反面調査とは個人事業主も対象で、取引先に対して実施される税務調査です。事業を継続するうえで、マイナスの影響を与える可能性が高く、適切に対応する必要があります。本記事では、反面調査の特徴や日程、対象となりやすい個人事業主の特徴と注意点、実施される理由などを解説します。最後まで読めば、反面調査に関する疑問点を解消できるでしょう。
目次
個人事業主も対象の反面調査とは
法人のみでなく、個人事業主として事業をしている方でも反面調査が行われるケースがあります。個人事業主に行われる反面調査の特徴について、詳しく見ていきましょう。
反面調査は税務調査の対象者の取引先に対して行われる
反面調査とは、納税申告された内容が正しいのか、国税庁や税務署の職員によってチェックされることを示します。税務調査とは異なり、申告した本人ではなく取引先を対象とするのが特徴です。
反面調査を実施するうえで対象となるのは、具体的に以下が挙げられます。
- 取引先
- 取引のある銀行
- スタッフとその家族(退職した方を含む)
反面調査に入ることについて、突然取引先に周知されると「健全な経営をしていないのではないか」と不信感を抱かれる原因になるでしょう。最悪の場合、取引を打ち切られる可能性がある点には注意が必要です。
反面調査に入ることが判明した時点で、なるべく早く連絡を入れたうえで、状況を説明しておくのが望ましいです。
関連記事:税務署の反面調査とは?反面調査を最小限にする方法も解説
実施される期間は未定である
反面調査は定期的に実施されるものではありません。「聞き取り内容や提供された情報からでは、申告内容の正当性を判断できない」と担当職員から判断された場合のみ、実施されます。
個人事業主の置かれている状況などによって、調査にかかる期間は異なるものの、結果が出るまでに一ヵ月ほどかかる傾向にあります。
一方で、一日で終わったり半年以上かかったりするケースもあるのが特徴です。反面調査にかかる期間は、予想できないと考えておきましょう。
日程の延期が可能
反面調査が実施される日程は決まっておらず、ある日突然実施されるのが特徴です。事前通知される傾向にあるものの、以下のように置かれている状況によっては、対応できないケースもあるでしょう。
- 出張で事業所にいない
- 急なトラブル発生で対応に追われている
- 重要なミーティングが入っているなど
調査への対応よりも、本人の都合や事業活動を優先することが認められているため、日程の変更を申請できます。
調査を断るためには正当な理由が必要で、基本的には断れないものだと考えておくとよいでしょう。調査の実施を断る場合、以下のようにペナルティを課される可能性があります。
- 一年以下の懲役
- 50万円以下の罰金
反面調査の実施が決定されたあとは受け入れたうえで、適切に対応していく必要があります。
税務調査・反面調査の対象になりやすい個人事業主
税務調査や反面調査の対象となりやすい個人事業主は特徴があり、具体的には以下の通りです。
- 確定申告していない方
- 常識外れの経費を計上した方
それぞれ詳しく見ていきましょう。
確定申告していない方
確定申告していない個人事業主は、税務調査や反面調査の対象となる可能性があります。所得が48万円を超える個人事業主の場合、確定申告する必要があると法律で定められているためです。
未申告の個人事業主の場合、以下のように思わぬところを通して、税務署に知られるケースがあります。
- 税務署への密告
- 重点施策の実施
- 支払調書のチェックなど
確定申告しない場合、余分に税金を払ったりペナルティを課されたりするリスクがあります。「自分一人くらい確定申告しなくてもバレないはず」と安易に考えず、しっかりと対応するのがポイントです。
関連記事:個人事業主の開業1年目、初めての確定申告の方法について
常識外れの経費を計上している方
個人事業主の方で、経費の割合が多すぎる場合は注意が必要です。以下の通り、架空計上していると疑われるケースがあるためです。
- 従業員を雇っていると偽り、人件費を水増ししているのではないか
- 実際の金額よりも、外注費や仕入れ・交際費を多く計上しているのではないか
個人事業主の中には、取引先に架空の請求書を作成してもらい、経費を偽るケースがあります。
口座への入金や振込ではなく、主に現金でやり取りする個人事業主の場合、実際に取引が行われたのか疑われやすいものです。家賃や光熱費など、プライベートの支出と経費を明確に分けることもポイントです。
関連記事:個人事業主が経費計上できる項目と事例、経費の落とし方を徹底解説!
