入金伝票とは？メリット・デメリットや書き方、仕訳方法を解説

入金伝票の概要について、あまり詳しく知らない方もいらっしゃるのではないでしょうか。入金伝票の書き方やメリットについて正しく把握しておけば、企業の会計処理を効率的かつ正確に進められます。本記事では、入金伝票の概要や記入する項目、そして正しい書き方、さらに仕訳方法について詳しく解説します。会計処理を効率化させたいと考えている事業者の方は、ぜひ参考にしてみてください。

最初に知っておきたい帳簿の基本

帳簿とは事業関連の取引やお金の流れを記録するための台帳です。法人はもちろん、個人事業主やフリーランスも、帳簿を作成した場合は一定期間保存する必要があります。帳簿に関する頻出用語をご紹介します。

関連記事：個人事業主の帳簿付けは義務？種類や付け方、効率化のコツを解説！

帳簿に必要？入金伝票とは

そもそも伝票とは取引の事実を記録した書類です。入金伝票以外にも出金伝票、振替伝票など、取引の種類に応じてさまざまな種類が存在します。これらの伝票を整理・集約することで、仕訳帳や総勘定元帳といった主要な会計帳簿が作成されます。

そして入金伝票は企業に現金が入金されたことを記録するための伝票です。この伝票は商品やサービスの提供、売掛金の回収などによって現金が入金された場合に記載されます。

入金伝票は、複数人で同時に作成できるのが大きな特徴です。そのため、記帳作業の分担が可能となり、経理担当者の業務負担を軽減できます。

入金伝票は法律上、作成・保存義務はありません。しかし、経理業務を効率化するために作成することが推奨されています。

関連記事：法人の決算を自分でするリスクは？判断基準や法人決算の手順などを解説

会計に使われる伝票の種類

ここからは、入金伝票以外に会計処理でよく用いられる伝票の種類は以下の4つです。

近年では会計ソフトの普及によって伝票の起票を省略する企業も増えてきました。しかし伝票は取引の記録を残せるため、内部統制の強化や監査対応などにも役立ちます。

入金伝票の書き方と起票時のポイント

以下では入金伝票の書き方について解説するので、ぜひ参考にしてください。

入金伝票の仕訳方法

ここからは、その入金伝票における仕訳方法について具体的な例を交えてご紹介します。

【ケース1】A社に50万円の商品を販売→代金を現金で受け取る

A社に50万円の商品を販売してその場で現金が入金されたら勘定科目欄に「売上」と記入します。その際、金額欄には販売金額である10万円を記入してください。

A社への売上であることが明確になるように、摘要欄には分かりやすく概要を記載しましょう。

この入金伝票に基づき仕訳を行うと、仕訳帳には下記のように記載されます。

【ケース2】B社に50万円の商品Cを掛取引で販売

商品を現金で販売した場合とは異なり掛取引（売掛）の場合、売上が実現した時点では入金伝票を使いません。売上が発生したら売上伝票か振替伝票を使って売上を計上します。

まずは借り計上のための売上伝票の仕訳方法をご紹介します。

後日、売掛金が現金による入金が確認でき次第、入金伝票を起票してください。

関連記事：マイナスの請求書の仕訳はどう処理したらいい？書き方や管理方法について

入金伝票を利用するメリット・デメリット

続いて、入金伝票を利用するメリット・デメリットをそれぞれ解説します。

メリット

入金伝票によって仕訳を迅速かつ正確に記録することで、入金業務をスムーズに進められるというメリットがあります。また取引内容を後から簡単に確認できるため、確認作業へかかる手間が軽減され、ミスの早期発見にも役立ちます。

簡潔で分かりやすいテンプレートを利用すれば誤記入や記録漏れも防ぎやすくなるのでおすすめです。

デメリット

入金伝票は実際に手を動かして記入するため、記載ミスや盗難、紛失といったリスクが伴います。また特定の取引を電子決済や自動引き落としで処理する場合、入金伝票の記入が手間となって業務効率を下げる可能性もあります。

