資本金0円であっても、法律上は会社設立が可能です。ただし、自己資金が少ないと、創業融資を受けられない可能性があります。その逆に、まとまった資本金があれば、安定した事業を行えると判断され、融資の審査も通りやすいです。しかし、だからと言って見せ金を使って資本金を偽ると、バレたときにさまざまなリスクが生じます。ここでは、その見せ金のメリット・デメリット、バレる理由と違法性について説明しています。
目次
会社設立の資本金としてはいけない見せ金とは?
見せ金とは、起業時、実際には存在しない資本金を持っているかのように見せかけることを言います。
会社を設立する際には資本金を口座へと入金し、申告しなければなりません。その際、ほかから短期間だけ借り入れたものを通帳に書き込み、起業後すぐに返済するのが見せ金です。
この見せ金は、取引先からの信用を得るためや、金融機関からの融資を取りつけやすくするために用いられています。
しかし、資本金としての見せ金は違法行為にあたるため、安易に行うと処罰を受ける可能性があります。
関連記事:会社設立における資本金はいくら必要?最低金額や平均も解説
会社設立において見せ金と判断される基準
会社を設立する際に金融機関から借りられる創業融資は、自己資金の3倍前後と言われています。つまり、資本金が多ければ、それだけ融資額を増やせる可能性があります。
しかし、もちろん融資を申し込まれた金融機関は、資本金が見せ金かどうかの確認も必ず行います。その際、見せ金だとみなす基準は2つあります。
【見せ金とみなされる基準】
- その場限りの多額な入金がある
- 入金における正当な理由や経緯が見当たらない
給与のように定期的に振り込まれているのではなく、そのときだけまとまった金額の振り込みがあった場合は、見せ金だと疑われる可能性があります。
また、入金に正当な理由や経緯が見当たらない場合、金融機関が納得のいく理由や経緯がなければ、見せ金と判断されるリスクが高まるでしょう。
会社設立の際の「見せ金」は違法?
見せ金は資本金の額を偽る行為ですが、会社設立においては絶対に行ってはいけないこととして知られています。
いったいなぜなのかを分かりやすく説明します。
会社設立の資本金を偽る「見せ金」は違法
見せ金を使って実際には存在しない資本金を偽り、会社の登記申請を行うことは、「公正証書原本不実記載等罪」として追及される可能性があります。
また、会社法でも、出資の履行が仮装されていたことが発覚すると、発起人にはその全額を負担する義務が生じます。
見せ金と似ている「預け合い」も法律違反
見せ金と似ているものに「預け合い」があります。見せ金は発起人や事業主が個人で行う場合が多いですが、預け合いは発起人や事業主に加え、金融機関も関わって資本金の仮装を行います。
見せ金と同様に預け合いも罪に問われるため、絶対に行ってはいけない行為です。
会社設立の資本金が見せ金とバレると危険
会社設立の資本金が見せ金とバレた場合には、さまざまなリスクが発生します。いずれのリスクも、会社と事業主にとってマイナスになることばかりです。
融資の申請が通らなくなる
見せ金は法律に違反する行為であり、発覚した際には金融機関や取引先からの信頼を失います。そのため、見せ金が明るみに出れば、融資の審査を通ることももちろん困難です。
さらに、見せ金が原因で信用が失墜すれば、現在だけでなく、将来の金融サービスの利用や他社との取引にも悪影響を及ぼす可能性があります。
会社設立できなくなる
見せ金を使うと、会社設立そのものができなくなるリスクが生じます。また、手続きし終わっていたとしても、それが無効とされる可能性があります。
実際、過去には見せ金を使ったため、資本金がないと見なされ、設立が無効となったケースが存在します。
見せ金が所得税の対象になる
帳簿上、見せ金は事業者への貸付金として扱われます。しかし、見せ金は資本金を装った一時的なものであるため、実際にはその金額がすでに返済されています。
その一方で、帳簿では見せ金は借りたままの状態で、資本金の一部として記載されています。こうしたことから、帳簿上では見せ金が事業主への報酬と見なされ、事業主に所得税が課せられる可能性があります。
罪に問われる可能性がある
