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固定資産の有姿除却で損金算入は可能?仕訳方法を徹底解説

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固定資産の有姿除却で損金算入は可能?仕訳方法を徹底解説

有姿除却は、まだ使用可能な固定資産であっても将来的に使用する見込みがない場合に、帳簿上で除却損として処理できる制度です。有姿除却を活用することで企業にとって節税、財務諸表の適正化、経営効率の改善など、多くのメリットがあります。しかし、その一方で固定資産の除却・処分は、税務上の取り扱いが複雑です。そこで本記事では、有姿除却の概要や具体的な会計処理方法について詳しく解説します。

損金算入ができる「有姿除却」とはどんな制度?

有姿除却とは、使用しなくなった固定資産を廃棄せずに、一定の要件を満たす場合に帳簿上で除却損として処理する制度です

有姿除却の要件は、その固定資産が今後事業に使用されないことが絶対条件であり、一時的に使用を停止した場合は該当しません。例えば、特定の商品のために専用として使用されていたが、製造中止になり使用される可能性がほとんどないものなどが該当します。

有姿除却に該当するケースは耐用年数内でも使わなくなった場合や減損処理が認められない場合が挙げられます。なお有姿除却を行う際は、使用される可能性がないことが証明できる書類を用意すると安心です。

関連記事:固定資産の減損処理はどのように行う?減損処理の概要も解説

有姿除却ができた背景と制度の変遷

有姿除却制度は日本の税法において、固定資産の除却に関する柔軟な対応を可能にするために設けられました。

その背景には、日本の経済・社会情勢は変化を遂げて、企業の事業内容や経営戦略も多様化したことが挙げられます。このような変化の中で企業は、使用しなくなった固定資産を必ずしも物理的に廃棄するとは限らなくなったのです。

  • 新しい機械設備を導入したため、古い機械設備が不要になった
  • 事業の多角化により、特定の事業部門で使用していた固定資産が使われなくなった
  • 海外移転や事業再編により、国内の固定資産が不要になった

そして従来の除却制度では固定資産を実際に廃棄した場合にのみ、除却損を計上できました。しかし上記のようなケースでは、すでに使用価値が失われているにもかかわらず、除却損を計上できないのです。

有姿除却で損金算入するメリット・デメリット

一括償却資産の損金算入に関する明細書

有姿除却を利用して損金算入することには、以下のメリット・デメリットがあります。

メリット

デメリット

  • 節税効果がある(損金算入することで、課税所得を減らし、税金を軽減)
  • 事務処理が軽減できる(固定資産を廃棄・処分する手間や費用を省ける)
  • 適用には一定の要件を満たす必要がある
  • 税務署の判断によっては、有姿除却が認められないこともある

有姿除却は節税効果や事務処理の軽減など、企業にとって多くのメリットをもたらす制度です。しかし、適用には一定の要件があり、税務署の判断が必要となる場合もあります。

関連記事:損金とは?損金算入・不算入の項目や法人税の計算に必要な損金処理について

有姿除却に必要な書類

有姿除却を行うには、以下の書類が必要になります。

有姿除却の事実を証明する書類

  • 社内稟議書、取締役会議事録等
  • 固定資産台帳
  • 図面、写真等
  • 専門家(税理士等)の意見書

有姿除却後の固定資産の管理に関する書類

  • 保管場所に関する書類固定資産の保管場所を示す書類
  • 管理方法に関する書類

その他必要とされる書類

  • 固定資産の取得に関する書類
  • 減価償却に関する書類

上記は一般的な例であり、個々のケースによって必要な書類が異なる場合があります。また税務署から追加の書類提出を求められる場合もあるので注意しましょう。証拠書類は、税務調査に備えて、しっかりと保管しておきましょう。

有姿除却の仕訳方法

有姿除却では、廃棄処分しなくとも固定資産除却損として計上できると説明しました。以下では、有姿除却を計上する際の実際の仕訳方法について具体例を交えて解説します。

例えば取得価額が200万円、累計減価償却額が150万円の固定資産を除却する場合を考えます。この状況では、残存簿価の計算式は以下の通りとなります。

【残存簿価の計算式】

取得価額-累計減価償却額=残存簿価

【計算例】

200万円-150万円=50万円

有姿除却の仕訳を行う際には、以下のように具体的な項目で仕訳を記録します。

【仕訳例】

借方

借方金額

貸方

貸方金額

適用

固定資産除却損

50万円

建物

(もしくは対象の固定資産名)

