顧問税理士を変更する際に、新旧税理士が直接やり取りをして引き継ぐケースはほぼありません。よって、依頼者自身が引継ぎ資料を準備して新しい税理士に渡す必要があります。引継ぎでは多くの資料を扱うため、漏れを防ぐ対策が不可欠です。新税理士に必要な書類を確認してリスト化し、どの資料をどの形式で用意すべきか整理しましょう。この記事では、引継ぎに必要な資料の詳細や、それらの資料を準備する際のポイントを解説します。
目次
税理士変更では依頼者が引継ぎ資料を用意し新税理士に渡す
顧問税理士を変更する際は、基本的に依頼者自身が引継ぎ資料を準備して、新しい税理士に渡す必要があります。
新旧税理士が直接やり取りをして引き継ぐケースは、ほとんどありません。個人情報の漏洩防止や、税理士自身のノウハウの流出防止など、理由はさまざまです。
引継ぎ資料に不備があると新税理士は前年度の状況を把握できないため、申告業務などに遅れやミスが生じる可能性があります。スムーズな税理士変更のため、依頼者は事前にどの資料を用意すべきかを把握しましょう。
税理士変更で必要な引継ぎ資料
ここでは、税理士変更の際に必要になる引継ぎ資料について解説します。
まずは新しい税理士に用意すべき資料を確認
まずは新しい税理士に「引継ぎの際はどの資料を用意すればいいですか?」と聞きましょう。事業内容や規模によって必要な資料が異なるためです。事前に聞いておくと、無駄な準備をせずに済みます。
税理士変更の引継ぎで最低限必要な資料
ここでは、税理士変更の引継ぎで最低限必要になると思われる資料を紹介します。新しい税理士に用意すべき資料を確認することは大前提ですが、以下の資料は多くの税理士が必要とするものです。これらを事前に準備しておくと、スムーズな引継ぎに繋がるでしょう。
資料 | 解説 |
税務申告書や決算書 |
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総勘定元帳 |
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固定資産台帳 |
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会計ソフトのデータ |
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給与関係の資料 |
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税務署や自治体への届出の控え |
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なお、総勘定元帳や固定資産台帳は、一般的には会計ソフトのデータに含まれます。紙やExcelなどで別途管理していないか、事前に確認しましょう。また、電子申告を利用している場合は、利用者識別番号やパスワードも準備しましょう。
それぞれの資料についての詳細な解説は、下記の記事をご確認ください。
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税理士変更の引継ぎ時にあるとスムーズな資料
税理士の方針によっては、下記の資料も求められる場合があります。
資料 | 解説 |
会計帳簿 |
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税務調査に関する資料 |
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銀行口座の取引明細 | 事業の資金の流れを確認し、記帳の整合性をチェックするために必要 |
契約書類 |
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領収書・請求書 | 日々の取引の根拠となる |
会社の基本情報 |
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税理士によっては、この記事で例示した資料以外の書類も求められる場合があります。詳しくは下記の記事をご確認ください。
税理士変更に必要な引継ぎ資料を集める際のポイント
ここでは、引継ぎ資料を集める際のポイントを解説します。
- 引継ぎに必要な資料のチェックリストを作る
- 旧税理士に資料提供を依頼する
- 旧税理士が資料を渡してくれない場合は毅然として対応する
以下、1点ずつ見ていきましょう。
引継ぎに必要な資料のチェックリストを作る
引継ぎでは多くの資料を扱うため、漏れを防ぐ対策が必要です。旧税理士に解約の意向を伝える前に、新税理士と相談して引継ぎに必要な資料をリスト化しましょう。
リストでは自社で準備できる資料と旧税理士に頼むべき資料を明確に分けます。場合によっては、自治体や法務局、担当の司法書士などに資料提供を依頼する場合もあります。
この際、「どの資料を、どの形式で用意すれば良いか」まで新税理士と相談しておきましょう。税理士によっては、データの形式にこだわりがあるためです。
これらを踏まえて作ったリストの例は以下の通りです。
資料名 | 形式 | |
自社で準備 | 法人税申告書 | 紙媒体またはPDF形式 |
貸借対照表・損益計算書 | 紙媒体またはPDF形式 | |
税務署提出書類の控え | 紙媒体またはPDF形式 | |
旧税理士に依頼 | 会計データ | CSV、Excelなどの電子データ |
過去の税務調査の結果 | 紙媒体またはPDF形式 | |
司法書士に依頼 | 定款 | 紙媒体またはPDF形式 |
登記事項証明書 | 紙媒体またはオンライン |
このようなリストを準備すると各資料をどのように整えるべきかが明確になり、引継ぎ作業が効率的に進められます。
旧税理士に資料提供を依頼する
旧税理士が持っており自社で準備できない資料は、契約終了前に受け取る必要があります。契約終了まで余裕がある日を期限として明示し、受け取りたい資料をリスト形式で伝えましょう。
契約終了後や契約終了間際では、旧税理士が対応できない場合もあるためご注意ください。また、口頭だけでなくメールや文書でも伝えると、記録が残るためトラブル防止に役立ちます。
ただし、伝え方には注意が必要です。「税理士を変更する」と正直に伝えた方が資料をスムーズに受け取れる場合もありますが、税理士によっては非協力的になる場合も。
旧税理士との関係性や性格にもよりますが、迷う場合は「業務整理のために資料を確認したい」などと伝えると無難かもしれません。
円満に伝える方法について、詳しくは下記の記事をご確認ください。
関連記事:【税理士監修】[例文付き]税理士変更の断り方!コツと円満に断る方法とは?
関連記事:税理士変更のトラブルは断り方が理由?契約解除の文例や引継ぎ方法を解説
旧税理士が資料を渡してくれない場合は毅然として対応する
万が一、旧税理士が資料を渡してくれない場合には、毅然とした対応が必要です。例えば、下記のようなトラブルが発生する場合があります。
ケース | 対処法 |
高額な手数料を請求された | 旧税理士との契約書を見直し、適正な金額か確認する。 |
自社の資料を破棄された | 保存義務がある書類については、法的な根拠を提示して請求する。例えば税理士法第41条では、帳簿を5年間保存するよう定めている。 |
依頼者が対応しても税理士が応じないときは、税理士会など第三者の介入が必要になる場合があります。トラブルの対処法について、詳しくは下記の記事をご確認ください。
税理士変更と引継ぎについてご不明な点はご相談ください
この記事では、税理士変更で必要となる引継ぎ資料について解説しました。
顧問税理士を変更する際は、依頼者自身が引継ぎ資料を準備して新しい税理士に渡します。引継ぎでは多くの資料を扱うため、漏れを防ぐ対策が必要です。新税理士に必要な書類を確認してリスト化し、どの資料をどの形式で用意すべきか整理しましょう。
顧問税理士の変更や資料準備にお悩みの方は、ぜひ小谷野税理士法人にご相談ください。引継ぎの準備や資料の整理など、税理士変更の手続き全般をサポートいたします。