前述している通り、見せ金は違法であり、資本金の仮装を行うことで罪に問われる可能性があります。見せ金と認められた場合は、刑法に基づき5年以下の懲役、または50万円以下の罰金刑に処されます。
また、事業主が法的な罰則を受けることで、会社の設立や存続も危ぶまれます。
関連記事:【税理士監修】会社設立時の資本金とは?その意義や設定方法と法的な注意点を解説
会社設立における資本金のなぜ見せ金はバレてしまうのか
創業融資を受けようとすると、金融機関からの調査があるために、見せ金はほとんどの場合でバレてしまいます。
その際、見せ金を見破られるポイントはどこにあるのかを説明します。
口座に突然多額の振り込みがある
会社設立時、創業融資を申し込むと、通帳を開示した自己資金の確認が行われます。
その通帳に、突然多額の入金があった場合、金融機関の担当者には見せ金ではないかとの疑念が浮かぶことでしょう。
さらには、その多額の入金に明確な理由がなければ、見せ金であるという判断をくだされてしまいます。
振込名義が個人の名前になっている
すべての見せ金が、1度に全額振り込まれるというわけではありません。給与のように毎月、数十万円の単位で定期的に入金があったとしても、その振込名義が個人の場合は見せ金の疑いが生じます。
もしくは個人から借金をしていると、金融機関の担当者からは疑念を持たれるでしょう。
ただし、もちろんその振り込みに明確な理由があり、それを証明すれば見せ金の疑惑を晴らせます。
また、見せ金の疑いをかけられないためにも、融資を申し込む際には過去6か月分の記帳を確認し、不審点がないかを事前に洗い出しましょう。
関連記事:自己資金と資本金の違いとは?自己資金の範囲はどこまで?
会社設立なら自己資金を確保!見せ金に該当しない資本金
リスクのある見せ金を使わず資本金を用意したくても、自己資金が不足している場合もあるのではないでしょうか。その際には、次のような自己資金の確保方法を参考にしてみてください。
株式や不動産の売却
すでに資産として持っている株式・不動産・債券などを現金化すると、自己資金による資本金として会社設立を行えます。
これらの取引は書類に履歴が記録されます。金融機関から融資を受ける際にも、確かな取引内容をチェックできるため、見せ金の疑いをかけられることはありません。
親族から出資してもらう
会社を設立する際に親族からの出資を受け、それを資本金にするという方法もあります。
しかし、その場限りですぐに返済すると見せ金の疑いを持たれるため、金融機関に融資を申し込む際には、審査のためにも借用書の作成をおすすめします。
また、借りるのではなく贈与を受けた際は、贈与税が課されるため注意しましょう。贈与税には非課税枠があり、贈与が年間110万円以内であれば申告もいりません。
クラウドファンディングで資金集め
会社設立の資金集めとして、最近ではクラウドファンディングも注目されています。クラウドファンディングは不特定多数の支援者から出資を受け、その金額に応じたリターン(お返し)を発行する必要があります。
そのクラウドファンディングのリターンにも種類があり、購入型・寄付型、そしてファンド型の3つに分かれています。このうち、商品やサービスが売上として記帳される購入型と、同じく寄付金が計上される寄付金型は、資本金にはできません。
しかし、最後の1つ、ファンド型のクラウドファンディングであれば、その支援金は資本金として扱えます。
ファンド型は、支援者から事業に対する出資を受けるクラウドファンディングであり、リターンは出資額に応じて発行します。
関連記事:資本金100万円で会社設立できる?起業前に知っておきたい決め方や平均額を解説
見せ金をしないためにも、会社設立の資本金にお悩みなら税理士へ
起業を成功させたい気持ちは分かりますが、見せ金は法律違反であり、発覚した際には融資も会社設立自体も難しくなるなど、複数のリスクが潜む行為です。
見せ金を使わずに資本金を増やす方法はいくつかあるため、まずは資金集めに力を入れましょう。
それでもなかなか資金が集まらないという場合には、税理士を始めとした専門家にアドバイスを求めてみてはいかがでしょうか。
私たち小谷野税理士法人では、会社設立の代行サービスを始め、会計や税務についてのさまざまな相談に乗っています。
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