資金調達として融資を検討する際、「保証人を頼める人がいない」「連帯保証なしで融資を受けたい」と考える方も多いのではないでしょうか。融資の中には、連帯保証人や経営者保証がなくても受けられるものがあります。この記事では、連帯保証なしで融資を受けるための具体的な方法を解説します。資金繰りに悩んでいる方やビジネスチャンスを広げたい方は、ぜひ参考にしてください。
目次
融資における保証人とは
融資を受ける際、保証人が求められることがありますが、その「保証人」には種類があります。ここでは、融資における保証人の種類とその違いについて解説します。
連帯保証人ではない保証人
一般的な「保証人」とは、融資を受ける人が返済不能になった場合に、代わりに返済義務を負う人のことです。
ただし、連帯保証人とは異なり、保証人には「債務者本人に先っての支払い義務」はありません。つまり、貸主(融資者)はまず債務者に対して返済を求め、その手段が尽きた後で初めて保証人に請求できるのです。
保証人は、債務者の返済が滞った際に通知を受け、その時点で初めて支払いの責任が生じます。
連帯保証人
「連帯保証人」とは、債務者と同等の責任を持つ保証人のことを指します。この場合、債務者が返済できなくなった際に、貸主は連帯保証人に対して直ちに返済請求が可能です。
連帯保証人は、債務者と「連帯して」返済義務を負うため、貸主は債務者と連帯保証人のどちらに対しても返済を求められるのが特徴です。そのため、連帯保証人は重い責任を背負うことになるでしょう。
経営者保証
「経営者保証」とは、企業が融資を受ける際に、その企業の経営者が個人として保証人になることを指します。これは、特に中小企業においてよく見られる保証形態です。経営者が自らの財産を担保に出すことで、金融機関からの信頼を得て融資を受けやすくする目的があります。
経営者保証の場合、企業が返済不能になった際には、経営者の個人資産が請求の対象のため、経営者にとっては大きなリスクを伴います。そのため、経営者保証を求められる際には、そのリスクを十分に理解した上で慎重に判断することが大切です。
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【個人事業主にもおすすめ】連帯保証人なしで受けられる融資の種類
法人だけでなく、個人事業主でも連帯保証人なしで融資を受けられる場合があります。ここでは、その種類と特徴について紹介します。
連帯保証人なしで受けられる融資は5種類
資金調達を検討する際、連帯保証人がいなくても融資を受ける方法があります。以下の表に、その特徴と連帯保証人の必要性をまとめました。
融資の種類 | 連帯保証人 | 特徴 |
民間金融機関の融資 | 条件による | 信用保証協会の保証を利用することで連帯保証人不要の場合あり |
信用保証協会の保証付き融資 | 原則不要 | 金融機関のリスクを軽減し、連帯保証人不要で融資を受けられる |
日本政策金融公庫の融資 | 原則不要 | 国が設立した金融機関で、信頼性の高い事業計画が評価される |
地方自治体 | 商品による | 地域活性化を目的とした融資が中心 |
ノンバンクのビジネスローン | 不要 | 迅速な審査と手続きの簡便さが魅力、短期間での資金調達に適している |
それぞれの特徴について、詳しくみていきましょう。
民間金融機関
多くの銀行では、事業用の融資に連帯保証人を求めるケースが一般的ですが、信用力が高い事業主や、特定の条件を満たす場合には、保証人なしで融資を受けられることもあります。例えば、次項で触れる信用保証協会の保証付き融資を利用することで、保証人不要での借入れが可能な場合があります。
信用保証協会の保証付き融資
信用保証協会は、事業主が銀行等の金融機関から融資を受ける際の保証人となることで、連帯保証人を必要としない融資をサポートしています。ただし、信用保証協会自体が融資を行うわけではなく、保証を提供することで金融機関のリスクを軽減する役割を担っています。
日本政策金融公庫
日本政策金融公庫は、国が設立した金融機関で、特に中小企業や個人事業主を対象とした融資を行っています。原則として連帯保証人なしで融資を受けられ、事業計画の信頼性や返済能力が評価されます。
地方自治体
都道府県や市町村などが、勤労者支援の一環として実施している融資制度です。地域の活性化を目的とした融資プログラムで、連帯保証人なしで利用できるケースがあります。自治体によって異なるため、事前に情報を集めることが重要です。
ノンバンクのビジネスローン
銀行以外の金融機関が提供する融資サービスで、スピーディな審査と手続きの簡便さが特徴です。多くのノンバンクでは、保証人や担保が不要な商品を扱っており、短期間での資金調達を考えている個人事業主にとって有用な選択肢です。
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融資で経営者保証が求められるケースとは?
