青色申告は、個人事業主にとって重要な税務申告方法であり、青色申告特別控除や節税のメリットがあります。しかし、青色申告を行うためには、正確な書類準備と期限内の提出が不可欠のため注意が必要です。本記事では、青色申告に必要な書類やその提出方法、注意すべきポイントを詳しく解説します。初めての方でもスムーズに進められるよう、分かりやすくポイントを整理しているので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
個人事業主が青色申告する際の必要書類
青色申告を行うためには、決められた書類を正確に準備する必要があります。必要書類について詳細を解説します。
- 青色申告承認申請書
- 青色申告決算書
- 確定申告書
- その他必要書類
青色申告についての詳細は以下の関連記事を確認してください。
個人事業主の青色申告とは?いくらから必要?メリット・デメリットや帳簿の書き方などについて解説!
青色申告承認申請書
項目 | 内容 |
提出期限 | 開業日から2ヵ月以内 ※開業済み:青色申告を希望する年の3月15日まで |
提出先 | 所轄の税務署 |
提出方法 | 窓口持参 / 郵送 / e-Tax(電子申告) |
青色申告を始めるためには、事前に税務署へ「青色申告承認申請書」を提出する必要があります。この書類を提出していない場合、青色申告特別控除を受けることができません。
開業後2ヵ月以内、もしくは青色申告を希望する年の3月15日までに提出しましょう。書類の提出方法は、窓口持参、郵送、またはe-Taxが利用可能です。期限を過ぎると青色申告が適用されないため、事前準備を怠らないよう注意してください。
青色申告決算書
項目 | 内容 |
提出期限 | 2月16日~3月15日(休日の場合は翌営業日) |
提出先 | 所管の税務署 |
提出方法 | 窓口持参 / 郵送 / e-Tax(電子申告) |
青色申告決算書は、事業の収益や経費、資産状況を明確にする書類で、後述する確定申告書と同時に提出してください。提出期限は毎年2月16日から3月15日までで、所轄の税務署に持参、郵送またはe-Taxで申請可能です。
青色申告決算書は以下の資料で構成されています。
構成書類 | 条件 | 内容 |
損益計算書 | 青色申告を行う場合 | 事業の売上から経費を差し引いて利益を計算する書類 |
貸借対照表 | 青色申告特別控除55万円または65万円を受ける場合 | 事業の資産、負債、純資産を記録し、経営状態を明確にする書類 |
収支内訳書 | 白色申告を行う場合 | 不動産所得や事業所得の収支を記録し、申告内容を補足するための書類 |
損益計算書は、事業の収益と経費を詳細に記録し、最終的な利益や損失を計算する重要な資料です。売上高、仕入高、人件費、光熱費など、経営活動に関連する項目をすべて正確に記載してください。
貸借対照表は、事業の資産(現金や設備など)、負債(借入金や未払い金など)、純資産を記録し、経営状況を正確に示す資料です。特に、青色申告特別控除55万円または65万円を受けるには、貸借対照表の作成が必須ですので留意しておいてください。
収支内訳書は、損益計算書や貸借対照表を補完する簡易的な書類で、不動産所得や事業所得の収支を記載します。簡易帳簿を利用している場合にも使用され、特に事業規模が小さい場合に適しているでしょう。白色申告で提出が求められます。
確定申告書
出典:確定申告書等の様式・手引き等(令和5年分の所得税及び復興特別所得税の確定申告分)|国税庁
項目 | 内容 |
提出期限 | 2月16日~3月15日(休日の場合は翌営業日) |
提出先 | 所管の税務署 |
提出方法 | 窓口持参 / 郵送 / e-Tax (電子申告) |
確定申告書は、個人事業主の収入や所得、税額を申告する書類です。提出期限、提出先や提出方法は前述の青色申告決算書と同じであるため、同時に提出しましょう。
確定申告書の書式は、2023年以降A様式が廃止され、B様式に統一されています。e-Tax(電子申告)を利用することで、最大65万円の青色申告特別控除を受けられる場合があるため留意しておいてください。
その他書類
書類 | 内容 |
医療費控除書類 | 医療費控除明細書や領収書 |
保険料控除書類 | 生命保険料控除証明書など |
寄付金控除書類 | 寄付金受領書や領収書 |
共済掛金控除書類 | 小規模企業共済掛金払込証明書 |
青色申告には、事業に関連する書類だけでなく、医療費控除や保険料控除などの所得控除に関する書類も必要です。例えば、医療費控除を受ける場合には明細書が求められます。
これらも青色申告決算書・確定申告書とともに提出が必要になるので、事前にしっかり準備しておきましょう。
青色申告には3つの控除額がある
青色申告には、65万円控除、55万円控除、10万円控除の3つの控除額が設けられています。それぞれの控除額は、提出する書類や記帳方法などの条件によって適用が異なり、控除を受けるためには、必要書類を正確に準備し、条件を満たす必要があります。
各控除額についての詳細は、以下の関連記事を確認してください。
