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賃上げ促進税制のメリットとは?中小企業が知るべき要件や注意点を解説

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賃上げ促進税制のメリットとは?中小企業が知るべき要件や注意点を解説

「賃上げ促進税制」は中小企業が直面する人材不足の課題に対応し、経済全体の活性化を図るための施策です。賃上げ促進税制を活用することは、企業が従業員の給与をただ上げるだけでなく、節税効果や人材確保、社員満足度の向上といったさまざまなメリットを得られます。この記事では、賃上げ促進税制のメリットや、中小企業がこの制度を最大限に活用するための具体的な方法までをわかりやすく解説します。

賃上げ促進税制とは?

賃上げ税制における教育訓練費のイメージ

賃上げ促進税制は、企業の賃金上昇を支援し、従業員の生活向上を目指す制度です。また、賃上げ促進税制を通じて、経済が活性化されることも期待できます。

最近では、令和6年から賃上げ税制が強化されることでも注目を集めています。具体的には、令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度で、大企業や中堅企業は最大35%、中小企業は最大45%、全雇用者の給与支給の増加額を基に計算した金額について税額控除を受けることができます。

ただし、賃上げ促進税制によって税額控除を受けるためには条件があります。税額控除の対象外とならないよう、条件を確認しておきましょう。

参考:中小企業庁|「賃上げ促進税制」が強化されます!(令和6年4月1日から令和9年3月31日までの間に開始する各事業年度が対象)

中小企業が賃上げ促進税制の対象になる条件

中小企業向け賃上げ促進税制の対象者は、以下の通りです。

  • 青色申告書を提出する
  • 資本金または出資金、従業員数が一定以下の法人
  • 常時使用する従業員数が1,000人以下の個人事業主
  • 中小企業等協同組合や出資組合の商工組合などの組合組織

適用対象となるのは、資本金の額または出資金の額が1億円以下の法人、常時使用する従業員数が1,000人以下の法人や個人事業主、協同組合等です。ただし、同一の大規模法人から2分の1以上の出資を受ける法人などは対象外となります。

また、適用要件には通常要件と2つの上乗せ要件があります。

  • 通常要件:給与等支給額が前年度比で1.5%以上増加
  • 上乗せ要件1:給与等支給額が前年度比で2.5%以上増加
  • 上乗せ要件2:教育訓練費が前年度比で5%以上増加
  • 上乗せ要件3:子育てサポート企業の認定を受けた証である「くるみん」以上または女性活躍推進事業主を示す「えるぼし二段階目以上」の認定を受けている

3つの上乗せ要件は併用可能で、最大45%の税額控除が受けられます。大・中堅企業は上乗せ要件が異なります。詳しくは中小企業庁のホームページをご確認ください。

所得拡大促進税制と賃上げ促進税制の違い

所得拡大促進税制と賃上げ促進税制は、いずれも経済の活性化と従業員の所得向上を目的としていますが、その適用条件やメリットには違いがあります。

「所得拡大促進税制」は、従業員の所得を増やすためのさまざまな取り組みを行った企業に対して税制上の優遇が適用されます。

一方で「賃上げ促進税制」は具体的に賃金の上昇を実行した企業に対して税制上のメリットを与える点が特徴です。

賃上げ促進税制は、賃金の上昇率に応じて税額控除が受けられるため、直接的な賃上げを行うメリットが大きいと言えます。

大企業と中小企業で異なる賃上げ促進税制の要件

大企業と中小企業では、賃上げ促進税制の適用要件が異なります。

大企業

中小企業

賃上げ促進税制の適用条件

給与総額3%以上の増加

給与総額1.5%以上の増加

税額控除の条件

雇用者全体の給与総額が前年度から増えた分の10%(中小企業は15%)

4%以上の賃上げで25%の税額控除

2.5%以上の賃上げで30%の税額控除

教育訓練費の増額で30%

教育訓練費の増額で40%

中小企業の場合、賃上げの比率が低くても税制のメリットを受けやすい条件が設けられています。これは、中小企業が賃金上昇のための資源が限られていることを考慮したものです。

