00当期純利益は、企業の経営状態を評価するための重要な指標です。企業が一事業年度で得た最終的な利益額を示します。具体的には、売上総利益から営業利益、さらに特別項目など全ての費用を差し引いた税引前純利益から税金を差し引いた後に残る金額です。本記事では当期純利益の基本的な概念とその計算方法、目安、評価方法などを詳しく解説します。
目次
当期純利益の基本
まずは当期純利益がどのような重要性を持っているのか、概要や計算方法について見ていきましょう。当期純利益を計算するために必要な利率や、会計で頻出する他の似た言葉との違いもチェックしてください。
当期純利益とは
当期純利益とは、企業が一定期間(通常は1年間)に生み出した税引き後の利益を指します。売上高からすべての費用(製造原価、販売費、一般管理費など)を差し引いた後の純粋な利益です。
利益の計算は、売上総利益から始まり、営業利益、経常利益を経由し、最終的に税金や特別損益項目を差し引いて算出されます。つまり当期純利益は、企業の実際の収益力を測る上で重要な指標なのです。
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当期純利益率とは
当期純利益率とは、企業が上げた売上高に対する当期純利益の割合を指します。当期純利益率は、企業がどれだけ効率的に利益を上げているかの判断材料となり、投資家にとっては投資対象の判断指標となります。
業種や企業の規模によって目安となる数値は異なるため、同業他社や業種平均と比較されることも多いでしょう。
当期純利益と純利益の違い
当期純利益と純利益はともに企業の収益性を表す指標ですが、微妙な違いがある点に注意しましょう。
一般的に「純利益」とは、企業が一定期間に獲得した全収益から全費用を差し引いた後の金額のことですべての特別項目が含まれます。
一方、「当期純利益」は特定の会計期間(通常は1年)に限定しており、期間内の売上高や費用に基づく純粋な利益です。
損益計算書における当期純利益の位置
当期純利益は損益計算書の最終行に位置し、企業の収益性を包括的に示します。損益計算書は、売上高、売上原価、営業利益、経常利益、そして最終的な当期純利益までの一連の計算過程を示す財務諸表です。
当期純利益がプラスであれば企業が黒字であることを示し、逆にマイナスであれば赤字であることを示します。当期純利益をチェックすれば、企業の経営状態や将来の成長性が判断できるでしょう。
当期純利益率の目安
当期純利益率の計算式は簡単ですが、具体的にはどの程度の数値を出せたら望ましいのでしょうか。企業にもよりますが、当期純利益率が評価される目安となるボーダーラインや、評価方法について見ていきましょう。
当期純利益率の評価方法
当期純利益率の評価方法は、企業の収益性を多角的に理解するために用いられます。前述の通り、「当期純利益を売上高で割った値(当期純利益÷売上高×100)」で求められるのが当期純利益率です。
割合が高ければ高いほど、企業が効率的に利益を上げていると評価されるでしょう。評価の際には、同業他社や業種ごとの平均で比較されることがベターです。
また年度ごとに当期純利益率の指標を求めることで、企業の業績トレンドや経営戦略の効果を評価することもできます。
当期純利益率の目安
当期純利益率の目安は業種や市場環境によって異なりますが、一般的には5%から10%が健全な範囲とされています。
製造業など設備投資が多い業種では、比較的低めの数値でも安定的な経営と言えるでしょう。一方、IT企業やサービス業などでは高い利益率が求められることが一般的です。
しかし、単に数値が高ければ良いわけではなく、異なる視点や他の財務指標とも組み合わせて総合的に評価することが重要です。当期純利益率は企業の健全性を判断する材料の1つとして考えましょう。
当期純利益の求め方
当期純利益の額を計算する際には、さまざまな会計の知識が必要になります。計算のはじめに必要となる「税引前当期純利益」の計算方法や、収益率を示す「売上高当期純利益率」の計算方法などを見ていきましょう。
税引前当期純利益の計算
税引前当期純利益は、企業の収益力を評価するために用いられる計算です。
