税務調査の中には「現金実査」があり、事業者の資産残高と帳簿残高がチェックされるのが特徴です。現金実査は事業者の信頼性に影響を与えるものなので、安直に考えないようにしましょう。現金実査に備えるには、日頃から現金残高と帳簿残高を整合させるのがポイントです。今回は、現金実査の特徴やチェックされる内容、対策方法を解説します。最後まで読めば、税務調査の一環である現金実査の疑問点を解消できるでしょう。
目次
税務調査のひとつ「現金実査」とは
現金実査とは税務調査のひとつで、資産の実在性の確認を目的に実施される監査手続きです。
現金実査では、以下の通り金庫内の資産の現物が直接数えられたり、帳簿との整合性などがチェックされたりします。
- 現金
- 手形
- 小切手
- 有価証券
現金実査は予告なく実施されるケースがあり、常に資産状況と帳簿の残高を一致させておく必要があります。現金実査において、調査官は現金実査調書に基づき以下の項目などをチェックします。
- 現金の数量
- 現金等価物の金額
現金実査の対象となるのはすべての業種で、一般的には期末日直後に実施される傾向にあります。会社所有外の現金がある場合、質問などによって適当な理由であるのかがチェックされることが多いです。
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現金実査のチェックポイント4点
現金実査でチェックされるポイントは以下の4つです。
- 現金の管理状況
- 事業概況書との整合性
- 個人通帳による管理の有無
- 売上の正確な記帳
それぞれ詳しく見ていきましょう。
現金の管理状況
現金実査では、現金の管理状況についてチェックされます。実際に現金を数えたうえで、調査官は帳簿の残高と合っているのかをチェックするのが特徴です。
現代ではキャッシュレス化が進んでいるものの、現金決済を採用し続けている飲食店や理容室などもあるのが現状です。建設業や建設業など、BtoBの会社の場合、銀行振込や現金払いをとるケースが比較的多く見受けられます。
現金の出し入れが頻繁にある会社や複数の店舗を構える会社の場合は、特に現金残高と帳簿残高に常に気を配りたいところです。数値が合わない場合、調査官の心象に悪い影響を与え、不正を働いていると疑われる可能性が高いです。
事業概況書との整合性
現金実査では、確定申告で提出する「法人事業概況書」との整合性をチェックされます。法人事業概況書に記載されてある内容は、具体的に以下の通りです。
- 期末従業員等の状況
- 販売形態
- 事業内容
- 支店・子会社の状況
- 海外取引状況
法人事業概況書に記載されている「経理の状況」の「管理者」欄と、経理担当者が同じであるのが現金実査におけるポイントです。
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個人通帳による管理の有無
現金実査では、経営者本人の通帳に、事業から得た売上が入金されていないかがチェックされます。事業者によっては、金庫内に経営者の通帳を保管しているケースもあり、注意が必要です。
経営者本人の通帳に売上の一部が入金されている場合、帳簿外に資産を保有していると疑いの目を向けられやすくなるでしょう。
自分で事業をしている場合、プライベート用の口座と事業用の口座を一緒にしたくなるかもしれません。一方で、口座を分けると以下のメリットを得られます。
- 資金繰りを明確に把握できる
- 65万円の青色申告特別控除での作業を簡素化できる
現金実査によるトラブルを防ぐうえでも、口座は明確に分けておくと良いでしょう。
売上の正確な記帳
現金実査では、以下の通り売上を正確に記帳しているのかがチェックされます。
- 現金売上の管理方法
- 現金売上の計上タイミング
- 事業所閉店後の現金管理方法
- 口座への入金担当者
- 帳簿残高と現金残高
売上である現金を受け取ってから保管・入金までの流れを明確化し、統一しましょう。記帳を面倒に思う方もいるかもしれませんが、仕組み化させ、習慣にするのが望ましいです。
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現金実査の対策方法
現金実査を対策する方法として、以下の6つがあげられます。
- 出金時に2人でチェックする
- 帳簿と残高を毎日照らし合わせる
- 保管する現金の上限を決める
- 担当者を分ける