一方、大企業はより高い賃上げ率を達成することが求められることが多く、その分、税制上のメリットも大きくなる傾向にあります。

このように、企業の規模に応じて柔軟に制度が設計されているため、各企業は自社の状況に合わせた賃上げ戦略を立てられるでしょう。

参考:METI/経済産業省関東経済産業局|賃上げ税制について(賃上げ促進税制/所得拡大促進税制)

参考:中小企業庁|中小企業向け「賃上げ促進税制」

関連記事:中小企業向け賃上げ税制における「教育訓練費」は?範囲や上乗せ要件を解説

賃上げ促進税制を活用することで得られる3つの大きなメリット

賃上げ税制に関するイメージ

賃上げ促進税制を活用することで、企業は節税効果を得られ、優秀な人材を確保しつつ従業員のスキルアップにも投資できます。これらのメリットは、企業の持続的な成長と競争力の向上に直結するものです。

節税効果が得られる

賃上げ促進税制を利用する最大のメリットの一つは、節税効果です。企業は賃上げ促進税制を活用して賃金を上げることによって、税負担を軽減できます。

具体的には、賃上げによって増えた給与支払い分に対して税額控除が適用されるため、企業の実質的な負担は少なくなります。さらに、賃上げを行うことで従業員のモチベーションが向上し、生産性の高い労働力を確保できるため、長期的には企業の利益にもつながります。

節税効果を最大化するには、賃上げの対象となる従業員の範囲を広げ、賃上げの比率を高めることが重要です。

人材を確保し、社員の満足度を高められる

賃上げ促進税制を利用することで、企業は社員の満足度を高めることが期待できます。賃金が増えると、従業員にとっての直接的なメリットとなり、企業への忠誠心や職場への満足度を高める要因となります。

また、競争の激しい人材市場において、賃上げは他社との差別化を図り、優秀な人材を惹きつけるための魅力的な条件となります。社員の満足度が高まることで、離職率の低下や生産性の向上が期待でき、企業の安定した成長につながるでしょう。

ただし、人材を確保し社員の満足度を高めるためには、賃上げだけでなく、キャリアパスの提供や職場環境の改善など、総合的な人事戦略が必要です。

従業員のスキルアップを実現するための賢い投資

賃上げ促進税制は、従業員のスキルアップに投資をする機会にもなります。賃上げと並行して、社内教育にかかる費用が増加した場合にも税制上のメリットがあるのです。企業は税制上のメリットを活用して従業員のスキル向上に積極的に投資でき、従業員はより高度なスキルを身につけ、結果として企業の競争力を高めることが期待できます。

スキルアップは、従業員個人のキャリアアップにもつながり、企業としても高いレベルのサービスや製品を提供することにつながります。

ただし、従業員のスキルアップを実現するためには、最新の業界動向に合わせた研修プログラムやオンライン学習の導入など、多様な教育機会を提供することが重要です。

関連記事:【税理士監修】中小企業向け賃上げ促進税制とは?対象や要件について解説

賃上げ促進税制の上乗せ要件とは?

賃上げ促進税制には中小企業の場合、以下のような適用要件があります。

  • 通常要件:

雇用者給与等支給額が前年度より1.5%以上増加している場合、増加額の15%を法人税額または所得税額から控除できます。

  • 上乗せ要件1:

賃上げの比率が2.5%以上の場合、税額控除率が15%上乗せされ、合計30%の税額控除が可能です。

  • 上乗せ要件2:

教育訓練費の金額が前年度より10%以上増加している場合、税額控除率が10%上乗せされます。

  • 上乗せ要件3:

子育てサポート企業の認定を受けた証である「くるみん」以上または女性活躍推進事業主を示す「えるぼし二段階目以上」の認定を受けている場合、税額控除率が5%上乗せされます。

