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法人税法上のみなし役員とは?判定ポイントや注意点を徹底解説!

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法人税法上のみなし役員とは?判定ポイントや注意点を徹底解説!

みなし役員とは、法人税法上で適用されるもので、従業員としては扱われません。給与や賞与などにおいて変わるポイントがあり、ルールを守らないと経費として計上できません。今回は、みなし役員の特徴や判定基準、注意点、メリットとデメリットなどを解説します。最後まで読めば、みなし役員への理解が深まるでしょう。

法人税法上のみなし役員とは

役員の適正人数のイメージ

まずは、基礎知識として以下の点を押さえておくとよいでしょう。

  • 特徴
  • みなし役員と会社法上の役員の違い
  • みなし役員と執行役員の違い

ここから、詳細に解説します。

特徴

みなし役員とは、名前の通り「登記上は役員ではないが、税法上では役員と見なされる人」を示します。

同族会社や中小企業、上場企業など、さまざまな会社において、みなし役員と判断されるケースがあります。同族会社とは、以下に該当する会社を示します。

  • 3人以下の株主が家族や配偶者である個人、法人
  • 自社発行株や出資金の合計が50%以上

従業員への対応方法とは異なる面があり、特に報酬や賞与の面などでは注意が必要です。適切な対応をしないと、経費として計上できなくなるなど、トラブルの原因となる可能性があります。

参考:No.5200 役員の範囲|国税庁

みなし役員と会社法上の役員の違い

会社法上の役員とは、企業戦略や経営方針など、経営における重要事項を決定する人物を示し、具体的には以下の通りです。

  • 取締役
  • 会社参与
  • 監査役

一方で、みなし役員の場合、下記の通り対象となる範囲が広くなる傾向にあります。

  • (上記役員に加え)執行役
  • 理事など

会社法における役員選出は、株主総会で実施されるのが特徴です。

みなし役員と執行役員の違い

執行役員とは、会社員と同じ立場の役職で、以下の法律によって配置は義務付けられていません

  • 会社法
  • 商業登記法

従業員の中でトップ層となるのが特徴で、経営の一部を担うものの、決定権はありません。会社によって執行役員の定義付けは異なっており、労働基準法に基づいた労働条件が適用されます。みなし役員とは異なり、判定するための明確な定義がありません。

関連記事:役員の人数は何人が適正?必要人数や中小企業や株式会社における取締役を選び方

みなし役員になるための判定ポイント2つ

みなし役員として判定されるには、以下の2つの条件を満たす必要があります。

  • 法人の使用人以外で経営に従事しているか
  • 同族会社の使用人で一定割合の株式を所有しているか

それぞれについて、詳しく見ていきましょう。

法人の使用人以外で経営に従事しているか

みなし役員と認定されるのは、以下の条件を満たす方です。

  • 会社員ではない
  • 経営上の意思決定に関与している

後述する通り、会社員の場合は雇用契約を結んでいることを理由に、みなし役員として認められないといえます。該当する可能性がある方は、具体的に以下の通りです。

  • 会長
  • 副会長
  • 顧問
  • 相談役

経営上の意思決定に参加している方の場合、みなし役員となる可能性があります。例えば、以下の点において非役員の配偶者が携わっている場合に該当します。

  • 経営方針
  • 採用
  • 営業
  • 技術開発
  • 資金など

税法上では定義されていないものの、経営の重要事項に関与する割合により、税務調査で判断される傾向にあります。

同族会社の使用人で一定割合の株式を所有しているか

同族会社の使用人(従業員)で、以下に該当する場合はみなし役員と評価されます。

  • 株主グループの中で大きい割合の順から1位から3位までを合計した場合、所有割合50%超えのグループの一員である
  • その使用人の所属する株主グループが10%超の割合を保有する
  • その使用人(配偶者及び、両者で50%を超える会社含む)が5%超えの割合を保有する

配偶者が株を保有していなかったとしても、事業者と合算した割合が適用される点は押さえておくとよいでしょう。配偶者がいる方は、上記3番目の条件をよくチェックするのが望ましいです。

みなし役員の注意点2つ

役員報酬の変更方法イメージ

給与や賞与などの支払いにおいて、以下の通り従業員とは扱いが異なります。

  • 給与ではなく役員報酬扱いとなる
  • 賞与を経費にするには届出が必要である

ここから、具体的に見ていきましょう。

給与ではなく役員報酬扱いとなる

委任契約が結ばれるのを理由に、みなし役員の場合は給与ではなく、役員報酬として報酬が支払われます。「使用者に従属していない」点において、雇用契約を結ぶ従業員とは異なるのが特徴です。