50万円

有姿除却

これにより除却される固定資産が帳簿上から適切に削除され、同時に損失が計上されます。

減損処理or有姿除却?どちらを選ぶべきか決めるポイント

固定資産の価値が下がった場合、減損会計と有姿除却という2つの選択肢が考えられます。もしどちらの方法か選ぶのに迷った場合、状況によって判断しましょう

固定資産の帳簿価額が回収可能価額を下回っていても、将来的に収益回復が見込まれる場合は、減損処理を行います。減損処理は当期の費用として処理され、税金が軽減される効果があります。

その一方で将来的に使用する見込みがない場合は、有姿除却を検討しましょう。固定資産を実際に廃棄・処分しなくても、帳簿上で除却損として処理することができます。

有姿除却の手続き方法

固定資産を実際に廃棄・処分せずに、帳簿上で除却損として処理する制度です。この制度を利用するためには、以下の手続きを行う必要があります。

①要件を確認

現状の固定資産を今後事業に使う可能性がないことなどを確認

②証拠書類の準備

社内稟議書や取締役会議事録などの要件を満たすことを証明する書類を準備

③会計処理

固定資産の帳簿価額を固定資産除却損として計上

④税務申告

確定申告書に固定資産除却損に関する必要事項を記載して提出

有姿除却は税法上の特例のため、要件を満たしているかどうかは税務署の判断が必要となる場合もあります。適用を検討する際は、事前に税理士などの専門家に相談するのがおすすめです。

有姿除却に関するよくある質問

Q&A

最後に有姿除却に関するよくある質問についてまとめたので、税務処理をする際の参考にしてください。

そもそも固定資産って何?

固定資産とは企業が長期間にわたり保有する資産や、1年を超えて現金化・費用化される資産を意味します。固定資産に当てはまるものの一例を見てみましょう。

  • 土地
  • 建物
  • 車両
  • オフィスのデスク・椅子
  • 機械設備
  • ソフトウェア
  • パソコンやサーバ
  • 営業権利
  • 施設権利など

建物など形があるものだけでなく、IT資産や営業権利など形がないものも固定資産に含まれることを覚えておきましょう。

そして固定資産税は、毎年1月1日時点で所有する固定資産(土地、家屋、事業用償却資産)の価格に応じて課税される税金です。

不動産(土地・家屋)の固定資産税は、市町村の固定資産課税台帳に基づき課税されるため、原則申告不要です。一方、事業用償却資産は申告が必要です。毎年1月31日までに償却資産申告書を提出しましょう。

関連記事:減価償却のポイント|新車と中古車の違いと節税効果を解説

ソフトウェアは有姿除却できる?

ソフトウェアのような無形資産も一定の条件を満たせば有姿除却が可能です。ただし、ソフトウェアは有形固定資産とは異なり、物理的に廃棄・処分することが難しいため、より厳格な要件が定められています。

条件を満たす場合でも、ソフトウェアの有姿除却が認められるかどうかは、税務署の判断に委ねられます。そのため、事前に税理士などの専門家に相談し、適切な手続きを行うことをおすすめします。

参考:第1款 除却損失等の損金算入|国税庁

有姿除却をした後の固定資産はどうすればいい?

有姿除却を行った固定資産は帳簿上、除却損として処理されます。実際にはまだ形が残っている場合がありますが、事業のために使用することは決してできません。

たとえ一時的な利用であったとしても、税務署から指摘を受ける可能性があります。そのため有姿除却をした後の固定資産はスクラップと同様に扱い、適切に管理しましょう。

減損処理とはどう違うの?

減損処理と有姿除却は、どちらも固定資産に適用される会計処理です。しかし、その目的や要件が異なるので注意が必要です。

減損処理

  • 固定資産の収益性が低下した場合に帳簿価額を回収可能価額まで減額する処理
  • 将来の収益回復が見込まれる場合に適用される

有姿除却

  • 固定資産を今後事業に使う可能性がなければ、帳簿上で除却損として処理
  • 将来的に収益を生み出す見込みがない場合に適用される

どちらの処理をするべきかは、固定資産の状況や将来の見通しなどを考慮して総合的に判断しましょう。

まとめ

固定資産の適切な管理と会計処理は、企業の経営効率を高め、無駄なコストを削減するために欠かせません。有姿除却や除却損に関する正確な知識があれば節税効果を得られやすいです。

しかし、有姿除却や損金算入の税務処理は複雑な行程が多く、専門的な知識がないと正しく計上できない可能性があります。もし固定資産に関する会計処理や節税対策について不明点がある場合は、専門家である税理士に相談することをおすすめします。

小谷野税理士法人では、固定資産の有姿除却に関するあらゆるお悩みの相談やご依頼が可能です。まずは一度、お気軽にご相談してみてください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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