そのため、どの取引に入金伝票を使用するべきかをしっかり見極めて適切に判断しましょう。

入金伝票の保存方法

入金伝票は原則として紙で保存することが法律で定められています。Excelなどで作成したりメールで送付されたりした場合も、印刷して「紙」として保存する必要があります。ただし「電子帳簿保存法」に適用される内容であれば、電子データとして保存が可能です。

ここからは、具体的な入金伝票の保存方法について解説します。

書類の劣化を防ぐ工夫をする

入金伝票の劣化を防ぐには、保管場所が重要です。高温多湿や直射日光を避け、風通しの良い冷暗所に保管しましょう。

乾燥剤を併用するのもおすすめです。またファイルやバインダーに綴じて整理することで、折れ曲がりや汚れを防ぎます。長期保存が必要な場合は、長期保存用ファイルや保存箱を使用してください。

スキャンした電子データもとっておく

紙の伝票だけでなくスキャンデータも保存しておくと便利です。電子データ化によりキーワード検索が可能になり、情報へのアクセスがしやすくなります。

また紛失や破損のリスクを軽減できます。保管スペースの削減にも繋がり、電子帳簿保存法に対応すれば原本保管が不要になる場合もあります。PDF形式で保存し、バックアップを取っておくのがおすすめです。

入金伝票をやめるときの方法

入金伝票での管理をやめることで業務の効率化やコスト削減につながります。さらに伝票の保存・管理、保存用スペースの確保も不要になるなどメリットが多いです。以下では、入金伝票での管理をやめるときの方法について解説します。

会計ソフトの活用

伝票式会計から、会計ソフトによる一元管理への移行がおすすめです。会計ソフトに直接取引情報を入力することで仕訳帳が自動的に作成され、起票作業が不要となります。また会計ソフトであれば、複数人で同時に取引データを入力することが可能であり、仕訳や勘定科目の設定も自動的に行われます。

さらに仕訳帳、総勘定元帳、その他の補助簿も自動的に作成されるため、業務効率の大幅な向上が期待できるでしょう。

伝票がいらない取引先を増やす

まず自社の会計処理を伝票式から「会計ソフトによる仕訳帳管理」へと変更します。取引先から書類の提示を求められた場合は、会計ソフトのデータや振込記録などを代替資料として提示することで対応します。

伝票が不要であることを理解してもらえる得意先や取引先を増やし、ペーパーレス化と業務効率化を推進していきましょう。

入金伝票に関するよくある質問

入金伝票に関するよくある質問についてまとめました。以下の内容を参考にして、会計処理を進めていきましょう。

入金伝票はどのタイミングで作成すべき？

基本的に、会社に現金の入金があったタイミングで入金伝票を作成します。飲食店や小売店といった現金取引が多い企業では入金伝票を用いることが多いです。

その他にどんな種類の伝票がある？

企業の会計処理の効率化を図るために知っておきたい伝票は以下の通りです。取引の内容も明確になるため、会計作業の補助にもおすすめです。

• お会計伝票
• 作業伝票
• 受発注伝票
• 契約伝票
• 入出庫伝票
• 訂正返品伝票
• チェーンストア統一伝票

入金伝票の保存期間は？

伝票の保存期間については、法人税法と消費税法は7年間、会社法は10年間です。

伝票の提示を求められた場合、紛失などですぐに提示できないと信用を失うことにもつながります。そのため、適切な管理をして保存期間を守りましょう。

まとめ

入金伝票は企業に現金が入金されたかどうかを記録するための伝票で、複数人で同時に作成できるのが大きな特徴です。会計処理の負担が軽減されるメリットもある一方、記載ミスや盗難、紛失といったリスクにも注意しなくてはいけません。

「会計処理を効率化したい」「より信頼性のある経理処理ができるようになりたい」という方は一度税理士に相談してみましょう。小谷野税理士法人では、入金伝票の作成に関するあらゆるお悩みの相談やご依頼が可能です。まずは一度、お気軽にご相談ください。