役員報酬と給与はどちらも経費にできるものの、役員報酬を経費にするには定期同額給与などの要件を満たす必要があります。みなし役員は自分で給与を決定する立場であり、「裁量権」を得られます。

一方で、納税額の削減を目的に、役員報酬がコントロールされる可能性もあることから、税務上の制限をかけられてきました。役員報酬の支払い方法に関しては、以下の通り「定期同額給与」を適用する必要があります。

  • 毎月同額を支給する
  • 毎年の決算日から3ヶ月以内、一度のみ金額を変更できる

役員のみでなく、みなし役員も定期同額給与の対象です。

関連記事:役員報酬の変更方法は?タイミングや手続きを解説

賞与を経費にするには届出が必要である

みなし役員の賞与を経費にする場合、あらかじめ「事前確定届出給与の届出書」の提出義務がある点には注意が必要です。従業員の賞与とは異なり、事前に税務署で手続きをする必要があるためです。

みなし役員と認められる可能性がある方に対し、従業員と同様に賞与を支払う場合、税務調査の結果否認されるケースがあります。

手続きを進めるには、「事前確定届出給与の届出書」を議事録と一緒に税務署へ持参するか、郵送するのがポイントです。国税庁の公式Webサイトや事務所で、「事前確定届出給与の届出書」を入手できます。

関連記事:法人税の節税に決算賞与は有効?決算賞与の概要やポイントを解説

みなし役員と判断されると扱いが変わる5つのこと

従業員とは立場が異なることから、みなし役員になると以下の5つの点において変化が生じます。

  • 退職金
  • 社会保険
  • 給与
  • 賞与
  • 雇用保険

それぞれについて、詳しく解説します。

退職金

みなし役員になると、退職金から役員退職金の支給に変更されます。役員退職金の金額の選定項目は以下の通りです。

  • 就労期間
  • 功績倍率
  • 最終の役員報酬月額など

基本的に、みなし役員の退職金は株主総会で決議され、以下の点が決まります。

  • 金額
  • 支払い時期
  • 支払い方法

退職金の金額が過大だと税務署に判断されると、経費として認められない点には注意が必要です。適正だと認められる場合、当期の経費として計上できます。

社会保険料の適応外となることから、社会保険料を支払う必要がない点はメリットの一つです。

関連記事:退職金にも税金がかかる?節税効果の高い受け取り方

社会保険

みなし役員になると、社会保険への加入義務があるのが特徴です。働き方を問わず申告によるものへと変更されることから、社会保険に加入するうえでは条件を満たす必要があります。

一方で、非常勤ではないにもかかわらず、社会保険に加入していない場合、過去に遡り請求される可能性が高い点は要注意です。

給与

みなし役員になると、役員報酬に変更されます。役員報酬を経費として計上する場合、以下の通り定期同額給与を適用する必要があります。

  • 1ヶ月以下の一定期間ごとに支払う
  • 株主総会で金額を決定する
  • 金額変更は毎年決算日後、3ヶ月以内に原則一度のみである

事前の届出なしに特定の月の役員報酬の金額をあげた場合、該当額のみ経費として計上できない点には注意が必要です。

参考:No.5211 役員に対する給与(平成29年4月1日以後支給決議分)

賞与

みなし役員になると、以下の通り賞与の扱い方が変わります

  • 賞与を経費にするには、税務署での届出が必要となる
  • 期間や金額など、届出の通りに賞与を支給しない場合は経費と認められない
  • 株主総会で金額を決定し、取締役会で内訳が決定される傾向にある

手続きに時間や労力などがかかることから、毎月の役員報酬に賞与の金額を分散して対応するケースもあります。

雇用保険

原則として、みなし役員になると雇用保険には加入できません。雇用保険の適用外となる「取締役など事業主と利益を一にする地位にない」の条件を満たす可能性が高いためです。

一方で、使用人兼務役員と判断されると、雇用保険に加入できる可能性があります。使用人兼務役員とは、法人で役員としても従業員としても働いている方を示します。

みなし役員が雇用保険に加入するには、以下の条件を満たす必要があります。

  • 就労の実態が事業所の他の労働者と同じで、それに応じた報酬を得ている
  • 労働時間や報酬の支払い方法・時期などが規則で決まっており、他の労働者と同じ管理化にある
  • 事業主の指揮命令に従っているのが明確である