青色申告の控除額の違いとは?どの控除額を選ぶべきかポイントも解説
65万円控除
65万円控除は、青色申告特別控除の中で最も高額な控除です。この控除を受けるためには、複式簿記で正確な帳簿を作成し、e-Taxで申告または優良な電子帳簿の保存の要件を満たすh必要があります。加えて、申告時に貸借対照表と損益計算書を含む青色申告決算書の提出が求められます。
複式簿記の運用には一定の知識や時間が必要ですが、正確な帳簿管理により信頼性が高まり、節税効果を最大限に活用できるメリットがあります。
事業所得や不動産所得が大きい方、経理や記帳に慣れている方、または税理士のサポートを受けられる方に特に向いているでしょう。
55万円控除
55万円控除は、損益計算書だけでなく貸借対照表を提出する場合に適用されます。こちらも、複式簿記での帳簿作成が条件であり、記録の正確性が求められますが、e-Taxではなく紙の申告も認められています。
提出書類としては、損益計算書を含む青色申告決算書が必要になるので留意しておいてください。65万円控除と比較するとe-Taxなどの条件がないため、事業規模が中程度の個人事業主に適した選択肢と言えるでしょう。
10万円控除
10万円控除は、単式簿記での帳簿作成が許される控除です。また、貸借対照表の作成は不要です。
この控除は、記帳の手間を抑えたい事業主や、事業規模が小さい個人事業主向けと言えるでしょう。簡易的な記帳が許される点がメリットですが、節税効果は他の控除に比べ限定的です。
青色申告の必要書類について個人事業主が注意すべき5つのポイント
青色申告の必要書類について、個人事業主は以下の5点に注意してください。
- 書類の保管は5年間が義務付けられている
- 青色申告承認申請書の提出期限に注意する
- 帳簿は正確に記帳し保存する(特別控除を受ける場合)
- e-Taxを活用して控除額を増やす
- 初めての場合は税理士に相談を検討する
1. 書類の保管は5~7年間が義務付けられている
青色申告で提出する書類や経費の証明書類は、原則として5~7年間保管する義務があります。これは、税務調査が行われた際に正確な証拠を提示できるようにするためです。
特に領収書や請求書、契約書は、事業活動の正当性を示す重要な書類であり、減価償却資産に関連する書類は、資産の使用期間に応じてさらに長期の保管が必要になる場合があるので注意してください。
2. 青色申告承認申請書の提出期限に注意する
青色申告を利用するには、事前に青色申告承認申請書を税務署に提出してください。提出期限は、新規開業者の場合は開業日から2ヵ月以内、既存事業者の場合は青色申告を希望する年の3月15日までです。
この期限を過ぎると、その年の青色申告特別控除を受けられなくなるので注意しましょう。申請書は税務署の窓口に直接持参するほか、郵送やe-Taxを利用してオンライン提出も可能です。
3. 帳簿は正確に記帳し保存する
青色申告特別控除を受けるには、正確な帳簿の作成と保存が求められます。収支帳簿、現金出納帳、売上帳、仕入帳などを適切に記帳し、事業活動の詳細を記録する必要があり、複式簿記を用いる場合は、さらに詳細な記録が必要になります。
これらの帳簿は、税務署に対する申告内容の信頼性を高めるだけでなく、事業経営の現状を把握するためにも役立つため、正確に記帳し、しっかりと保存しておきましょう。
4. e-Taxを活用して控除額を増やす
e-Taxを利用すると、青色申告特別控除の最大額である65万円が適用されます。これは、紙の申告書を提出する場合と比較して10万円高い控除が受けられるため、節税効果を大幅に高められます。
e-Taxを初めて利用する場合は、事前にID・パスワードを取得しておいてください。電子申告は手間を削減し、提出期限の柔軟性を高めるなど、時間やコストの効率化にも寄与しますので、ぜひ活用してください。
【税理士監修】確定申告のやり方ガイド!いつからいつまでの収入?郵送のケースや必要書類・マイナンバーカードについて
5. 初めての場合は税理士に相談を検討する
青色申告を初めて行う場合、手続きの複雑さや書類作成の煩雑さに戸惑うことが多いでしょう。税理士に相談することで、専門的なアドバイスを受けられ、書類作成や提出の手間を大幅に軽減できます。
また、控除の適用や帳簿の記帳方法についての不安を解消し、節税効果を最大化することも可能です。特に事業規模が大きい場合や、記帳や申告の経験が浅い場合には、専門家のサポートを受けることで申告のミスを防ぎ、安心して手続きを進められるでしょう。
【税理士監修】確定申告「青色申告」を税理士に依頼した場合の費用はいくら?
青色申告に必要な書類でお悩みの個人事業主の方は専門家に相談
青色申告は、正確な書類準備と手続きが求められるため、初めての方には難易度が高いと言えます。専門家に相談することで、税制の恩恵を最大限に活用し、手続きの不安を解消できるでしょう。
青色申告を適用できれば最大65万円を控除でき、その分節税可能です。節税して事業拡大を目指したい人は、青色申告を検討してみてはいかがでしょうか。