経営者保証とは、企業が負債を返済できなくなった場合に、経営者個人がその責任を負うものです。銀行からの融資を検討する際、どのようなケースで「経営者保証」が要求されるのでしょうか。
例えば、新規事業やスタートアップ企業の場合、実績が少ないため信用力が低く見られる傾向にあります。銀行はリスクを回避するため、経営者に個人保証を求めることが多いです。また、財務状況が不安定、または赤字が続いている企業も、銀行からの信頼を得られず、経営者保証を要求されることがあります。
しかし、経営者保証にはリスクが伴います。万が一、企業が負債を返済できなくなった場合、経営者個人の資産にまで影響が及ぶ可能性があるのです。このため、全国銀行協会によって「経営者保証に関するガイドライン」が設けられています。経営者のリスクを適正に抑え、個人の生活を守ることが目的です。例えば、保証の範囲を企業の財務状況や融資額に応じて限定する、保証期間を設けるなどの工夫がなされています。
融資を受ける際には、このガイドラインをよく理解し、自身のリスクを適切に管理することが重要です。また、銀行との交渉においては、企業の健全性や将来性をアピールし、経営者保証の要求を緩和、または免除してもらえるよう努めることも一つの戦略と言えるでしょう。経営者保証は、企業運営の大きな負担となり得るため、その要求がなされるケースを理解し、賢く対処することが求められます。
参考:経営者保証|中小企業庁
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【中小企業におすすめ】経営者保証なしで受けられる融資制度
ここからは、中小企業でも経営者保証なしで資金調達できる融資制度を紹介します。
経営者保証改革プログラムの保証
経営者保証改革プログラムは、スタートアップ企業の創出と成長を支援するための取り組みの一つです。経営者個人の財産をリスクに晒さずに済むよう、保証人不要で融資を受けられます。
このプログラムの軸となるのが「スタートアップ創出促進保証」です。新たなビジネスアイデアを持つ起業家にとっての「資金調達のハードル」を低くする目的があります。具体的には、個人保証なしで、企業としての信用のみで金融機関からの融資を受けられるようにする仕組みです。
これにより、経営者個人のリスクを軽減し、創業初期の不安定な段階でも、積極的な事業展開を実現しやすくなります。また、保証の範囲や条件は、スタートアップの事業内容や成長段階に応じて柔軟に設定されるため、多様なビジネスモデルに対応できるのも特徴です。
審査では、事業計画の実現性や財務状況が重視され、企業の将来性を見据えた評価が行われます。ただし、すべての企業が対象となるわけではなく、一定の条件を満たす必要がありますので、詳細は各金融機関に確認してください。
日本政策金融公庫の融資
日本政策金融公庫の融資は、中小企業や小規模事業者が資金調達を行う際に有効な手段です。特に経営者保証がなくても利用可能な融資制度がいくつか存在し、これらは事業の立ち上げや運営において大きな支援となります。以下に主要な融資制度を表にまとめ、その概要を簡潔に説明します。
融資制度 | 概要 |
新創業融資制度 | 新たに事業を始める方を対象に、無担保・無保証人で融資を受けられる。 |
小規模事業者経営改善資金(マル経融資) | 経営改善が必要な小規模事業者に対し、低利での融資を提供している。 |
挑戦支援資本強化特別貸付(資本性ローン) | 中小企業の成長を支援するための資本性の高い融資で、返済負担が軽減される。 |
経営者保証免除特例制度 | 特定の条件を満たす中小企業に対し、経営者の個人保証を不要とする特例制度。 |
生活衛生改善貸付 | 生活衛生関連業種の事業者が対象で、設備投資などに利用できる。 |