反面調査が行われる理由3つ
反面調査が行われる理由としては、以下の点があげられます。
- 税務調査で協力的ではなかったこと
- 所得隠しが疑われること
- 税務署に目をつけられやすい業種であること
ここから、詳しく見ていきましょう。
税務調査で協力的ではなかったこと
担当職員の方に対して、以下のように協力的な姿勢を見せないと、反面調査が行われる原因になるでしょう。
- 正直に話さない
- 明確に回答しない
- 帳簿や領収書などの書類を提出しない
ネガティブなイメージを持っている場合は特に、担当職員の方を邪険に扱いたくなるかもしれません。税務調査に入られた事実を受け止め、誠実に対応すれば、結果として時間や労力を最小限にできます。
反面調査にまで進展することを防ぐうえでも、税務調査の準備・対応に関しては最善を尽くすのが望ましいです。
関連記事:【税理士監修】税務調査に来たらやばいのはどの役職?税務調査に対応するコツとは
所得隠しが疑われること
税務調査で所得隠しをしていると判断されると、反面調査される可能性があります。所得隠しとは、意図的に売上を少なくしたり架空計上などによって、納税額を低くすることです。
所得隠しの中には「脱税」があり、特に悪質な場合に用いられるのが特徴です。所得隠しや脱税などと認められると、以下のようにペナルティを課されるケースがあります。
- 過少申告加算税
- 無申告加算税
- 延滞税
- 重加算税
控除額ギリギリの金額を申告しつづけている個人事業主の場合、疑われやすいものです。正確な申告を継続している個人事業主でも、調査の対象となる可能性があると知っておきましょう。
関連記事:脱税とは?種類・法的なリスク・そして正しい税務対策について解説
税務署に目をつけられやすい業種であること
個人事業主が事業展開する内容によっては、反面調査の対象となる可能性が高いです。国税庁の調査によって、以下の通り申告漏れの多い傾向にある業種が判明しているためです。
- 経営コンサルタント
- システムエンジニア
- ブリーダー
- 商工業デザイナー
- 不動産代理仲介など
調査の実施年度によって変わる可能性が高いものの、インターネットを使うビジネスや、新分野のビジネスなどは注意が必要です。プライベートの支出と経費を明確に分けるなど、申告における基本を押さえておくのがポイントです。
反面調査の注意点2つ
やむを得ず反面調査を受ける場合、以下の点を押さえておくとよいでしょう。
- 関連書類のみ提出する
- 取引先へ慎重に対応する
ここから、具体的に解説します。
関連書類のみ提出する
反面調査においては、担当職員から指示された書類のみ提出するのがポイントです。知らない間に、取引先や事業所の機密事項が漏洩するリスクにつながるためです。
求められた書類に関して、担当職員は内容を口外することが禁じられているので、素直に応じるとよいでしょう。
一方で、反面調査に関連性の低い書類の提出は避け、明確に選別する必要があります。数年前の請求書や領収書などに関しては、具体的な内容を忘れている可能性があり、日頃からメモを取っておくのが一つの方法です。
取引先への対応を慎重にする
反面調査の実施決定にあたり、担当職員の方のみでなく、取引先へも適切な対応をすることが求められます。反面調査に対応してもらう時間や労力が発生したり、取引継続に関する疑念を抱かせやすかったりするためです。
反面調査の実施によって、取引先にプラスの効果をもたらさないことから、安易に捉えないように注意する必要があります。結果的に取引停止になった場合、判例上は税務署が正当化されることを知っておくとよいでしょう。
状況によっては、事業存続にも影響を与える可能性があるため、通知しておくのがポイントです。
一方で、あらかじめ口裏を合わせ、不利益になる事実を意図的に隠すと、不正加担者として扱われます。あくまでも、担当職員の方に対して「正直に誠実に」対応するのが無難です。
反面調査の対策方法3つ
反面調査が行われると失うものの方が多いため、なるべく避けるのがポイントです。
反面調査の対策方法は以下の通りです。
- 税理士に相談する
- 事業に関連する書類やデータを保存しておく
- 税務調査で適切に対応する
それぞれに関して、詳しく見ていきましょう。
税理士に相談する
反面調査を防ぐには、税務調査で税理士に立ち会ってもらったり、事前に準備する書類を相談したりするとよいでしょう。担当職員の方に不信感を抱かせることで、反面調査の実施が決定されるためです。
税務調査では担当職員の方から質問を受けますが、適切に回答することが求められます。立場によって法の解釈が分かれるため、税務のプロである税理士に任せるのが無難です。
前述の通り、税務調査では提出を求められる書類があるものの、自分では判断できないケースが多いでしょう。準備する必要のある書類や、項目の抜け漏れなどをチェックしておけば、安心して税務調査を迎えられます。
日々の取引の実態を把握するとより適切な対応ができるため、税理士とは顧問契約を結ぶのを検討するとよいでしょう。
関連記事:顧問税理士とは?税理士と顧問契約を結ぶメリットや注意点を解説
事業に関連する書類やデータを保存しておく
税務調査で、以下の通り過去3期から5期分の書類やデータをすべて用意しておくのが、反面調査対策のポイントです。
- 帳簿
- 請求書
- 通帳
- 領収書など
たとえごく少数であったとしても、書類の保管漏れや入力ミスなどは避けなければなりません。申告において、関連する領収書は7年間保管しなければならないと法律でも義務付けられています。
個人事業主にとって、データや帳簿などの管理は面倒に感じるかも知れませんが、税務調査を乗り切るうえでも重要です。経費精算システムを採用したり税理士に依頼したりすると、労力を押さえつつ的確に対応しやすいものです。
参考:個人で事業を行っている方の記帳・帳簿等の保存について|国税庁
税務調査で適切に対応する
税務調査では、担当職員の方の心象を悪くしないよう、誠実な対応をしましょう。必要な書類の準備や質問回答などによって、税務申告が正しく行われていると納得してもらいやすいためです。
書類や請求書を提出するために必要以上に時間がかかったり、質問に対して曖昧に回答したりするのは望ましくありません。税務調査を円滑に終えるには、以下のポイントを押さえるとよいでしょう。
- 書類で根拠を示しつつ回答する
- 誤解を生みやすいポイントは丁寧に回答する
- 帳簿など提出書類の内容を確認しておく
税務調査においては、売上を計上するタイミングや経費の内容などがチェックされます。単純な計算ミスや、経費として計上する各書類の保管などに注意が必要です。
反面調査の相談は実績のある税理士へ
ここまで、反面調査の概要や理由、対象になりやすい個人事業主の特徴、対策方法などについて解説しました。反面調査とは、税務調査の結果に応じて行われるのが特徴です。
時間や労力のほか、取引先への信頼性も失う可能性があることから、なるべく避けることが望ましいです。個人事業主の方も反面調査の対象となっている一方で、書類や受け答えなどについてわからない方もいるでしょう。