活資金を考えると分割受取も有力な選択肢となります。

※所得税の税率については下記をご参照ください。

参考:No.2260 所得税の税率|国税庁

関連記事:法人成りで個人事業主の資産を引き継ぐ方法は?資産の種類、注意点も解説!

小規模企業共済を継続するための手続き

小規模企業共済のイメージ

小規模企業共済を法人成り後に継続するためには、いくつかの手続きを正確に行う必要があります。この際、加入資格を満たしていることが基本条件となり、それに加えて必要書類を事前に揃えることが重要です。ここでは、小規模企業共済を継続する際の手続き方法について解説します。

手続きに必要な条件

小規模企業共済を継続するには、いくつかの条件を満たす必要があります。これらの条件を確認し、適切な手続きを行うことで、法人化後も継続が可能となります。

法人成りの時期

法人成り(法人設立)が、個人事業主としての期間と連続していること。これにより、個人事業主としての共済契約を法人名義に移行できます。

事業継続の実績

法人設立後も事業を継続していることを証明する必要があります(法人登記簿謄本や決算書など)。

加入者本人が
代表者であること

法人の代表者が元の個人事業主であること。

掛金の支払いに
延滞がないこと

未納がある場合、継続できないことがあります。

必要書類の提出

法人登記簿や共済契約証書など、指定の書類を提出する必要があります。

手続きの流れ

まず、下記の書類を用意します。

  • 個人事業の廃業届(写し)
  • 履歴事項全部証明書(商業登記簿謄本)
  • 納付月数通算申出書兼契約申込書(同一人通算用)

これらの書類に必要事項を記入し、中小機構の業務を取り扱う機関(委託団体または金融機関)に提出し申込みをします。

審査期間は約40日程度かかります。契約締結となると、約2ヵ月ほどで「小規模企業共済手帳」と「加入者のしおり及び約款」が郵送されます。

なお、契約締結日は遡って申込みをした日になります。

次に、以下の流れにしたがって手続きを進めます。

1.書類の提出

必要事項を記入し、現在契約をしている中小機構の業務を取り扱う機関(委託団体または金融機関の代理店)に提出します。

2.審査

委託期間を通じて中小企業基盤整備機構に提出され書類審査が行われます。通常審査には数週間程度かかります。

3.契約内容の確認・成立

審査が通過すると、「納付月数通算(同一人)手続き完了のお知らせ」と「契約内容確認書」が届き、継続手続きが完了します。

なお、同一人通算による継続手続きは、法人成り後1年以内に行う必要があります。

関連記事:個人事業主の法人成りに最適なタイミング3つについて解説

まとめ

個人事業主から法人成りを行い、小規模企業共済を継続することには、資産形成や税制上の優遇、貸付制度の利用といった多くのメリットがあります。しかしながら、解約時のリスクや課税について理解する、掛金はいくらにするかなど課題もあります。

継続する場合は、必要書類や役員登録などしっかりと事前に準備を行い、期限内に継続手続きをするなどを守らなければなりません。

法人成り後も小規模企業共済に加入し続けるかは、事業計画も含めて判断が必要になります。不明点や判断に迷う際は、専門知識を持つ税理士に相談するのも良いでしょう。税理士からの適切なアドバイスを受けることで、より確実に加入継続の判断や手続きを進めることができます。

小規模企業共済の継続について不安なことがあれば、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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