出張や研修で宿泊費を経費として処理する際、宿泊税をどのように扱うべきか悩んだことはありませんか。宿泊費に含まれる税金や勘定科目の選択は、適切に処理しないと税務調査時に指摘を受ける可能性もあります。本記事では、宿泊税の基本情報や正しい会計処理の考え方を具体例を交えて解説します。出張費用をスムーズに管理し、税務リスクを回避するためのポイントを知りたい方は、ぜひご覧ください。
目次
宿泊税について
「宿泊税」は、地方自治体が観光資源の整備や地域活性化を目的として宿泊施設に滞在する顧客に課す税金です。東京都、大阪府、京都市などで導入されており、自治体ごとに異なる税率や基準が設けられています。
自治体名 | 導入日 | 説明 |
倶知安町(北海道) | 2021年11月1日 | 宿泊料金の2%を課税 |
ニセコ町(北海道) | 2024年11月1日 | |
東京都 | 2002年10月1日 | ※日本で初めて宿泊税を導入 宿泊料金に応じて1人1泊あたり100円または200円を課税 |
大阪府 | 2017年1月1日 | 宿泊料金に応じて1人1泊あたり100円~300円を課税 |
京都市(京都府) | 2018年10月1日 | 宿泊料金に応じて1人1泊あたり200円~1,000円を課税 |
金沢市(石川県) | 2019年4月1日 | 宿泊料金に応じて1人1泊あたり200円または500円を課税 |
福岡市(福岡県) | 2020年4月1日 | |
北九州市(福岡県) | 1人1泊あたり200円を課税 | |
長崎市(長崎県) | 2022年4月1日 | 宿泊料金に応じて1人1泊あたり100円~500円を課税 |
各自治体で宿泊税の税率や課税基準が異なるため、詳細は各自治体の公式ウェブサイトや関連資料をご確認ください。
適用基準
宿泊税は、宿泊料金に基づいて課される税金であり、1泊あたりの料金が一定額を超える場合に課税対象となります。
ただし、学校行事での宿泊や長期滞在(自治体によって異なる基準)、特定の施設利用など、課税対象外となるケースも存在します。自治体ごとに基準が異なるため、宿泊施設の最新の規定を把握しておきましょう。
宿泊費との違い
宿泊税は地方自治体が課す税金であり、宿泊施設が顧客から一時的に預かるものですが、「宿泊費」は、宿泊施設が提供するサービスの対価であり、経費として計上されます。
宿泊費は利用目的に応じて勘定科目が異なるため、会計上明確に区別する必要があります。
宿泊税の勘定科目と仕訳例
出張や研修で宿泊した際に、宿泊税を取られている場合は「租税公課」勘定で処理します。
宿泊税の金額がわかる場合
宿泊先が発行した領収書や請求書に「宿泊税」の項目があり、金額がわかる場合は「租税公課」勘定を使用して仕訳をします。
例:宿泊代22,000円(内消費税10%)、宿泊税100円を現金で支払った
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
旅費交通費 | 20,000円 | 現金 | 22,100円 |
仮払消費税 | 2,000円 | ||
租税公課 | 100円 |
宿泊税の金額がわからない場合
宿泊先が発行する領収書や請求書の形式によっては、宿泊税が課税されているのか、いくら課税されているかわからない場合もあるでしょう。その場合は宿泊代含む宿代をすべて「旅費交通費」にて仕訳します。
例:宿泊代21,100円を現金で支払った
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
旅費交通費 | 21,100円 | 現金 | 21,100円 |
このように、出張や研修による宿泊であっても宿泊税の有無、宿泊先が発行する請求書のフォーマットによって使用する勘定科目や仕訳が変わってきます。次の章では、出張や研修などで使用する勘定科目や仕訳例を紹介します。
宿泊費の勘定科目と仕訳例
宿泊費の勘定科目と仕訳例についてもご紹介します。
勘定科目 | 説明 |
旅費交通費 | 出張や研修に伴う宿泊の際に使用 |
会議費 | 会議や打ち合わせに関連する宿泊の際に使用 |
福利厚生費 | 社員旅行や社内行事に関連する宿泊の際に使用 |