それぞれの上乗せ要件について、詳しくみていきましょう。

賃上げ比率2.5%以上で受けられる追加控除

賃上げ比率が2.5%以上の場合、合計30%の税額控除を受けられます。賃上げ比率が高ければ高いほど控除額も大きくなり、企業の財務負担を軽減する効果が期待できるのです。

追加控除を活用するためには、賃上げの実施比率をよく検討し、正確に申告することが重要です。

教育訓練費における税制上のメリット

研修など社員教育や人材育成にかかる教育訓練費においても、税制上のメリットが得られます。賃上げ促進税制では、従業員のスキル向上とキャリアアップを支援するための費用に対しても税額控除が適用されるのです。

税額控除の制度を活用することによって、企業は従業員の能力向上に必要な投資を行いやすくなり、市場での長期的な競争力の強化につながります。

税制上のメリットを最大限に活用するためには、社内教育のプログラム内容を明確にし、その効果を評価する仕組みを整えることが求められます。

賃上げ促進税制は単に賃金を上げるだけでなく、同時に従業員の成長を促すことで、企業の価値を高めることが期待できます。

関連記事:(税制改正特集)賃上げ促進税制の見直し

賃上げ促進税制を利用する際の注意点

賃上げ促進税制を利用する際には注意点があります。制度のメリットを最大限に活用しつつ、不測の事態を避けるためにも、以下のポイントについて考慮しましょう。

賃上げしても税制の要件を満たさないケースとその対策

賃上げを行っても、税制の要件を満たさない場合があります。たとえば、賃上げ促進税制の対象者に該当しない場合や賃上げ比率が前年度比で1.5%を下回る場合などです。このような状況を避けるためには、賃上げ税制の要件を十分に確認し、賃上げの比率を前年度と比較して検討することがポイントです。

賃上げ促進税制の要件を満たすためには、人事部門や経理部門などと連携し、賃上げが税制のメリットを得るための基準を満たしているか確認しましょう。

社会保険料増加の影響と企業が取るべき対応策

賃上げによって従業員の給与が増加すると、それに比例して社会保険料も増加するため、企業の負担が増えます。財務に影響を与えないためには、賃上げによって社会保険料がいくら増加するのかを事前に確認し、予算を調整することが必要です。政府が支給する助成金や補助金を活用することも有効でしょう。

また、従業員の賃上げによって企業の生産性を向上させることで、増加する社会保険料にも対応できます。業務の効率化や新技術の導入、従業員のスキルアップなども並行して行うことで全体的な利益増を見込めるでしょう。

賃金を維持し続けるための経営戦略

賃上げ後に賃金の支払いを維持し続けるためには、企業は長期的な視点で経営戦略を立てる必要があります。たとえば、市場の変動に対応するための柔軟な経営計画の策定・新しい収益源の確保・コスト削減のための効率的な資源管理などです。

また、従業員のモチベーションを維持し、生産性を高めるための人事管理も重要です。適切な報酬体系の設計・キャリアアップ機会の提供・職場環境の改善などを検討しましょう。

企業は賃金を上げるだけでなく、持続可能な成長を目標とすべきです。賃上げが従業員と企業の双方にとって利益を最大化できることを目指しましょう。

賃上げ促進税制の導入ステップ

賞与と電卓

賃上げ促進税制を導入するためには、どのような手順を踏めば良いのでしょうか。ここでは、制度を最大限に活用し、申請をスムーズに進めるためのポイントをご紹介します。

制度を最大限に活用するための計画方法

賃上げ促進税制を最大限に活用するためには、闇雲に賃金を上げるのではなく、まず企業の現状を正確に把握し、賃上げの目標を明確に設定することが重要です。賃上げの比率やその影響を考慮し、物価上昇率を上回る賃上げを計画しましょう。

また、賃上げによる社会保険料の増加や、その他の財務への影響を予測し、財務計画に反映させる必要があります。賃上げの効果を最大化するためには、従業員のモチベーションアップや生産性の向上にも注目し、賃上げが企業文化や戦略にどのように組み込まれるかを検討しなければなりません。

賃上げの具体的なプランが決まったら、関連部署や従業員とのコミュニケーションを図りましょう。

賃上げ促進税制の申告方法

賃上げ促進税制で優遇を受けるには、対象者の給与等支給増加額や控除を受ける金額などを記載した明細書を含む確定申告書を提出する必要があります。

賃上げを機に見直すべき安定経営の基盤とは?