- 現金での決済を辞める
- 本社以外の拠点のお金の流れも把握する
ここから具体的に解説します。
出金時に2人でチェックする
現金実査の対策のひとつは、出金時のダブルチェックです。2人でチェックする場合、どちらか一方が不正をしようとしても、未然に防ぐ効果が期待できるためです。
ダブルチェックする体制を作ると、現金実査の対策となるのみでなく、以下のメリットを得られます。
- 横領を防ぎやすい
- 従業員への不信感がなくなりやすい
出金時のダブルチェックと同時に業務終了前の帳簿残高と現金残高のダブルチェックも仕組み化すると、より効果的です。ダブルチェックの体制を構築する段階において、現金払いの承認申請書を導入するのもひとつの方法です。
帳簿と残高を毎日照らし合わせる
現金実査の対策の一つは、帳簿残高と現金残高を毎日チェックすることです。事業者の業種や規模などによって異なるものの、現金の入出金が毎日発生する場合は日々帳簿と残高の確認を行いましょう。
帳簿の記帳担当者に一任するのではなく、第三者によるチェックもするとより効果的です。帳簿残高と現金残高が合わなくなったタイミングで気付きやすくなりますし、原因も特定しやすくなるからです。
現金の入出金が限られる事業者の場合、発生したタイミングでその都度チェックするのが望ましいです。事業者が置かれている状況に合わせ、適切なタイミングを選択しましょう。
保管する現金の上限を決める
現金実査の対策として、保管する現金の上限の設定があげられます。急な来客のお茶菓子や事務用品の購入などを目的に、事業者の中には現金が必要なケースもあるでしょう。
急な出費に対応できたりスタッフの交通費の精算にあてられたりする一方、多すぎる現金を用意するのはリスクにもなりえます。以下の通り、現金は小口現金出納帳で管理し、少額に設定するのがポイントです。
- 受入金額
- 日付
- 摘要
- 支払金額
- 支払内訳
- 残高
現金の残高と流れが把握できればよいことから、小口現金出納帳はExcelなどで管理するケースも見られます。今までの支払実績を参考に、最低限必要な現金のみ金庫に保管しておくとよいでしょう。
担当者を分ける
現金実査の対策方法のひとつは、現金の管理担当者と記帳担当者を分けることです。ミスや不正などの発生を防ぎ、迅速かつ正確な現金管理と記帳を実現しやすくなるためです。
事業者において、現金と帳簿の管理は特に重要な業務のひとつで、慎重になりすぎるくらいでよいともいえます。
入出金業務は重要な反面、時間や労力などがかかる可能性があります。入出金管理アプリなどの導入を検討するのもひとつの方法です。
現金での決済を辞める
現金実査の対策方法のひとつは、現金決済からクレジットカードや銀行振込などへの変更です。
「インターネットバンキングサービス」の普及によって、現代では24時間365日振込ができる環境下にあります。現金決済のほか小切手や手形なども廃止すると、金庫に保管するリスクがなくなります。
一方で、現金によって事務用品などの経費を精算してきた場合、従業員の理解を得る必要があるでしょう。現金決済を辞めて得られるメリットを説明し、決済方法の変更に対して理解してもらうのがポイントです。
本社以外の拠点のお金の流れも把握する
現金実査の対策として、拠点のお金の流れの正しい把握があげられます。現金管理の内部統制をチェックする目的で、期中に本社以外で現金実査が実施されるケースもあるためです。
本社以外で現金実査をする場合、監査人からリスク管理や業務フローなどがチェックされます。複数の拠点を有している場合も同様に、日頃から現金と帳簿の管理を徹底しておくと安心です。
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現金実査の相談は税理士へ
ここまで、税務調査のひとつである現金実査の特徴やチェックされるポイント、対策方法を解説してきました。
現金実査とは税務署の調査官によって実施されるもので、すべての業種が対象です。日頃から現金と帳簿の管理を徹底するのが効果的な対策のひとつで、特別に何かを始める必要はないといえます。
一方で、現金と帳簿の管理まで手が回らないと困っている事業者もあるでしょう。計上漏れなどがある場合、状況によっては重加算税や青色申告の取り消しなど、ペナルティを課されるリスクがあります。
日々の記帳のチェックや現金実査の対策など、顧問税理士がいると心強いものです。