交際費 | 接待や商談を目的とした宿泊の際に使用 |
経費の節税におすすめ!計上できる項目や損金との違い、判断ポイント
旅費交通費
出張や研修に伴う宿泊費は「旅費交通費」として計上します。業務目的の宿泊費用は、企業活動に直接関わる経費として分類されます。
以下に仕訳例を記載します。
例)社員が出張で宿泊し、宿泊費10,000円を支払った場合(精算時)
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
旅費交通費 | 10,000円 | 現金 | 10,000円 |
会議費
会議や打ち合わせで宿泊施設を利用した場合、宿泊費は「会議費」として計上します。
以下に仕訳例を記載します。
例)取引先との会議に伴う宿泊費15,000円を支払った場合(精算時)
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
会議費 | 15,000円 | 現金 | 15,000円 |
福利厚生費
社員旅行や社内行事に関連する宿泊費は「福利厚生費」として計上します。
以下に仕訳例を記載します。
例)社員旅行の宿泊費として50,000円を支払った場合
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
福利厚生費 | 50,000円 | 現金 | 50,000円 |
交際費
取引先や顧客との接待を目的とした宿泊費は「交際費」として計上します。接待や商談目的の経費は、業務関連費用として分類されます。
以下に仕訳例を記載します。
例)取引先との接待に伴い宿泊費20,000円を支払った場合(精算時)
借方 | 借方金額 | 貸方 | 貸方金額 |
交際費 | 20,000円 | 現金 | 20,000円 |
宿泊税の会計処理における注意点5つ
宿泊税の会計処理における注意点は以下の5つです。
- 宿泊税と宿泊費を明確に区別
- 自治体ごとの税率確認
- 消費税との関係に注意
- 納付期限の厳守
- 記録管理の徹底
1. 宿泊税と宿泊費を明確に区別
宿泊税は、地方自治体が課す税金であり、宿泊施設が顧客から一時的に預かるものです。
特に領収書に宿泊税が明記されている場合、それをもとに正確な仕訳を行うことで、税務調査時の指摘を防げます。
2. 自治体ごとの税率確認
宿泊税は自治体ごとに課税基準や税率が異なります。例えば、東京都では1泊10,000円以上の宿泊料金に対して100円または200円の宿泊税が課される一方、京都市では料金に応じて最大1,000円の宿泊税が課されます。
このように地域差があるため、宿泊施設を利用する地域の最新の課税基準を確認しておきましょう。
3. 消費税との関係に注意
宿泊税は消費税とは異なり、不課税項目です。宿泊料金には通常消費税が課されますが、宿泊税はその対象外であるため、両者を明確に区別して処理する必要があります。
例えば、宿泊料金10,000円に消費税1,000円と宿泊税200円が含まれる場合、消費税計算時には宿泊税を除外します。この区別を誤ると税務署から指摘を受ける可能性があり、追加の税務手続きが発生する場合もあるでしょう。経理担当者は請求書や仕訳時にこれらの項目を正確に管理してください。
4. 記録管理の徹底
宿泊税に関する記録管理は、税務リスクを回避し、正確な会計処理を行うために欠かせません。領収書や請求書には、宿泊料金と宿泊税の内訳が明確に記載されていることを確認し、それをもとに正確な仕訳を行いましょう。
定期的な記録の確認やバックアップを行い、管理体制を強化することで、長期的な税務リスクを未然に防げます。
宿泊税の勘定科目で悩んでいる方は専門家に相談
出張や研修の際に宿泊した際には、宿泊費とは別に宿泊税を取られる場合があります。請求書や領収書に宿泊税が明記されている場合は「租税公課」勘定を用いて仕訳しましょう。
小谷野税理士法人は、長年にわたり企業の税務・会計サポートを行い、観光業界や宿泊施設を対象とした会計処理の実績を豊富に持つ税理士法人です。専門的な知識と経験を活かし、宿泊税の正確な処理や適切な勘定科目の選択をサポートします。