まず、売上高から売上原価を差し引いて売上総利益を求めます。次に営業費用や販売管理費などの運営コストを差し引いて営業利益を算出します。その後、受取利息や支払利息、その他の営業外損益を加算・減算して経常利益を求めます。
最後に、特別利益や特別損失を調整することで税引前純利益が算出されます。税引前当期純利益は、課税前の企業の実際の収益力を示すため、多角的な視点から経営判断を行うために必要な材料となります。
売上高当期純利益率の計算方法
売上高当期純利益率は、企業が効率的に収益を上げられているかを確認するために必要な指標です。
売上高当期純利益率の計算式は以下のとおりです。
【計算式】
当期純利益÷売上高×100 |
算出された比率が高いほど、企業が売上高に対して多くの利益を上げていることが分かります。売上高当期純利益率は、企業の収益性や効率性を簡単に割り出せるため、経営者や投資家にとって有用な財務指標として広く利用されています。
当期純利益を用いた財務指標について
当期純利益を計算することによって、対象企業における様々な財務指標を知ることが可能です。実際に当期純利益を用いてどのような財務指標が明らかになるのかを見ていきましょう。
自己資本利益率(ROE)の活用
自己資本利益率(ROE)は、企業が自己資本をどれだけ効果的に利用して利益を上げているかを示す指標です。
【計算式】
当期純利益÷自己資本×100 |
ROEが高いほど、企業の収益性と効率性が高いことを意味します。ただし、借入金を多用して自己資本を圧縮することで数値を操作できるため、ROEの数値だけを鵜呑みにするのは危険です。経営者や投資家たちは、ROEを含めその他の指標も用いて資本の運用効率を評価しています。
関連記事:自己資本利益率(ROE)とは?概要や計算方法、目安について解説
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総資産利益率(ROA)の解説
総資産利益率(ROA)は、企業が保有する総資産を効率的に運用できているか、利益を上げられているかを示します。
【計算式】
当期純利益÷総資産×100 |
ROAが高い企業は、資産全体を有効活用して収益を上げていると評価されます。前年度以前の年次比較や資産規模の異なる企業との比較に用いれば、企業の資産運用効率の変化を確認できます。
1株当たり当期純利益(EPS)
1株当たり当期純利益(EPS)は、企業が発行する普通株式1株ごとにいくらの利益が生み出されているかを示します。
【計算式】
当期純利益÷発行済株式数 |
EPSは、投資家にとって株式の収益性を評価するために重要な指標として注目されています。また、EPSは企業の業績評価や株式の価値判断に用いられることから、市場全体や同業他社との比較にも役立ちます。高いEPSは企業の成長性や株主への利益還元につながります。
株価収益率(PER)
株価収益率(PER)は、企業の株価が1株当たり当期純利益(EPS)に対してどれだけ割高、または割安であるかを示します。
【計算式】
株価÷EPS |
PERは株式の価値評価に広く用いられ、一般的には低いほど割安、高いほど割高と判断されます。ただし業種や市場環境によって適正なPERは異なるため、同業他社や過去の数値と比較しましょう。投資家にとっては、PERを活用することで投資の対象となり得るかの判断材料になります。
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当期純利益の活用には専門知識が必要
当期純利益は、企業の収益性を示す重要な指標です。計算方法や評価方法を理解することで、企業の財務状況をより正確に把握できるでしょう。当期純利益をもとに計算できる、当期純利益率や株価収益率(PER)、自己資本利益率(ROE)、総資産利益率(ROA)、1株当たり当期純利益(EPS)は、企業の収益性や効率性を多角的に評価するためにも役立ちます。
上記の財務指標を総合的に活用すれば、経営者や投資家にとって企業の健全性と将来性を見極める判断材料になります。しかしながら、当期純利益の計算や評価方法は複雑なため、できれば会計や財務に詳しい専門家に相談することが望ましいでしょう。