お金のことを考える人々

賃上げは単なるコスト増ではなく、企業の安定経営と成長につながる投資です。ここでは、賃上げを戦略的に活用して企業の経営基盤を強化する方法と、賃上げによって生まれる好循環をいかに生み出すかを探ります。

経営基盤を強化するための賃上げの戦略的活用法

賃上げを経営基盤の強化につなげるためには、戦略的なアプローチが必要です。まず、賃上げの目的を明確にし、それが企業の長期的なビジョンとどのように一致するかを考えます。

賃上げは従業員のモチベーションを高め、労働意欲を向上させることで、生産効率をアップさせることに直結します。また、賃上げは採用市場における企業の価値を高め、優秀な人材を獲得することにもつながります。

これらの効果を最大化するためには、賃上げを経営戦略の一部として位置づけ、人事管理・財務計画・マーケティング戦略と連携させることが重要だと考えられます。さらに、賃上げによるコスト増を吸収するための効率化や新規事業の開発など、企業運営の各面での革新も求められます。

賃上げによる好循環を生み出す方法

賃上げによる好循環を生み出すためには、賃上げが従業員の生活水準の向上にどのような影響を与えるかを理解することが大切です。

賃金を上げることは従業員の満足度を高め、職場の雰囲気の改善や生産性の向上をもたらし、結果として顧客満足度を引き上げることにもつながります。このような内部のポジティブな変化は、外部のステークホルダーにも良い影響を与え、企業の社会的評価を高めることも期待できるでしょう。

賃上げによるポジティブな循環を実現するためには、従業員の意見を聞き、彼らが直面する問題を解決することも重要です。また、賃上げを通じて得られる利益を再投資し、従業員のスキル向上やキャリアアップを支援することで、企業全体の成長を促進できます。

このように、賃上げは従業員と企業の相互の成功を支えるためのきっかけとなり得ます。

関連記事:この春増える?“賃上げ倒産”って何?

賃上げ促進税制の活用とその先にあるもの

この記事では、賃上げ促進税制のメリットや注意点、活用方法など中小企業が知るべきポイントについて解説しました。賃上げ促進税制は節税効果が得られる上に、人材の確保と社員満足度の向上、従業員のスキルアップという、企業にとってさまざまなメリットをもたらします。

しかし、これらのメリットを最大限に活用するためには、適用要件や上乗せ要件を正確に把握することや、賃上げに伴うさまざまな影響を総合的に考慮した経営戦略が不可欠です。

賃上げ促進税制を利用する際には、税理士との相談が非常に有効です。税理士は、税金の専門家として、企業の状況に応じた最適なアドバイスを提供し、申請のサポートまで行います。また、一時的な賃上げにとどまらず、安定経営の基盤を見直す際にも、税理士は貴重なパートナーとなり得るでしょう。

賃上げ促進税制は、単に税金を節約するための手段ではなく、企業の持続可能な成長と従業員の幸福を実現するために活用できる制度です。賃上げ促進税制に関するさらなる詳細や、企業に最適な活用法を知りたい場合は、私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。

この記事の監修者
池田 大吾小谷野税理士法人
カルフォルニア大学アーバイン校卒業、大手生命保険会社勤務を経て2007年小谷野税理士法人に入社。
会計、税務、経理実務の支援業務から各種補助金の相談・申請業務、企業及び個人のリスクマネジメントのコンサルタント業務を行う。
銀行はじめ多くの金融機関、会計・税務・財務業界に多くの人脈を持ち、企業財務のマルチアドバイザーとして活躍。
税理士「今野 靖丈」

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