雇用保険に加入できるのかは、個々の状況によって異なると言えます。

参考:Q&A~事業主の皆様へ~|厚生労働省

家族を役員にするメリット3つ

男性2人

家族を役員に任命すると、以下のメリットを得られるでしょう。

  • 所得税を節税できる
  • 相続税と贈与税を節税できる
  • 法人税を節税できる

それぞれ詳しく見ていきましょう。

所得税を節税できる

家族を役員として任命すると、個人の所得にかかる税金である「所得税」の節税につながります。所得税は累進課税で、所得に応じて税率が決まるためです。

家族を役員に任命すると、一人当たりの所得を減らせ、結果として所得税率を下げられます。以下の事例で考えてみます。

  • 事業者一人で1,000万円の所得
  • 事業者が800万円・配偶者が200万円の所得

上記の場合、配偶者への役員報酬の支払いによって、節税につながるでしょう。所得の総額は一緒であったとしても、申告の方法によって所得税を節税できるケースがあります。

参考:所得税のしくみ|国税庁

相続税と贈与税を節税できる

家族を役員にするメリットとして、相続税と贈与税を節税できる点があげられます。相続税と贈与税は累進課税となっており、保有する資産総額に応じて税率が決まるためです。

所得税と同様に、事業主一人に資産を集中させるよりも、家族で分散する方が税率を下げられるのが特徴です。家族を役員とし報酬を支払うと、具体的に以下のメリットも得られます。

  • 相続税:税率を抑えられる
  • 贈与税:回避できる

なお、相続税と贈与税の税率は10%から55%です。

参考:No.4155 相続税の税率|国税庁

参考:No.4408 贈与税の計算と税率(暦年課税)|国税庁

法人税を節税できる

家族を役員に任命すると、法人税の節税につながる可能性があります。従業員の給与よりも役員報酬を高く設定できる傾向にあり、より多くの金額を経費として計上できる可能性があるためです。

一方で、役員報酬を適用するには、勤務実態があるのが条件の一つです。税務調査において妥当な金額であると認められる必要があり、役員報酬の金額設定は慎重になる必要があります。

税務調査においては、以下の点がチェックされます。

  • 会社の収益
  • 役員の実務内容
  • 従業員の給与
  • 同規模の会社との差など

法人税の節税によって、資金繰りによい影響を与えられるでしょう。

参考:法人税の税率|国税庁

家族を役員にするデメリット2つ

注意点

家族を役員に任命すると、以下のデメリットが発生します。

  • 役員報酬の金額を変えるには条件を満たす必要がある
  • 社会保険料の負担が増える

ここから具体的に解説します。

役員報酬の金額を変えるには条件を満たす必要がある

家族を役員に任命し、役員報酬を経費にするには定期同額給与の適用が必要です。結果として、金額を自由に変更できなくなる点がデメリットとしてあげられます。

前述の通り、原則として毎年の決算日から3ヶ月以内に一度のみ、定期同額給与の金額を変更できるためです。会社の置かれている状況に関係なく、定期的に決まった報酬を支払う必要があり、収支を悪化させるリスクがあります。

一方で、期の途中で役員報酬の金額を変更するには届出が必要で、著しい経営状況の悪化などの条件が設けられています。届出なしで役員報酬の金額を変更すると、経費として計上できなくなり、結果として法人税の負担増を招く点には注意が必要です。

社会保険料の負担が増える

家族の役員に任命すると、節税につながるケースがある反面、社会保険料の負担が増加する可能性があります。役員報酬の金額に応じて、社会保険料の支払いも多くなるためです。

役員として任命した家族の年収が一定額を超えると、扶養から外れ、社会保険料が増える可能性があります。

社会保険料の負担を軽減するには、役員になった家族に賞与を支給するのが一つの方法です。賞与に対する社会保険料には、上限が設けられているためです。

関連記事:社会保険とは?種類や加入条件、負担割合などを解説

みなし役員に関する相談は税理士へ

ここまで、みなし役員の特徴や判定されるポイント、注意点、変わること、メリットとデメリットなどを解説しました。みなし役員とは法人税法上において適用されるもので、従業員とは給与や賞与の支払いなどの点において異なるのが特徴です。

役員報酬や賞与を経費として計上するには、手続きやルールを正しく把握しておくのがポイントです。適正な金額を設定できないと、税務調査によって否認される可能性があります。

みなし役員の役員報酬や賞与の金額設定を始め、会社運営の相談は税理士が頼りになります。小谷野税理士法人には実績のある税理士が所属しているため、まずは気軽にお問い合わせください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
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