各制度にはそれぞれ審査基準や条件があり、事業の性質や規模に応じて適切な融資を選ぶことが重要です。
地方公共団体の制度融資
地方公共団体が提供する制度融資も、経営者保証が不要な場合があります。これらは地域経済の活性化を目的としており、特に地元中小企業やスタートアップを支援するためのものです。
融資条件や審査基準は自治体によって異なるため、具体的な内容は各地方公共団体の窓口で確認する必要があります。地域に根差した事業展開を考えている企業にとって、有効な資金調達手段の一つと言えるでしょう。
民間金融機関による経営者保証なし融資
民間金融機関による経営者保証なしの融資は、銀行や信用金庫などが提供しています。これらの融資は、企業の信用力や事業計画の妥当性を基に審査され、保証人の提出が不要です。ただし、保証会社を通じた保証が必要になる場合もあります。
民間金融機関の融資は、条件や利率が多様であるため、複数の機関を比較検討することが望ましいです。また、事業の持続可能性や成長性をアピールすることで、融資を受けやすくなります。
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融資の連帯保証に関するよくある質問
ここからは、融資を受ける際の連帯保証人に関するよくある質問とその回答を紹介します。以下を参考にしながら、融資の疑問を解消していきましょう。
融資の連帯保証人になれる条件は?
金融機関が連帯保証人として認めるのは、返済能力がある人です。具体的には、安定した収入があり、信用情報に大きな問題がない人物が求められます。
職業や年収、勤続年数、他の借入れ状況などが総合的に評価され、金融機関はこれらの情報を基に連帯保証人としての適格性を判断します。また、保証人になることでその人自身の信用状況にも影響が出るため、慎重な判断が必要です。
連帯保証人なしだと金利は上がる?
連帯保証人がいない場合、金融機関は貸し倒れリスクが高まると判断し、そのリスクをカバーするために金利を上乗せすることがあります。一方、連帯保証人がいればその人が返済義務を負うため、金融機関のリスクが低減されます。
一般的には、0.2%程度の金利が上乗せされることが多いです。したがって、連帯保証人を立てることで金利を抑えられる場合があります。
連帯保証人になるとローンが組めないって本当?
連帯保証人になることがローンの審査に影響を与える可能性はありますが、必ずしも審査に落ちるとは限りません。連帯保証人になっている借入の金額や本人の収入、勤続年数、返済能力など、個々の状況が総合的に考慮されます。
保証人としての責任を負うことで、自身の返済能力が低下すると見なされる場合があるため、新たなローンを組む際にはその点が検討されます。しかし、十分な返済能力があれば、連帯保証人であってもローンを組むことは可能です。
連帯保証なし融資をご検討なら税理士へご相談を
法人に限らず、個人事業主にとっても、連帯保証なしで融資を受けることは可能です。保証人を探す手間も省け、経営者保証なしの場合には万が一のリスクに備える心配もありません。しかし、銀行融資を連帯保証なしで受けると、金利が高くなるなどのデメリットが生じる場合もあります。
また、資金調達の選択肢は他にも存在し、それらを組み合わせて活用することで、金融コストを抑えることにつながります。例えば、無担保ローンや政府補助金、クラウドファンディングなど、多様な方法があります。
さらに、税理士に相談することで、節税対策を含めた資金計画の最適化を図ることも可能です。連帯保証なしでの融資を考えているなら、ぜひ一度、専門家である税理士のサポートをご検討ください。私たち「小谷野税理士法人」が全力でサポートしますので、ぜひお気軽にご相談ください。